【男子バスケ】スタッツで見る早稲田バスケ リーグトップのオフェンスに迫る

男子バスケットボール

 前半の11試合を終え、折り返しを迎えた関東大学リーグ戦(リーグ戦)。101回を迎えた今季は史上最大の大波乱が巻き起こっている。首位を走るのは1部昇格組の早大。第3戦から9連勝を果たし、10勝1敗で2位の東海大に2ゲーム差をつけている。2年前には2部降格を喫し、今年の関東大学選手権も7位で終わるなど前評判は高くなかった。それでもここまで快進撃を続け、1968年以来の優勝に向けて突き進んでいる。今年の早稲田の異様なまでの強さはどこから生まれているのか。各指標から早大の強さを分析する。

圧倒的な攻撃回数

 早大の強みは圧倒的な得点力だ。ここまでの1試合平均得点は93.0点。2位の日体大に約15点差をつけ、断トツの1位に君臨している。近年の全日本大学選手権(インカレ)王者である日大や白鴎大、東海大がディフェンシブなバスケットを基調とする一方、早大のバスケットは超がつくほど攻撃的。留学生を持たずインサイドに不安を抱える状況下で唯一無二のスタイルを作りあげた。

 その攻撃力を支えているのは、チーム全体がモットーとして掲げる「高速バスケット」だ。1試合あたりのチーム攻撃回数を表すPACEで早大は、リーグトップとなる80.5を記録している。リーグ平均は74.1、リーグ2番目の白鴎大でもその数値は76.5に留まるだけに、今年の早大がいかに異質なスタイルで戦っているかが伺えるだろう。

※本記事のPACEはシュート試投数+フリースロー試投数×0.44ーオフェンスリバウンド+ターンオーバーから計算される概数を使用

 試合中は倉石平ヘッドコーチ(昭54教卒=東京・早実)が「ペースを上げろ」と指示を出すことが多く、攻撃回数の多寡にはチーム全体で高い意識を持っている。1巡目最終戦の日大戦後にF堀陽稀副将(スポ4=京都・東山)は「どの大学もペースを落とさせてくると思う」とコメント。ペースは各大学の早大対策における最大の焦点となっていくだろう。

得点効率も圧巻

 このように攻撃の「量」で圧倒的な優位性を誇る早大だが、攻撃の「質」でも他大学の追随を許さない。チームが100回のオフェンス機会で何回の得点を得られるかを示すオフェンシブレーティングで早大は115.6を記録。リーグ平均の95.8に20近くの差をつける異様な数値は、早大オフェンスの強力さと効率性を物語っている。

 この質の高いオフェンスを支えているのはシュート効率だ。50%を超えれば優秀と言われるチームEFG%はリーグトップの56.0%を記録。全員が3Pシュートを打てる布陣から、少しでもスペースがあれば積極的にシュートを狙っている。3Pシュート成功率は39.4%と、これもまた異次元の数字だ。また、オフェンスで絶対に避けたいターンオーバーの数はリーグ最小のチーム1試合平均8.3個。攻撃回数が増えるほどターンオーバー数は増える傾向にあるが、早大のオフェンスはそれすらも凌駕するほどのミスの少なさを誇る。

 早大のオフェンスは第一に速攻を狙う。大学界ナンバーワンのスピードを誇るG下山瑛司(スポ3=愛知・中部第一)がボールをプッシュし、ファストブレイクや相手の不完全なマッチアップを狙うアーリーオフェンスを遂行する。また、ハーフコートオフェンスになった際はほぼ常にファイブアウト。主に1対1の仕掛けから相手ディフェンスのズレを狙い、キックアウトから3Pシュートを量産している。中でも堀副将は抜群の打開力を誇り、相手ビッグマンを簡単に攻略し続けた。早稲田のスモールラインナップは全員が速攻で走れ、全員がドライブを仕掛けられ、全員が3Pシュートを打つことができる。「ビッグマン不在」と厳しい評価を受けた早大がその逆境を逆手に取り、前半戦のオータムリーグを席巻した。

スピードスターの下山は早稲田の高速バスケットに欠かせない存在だ

大学バスケ界の歴史に名を残す快挙達成へ

 仮に早大が後半戦もこの勢いを維持した場合、偉大なる記録が達成されそうだ。このまま1位を守り優勝すると、早大のリーグ戦優勝は1968年以来となる57年ぶり6度目。1部昇格即優勝という面では2002年の筑波大以来23年ぶり史上2度目の快挙だ。また、2007年以降に限った話になるが、ここまでの3Pシュートの1試合平均成功本数13.8本は歴代最多。1試合平均93.0得点は2009年に慶大がマークした96.8得点に次ぐ近年2番目の数字となっている。 

 しかし強者の揃う関東1部で勝ち続けることは決して簡単ではない。首位ターンを果たした早大に対しては各大学が最優先で対策を練ってくることが予想され、2巡目はより一層し烈な戦いとなるだろう。このまま2ゲーム差を守り切り早大が「史上最大の下克上」を達成するのか、それとも各強豪校が意地を見せるのか。後半戦も大学バスケと早稲田大学BIGBEARSから目が離せない。

(記事 石澤直幸)