関東学生秋季リーグ 9月28日 東京・国士舘大学多摩体育館
関東学生秋季リーグ(秋季リーグ)も最終戦。全日本選手権大会(インカレ)に向け勝利で弾みをつけたい早大は、難敵・筑波大と対戦した。前半は自らのミスから逆速攻を複数許し、11―17と大きくリードを奪われる。追う後半、気を引き締め直した早大は怒涛(どとう)の追い上げを見せると、後半15分ついに筑波大の背中を捕らえた。その後1点を争う展開が続く中、試合終了間際にRW今西央登(スポ2=奈良・郡山)が決勝点となるサイドシュートでゴールを揺らし、32―31と1点差で大逆転勝利を収めた。
立ち上がり、主導権を握ったのは筑波大だった。LB鍋島弘樹(スポ3=福井・北陸)のロングで早大が先制点を挙げるが、その後はオフェンスミスから逆速攻を許す展開が続く。ディフェンスから流れをつくった筑波大が一気に押し、前半7分にはスコアは1―7。食らいつきたい早大はここから所真大(社3=岡山・総社)が躍動。サイドで回ってきたシュートチャンスをしっかりものにすると、センターではカットインからゴールを決め、筑波大に傾く流れをなんとか食い止める。しかし立ち上がりにつくったビハインドは大きく、早大は前半を11―17で折り返した。

試合後声援に応える所
6点のビハインドを背負った早大だったが、ハーフタイムの声がけはポジティブなものだった。攻めることができていないわけではなく簡単なミスがその原因だ、「後半いけるぞ」(大武蓮、社4=神奈川・川和)と。その言葉通り、ミスを封印した早大は後半、怒涛(どとう)の追い上げを見せる。CB河原龍成(スポ2=福井・北陸)はミドルからカットイン、パス捌きまで堂々たるプレーぶり。ディフェンスの要・小柴創(スポ3=千葉・昭和学院)不在の中「今日は自分が頑張らないと」と試合に臨んだというPV黒沼大幹(教3=東京・明星)も、数的不利な場面での運動量豊富なディフェンスから、体を張ったポストシュートまで起用に応える活躍を見せた。攻守が噛み合った早大は、後半15分同点に追いつき、20分には初めてリードを奪う展開に持ち込む。チームが苦しい場面にもゴールを守り続けた経験を今季の収穫だ、と語る守護神・大武が要所で好セーブを連発。27分には外種子田崚汰副将(スポ4=鹿児島・国分)がエースとしての執念を見せつけるようなミドルを放つと、30―28とリードを2点に広げた。

ゴール後ガッツポーズを見せる黒沼
勝利を手繰り寄せる早大だったが、筑波大もただでは引き下がらない。強烈なミドルを中心に粘りを見せ、29分には再び同点に戻された。互いに一歩も譲らない展開、試合終了まで残り10秒で早大最後の攻撃。粘って粘ってラストパスを受け取ったのは今西だった。この秋、初戦から確率高いサイドシュートを量産しブレイクしたサウスポー。会場全員の視線が集中する中、今西は思い切り中へ飛び込んだ。放った鋭いシュートはインコースを打ち抜きゴールネットが揺れる。一瞬の静寂の後、会場は早大の歓声に包まれ、今西からもガッツポーズが飛び出た。終了間際のこのシュートが決勝点となり32―31でゲームセット。早大は1点を争ったリーグ最終戦を見事に制した。

今西(中央:背番号15)に駆け寄る選手ら
逆転勝利を収め、幕を下ろした秋季リーグ。全9試合を終えて早大は3勝6敗、最終順位は7位だ。今試合のような勝利だけではなく、入れ替え戦がよぎる状況下での敗戦や、1点差で涙を呑んだゲーム、準備したことを発揮できず大差をつけられた試合も経験した早大。「自分の中ではもっとできる」と語る所のように、満足のいく活躍とはならなかった部員も多くいるだろう。その悔しさや経験をインカレへの糧に。それぞれの立場で、1点への執念、ワンプレーへの執念を滲ませる早大男子ハンドボール部は、インカレ・石川の地で「早稲田らしさ」全開の戦いを見せてくれるはずだ。
(記事 片山和香、写真 芦刈れい、中井遥音)

集合写真
関東学生秋季リーグ(秋季リーグ) | ||||
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早大 | ○ | 32―31 | 筑波大 | |
11―17 |
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スタメン | ||||
GK 大武蓮(社4=神奈川・川和) |
コメント
大武蓮(社4=神奈川・川和)

――ペナルティーを含めフリーのシュートを止める場面もありましたが、ご自身のプレーを振り返っていかがですか
最近あまり調子が良くなかったので、思い切っていくというところを大事にしていました。前半はシュートを入れられたのですが思い切っていけていて、それが後半につながって逆転勝利を導いたと思うのでそこは良かったと思います。
――前半に大きくビハインドを奪われた後、ハーフタイムではどんなお話がありましたか
結構ポジティブな声かけが多くて。攻めることができていないわけではなくて自分たちが簡単なミスを繰り返してしまっただけだったので、内容としては悪くない、後半全然いけるぞという明るい声かけが多かったです。
――秋季リーグ(関東学生秋季リーグ)を振り返ってどのような収穫がありましたか
良いことではないかもしれないですが、(収穫としては)苦しい状態を経験できたということがあります。今まで3年生の時から試合に出ていたのですが、その時はサブだったので(自身が出場するのは)チームが良い流れの時だけで責任感がなかったのですが、今はチームが悪い状況でも出続けないといけなくて。そういう苦しい状況でどういう声かけをしたらいいか、どういうキーピングをしたらいいかというところについては収穫がありました。
――インカレ(全日本選手権大会)までに強化したいことを教えてください
ディフェンスとの連携をもっと詰めていきたいと思っています。インカレで相手が分からない分その場の相手によって判断を変えることが増えてくると思うので、ディフェンスとコミュニケーションをとって、ちゃんとお互いの意思が統一したディフェンスができるようにしていきたいと思います。
所真大(社3=岡山・総社)

――ご自身のプレーを振り返っていかがですか
この秋季リーグは個人的には課題の残るリーグだったので、最終戦でインカレに向けて良い調子を持っていけるように最初から全力で取り組もうと思っていて、取り組めたのですごく今日は良かったなと思います。
――試合を振り返っていかがですか
前半6点差でやはり筑波大学も最初は油断していたところがあると思うのですが、僕らがリードした時には力のある大学なので追い上げムードで来て。河原(龍成、スポ2=福井・北陸)のレッドカードもあって(早大の)チーム内で動揺もあったと思うのですが、練習していた形ではあったのでみんなで落ち着いて最後まで取り組めたと思います。
――秋季リーグを振り返っていかがですか
自分の中ではもっとできるというのが率直な感想ですが、最後にチームとして良い感じに持ってくることができたということはインカレに向けて良かったのかなと思います。次に向けて頑張りたいと思います。
――インカレへ向けて意気込みをお願いします
秋季リーグでもセンターとサイド両方出ることがあったのですが、自分に求められているのはサイドでの決定率やセンターに入った時の冷静なゲームメイクなので、そこを十分に発揮できるようにインカレに向けて準備していきたいです。チームとしては立ち上がりが課題に残るので、立ち上がりの試合の入り方、ディフェンスをしっかり地盤を固めていけたらと思います。
黒沼大幹(教3=東京・明星)

――ご自身のプレーを振り返っていかがですか
まずオフェンスから振り返ると、シュートを外さなかったことが1番大きかったと思っています。自分はここ数試合シュートを外す場面が多くて、オフェンスであまり貢献できていなかったのですが、今回は決め切ることができたと思います。次にディフェンス面でいうと、今朝急遽、いつもディフェンスの要を担っている創(小柴創、スポ3=千葉・昭和学院)が出られないということになって、今日は特に自分が頑張らないといけないなと思いながら試合に臨みました。その中で特に後半は粘り強く手応えのあるディフェンスができたと思っていて、慢心ではないですがこの良い手応えを大事にしてインカレに臨みたいと思います。
――手応えを感じられたディフェンスを振り返って、どんなことを意識されていましたか
ここ数試合、チームの中で声かけを意識していて、ディフェンスのミスをなくしてしっかり連携を取っていこうということを目標に決めていました。今回は声かけして連携を取るという練習でやってきたことがしっかり出せたと思いますし、それが勝つことができた要因かなと思います。
――スタメン出場が続いたこの秋季リーグを振り返っていかがですか
チームの目標としていた優勝にはほど遠い7位という順位で終えることにはなってしまったのですが、途中からみんな切り替えてインカレに向けてという部分を意識できていました。内容もそうですし雰囲気というところでいえば、常々いわれている早稲田らしさを全員で出していこうということを目標としてやっていました。7位という結果ですが、特に今日の試合はまず勝つことができて、そして後半の30分はインカレに向けて良い準備ができるような試合運びになったかなと思います。
――黒沼選手ご自身はチームにどんな形で貢献していきたいですか
ポストとしてシュートを決め切るというところと、ディフェンスではフリースローを取ってボールまで取り切るというところ。オフェンス・ディフェンス両方の面でしっかり貢献したいです。自分は試合に出場し続けて、チームも勝つという良い循環ができるように頑張ります。
――最後にインカレへの意気込みをお願いします
あと1ヵ月しかないですが、特に今日の後半の試合運びや盛り上がりを継続できるように、常に意識してみんなで頑張っていきます。