【男子バスケ】岩屋頼&堀陽稀 早大旋風を巻き起こすダブルエース 57年ぶり優勝とプロの世界に向けて突き進む最後の秋

男子バスケットボール

 オータムリーグに早大旋風が巻き起こっている。1部昇格組の早大はここまで8勝1敗を記録し、目下7連勝中。1968年以来の関東大学リーグ戦(リーグ戦)優勝に向けて単独首位をひた走っている。そんな早大のダブルエースと評されるのはG岩屋頼主将(スポ4=京都・洛南)とF堀陽稀副将(スポ4=京都・東山)。チームを引っ張る主将と副将の2人には、最終学年にかける並々ならぬ覚悟があった。

下級生時の苦難を乗り越え

 「本当にしんどい」。堀がこの言葉で振り返ったのは1、2年時のリーグ戦だった。当時1部リーグに所属していた早大は2年連続で最下位争いに終始。2年目には2部降格を喫するなど、関東1部に対する思い出は苦いものばかりだった。しかし早大は1年で1部復帰を果たすと、今季ここまで8勝1敗と絶好調。「台風の目」として単独首位を走り、大学バスケ界に衝撃を与えている。それでもインタビューの際に2人の口から出てくる言葉は常に謙虚なものばかり。中でも堀の「まだ入れ替え戦があると思ってやっている」という言葉は、チームが抱える危機感の象徴だった。この貪欲な気持ちこそが早大旋風の原動力かもしれない。

 1年生の頃からスターティング5に名を連ねていた岩屋と堀だが、今季は2人ともベンチスタート。「流れが上手くいっている時にベンチから出ることは難しい」と岩屋が語るように、シックスマンとしての起用に戸惑いもあるようだ。しかしその中でも2人は活躍を続け、スタッツも好調。得点ランキングで堀は平均16.4得点で4位、岩屋は平均13.2得点で10位につけている。勝負強さも光っており、クラッチタイムのプレーで2人は幾度となくチームを救ってきた。

早大旋風の原動力

 今季の岩屋は1on1の強さが増し、オフェンスが停滞する苦しい時間でも数多くの得点を記録。アシストランキングでも8位に位置する理想的なスコアリングガードだ。スタメンのG下山瑛司(スポ3=愛知・中部第一)とは異なるタイプのガードとして、リーグ最高峰のツーガードを構成している。

 堀は持ち前のドライブ力に加え、苦手にしてきた3Pシュートが成功率39%と好調。シュート効率を表すeFG%は59.9%と、極めて優秀な数字だ。また、リバウンド数でもチーム1の本数を記録。相手留学生とマッチアップする時間も多く、スモールラインナップを基調とするチームを土台から支えている。

 2人の成長の背景には3人制バスケットボール、3×3があるだろう。岩屋と堀は3×3のプロチーム、SHINAGAWA.CITY.EXEに所属。8月には23歳以下の3×3日本代表として日の丸を背負い、世界の有力な若手選手を相手に堂々たるプレーを見せた。「3×3をやってからディフェンスの強度が上がったし、シュートを打ち切る場面が増えた」(岩屋)と手応えも十分。1年生の頃から常にチームを引っ張ってきた2人だが、今年はよりいっそう存在感を増している。

希望進路はBリーグ

 2人が目指すのは日本最高峰の舞台、Bリーグ。共に今年度から始まるBリーグドラフトの志望届を提出する予定だ。もちろん未知数なドラフト制度に対する不安がゼロではない。それでも「お世話になった人に恩返しをしたい」と、2人はまっすぐに覚悟を表した。

 ここまで快進撃が続く早大だが、リーグ戦は未だ折り返し手前。これからは各大学の早稲田対策が激しさを増し、早大にとっては苦しい時間が増えていくだろう。しかし苦しい時にこそ輝くものが「4年生の力」だ。2人のエースは類い稀なるその力で、チームの頼れる柱を担う。57年ぶり優勝という歴史的快挙へ、ドラフト指名という史上初の快挙へ。岩屋と堀の存在が混沌のオータムリーグを更に熱くする。

(記事 石澤直幸)