第101回日本学生選手権水泳競技大会水球競技(インカレ)直前対談第5回は、加納凪人主将(スポ4=三重・四日市中央工)と渡邊空副主将(スポ4=新潟産業大附)の二人。学生最後の大会を目前に、主将・副主将としての思いやインカレへの意気込みを伺った。
※この対談は、8月14日に行われたものです。
お互いのこと
――まずは、他己紹介をお願いします
渡邊 加納凪人さんです。三重県津市生まれの四日市中央工業高等学校出身です。ポジションは、ゴールキーパーで、趣味は、メジャーリーグを見ることだと思います。違ったかな(笑)。最近は、行けていないのですが、釣りもちょっとハマっているはずです。一番僕の部屋に居座っている人だと思います(笑)。
加納 渡邊空くんです。同じ4年生で、新潟産業大学附属高校出身です。ポジションは、ゴールキーパーで、最近は、F1にハマり始めたと口を開けば言っていて、ちょっと面倒くさいと思っています(笑)。自分の部屋よりも空の部屋にいることが多いくらい部屋が綺麗・・・。
渡邊 綺麗じゃないよ。
加納 綺麗じゃないですが、カスタマイズされていて、居心地の良い空間を作ってくれています。

対談中の加納(左)、渡邊
――趣味はありますか
渡邊 結構趣味は、多いかなと思っていて、スポーツ観戦だと、サッカーや野球やアメフトを見るのが好きです。他にも、F1を見始めたり、アクアリウムという水槽で魚を飼うことも趣味です。
――寮の部屋で飼っているのですか
渡邊 部屋に水槽があって、飼っています。
加納 へーそうなんだ。
渡邊 知ってるだろ(笑)。
加納 知ってたわ(笑)。僕は、空と対象で、あまり趣味がなくて、強いて言うなら、スポーツを見るのは好きです。大谷翔平が好きで、メジャーリーグをよく見ています。
――仲が良いとのことですが、二人で遊びに行かれたりするのですか
渡邊 結構行くよね。
加納 チームの中だと、一番二人で行くことが多いです。釣りとか。
渡邊 わざわざ神奈川の湘南の平塚まで、車で朝一時間ぐらいかけて行って、何にも釣れずにまた一時間かけて戻ってくることだったり、普通にご飯に行くのも多いです。
加納 4年間で一番二人でいることが多いかな。
――お互いの第一印象を教えてください
加納 大学まで本当に知らなくて、(大学)に入ってからこんな奴がいたのかと知りました。入部してすぐに、同期4人でご飯屋さんに行く機会があったのですが、注文のオーダーをする時に、めちゃくちゃ声がデカくて、こいつめちゃくちゃ気持ち悪いなと思ったのが第一印象です(笑)。
渡邊 僕は、高校生の時に(加納)が全国大会で2冠していたキーパーだったので、名前は、知っていたのですが、会ったこともなく、顔も分からなかったのですが、会って早々にこいつとは、仲良くなれそうだなと思いました。
加納 やば(笑)。
――尊敬しているところと、直して欲しいところを教えてください
加納 直して欲しいところいっぱいあるな。
渡邊 ないだろ(笑)。
加納 尊敬しているところは、根が明るい部分です。チームの雰囲気が暗いと、その人まで暗くなりがちですが、すごい根が明るく、ずっと冗談を言っていたり、暗い時でもチームを明るい雰囲気に持っていけたり、そういった天然のパワーを持っているところが、良い部分だと思います。直して欲しいところは、それの裏返しで、たまに空気読めないところまでふざけちゃうので、そこは、イライラするなと思います(笑)。
渡邊 尊敬するところは、チームで一番ストイックなところです。特に水球に対しては、どんな面でもストイックだと思っています。戦術や練習でのプレーの一つ一つまで、こだわるところは、このチームで一番あります。直して欲しいところは、耳が悪いのか、ストイックすぎるのか分からないのですが、たまに(加納を)呼んでも反応してくれない時があるので、その感度を上げて欲しいです(笑)。
加納 実は聞こえています。空だったらいいかなと(笑)。

対談中の加納
主将・副主将として
――主将、副主将はどのような経緯で決まったのですか
加納 お互い立候補はしていて、空は、もともと自分のタイプ的に先頭に立つ主将よりも、チームを陰から支えたいということで、副主将に立候補していました。僕は、表立ってチームを引っ張りたいと思っていたので、主将に立候補して決まりました。
――主将、副主将としては、お互いどのような印象がありますか
渡邊 主将としては、水球のことを一生懸命に考えていて、やはり、一番上に立つ人がそういう姿勢であることは、チームを作る上では、すごく大事だと思うので、チームに良い影響を与える存在かなと思います。戦術などを考える上でも、水球をよく知っているので、良い主将だと思っています。
加納 空は、繊細で気を使えるタイプだと思っています。チームの広告塔というか、先頭に立ってやるのは僕ですが、それを陰で支えているのは、繊細に気を使えている空だからできることかなと思うので、副主将として具体的に何かをやっているという部分は、あまり見えないですが、チームになくてはならない存在なのかなとたまに思ったりします。
渡邊 いつも思っていてよ(笑)。
加納 たまにね(笑)。
――主将副主将としてチーム運営など、特に意識していることはありますか
加納 僕の思い描いているリーダー像は、背中で引っ張るリーダーではなくて、チームの個々の能力が、最大限に発揮されるように間を取り持ったり、マネジメントしたり、そういう後ろから持ち上げていくリーダーを目指しています。なので、常にチームのメンバーが、力を最大限に発揮できるように、人間関係に問題があるのならそこに自ら首を突っ込んで改善しに行くし、水球のプレー面でもですが、よりみんなが快適に、力を発揮できるような環境づくりをすることは、意識しています。
渡邊 チームで一番大変なのが主将のポジションだと思うので、その主将が気兼ねなく、チーム運営できるように支えていくのが、副主将だと思います。主将が、一人で決めすぎるのは、自分の中であまり良くないと思っているので、もし、暴れ出したら止めようかなと思っていたのですが、1年間一度もなかったので、良かったです(笑)。
今季の試合を振り返って
――学生リーグは、第6位でした。最も印象に残っている試合と振り返りをお願いします
加納 リーグ戦の総括としては、開幕が、4連敗で始まって、主将として、その時期は、何が正解か分からず、これでいいのだろうかとすごく悩んだ時期もありました。ただ、そこから順位決定戦に行くまでは、4連勝とチーム全員で勝ちに行けたので、自分たちがやってきたことは間違いではないと自信を持てた学生リーグでした。改めて、チームの繋がりという重要性を感じることができ、そこが早慶戦にも繋がったので、良いリーグ戦だったのかなと思います。印象に残っている試合は、学生リーグ第3節の専修大戦です。コールド負けの試合です。同じ(関東)1部の大学に対してコールド負けをするというのは、選手としては、これ以上にない屈辱だったのですが、そこから、部員全員が折れずにまた次の試合に向かって一人一人出来ることをした結果、後の試合に繋がったので、ある意味ターニングポイントの試合だったと思い、印象に残っています。
渡邊 今年は、日本選手権の関東予選や最終予選、本戦が学生リーグと交互にあるという日程の中で、学生リーグに全集中出来ない、すごく難しい年でした。開幕も4連敗ということでしたが、チームとしては、暗くなりすぎずに、うまく切り替えて、そのあとリーグ戦自体は、3連勝で、凪人も言っていましたが、早慶戦にうまく繋げられたのかなと思います。印象に残っている試合は、5試合目の中大戦です。試合がまず、4Pの残り3分で、中断して、それ自体がまず印象に残っています。その時点で、同点で、残り3分を次の日にやるという難しい状況だったのですが、そこでしっかり勝ちきれたのは、リーグ戦の初勝利でもあり、そこから勢いも乗れたので、印象に残っています。

日本選手権最終予選会AIDEN戦の渡邊
――今年は、日本選手権は関東予選から始まりました。関東予選、最終予選、本戦を振り返っていかがでしょうか
渡邊 今年からシステムが変わって、関東予選から出ないといけないところで、難しい試合が多い中で勝ちきれたのは、リーグ戦にも繋がったと思います。関東予選も最終予選も接戦が多かったので、リーグ戦とも日程的に苦しい中で、勝ちきれたのは、良かったですし、日本選手権の本戦にも出られたことは、嬉しかったです。ですが、もっと昔の早稲田を見ると、本戦出場は、当たり前で、一回戦からしっかり勝って、決勝に行けるかどうかのような時代もあったので、自分たちは、もう(日本選手権に)出れませんが、後輩たちには、もっと上を目指せるような強いチームにを創って欲しいなと思います。
加納 日本選手権出場を決めた最後の試合で山形SHARKSというOBのチームに、最後4P目の残り数秒で、典也(古谷典也、スポ4=東京・明大中野)が同点ゴールを決めて、そこからペナルティー戦で勝った試合がありました。あの試合だと、僕が、1から3年生の時の早稲田だと、多分負けていたなと思います。接戦をものにできるチーム力というか、接戦を勝ちきれた、とても価値のある試合だったかなと思い、印象に残っています。すごく成長を感じる部分を予選を通じて思いました。
――最後の早慶戦でした。4年目での初勝利を振り返っていかがですか
渡邊 独特の緊張感のある早慶戦は、水球界で、国内でも一番盛り上がるのではないかと言われているぐらい盛り上がる大会です。自分たちが入部してから3年間全部負けていたので、自信があまりない選手もいましたし、本当に勝てるのかなと疑心暗鬼になっている選手もいました。ですが、その中で、2P途中からずっとリードしてできたのは、それまでのリーグ戦だったり、日本選手権の関東予選や最終予選、本戦と経験したからこそチーム力が実った良い試合だったかなと思います。ミーティングの回数も例年に比べて倍以上、何回もやりましたし、学生リーグが終わって一週間後という時間がない中で、しっかり、準備して、勝ちきれたことは、良かったのかなと思います。
加納 監督や僕が常々言っていたのは、早慶戦のような一発勝負の試合は、「どれだけ準備をしたのかとどれだけ本番でミスをしないかが重要だ」という話をずっとしていて、その言葉通り、ミーティングもめちゃくちゃしましたし、本番でも絶対にミスをしないということをチームに声掛けしていて、その全てのゲームプランや過去3年間の経験が試合に繋がったのかな思います。試合の3日前ぐらいから早慶戦が、ずっと夢に出てきて全然寝られなくて、勝つシーンがバッて出てきて、それで起きるみたいなことをずっと繰り返していました。それが、ストレスで、多分ものすごくプレッシャーを感じていました。ですが、自分たちの準備していたゲームプランや、本番仲間を信じることができたことが結果的に勝つことができたと思います。みんなの人生において、すごく意味のある試合になったかなと思って、僕の人生で一番嬉しかった瞬間のランキングにランクインしました。

早慶戦入場時の渡邊
――最上級生となりましたが、成長したこととはありますか
加納 人を思う気持ちが一番成長したことです。高校3年生で全国大会2回優勝していますが、それは、圧倒的なガミガミ言う監督がいて、それに僕がついて行くだけで、自分本位なことしか考えていなかったなと今は、思います。それが、4年間苦しい時間などがあった中で、最後は、キャプテンとして、チームが、どうしたら上手くいくのかを考えて、そこで初めて、自分のことだけを考えているだけでは、人としてもプレイヤーとしても全然未熟だと気づきました。そこが転機で、今は、自分が上手くいくことよりも人が、喜んでいるところに一番やりがいに感じます。そういった人を思う気持ちが4年間で成長したことだなと思います。
渡邊 なんだと思う?(笑)
加納 でも大人になったんじゃない?
渡邊 考える力とかは、成長したと思います。このチームは、監督が絶対的な指示を出さない中で、学生の中で話し合い、高校の水球とは全く違います。考えることが多くて、脳みそがパンクしそうで、いっぱいいっぱいになりそうなぐらい水球のことで考えることが多かったです。水球から一歩外に出た日常の中でも役に立つことが多いので、その考える力は、すごく身に付いたかなと思います。
――宮崎合宿で水球面での収穫や思い出はありますか
渡邊 水球面で言うと・・・。
加納 俺ら水球してたっけ?(笑)
渡邊 2部練は、きつかった。
加納 したか(笑)。
渡邊 高校生との練習でした。宮崎の子たちの意識がすごく高くて、色々なことを学ぼうとして、僕たちに聞いてくれたことで、自分自身も学ぶことも多かったです。また、教えることで、自分自身も学ぶことが多く、有意義な合宿になったと思います。遊びの面では、宮崎の南の方の都井岬で、馬がたくさんいるところに行って、浩基(渡辺浩基、スポ4=東京・明大中野)と典也と由茉(永田由茉、スポ4=東京・都立戸山)と自分で行きました。自然すぎて・・・。
加納 何の話をしてるの(笑)。
渡邊 自然の中で、心が洗われました(笑)。
加納 水球は、したかあまり覚えていないのですが(笑)。と言うのは嘘で、日中は、しっかり練習して、夜の時間に、みんなでアスリートなので、お酒は、一滴も飲んでいませんが。
渡邊 (笑)。
加納 飲んでないけど、みんなで夜の時間を一緒に過ごして、良い時間を過ごせて、遠征に行って良かったなと思います。しっかり練習もしながら、楽しむことはメリハリをつけて楽しんで、より仲が深められてよかったと思います。

早慶戦の加納
インカレに向けて
――インカレに向けてチームで力を入れて取り組んでいることを教えてください
加納 早慶戦の前から一貫してですが、今度は、インカレに向けて、どれだけ準備ができるかという部分は、特に力を入れています。相手の分析だったり、自分たちのプレーのプランを組んだり、逆算して、練習して、インカレに向けて標準を合わせて頑張っています。
渡邊 このチームになって特に力を入れていることは、下の意見をできるだけ取り入れることです。年齢学年に関係なくチームに意見を出して、全員がチームのレベルアップにどうしていくべきかを考えるようにしています。練習メニューなども昔は、最上級生やキャプテンが考えていたことを学年ごとで考えるようにしています。ミーティングも上級生が多く話しがちでしたが、凪人がなるべく下の学年からの意見も出るように配慮もしながらミーティングをしてきたので、下の意見を取り入れることは、大事にしています。
――個人ではいいかがですか
加納 ゴールキーパーとしては、正直、この早慶戦が終わって、インカレまでの2ヶ月の間で自分の能力が飛躍的に向上することはありませんが、その中で、どれだけ試合に出た時にチームを勝たせられる動きをできるかどうかと言う部分は、常に自分の当たり前を疑って、自分をアップデートしていくこと、頭を使うことは意識しています。主将としては、終わった時に良いチームだったなと思うには、終わり方が大事だと思うので、今一度、部員たちと本気で向き合って、より良いチームを作れたらいいなと思って毎日生きるようにしています。
渡邊 なるほど(笑)。技術的な部分については、一つ一つのプレーに対して、深く考えるようにしています。キーパーとして、なんで今のシュートを決められてしまったのか細かいところまで追求したり、一つの課題に対して、何が最適解なのか、改善のためにどういう練習が必要なのかを考えるようにしています。副主将としては、チームのバランスという部分で、全員が全員満足できるチームが理想なので、そこに向かって色々な選手の意見を聞くようにしています。

質問に答える渡邊
――インカレでの自分の注目ポイント、見て欲しい部分は
渡邊 僕は、この間に日本選手権2位のチームのブルボンウォーターポロクラブ柏崎のキーパーの方に飛び出しというフローターの落ちたボールをゴールから飛び出して取るというプレーの極意を教えてもらって、そこからたくさん練習したので、それをうまく出すので、見て欲しいなと思います。
加納 気合いかなと思っています。水球が初めて、10年間ぐらいやっていて、その10年間の集大成のインカレなので、僕の10年間分の詰まったセービングと声出し、チームを鼓舞する姿勢が一体となったチームを勝たせられるプレーを見て欲しいです!
渡邊 俺薄すぎない?
加納 お前飛び出しだろ(笑)。
渡邊 どこまでも飛び出していくわ(笑)。
――では、最後にインカレへの目標をお願いします
渡邊 チームとしてはまず、メダル獲得です。そこに向けて3位決定戦だから頑張るとかではなく、初戦から、一戦必勝の気持ちで徹底した準備をして臨みます。個人としては、最後の大会になるので、悔いが残らぬよう、ただ気合いが入りすぎると空回ってしまうタイプなので、普段通りに望んで、いつも通りのパフォーマンスを出せればいいなと思います。
加納 目指しているのはメダルです。ですが、目標に溺れることなく、目の前の1試合に最大限の準備をして勝てるようにチーム全体で頑張りたいです。今まで、多くの人に応援してもらって、支えてもらって水球を続けてこれたので、プレーを通して、結果を通して、感謝や「やってきてよかったね」と言われるような試合にします!
ーーありがとうございました!
(取材・写真・編集 指出華歩)

加納(左)、渡邊

インカレへの意気込みを書いていただきました!
♦︎加納凪人(かのう・なぎと)写真左
2003年6月26日生まれ。三重県立四日市中央工業高等学校出身、173センチ。主将として、悩みながらも1年間チームをまとめ上げた加納選手。集大成となる最後のインカレで、応援してくれる方々のためにも全力で戦い抜きます!
♦︎渡邊空(わたなべ・そら)写真右
2002年6月8日生まれ。新潟産業大学附属高等学校出身、175センチ。副主将として、陰ながらチームを支えてきた渡邊選手。強い早稲田を創りたいという思いから『創』を選びました!