【連載】米式蹴球部 関東大学秋季リーグ戦直前対談『GAME ON!』第1回MGR東晃司×AT宮崎雅士

特集中面

<<特集表紙に戻る

 第1回は、MGR東晃司(社4=東京・早大学院)とAT宮崎雅士(スポ4=東京・戸山)が登場。チームを陰で支え続けてきた、欠かすことのできない存在の2人に、4年間の歩みや大切にしている思いについてお話を伺った。

※この対談は、8月24日に行われたものです。

「『この人の言うことなら信じよう』と思ってもらえる関係を」(宮崎)

対談中の宮崎

ーーそれぞれの紹介をお願いします

 宮崎雅士は、今トレーナーの主任を1人でやっていて、4年生が彼1人なので本当に大変だと思いますが、みなぎるパワーとパッションでチーム全体を引っ張っている存在です。頼もしく思っています。

宮崎 東くんは、1年生の頃からずっと冷静沈着で、マネジャーのモデルのような方です。チームのことだけではなく、関東アメリカンフットボール連盟にも携わったり、自分で団体を立ち上げたりと、チーム以外の場でも自分のバイタリティーを発揮されていました。

ーーマネジャーとしての仕事を教えてください

 大きく分けると会計と渉外を担当しています。今の役職はマネジャーで、チームの中では主務という立場ですが、対外的には他校や連盟、大学の関係者、他部の方々など、さまざまな人とやり取りする渉外の立場として活動しています。加えて、部の会計を管理する仕事もしています。

ーー部以外で、活動されていることについて教えてください

 僕は、関東学生アメリカンフットボール連盟でも活動しています。早稲田大学の代表として他校や連盟の大人の方々とやり取りしながら、リーグ戦など大学アメフトの運営にも携わっています。その中で自分ができること、早稲田のため、大学アメフト全体のためにできることを常に考えながら活動してきました。

ーートレーナーは普段どのようなことをされていますか

宮崎 自分は学生アスレチックトレーナーとして、選手のテーピングでけがを予防したり、けがをして競技ができない選手にはリハビリやケアを行って、最速かつ再発しないよう復帰をサポートする立場です。選手だけでなく、ヘルメットなどのエクイップメントや雷対応など、安全管理全般も行っていて、選手が安全に練習できる環境を整えています。

ーー米式蹴球部に入った理由を教えてください

 僕は高校が付属の早大学院で、アメフトを選手としてプレーしていました。高校時代から大学の練習を間近で見ていたこともあり、大学に上がるタイミングで、選手として以上に、マネジャーとしてチーム運営に深く携わることで、自分が憧れている「日本一」という目標に近づけるのではないかと思いました。それで、全力で挑戦しようとマネジャーとして入部しました。

ーー選手の経験が生かせていると思うときはありますか

 選手目線でアメフトやチームを見ることができるのは、自分のスタッフとしての強みの一つだと思っています。ビデオを撮影したり、選手にお願いをしたりする時にも、選手の気持ちを少しでも理解して声をかけられるという部分は、選手経験が生かされているなと感じます。

ーーやりがいに感じるのはどのような時ですか

 マネジャーとして選手ではないので、目立つプレーができたり、勝利に直接影響を与えることはありません。でも、試合や遠征、さまざまなイベントが何事もなく遂行されることが、マネジャーやスタッフとして求められていることです。それが無事終わった時に大きなやりがいを感じます。

ーートレーナーとしての仕事を選んだ理由を教えてください

宮崎 自分も高校の時に選手をしていました。高校の部活は人数が少なくて、けがをするとみんなでプレーできないことが多く、最後の大会もけがで出られなかった悔しさや寂しさが大きく残りました。大学に入った時、選手として続ける選択肢もありましたが、それ以上に「全員で勝ちたい」「全員で試合に出たい」という思いが強くありました。ATになって、より多くの選手をけがから復帰させたいという思いでトレーナーの道を選びました。

ーートレーナーとしての知識の習得はどのようにされましたか

宮崎 大学1年生の頃から、厳しい先輩方の指導を受けながら知識を吸収しました。2年生、3年生になると、その知識を生かして課外活動にも積極的に参加し、インプットとアウトプットの機会を増やしてきました。常に「チームで一番知識量のあるトレーナーでいよう」という意識を持って取り組んでいました。

ーー4年間を振り返って、苦労したことはありますか

 あまり自分の中では波がないですが、4年生になってからが一番大変でした。下級生の頃から色々な仕事を任せてもらって全力で取り組んで、楽しくできていたと思っています。4年生になって、主務としても責任を取る立場になり、リーダーシップを発揮しなければならない状況が多くありました。自分の仕事もある中でそれらを両立するのは、精神的にも本当に大変な時期でした。

宮崎 自分が一番大変だったのは、大学3年生の関大戦の時期です。自分が担当していたけが人が試合に必要で、痛みを抱えながらも調整し、復帰させる場面がありました。トレーナーとしては再発を防ぎたい気持ちがある一方で、試合で活躍させたい気持ちも強く、コーチやメディカルのドクターと連携しながらほぼ全員を試合に復帰させました。すごく大変でしたが、その試合に勝てた時は、自分が直接試合に出たわけではないですが、大きなやりがいを感じました。

ーー選手の試合に出たい気持ちとけがの再発を防止する立場で意識していたことはありますか

宮崎 この4年間で、試合に出られないことへのフラストレーションを選手から何度もぶつけられました。でも、自分も高校時代に選手をしていた経験や、普段からけがをしていない選手にも積極的に声をかけることで「この人の言うことなら信じよう」と思ってもらえる関係を作るよう意識していました。その信頼関係があったからこそ、うまく解決できた場面が多かったと思います。

「日本一にふさわしい運営ができるように」(東)

対談中の東

ーーこれまでの活動で、印象に残っていることはありますか

 昨年の全日本選手権です。初戦で関西大学と戦い、下馬評では、関西が有利だと言われていましたが、東京で勝てたことが本当にうれしかったです。その一方で、次の立命大戦では大差で負けて、日本一との距離を痛感しました。「関西とも戦える」という自信と「まだ差がある」という現実を全員が感じた大会だったと思います。今年日本一を目指す中で、あの経験は強く印象に残っています。

宮崎 僕も同じく昨年の立命大戦です。高校の時も最後は負けて終わったんですが、それ以上に悔しさが大きかったです。泣いている先輩や悔しがっている先輩を見て、「自分たちの代では絶対に負けたくない」という気持ちが芽生えました。あの悔しさを糧に、どうやって強敵に勝つか、スタッフとして何ができるかを今も考え続けています。

ーー選手を支えるうえで大切にしていることは

 「自分への信頼を作ること」と「相手を信頼すること」のどちらも大切だと思っています。自分が信頼してもらうために、相手のことを考えた発言をしたり、スタッフとしてできることをしたりしています。お互いの信頼を意識して行動することが、円滑なチーム運営や選手との良い関係につながると考えています。

宮崎 僕は「勝ち負けを意識する」ということも大事にしています。スタッフは試合に出ないので勝敗を直接左右する立場ではありませんが、それでも自分たちのサポートで勝つ、同じ役割の他チームにも負けないという意識を持っています。それを後輩たちにも受け継いでいきたいです。

ーースタッフと選手はどのような関係ですか

 学年ごとに色がありますが、今年は特に選手もスタッフに対して積極的に意見をしてくれます。逆にスタッフも4年生を中心に、下級生を含めてチームに意見を伝えたり働きかけたりしています。良い関係が築けていると思います。

ーー今年はどのようなチームだと感じていますか

宮崎 自分たちの代は個性がとても強いです。昨年も個性は強かったですが、ある程度同じ方向を向いていました。でも今年は、厳しい人もいれば楽しくやりたい人もいて、本当に色々な方向を向いた人が集まっています。その分、衝突することもありますが、色々な人が色々なチームビルディングをしているので、飽きないチームだなと思います。

 宮崎が言ったように、色々な人がいるチームです。それぞれの個性が昨年以上に出ていて、それが強みでもあり時には弱みにもなり得ます。だからこそ幹部を中心に、それぞれの強みをチーム全体に広げ、一丸となって戦えれば、関東でも結果を残せる強いチームになると思っています。

ーー秋シーズンに注目している選手はいますか

 QBの船橋(怜、政経4=東京・早大学院)です。学院時代から同期で一緒にプレーしてきました。今年は1本目のエースQBとして試合に出る中で、課題と向き合いながら練習に取り組んでいるので、そのリーダーシップと活躍に期待しています。

宮崎 オフェンスの吉規くん(颯真、政経4=東京・早大学院)です。練習外では静かですが、練習中はパッションを持って取り組んでいて、けがが多い中でも、負けることなく試合に出続けています。トレーナー目線でも本当に強い選手だと思うので、秋はより一層活躍してほしいです。

ーーチームの注目ポイントを教えてください

 表現が難しいですが、真っすぐなところです。アメフトはコンタクトもあるし、頭脳的な要素もあるし、色々なポジションがあって、スタッフも多い競技です。そんな中で、みんなが基本に立ち返って準備をして秋シーズンを迎えようとしています。日本一という目標に向かって、全員が同じ方向を向いて練習してきたものに自信を持って戦っていきたいと思います。

宮崎 他校は感情を前面に出すチームが多いですが、早稲田はどちらかというと静かなタイプが多いです。試合中も冷静な選手が多いんですが、ビッグプレーが出た時など、感情が一瞬だけ一気に高ぶる瞬間があります。その時のチーム全体の熱量は本当にすごいので、ぜひ注目してほしいです。

ーー最後に、秋シーズンに向けて意気込みをお願いします

 今年こそ日本一になるために、この1年間、チーム一丸となって、暑い中合宿も乗り越えて練習してきました。スタッフも含めて全員で「日本一」という目標を見据え、お互いを信じて戦っていきたいです。マネジャーとしては、何事もないチーム運営が理想ですし、日本一にふさわしい運営ができるように取り組んでいきたいです。

宮崎 トレーナーユニットとして、チームの基盤として選手を支え、底上げしていきたいです。秋は、特に昨年負けた立命大に絶対勝って、笑顔でシーズンを終えたいと思っています。

ーーありがとうございました!

(取材、編集 大村谷芳)

◆東晃司(ひがし・こうじ)※写真右

東京・早大学院高出身。社会科学部4年。MGR。主務、マネジャー、そして学連でも活躍する東マネジャーは、休みの日もカフェで作業することが多いといいます。通学中の読書が最近の楽しみだと教えてくれました!

◆宮崎雅士(みやざき・まさと)

東京・戸山高出身。スポーツ科学部4年。AT。OL丸山皓士朗(法4=東京・早実)選手と一緒に住んでいるという宮崎トレーナー。今では、丸山選手のいびきが子守歌になり、睡眠に欠かせない存在だということです!