【連載】 早慶クラシコ前特集 第11回 MF宗形みなみ主将

特集中面

対談第11回は、ア式蹴球部女子(ア女)の主将を務めるMF宗形みなみ(スポ4=マイナビ仙台レディースユース)。主将としてチームをけん引する日々に迫る。

関東大学女子リーグ(関カレ)前期第11節に出場した宗形

――内定発表時は特別指定を受けませんでした(8月8日特別指定認定)。その理由を教えてください

 去年のインカレ(全日本大学女子選手権)の時から大宮さん以外にもお話をもらっていました。最終的に進路を含めて大宮さんに決断したのと同時に、特別指定の話も来てはいました。それでもア女でキャプテンをやることが同時に決まった中で、前期でしっかりチーム作りをしたいということを監督と話していました。前期でしっかりチームを上位に持っていくっていうとこを目標に、主軸をア女に置くことを監督と話した上で、前期の特別指定は受けない方向で進みました。

――プロの舞台での活躍を通じて成長できたと思う所はありますか

 スピード感です。判断のスピードや、単純にフィジカルのスピードはやっぱりWEリーグの方が一段レベルは高いなと思っています。その中でやっていた分、大学に戻ってきた時に自分に生まれる余裕感を感じてプレーしてました。

――インカレでは3試合3得点でチームを引っ張りましたが、ここまでの活躍は想定通りでしたか

 大宮ではアンカー的な1個下のポジションをやっていました。戻ってきた時に1個前のトップ下、インサイドハーフで使っていただいたということもあって、求められることがチームによって違うというギャップはすごく難しかったです。どこのポジションで出ても自分が動き回って顔を出して起点になるというところは変わらないと思うので、大宮で苦しんでいた分、自分が攻撃に関わった時に怖い選手でなければいけないなと感じました。それがインカレでゴールを奪えるところだったり、起点になるスルーパスを出す推進力の部分だと思います。この部分を自分が意識したからこそ、点に繋がったと思います。

――主将に就任した経緯を教えてください

 同期の中でキャプテン決めは行われますが、自分たちは昨年の9、10月ぐらいからもう新チームの話をしていました。人数が少ない中でやることも多かったですし、どういうチームを作りたいというのも早め早めに動くことができていた分、キャプテンはすぐ決めていませんでした。自分の中でやるという覚悟ができたのも全然遅かったです。みんなからキャプテンをやってほしいとは言われてはいましたが、自分の個人としての目標の部分でア女の活動が減ってしまったり、WEリーグの方に行った時にチームに参加出来ないところがありました。そもそも早稲田の求めるキャプテン像に自分は合っていないと率直に感じていて、早稲田大学の主将という看板を背負うつもりはありませんでした。ただ、大宮と早稲田を行き来をしてる時に、チームの中での自分の立ち位置や、勝てない苦しい時間が続いてる時の大宮の雰囲気だったり、そういうことを変えられるのはやっぱりキャプテンだったり主将というところが大きいかなと思いました。行き来してるタイミングでみんなに、ちょっと難しくなるかもしれないけど引き受けるという風に伝えて、監督に伝えたっていう感じです。

――今年のスローガンに「躍道」を掲げていますが、そう決めた経緯を教えてください

 自分たちがどういうサッカーをしたい、どういう風なチームを作りたいとなった時に、今まで3年経験してきた中で勝っていても楽しくない試合があったりだとか、部活という中で下の学年が必ずしもやらなければいけないこと自分たちはすごく苦しみました。1番シンプルに楽しんで勝つ。それで結果がついてくれば何も文句ないよねというシンプルなところに至り、自由なサッカーが楽しさに繋がると思いました。ただ基盤としてア女の先輩たちが積み上げてきた歴史も大事にしたいという話があって、どちらも組み合わせようと思いました。そうした時に一人一人が躍動してほしいという、人数が少なくても一人一人が躍動することで、自分たちの進む道が見えてくるという意味で、当て字を入れながら「躍道」というスローガンにしました。

――主将としてどのようにチームをまとめていますか

 選抜やWEリーグの練習参加でチームにいなかった時期はありましたが、今まで無かった平日に週2回で2部練習を入れてフィジカルの部分を鍛えました。今年は背が大きい選手や昨年の育さん(築地育、令7スポ卒=現ノジマステラ神奈川相模原)みたいにフィジカルで勝てる選手が他大に比べて少ないですし、インカレはそこで苦労をしました。そこをシーズン前に全員がある程度の基準に持ってくるという意味で2部練習を組んだり、 目標に1位を掲げてる以上、前期の最初から勝ちにいかないといけないと話していました。チームをまとめるために外部からコーチの方を招いてお話していただく機会を作ったり、ご飯に全員で行って話したりという機会を設けて、今までで一番動いてたなと思います。

キャプテンマークを巻く宗形

ーーシーズン始まってからここまでを振り返ってみていかがですか

 自分はケガで上位のチームと戦うときに出られてなかった部分はあるんですが、色んなチームが同じくらいの強さだと思っているので、8勝しているチームの順位ではないなという印象です。去年は前期ほとんど負けなしではあったのですが、内容ではなく結果にこだわっていたシーズンだったので、それを踏まえて今年は毎試合、毎試合の内容の積み重ねはできているかなと思います。あと一歩のところで苦しんでこの順位になってしまっていると思います。

ーー関カレでは上位が詰まっていますが、どう感じていますか

 自分たちであれば相手を見てしっかり繋ぐサッカー、というように各大学の特徴があると思っています。この前戦った山梨学院大であったり、上位の東京国際大や帝京平成大、神奈川大はフィジカルと勢いとパワーで前線にボールを入れて何が何でも点を取るという圧があり、私たちはそれに苦手意識を持っていて、そこに勝てるサッカーを自分たちができていない。それぞれの大学の特徴が良く表れていることから、今年は上位陣が詰まっているのかなと思います。

ーー4年間を通じて関カレ自体のレベルが上がってると思いますか

 レベルが上がったというよりも、良い選手が様々な大学に進学するようになったことが大きいと思います。

ーー今季のア女は得点数が多い一方、失点数も多いです

 崩されて得点されるという場面は少ない中で、一瞬の隙、一本のカウンターに強みを持っている大学にやられてしまっている印象です。隙は自分たちが直していけるものだと思いますし、守備は前線のプレスがあった上での後ろでの粘りの守備だと思っているので、11人で90分集中して守るということは後期に向けて意識していきたいです。

ーー対戦してきて印象に残っている試合はありますか

 後期の十文字学園女大戦ですかね。自分たちが勝たなければならない試合でしたし、自分たちが3バックにチャレンジして上手くいった試合だったので、内容的には何点入ってもおかしくない展開という良い意味で印象に残っています。また、神奈川大は前期後期ともに同じような負け方をしているというところで苦手なタイプではありますが、そこの壁を越えないと自分たちの目標には届かないと感じています。

ーー個人のプレーの手ごたえはどうですか

 プレシーズンが始まってすぐはインサイドハーフでプレーしてたのですが、プレシーズン以降はアンカーを務めるようになりました。自分の中ではもうひとつ前のポジションで機動力を生かして攻撃の起点になりたいなと考えている中でのアンカーだったので、前に行きたい気持ちを我慢しながらバランスを考えなければなりませんし、守備に追われる時間帯も多いと感じています。しかしそれだけ自分の課題に向き合う時間が増えて、チームのためにアンカーをやっているという認識をつくってます。攻撃に絡めないという点でもやもやするところはあるんですが、展開力など自分の強みを出せているかなとは思っています。

ーーリーダーとしての責任感を感じることはあるか

 1年生でインサイドハーフをやっていた時に組んでいたひなさん(髙橋雛、令5スポ卒=現AC長野パルセイロレディース)やまほさん(廣澤真穂、令5スポ卒=現マイナビ仙台レディース)など今ではWEリーグや海外で活躍する先輩たちとやらせてもらっていた中で、伸び伸びとプレーさせてくれたと感じています。守備に課題はありますが、自由にスペースを生かして動き回ること、それぞれの良さを出していいからねと伝えています。厳しい声をかけるというよりもどんどんボールを受けるように声をかけています。

ーーチームメイトに対する声かけの意識は最上級生になった変化ですか

 最初は自分が厳しい言葉をかけたら周りが委縮してしまうと思ったので、あまりかけたくないと思っていたのですが、練習中だったり上手くいっていないときは監督から厳しく言えと言われたので、チームの雰囲気を見てかける言葉を考えるようになったと思います。

ーーケガによって試合に出られない時の心境はどうでしたか

 一番は悔しいという思いでした。ア女としての一番の山場を前に自分が離脱してしまった不甲斐なさ、悔しさを感じては居たんですが、外から見てわかることもありますし、自分がアンカーだったらこうしてる、インサイドハーフだったらこうしてる、というのを出てる選手に伝えたり、試合中も話をしていました。戦術的な部分で積極的に声をかけるようにしてました。

ーーインサイドハーフやりたいという思いとの折り合いはどうしているのでしょうか

 試合の前にある程度自分がどのポジションでプレーするかはわかるんですが、自分がアンカーをやる中でインサイドハーフやりたいという思いでプレーしてしまっていたらチームとしても、自分としても成長できないと感じています。プロの世界ではどこで使ってもらえるかわからないですし、自分のマインドの持ち方は大事だと思っています。マインドによってプレーの一つ一つも変わってくると思うので、アンカーをポジティブに捉えて、自分だからこそできるプレーを意識しています。

ーー終盤の失点で勝ち点を落とす試合が続きました

 今年のチームの強さは点を取られても取り返せるということだと思っています。負けているときは自分たちの弱いところに目を向けてしまって下を向いてしまいがちなのですが、自分はケガをしていましたが練習中に緩いところを見たら厳しく声をかけるようにしていましたし、メリハリをはっきりして自分たちの強さを忘れちゃいけないなと思っています。相手に合わせるのではなく、自分たちの強さを体現できるような練習ということを意識しています。それぞれが躍動しないと勝てないということは声をかけています。

ーーチームつくりで特別に意識していたことはありますか

 「躍道」というスローガンを掲げている中で、「凡事徹底」「長所進展」という二つのテーマをおいています。学生主体でやっているからこそ、役職の責任は重いと思いますし、ミーティングも月一回行って、自分たちがチームとして一か月の目標をどれぐらい取り組むことができたのかというところを話し合っています。

ーー自分の目指す主将としての理想はありますか

 人前で話すこと、訴えかけることはあまり得意ではないので、そのような人はそのようなキャプテン像で良いと思っています。チームで求められることはありますが、自分はピッチ上での存在感が主将として重要なことだと思っていますし、チームの雰囲気が良い時、悪い時に関わらず周りに目線を送り続けなければならないと思っています。試合中の選手の表情まで見渡した上で適切に声をかけていくことがキャプテン像だと思っています。オンオフをはっきりして、オフではみんなとはしゃいで、ピッチの中や仕事に関しては真面目に、みんなが責任感を持って取り組める環境は作っていきたいなと思っています。

ーーキャンプも踏まえて、チームの雰囲気はいかがですか

 夏合宿にア女の方に参加させていただいて、走るメニューがすごくてみんな疲労困憊ではあったんですが、夏合宿は4年生がスケジュールを組んでますし、部屋割りだったりミーティングだったり、みんなで色んなことに取り組めることがこのタイミングであって良かったと思っています。一週間のオフもリフレッシュして早慶戦に望めると思っています。早慶戦は他大との試合にはない緊張感があるので、そこに向けての夏合宿だと思ってみんな取り組んでいたと思います。

ーーもっと改善していきたいと思うところはありますか

 自分自身のことに関してもそうですが、これまで思い続けてきたことは基礎のところ。一本のパスやシュートの質、一枚かわされてしまうところであったり、基本の部分が今年は低いなと考えています。雑になってしまって雰囲気を悪くしてしまうことは後期の落とせない試合が続く中で改善していかなければならない点だと考えています。

今季から背番号10を背負う宗形

ーー早慶戦にはどのような思いがありますか

 自分にとって最後の早慶戦ということで、緊張もありますが、早くやりたいとワクワクしているところが多いです。

ーー等々力競技場での試合という点には何か思いはありますか

 WEリーグでも経験はしていますが、スタジアムは観客も多く入ることで雰囲気が全然違いますし、多くの人が来てくれることが見込まれる中で、当日になると緊張するし、慣れないピッチでのプレーからハプニングは起きるかもしれない。でもそれも含めて楽しみたいです。

ーー慶大ソッカー部の小熊主将も大宮に内定しました

 大宮のキャンプに何回か来ていた中で早慶戦についても話しました。向こうはチャレンジャーとしての気持ちで来ると言っていました。出なくていいよって言われてるけど、出たい気持ちが強いです。自分がどこのポジションを務めるかにも寄りますが、多分マッチアップすることはないと思っています。向こうは最後の砦として最終ラインに居ると思うので、どんな形でも得点に絡んで、慶應のゴールを破りたいなと思っています。

ーーチームメイトで注目して欲しい選手はいますか

 はる(杉山遥菜、スポ3=東京・十文字)です。ディフェンスラインをリーダーとして支えてくれていますし、最終学年ではないですが安心感もあります。はるからのビルドアップを自分たちの武器としているので、やりやすさや安心感があります。目立ったプレーはないですがチームのプレーは、はるから始まっているという点で注目して欲しいです。

ーー早慶戦への意気込みをお願いします

 早稲田に入らないと出場することができない早慶戦ですし、4年生としての最後の舞台としてやらせていただけるということに感謝しつつ、早くやりたいという気持ちがあります。無敗というプレッシャーもありますが、いろんなプレッシャー、緊張を糧にしてさらに無敗という記録を紡いでいきたいと考えています。

 

(取材 荒川聡吾)

♦宗形みなみ(むなかた)
2003(平15)年6月26日生まれ。165センチ。マイナビ仙台レディースユース出身。スポーツ科学部4年。両足でボールを自由自在に蹴ることができる宗形主将。セットプレーでは蹴る足を使い分けます。