2025年7月13日、ひがしんアリーナで東日本日本拳法総合個人選手権大会が行われた。今回は今までの大会とは異なり、学生に限らず高校生や社会人、それから自衛官に至るまで東日本から多種多様な選手たちが己の技量を示すためにこの地に集った。今大会は男子が級の部と段の部の二つに分けられ、女子は段・級混合で行われる。早稲田大学からは男子段の部に五名、男子級の部に六名、女子の部に四名。総勢十五名の出場となった。早大日本拳法部は直近の大会で結果が振るわない中で、まずはここから再起を図ることになる。
初戦を戦う藤原主将
(写真 竹田朋矢)
まずは主将・藤原(藤原圭希 法4 東京・城北)も出場した男子段の部。ここでは主将のほかに寺内優貴初段・重松猛二段(人間科学4 神奈川・横浜国際)・井澤嵩斗初段(法3 東京・芝)・天神輝弘初段(文3 大阪・岸和田)が参戦。社会人や自衛官も参加するハイレベルなトーナメントで一つでも多く勝ち星を重ねていきたい。 試合の結果は全員初戦を突破することができず、物寂しい結果となった。学生を越えたハイレベルな大会でその壁を思い知らされた形だ。藤原選手と天神選手は中盤何とか一本を返すことができたものの、経験豊富な相手選手から試合の流れを取り戻すことができず、終始相手のぺースで試合をされてしまった。 結果として男子の部で優勝したのは昨年の全日本大会の覇者である明治大学の土屋賢生選手。全日本選抜選手権に続いて王者の貫禄を見せつけられた。早大拳法部が目指すべき頂は依然として遠い。最後の府立大会はまだまだ先ではあるが、ただ今は結果が欲しかった。
次に男子級の部だ。級の部には前述のとおり有段者ではない選手六名が参加し、成長をアピールしていきたい。 結果は近藤零音選手(創造理工3 千葉・小金)が三位入賞を果たして存在感を発揮、そのほかにも大場選手も格上相手に勝ち星を挙げるなど、早大拳法部としては上々の収穫となった。一番の山場は吉田選手(吉田昂矢 文1 東京・佼成学園)を破り勝ち上がってきた立教大・小山選手との準々決勝。近藤選手が幸先よく一本を先取したもののそこからが長い勝負の始まりだった。近藤選手は果敢に攻めるも、相手のスキのない守りに阻まれ、決め手に欠ける戦いが続く。そこで一瞬の好機を見逃さなかった小山選手が一本を取り返し試合はイーブンに。膠着状態のまま時間が経過し、時間切れと思われたが、制限時間ギリギリに近藤選手の相手のタイミングをずらした突きがさく裂。体力を消耗する中で最後まで集中力を切らさなかった近藤選手の粘り勝ちとなった。このあと準決勝では勝ち抜くことはできなかったが結果として四位入賞を果たすことができた。この夏を越えてさらなる成長を遂げた近藤選手が、団体戦メンバーに食い込んでいけるか。チーム内の競争もより熾烈なものになっていく。
最後に女子の部。四人が出場した。井上(井上晴未 政経4 神奈川・山手学院)選手は前回の全日本選抜で負傷し状態が心配だったが、この大会は問題なく出場。万全の布陣で優勝を狙う。 ここでなんと、準々決勝時点で早大から出場した四人中四人が勝ち残っており、この準々決勝で全勝すれば一位から四位の入賞を早稲田が独占することとなる。そんな期待もかかった準々決勝だったが惜しくも星野選手(星野奈穂 スポ3 東京・小山台)はここで敗退。だが井上選手・鎌田選手(スポ4 東京・日本女子)・中村選手(中村陽和 政経4 埼玉・早稲田本庄)はそのまま準決勝へとコマを進めた。
準決勝は井上選手と鎌田選手の早稲田対決。お互いの手の内を知る者同士の対決は井上選手の勝利で終わった。もう一試合は中村選手と高校生ながらここまで勝ちあげってきた御殿場道場の田村選手の対決。田村選手の高校生ながら貫禄のある戦いぶりに中村選手は攻め切ることができずに田村選手に押し切られてしまった。 そして会場の全観客が注目する決勝戦。仲間の思いを背負って井上が試合場に上がる。井上は試合開始直後から得意の積極的な攻めで主導権を握り一本目を先取する。 そのまま勝ち切りたかったが、相手も落ち着いていた。井上選手の攻撃をけん制しながら反撃の機会をうかがう。そして試合中盤に流れはじりじりと田村選手へ。攻めに転じた田村選手は一本を取り返されてしまった。そのまま試合は決せず、試合は終盤に差し掛かりお互いの動きも鈍っていき、試合は膠着状態になり延長までもつれ込む。その刹那だった。井上選手のタイミングをずらした突きが相手選手の胴に吸い込まれる乾いた音とともに、会場には完成とため息が渦巻き、どこかから「前もあれでやられたんだよなぁ」とつぶやく声がした。井上選手の代名詞ともいえる高速の突きが、早稲田の復活を予感させた。
決勝戦の井上選手
課題と充実の大会となった東日本日本拳法総合個人選手権大会。長い夏を越えて、次の大阪での全国選手権ではどのような姿を見せてくれるのか。期待に胸が高鳴る。
掲載が遅れてしまい申し訳ございません。
(記事・写真 竹田朋矢) )