今年も早大の障害ブロックに、期待のルーキーが加わった。U20アジア選手権・女子100メートル障害で、それぞれ優勝と準優勝を果たした谷中天架(スポ1=大分雄城台)、松田晏奈(スポ1=長崎日大)。ともに九州出身で輝かしい実績を誇る2人に、始まったばかりの大学陸上生活や、4年間で思い描く理想像について伺った。
※この取材は5月23日に行われたものです。
中学生時代から顔見知りの2人

対談中の松田(写真右)と谷中
ーー他己紹介をお願いします
谷中 松田さんは元気な子です。自分は人見知りで他人にあまり話しかけることができないのですが、積極的に話しかけてくれます。いつも元気で活気があり、一緒にいて笑顔になれる、すごく元気をくれる女の子です。
松田 彼女は人見知りですが、こう見えてギャルで、とてもおもしろいです。話し方もですが、好きなものなどがギャルです。中身を知れば知るほどおもしろいと思います。
ーーアジア選手権などで顔を合わせていたと思いますが、お互いの存在を初めて知ったのはいつでしたか
谷中、松田 中1の時の九州大会です。
ーーその時の第一印象と今の印象を教えてください
松田 最初は表彰式の直前に話しかけたのですが、本当に怖かったです(笑)。その時に決勝に残っていた1年生が私たちだけでした。天架ちゃんが1位で、私が2位で。話しかけた時にすごく冷たくて、ちょっと怖いなと思いました。今はその時とは真逆の印象です。
谷中 最初は松田さんの方から話しかけてもらいました。自分は積極的に話しかけるタイプではないので、その時はすごいぐいぐい来てくれて嬉しかったです。ハードルだけではなくて100メートルもすごく速い選手だと思ったのがその時の印象で、今も変わらずずっと元気で、さらにおもしろい印象です。
ーーオフの日の過ごし方を教えてください
松田 オフの日はオフの日で練習は全くしないで、休むときは休むという感じです。ずっと寮にいるわけではないです。
谷中 自分は何もすることがなかったらずっと寮にいます。寮の中で1人で映画を見ます。ちょっと疲れた時は温泉に行ったりします。(松田と)2人でも行きました。あとは所沢まで行って買い物をします。
ーー今まで行った遠征先で最もお気に入りの場所はどこですか
松田 ドバイです。アジア選手権がドバイで開催されていました。その時プールがホテルの上の方にあって、アイシングがてらに毎日入りました。初めての海外というのもあって、すごく印象に残っています。
谷中 しかも、トラブルでキャリーが届かなかったので、服も日用品もなくて。スーパーに行って一から買い直しました。
松田 ドバイではラクダの油が有名らしく、その石鹸が基本臭みがあるのですが、髪の毛がパサパサになりながら、使いました(笑)。
谷中 いい思い出です(笑)。
自分を高められる環境を求めて

対談中の松田
ーー競技を始めたきっかけは何ですか
谷中 自分は小学校4年の時に、外部のコーチに誘われて遊び感覚で始めたのが最初のきっかけです。
松田 私は小学校1年生の時に、父と同級生の方が陸上チームのコーチをしていた、というのと、同じ小学校の2つぐらい先輩で、一緒に新体操をやっていてすごく仲の良かった人に誘われたからです。
ーー専門種目はいつ、どのようなきっかけで決めましたか
谷中 自分は小学校の時は100メートルをしていましたが、小学校5年生の時に、当時のコーチの方から、小学校の間はいろいろな競技をした方がいいと言われていました。体づくりの一環でハードルもやっていたら、小6の時に大会で結構伸び、全国大会に出たのがきっかけで、そこからハードルにしていきました。
松田 私も一緒で、100メートルを小学校の高学年ぐらいまでやっていて、中学校に入って、幅跳びの方が強くなってきて。中3で幅跳びとハードルになって、高校からハードルが強くなりました。足のケガでも変わっていきました。100メートルと幅跳びは、スピードがあればできる点が似てるとよく言われるのですが、それで足のケガというのもあって、似てるからハードルやってみようか、と言われました。
ーー高校時代印象に残っている大会は何ですか
谷中 鹿児島国体(特別国民体育大会)です。その時は多分2人とも自己ベストでした。予選から同じ組の隣で、そんなにタイムが出るとは思っていなかったです。鹿児島国体の1週間前に九州新人という大会があって、そこでもまた一緒に走ってベスト更新したからです。国体ではさらに一気に記録が伸びて、それが一番印象に残ってる試合です。
松田 私もそうです。
谷中 九州大会も毎回(松田が)いるので、一緒に走るのは慣れています。
松田 お互いにスピード感が一緒なので、リズムをお互いにもらいつつ、刻んで、早く走れる感じはあります。
ーー早大を選んだ理由を教えてください
谷中 自分は1個上の先輩に林美希さん(スポ2=愛知・中京大中京)という、高校時代も大学1年でも強い方がいるというのが1つ大きなポイントです。美希さんと一緒にハードルの技術やスピードを一緒に向上させていきたいというのも1つの目標ではありました。また、早稲田は大学の中でも強い上、やはり関東は九州と比べるととてもレベルが高いので、そういったハイレベルなところで競技したいということで決めました。
松田 競技レベルだけではなくて、学業のレベルもすごく高いので、競技の技術的なことだけではなくて、他の競技であったり、体の使い方であったり、そういったことを早稲田でしっかり学べるのかな、と考え、入学を決めました。
ーー競技面、学業面それぞれで大学生活はいかがですか
谷中 競技面は今のところまだまだです。高校と大学は全然違うので、自分はまだうまく噛み合わせられていない部分があります。学業面は高校と比べて自由な時間が沢山あり、授業も朝がゆっくりなのはありがたいのですが、レポートは結構大変かなと思います。
松田 私は競技面で言うと、まだ大学が始まったばかりなので高校時代ほどの結果は出せてはないのですが、徐々に調子は上がってきました。高校の時の練習とはまた違う練習をしてるというのもあるのですが、徐々に慣れてきたと思います。学業面では少し不安もあったのですが、競技面でも学業面でもレベルの高い人たちがいるので、その中でコミュニケーションを取りながら、自分を高められるいい環境だなと感じています。日々ちょっとずつ自分を成長させられています。
世界で戦える選手へ

対談中の谷中
ーーここまでの今シーズンを振り返っていかがですか
谷中 自分はシーズンインからここまで全然納得いく記録をまだ出せていなくて。練習ではいい動きをしていても、それが試合だとうまくつながらなかったりで、まだうまく噛み合わない部分が多く、すごく悔しい部分はあります。ただ、日本インカレ(日本学生対校選手権)もあるので、そこに一旦焦点を当て、そこでしっかり今できることをして、噛み合わなかった部分を少しずつ噛み合わせて記録を出していけたらなと思っています。
松田 私も初戦はタイムも悪いし、体の状態や動きもすごく悪かったのですが、大会を重ねていくごとにタイムは上がっていきました。タイムで見ると徐々に上がってきているからいいかなと思いますが、体が思ったようについてきていなくて。この体の状態でこのタイムが出せているんだったら、もう少し鍛え直したりとか、技術面も少し磨き直したらもう少しいいタイムは出るのかななど、いろいろ自分の中で試行錯誤しながら、次の日本インカレに向けて徐々に上げていこうかなと思っています。
ーーお2人とも関東インカレに出場されました。振り返っていかがですか
谷中 自分は関東インカレ(関東学生対校選手権)に出たのですが、ハードル種目では出られなかったので、すごく悔しい部分はあります。ただ、日本インカレではハードルで出ることができるので、関東インカレで結果を残せなかった分、日本インカレではしっかり自分の納得いくような、そして早稲田としてチームに貢献できるような結果を出せるように頑張っていきたいと思っています。
松田 私は、関東インカレは少し調子が上がってきたなというのを感じた試合でした。その試合がすごく追い風だったのもあってタイムが出たのですが、それが向かい風だったり、無風だったりした時にそのタイムを出せるかといったら、その時は出せなかったと思います。日本インカレでは、もっと上のタイム、自己ベストに近いタイムを出さないと戦っていけないし、入賞へは程遠いと思います。それが再確認できた試合だったので、すごくよかったと思います。
ーーご自身の走りの強みを教えてください
谷中 ハードル選手の中では結構スピードがある方だと思っています。そこが強みではあるのですが、今の段階ではその強みを生かせていないです。スピードと、パワーを兼ね備えているのが自分の強みですが、今はまだ発揮できていないので、今後そういったところもしっかり鍛え直して、強みを生かして走っていけるようにしたいと思っています。
松田 私は幅跳びをやっていたというのもあって、跳躍力には自信があって、それを今結構発揮できてるかなという感じです。ただ自分は天架ちゃんとは真逆でスピードがないというのが自分の弱点で、そこが上がってくれば自ずとハードルのタイムも上がってくるかなと思っているので、今はスピードを上げられるように頑張っています。
ーー大学4年間でどのような選手になりたいですか
谷中 大学生はもちろん、日本のトップの選手と競えるぐらいの選手になりたいです。そこを目指すためにはやっぱり12秒台を出さないと、日本のトップの選手たちとは戦えないので、そこが1つの目標です。また、まだ程遠いですが世界で戦えるような選手を目指してやっていきたいです。世界大会に出場するだけではなくて、世界で戦える選手になりたいので、やはりそのためにはまずは足を速くしないといけないので、日本のトップの選手たちと競えるぐらいの選手になることをまずは1つの目標として頑張っていきたいです。
松田 世界の舞台でしっかり戦えるようになるというのが目標です。すごくメンタルが弱くて、人と競った時や決勝の舞台で自分の力が発揮できないことが多いのですが、それを克服して、世界の大舞台で戦える選手になりたいです。もう1つは人間性で、人から尊敬されるような選手になっていきたいと思います。
ーー今シーズンの今後の目標を教えてください
谷中 自分のシーズンインはいいものではなかったのですが、もう1カ月もしないうちに日本インカレが来てしまうので、日本インカレでは決勝に残ることをまずは目標に頑張っていきたいです。また、対校戦ではないですが、秋シーズンのU20日本選手権で、個の実力を発揮して優勝できるように頑張っていきたいです。タイムとしてはベストが13秒40なので、それを更新できる、もしくは更新できなくてもそれに近いタイムを叩き出すことを目標に今シーズン頑張っていきたいです。
松田 私は日本インカレでまず決勝に残って、その中でしっかり戦うこと、できれば3位以内で入賞したいというのもあります。同じになってしまうんですけど(笑)、もう1つは自己ベストだったり、自己ベストに近い記録を出せたらいいなと思います。
ーーありがとうございました!
(取材 佐藤結、森若葉 編集 長屋咲希、森若葉)

◆松田晏奈(まつだ・あんな)(※写真右)
2006(平18)年7月24日生まれ。長崎日大高出身。スポーツ科学部1年。
◆谷中天架(たになか・てんか)
2006(平18)年5月12日生まれ。大分雄城台高出身。スポーツ科学部1年。