【連載】ラグビー部 新体制特集『One Shot』 第4回 大田尾竜彦監督

特集中面

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 最終回はチームを率いる大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)!昨季は17年ぶりの関東大学対抗戦(対抗戦)全勝優勝にチームを導いたものの、全国大学選手権(大学選手権)では決勝で帝京大に惜しくも敗戦。『荒ぶる』を掴みかけた昨季の悔しさとともに、就任5年目を迎えた今季に向けた決意を伺った。

※この対談は、4月13日に行われたものです。

ーー昨年は就任4年目、どんなことを意識して取り組んだ1年でしたか

 過去3年間で見えた課題、そして京産大戦での大敗から見えた現実的な壁を乗り越えるためにいろいろなことに着手した1年でした。また、佐々木(隆道、平18人卒=大阪・常翔啓光学園)が1年間フルで帯同できるということで、彼の持っているスキルを最大限生かしつつ、選手たちの主体性をを引き出すため、全体を俯瞰して見れた1年だったかなと思います。去年に関してはやるべきことが明確なチームだったので、スタートを切って軌道に乗れればある程度上手くいくと思っていたところもあり、全体を広く見ることを意識していました。

ーー昨年のチームで重点的に取り組んだことはなんですか

 スクラム、ディフェンスの改善、そしてフィジカルの強化という3つです。

ーー新チーム始動から、これまでとは違った手応えなどはありましたか

 新チームになったタイミングで選手にアンケートを行ったのですが、戦略に対して選手たちから不安があまり見られなかったこと、そしてこれまでのチーム内でのコミュニケーションに関して課題と認識している選手が多くいたことで、求められたところにきちんと答えるということを徹底していった結果、良いスタートが切れたのではないかと思います。

ーー佐藤(健次、令7スポ卒=現埼玉WK)主将が率いた昨年のチームはどんなチームでしたか

 4年生のリーダーシップが非常に強く、そして主体的に取り組むことができる選手が非常に多かったと思います。ジュニアチーム(Bチーム)に活気があり、チーム全体に良い影響をもたらしていたと思います。

ーー今まで以上にチームスローガンを意識したチームが出来上がっていたと思います。監督の目にはこれまでとの違いはどう映りましたか

 最終学年になった4年生たちの責任感、リーダーシップというのは強かったと思います。また、主将の佐藤の全体を見渡そうとしている姿勢が非常に印象的なチームでした。

準備の段階で決勝ならではの準備をしなければならなかった

ーー昨季、ターニングポイントになった、チームとして大きく成長した一戦はありましたか

 プライドという意味で大きな意味があったのは春に行われた流通経済大Bの試合です。その試合は非常に良い試合で点を重ねていったのですが、最後1トライをとられてしまいました。その選手たちの非常に悔しそうな表情を見た時に、これまでやってきたことに対するプライドが垣間見えたというか、手ごたえを感じた一瞬でした。

ーー入部時から見てきた代だと思います、何か強い思い入れなどはありましたか

 1年生から4年生までみんなを見てきたことで、学生それぞれの成長の曲線だったり、各選手たちのエピソードがある、色濃く記憶に残っている代だったなと思います。色々な選手が様々な成長を見せてくれた、そんな代でした。

ーー17年ぶりの対抗戦全勝優勝を振り返って、率直な思いをお聞かせください

 今までやってきたこと、そして1年生の力が上手くマッチしてどことやってもある程度勝利を望めるチームになってきたなと思っていましたし、シーズンが深まるにつれて自信がどんどんついてきたチームでした。帝京に勝ったあたりで対抗戦の優勝が現実味を帯びてきて、実際に優勝を掴めたっていうのは非常に嬉しかったですね。
 
ーー個人的に印象深く残っている試合を教えてください

 やはり選手権の決勝で勝ち切れなかったというのは印象に残っています。自分たちがこれまで見てきた景色で優勝に近い、これだったら優勝できるぞと思っていたのですが、やはり自分たちがいたところは優勝までの9合目であったのだと思いました。残りの1合というところはあの舞台に立って、そしてあの舞台に立ち続けてようやくわかるものなんだなと感じました。

ーー秋の帝京戦との違い、誤算はありましたか

 誤算という誤算はありませんでしたが、準備の段階で決勝ならではの準備をしなければならなかったと感じました。
 
ーー試合後、どんなことを話しましたか

 決勝の翌日にミーティングをしたのですが、4年生には感謝しかなくて、前年度のあの大敗からチームをよくここまで立て直してくれたことへの感謝、そして対抗戦を久しぶりに優勝したことへの感謝、あとは決勝で勝たせきれなかった申し訳なさが非常にあったので、それを伝えました。また、3年以下の選手たちには本気で日本一を目指すメンバーで活動していこうということを伝えました。

ーー5年目はどんな年にしていきたいですか

 一番は選手たちがいきいきとラグビーをやる、最後まで粘り強く諦めない、そういった姿を引き出せるようにしたいと思っています。その中でも、昨年度届かなかった優勝に向かって歩みをしっかりと進めていける年にしたいです。

ーー野中健吾(スポ4=東海大大阪仰星)選手が主将となりましたが、どんなチームになりそうですか

 まだ全然見えないかなとは思うのですが、昨年での経験をベースに変えるところ、変えないところを手探りで4年生になる選手たちと一緒に探っていくようなチームになるかなと思います。

ーー野中選手に求める選手像、主将像はありますか

 やはり自分に厳しく、周りにも厳しい選手であることです。そして目標に対して純粋であることを野中には求めたいと思います。

ーー田中勇成(教4=東京・早実)副将についてはいかがですか

 田中は昨年大きく成長した選手の一人なのですが、彼の試合に対する姿勢、練習に対する姿勢だったり、ラグビーをより深く考える姿勢というのは多くの学生に良い影響を与えていると思いますし、自分に自信を持って取り組み続けてほしいと思っています。

ーー委員が例年に比べて多いですが、何か狙いはありますか

 今自分たちが求めている組織像に必要なメンバーを考えて、組閣していった結果だと思っています。

ーー佐々木隆道さんの抜けた穴は大きいですか

 大きいとは思いますが、それを補うだけのコーチングを行っていくことが重要だと思っています。今いるコーチ陣の皆さんの尽力のおかげでしっかり補ってくれていると思います。

ーー現時点で期待している選手はいますか

 4年生には期待感が大きいです。

ーーここまでプレシーズンなど、最近成長を感じる選手はいますか

 多くの選手が去年と違う姿を見せてくれているので、特定して誰かというよりは、全体的に大きな成長を感じるプレシーズンだったかなと思います。

ーー野中、福島秀法(スポ4=福岡・修猷館)、清水健伸(スポ3=東京・国学院久我山)、杉本安伊朗(スポ3=東京・国学院久我山) 田中健想(社2=神奈川・桐蔭学園)がU23日本代表に選出されましたが、どんな成長を期待していますか

 チームにとってどういった影響を与えてくれるかというのが大きいと思っています。個人でどんな成長をしたかというよりも、ラグビーに取り組む姿勢のレベルをチームとして一段階、二段階上げてくれるような成長を期待しています。

ーー昨季もですが、春シーズンで主将の長期不在はチームにどんな影響がありますか

 主将がいない期間は周りのメンバーがその分頑張ってくれるというのはもちろん当たり前なのですが、主将がチームにどういった姿を求めていくのか伝えていく1年の中で、1カ月でも不在の期間があるのはチームとしてはマイナスなのかなとは思っています。しかし、本人は大きな成長をして帰ってきてくれると思うので、それをチームにどう還元していくのか、そこに期待しています。

ーー昨季スタメンで出ていた選手の多くが残っています、昨季とは違ったやりやすさなどは感じていますか

 多くの選手が残っているということで、昨年大事にしてきたことは踏襲できていければと思っています。チームが成長してきたプロセスを彼らは理解しているので、チームはどういった状態であるのか、停滞してしまったときは何が足りないのかとか、指導陣に何をもとめるのかといったところは円滑に進むのかなと思います。

まぐれではなく、自分たちの実力で(優勝を)掴み取ったと言い切れる一年にしていきたい

ーー今年の新入生の印象を教えてください

 一昨年、昨年の新人は一般入試で入ってきた学生や付属校、系属校をはじめ、全体的にレベルが高かったので、それに比べると若干おとなしいかなとは思います。しかし、いざ試合をしてみると黙々と仕事をできる、痛い仕事ができる選手が多いなと思います。こういった代はちゃんとリーダーが出てきて、一つのところに向かえばかなり力をつけられる代であると感じています。ただ、やはり初めから派手な成功などは少ないと思うので、地道に、地に足をつけて一歩一歩成長して欲しいと思います。
 
ーー今年は去年に比べ、さらに様々な出生を持った選手たちが集まっていると思います。早大らしい多様なバックグラウンドはチームにどんな影響を与えますか

 いろんなことを経験してきた学生たちが4年間を通じて、様々な人の人生観であったり、早稲田の勝たなければならない厳しさや緊張に触れていくことで人間的に成長していくと思います。いろんな高校から集まってくれることは早稲田として強さを継続していくために必要なことかなと思います。

ーー入部式では女子部の新入部員の姿も見られました。昨年度から開設された女子部に関してはいかがですか

 女子部は女子部で、今まで我々が歩んできた歴史とは違う歴史を作って行こうとしていると思います。彼女たちがどれだけ頑張ってくれるかというのは部全体の士気にも関わってくることだと思いますし、4名の新入部員を迎えて人数もこれからさらに増えていくのではないかと思うので、2年目も一歩一歩頑張って欲しいなと思います。

ーー新チームの強みについて教えてください

 昨年に引き続き、ディフェンスを頑張れるチームを作っていきたいと思います。

ーー課題はありますか

 課題はやはりセットプレーと得点をとり切るということかなと思います。

ーーどんなことに注力していますか

 年間の中でターゲットとしているところがあるので、そこに向かってチームとして歩んでいく次第です。その中でも試合がいくつかあり、そこで練習してきたことを出せるかが重要だと思います。

ーー新チームの雰囲気はいかがですか

 去年と同じように積極的にコミュニケーションを取っている印象です。グラウンド内でもよく喋れているので、良好かなと思います。

ーーどんな春シーズンにしていきたいですか

 自分たちの歩みを感じられるシーズンにしていきたいです。どこかで自分たちの自信を確信に変える瞬間を掴むことができる春シーズンにしていきたいです。

ーーフォーカスしている試合はありますか

 最後に控えている帝京戦、6月にある明治、天理、そして5月には京産大が来てくれるので、その4試合は焦点を当てて大事にしたいと思っています。

ーー春に関西のチームと戦える意味について教えてください

 シーズンが始まってしまうとお互いに独特な地域のカラーが出てきてしまうので、なかなか対策が難しいのですが、春から彼らを身近に感じておくということはシーズン終盤に重要になってくるのかなと思います。

ーー改めてどんなチームにしていきたいですか

 それぞれ自分がラグビーをやりたいと思って門を叩いて、早稲田大学ラグビー蹴球部に入部しているので、このチームで何かをやってやりたいという気持ちを継続できるチームにしていきたいです。プレー面においてはどのカテゴリーでも自分のできることを全力で取り組めるようなチームにしていきたいです。

ーー最後に『荒ぶる』への思いをお聞かせください

 『荒ぶる』は去年、掴み損ねてしまったという思いです。当然『荒ぶる』を目標に置いていますし、そこからの逆算でシーズンを計算しているのですが、とはいえ一歩一歩なので確実な歩みを踏んで行って、まぐれではなく、自分たちの実力で掴み取ったと言い切れる一年にしていきたいです。

ーーありがとうございました!

(取材・編集 村上結太)

◆大田尾竜彦(おおたお たつひこ)

1982(昭57)年1月31日生まれ。佐賀工業高出身。2004(平16)年人間科学部卒業。4年時には主将を務め、対抗戦優勝、大学選手権準優勝にチームを導いた大田尾監督。卒業後はヤマハ発動機ジュビロ(現静岡BR)で競技を続け、その後2021年に早大の監督に就任した。昨季は大学選手権決勝で惜しくも敗戦を喫し、悔しさをにじませる今季は「このチームで何かをやってやりたいという気持ちを継続できるチームにしていきたい」とチーム作りに対する強い意気込みを語ってくださいました!

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