第5回には副将を務めるDL伊藤寛太郎(商4=東京・成蹊)×LB原康介(法4=東京・早大学院)が登場。昨年の振り返りやアメリカンフットボール集大成となる今年の意気込みなどを伺った。
※この取材は、4月23日に行われたものです。
――まずはお互いの紹介をお願いします
原 伊藤寛太郎さんと言います。未経験でアメフトを始めたのですが、本当に身体能力が高くて、特にパスラッシュは経験者のトップレベルの選手を見ても非常に優れていると思います。本当に素晴らしい選手だと思っていて、2年の頃からずっと1緒に試合に出ている、頼りにしている存在です。
伊藤 原康介、LBです。原は同じディフェンスで、さっき彼も言った通り2年の頃からから1緒に試合に出ています。原の試合での存在感はすごくて、こんなに体が大きいLBは関東を見てもなかなかいないと思います。まあちょっとでかくなりすぎてるんじゃないかなと思う時もあるんですけど(笑)。原は2年、3年とオール関東に選ばれていて、ディフェンスのエースですし、頼りになる存在です。
伊藤 父がもともとアメフトをしていて、その影響もあります。新歓に勝手に申し込まれてしまって、それで新歓フェスタに行ってBIG BEARSの雰囲気がとても良かったので入ろうと決めました。
――競技面でバスケットボールの経験を生かせていると感じる瞬間はありますか
伊藤 バスケットボールは足腰の部分だったりアジリティのファンダメンタルだったりとすごい生きています。特にパスラッシュはバスケと似たような構図でボールを持たないままドライブするという感じなので、それはすごくためになっていると思います。
――原さんは高校からアメフトをやられていましたが、最初からポジションはLBでしたか
原 高校のころからLBをやっていて、高校の頃はあまり人数がいなかったのでOLもやっていました。大学に入ってからLB専任になりました。
――LBの魅力を教えてください
原 LBの魅力はどんなプレーにも絡むことができる点です。オフェンスのどんなプレーに対しても自分が絡んで止めることができるのは最大の魅力だと思います。ディフェンスの指揮を執る存在でもあるので、ラインバッカ―の出来がディフェンス全体の出来につながってくるところはやりがいにもなると思います。
――DLの魅力はいかがですか
伊藤 DLは特に未経験にお勧めしたいと思っています。やはりパワーとスピードとフィジカルがあればみんな活躍できますし、LBと違ってそこまで頭を使わないので本当に力でボールをねじ伏せられれば活躍できるポジションです。単純なところが自分に合っているなと思います。
――昨シーズンのチーム全体の戦績を振り返って、どのように感じていますか
原 チーム全体に関して言うと特にディフェンスは試合にかける準備もすごく良かったですし、実際に関東リーグでは結果も残せていたので素晴らしいディフェンスを築けていたと思います。それでも全日本選手権で立命大と試合をしたときにいくら準備をしたとはいえ、フィジカルとかの差がすごくあって、準備をいくらしても越えられない壁、日本一の壁を痛感した部分がありました。今年はテクニックとか事前準備とかにこだわるのももちろんですが、チーム全体としてフィジカルに力を入れて、地力をつけていきたいと思っています。
――特に足りない部分はフィジカルだと感じていますか
原 やはり大きくあるのは土台となるフィジカルで、その差が大きかったらいくら色々な戦術を使ってもフィジカルで壊されてしまいます。ますは、そこを最低限渡り合えるレベルまで高めなければいけないと思っています。
伊藤 昨シーズンを振り返ると原が言っていたこともそうなんですけど、やはり昨年は結構4年生のチームだったなと思っています。4年生が下級生のころから試合に出ていて、その4年生が1枚岩となって戦えたシーズンだったのかなと感じています。4年生の1本目は強くても、2本目、3本目と戦える層が成長しなかったのが昨年のシーズンでした。その層がもう少し厚ければもっと楽に全日本選手権戦えたと思いますし、4年生が無理して体ボロボロになるまで試合に出ていたので、そこは今年の課題でもあるかなと思います。
――個人の戦績やパフォーマンスは振り返っていかがですか
原 僕は個人の戦績は2年生の頃の方が圧倒的に数字としては良かったです。3年次はオール関東には選んでいただいたんですが、自分が納得するような数字を残すことができませんでした。対策されても止められない選手になるため、さらにステップアップしなければならないと感じる1年でした。
伊藤 自分は昨年けがもあってあまり試合に出ていないので、戦績的にはあまり残せていないです。今年はラストイヤーなので覚悟をもって、良い成績を残せるように頑張りたいです。
――けがからの復帰はいかがですか
伊藤 順調ではあるんですが、完全復活にはもう少しかかるかなという感じです。
「全員に平等のチャンスが与えられている」(原)
質問に答える原
――副将に就任したきっかけや経緯を教えてください
原 僕は立命大戦でかなりの差を感じて負けたというのが非常に大きかったです。大学でアメフトを継続した理由も高校で取れなかった日本一を取りたいという思いがありました。自分がラストイヤーで1年間やるなら日本一の壁を身をもって感じた経験や悔しさをチームに還元したいなと思いましたし、成長してきた成果をチームに貢献出来たら日本一に近づくと思ったので立候補しました。
伊藤 自分は副将になったきっかけはあまりないのですが、しいて言うなら未経験で大きなけがもしている中、それでも自分がリーダーシップをもってチームに影響を与えられたらと思ったからです。ほかの副将や主将とは違う方向からアプローチしていけたら良いなと考えています。
ーー副将としてチームでの役割はどのようなところを期待されていると思いますか
原 僕は「フットボール委員長」という役割を担当しています。フットボールのオフェンス、ディフェンス、キッキングが日本一に向けた高いレベルに成長していけるよう、ディフェンスという狭い単位だけでなく、チーム全体を見てそれらを高めていくことをしています。
伊藤 自分は恥ずかしいんですけど「お節介ママ」という名前を付けられています(笑)。フットボール面とは別のモラル面や普段の行動などで、体育会としてプライドを持って行動できるよう部員に対してアプローチしています。
――ここまでの副将としての手応えはいかがですか
原 自分は副将になってから人を引っ張って行く立場ということで、自分の行動は以前よりも意識するようになりました。練習中も自分だけではなく、チーム全体が良い雰囲気でできているかというところを意識的に見えるようになったのでそこは手応えを感じています。その一方で、今はまだフットボール委員長として全体を高いレベルに成長させられてはいないと思っています。主力選手がたくさん抜けた今、自分が何か新たな取り組みをしてチーム全体を高めていかないといけないと思いますし、このペースだとやはり日本一には遠いのかなと感じています。
――具体的な取り組みは決まっていますか
原 具体的な取り組みはまだそこまで決まっていないというのが現状です。僕自身がやりたいこととしてはやはりオフェンス、ディフェンスは互いに高められる存在だと思っているので、互いに気づきあったことをフィードバックする文化は作っていきたいです。それこそ伊藤が言っていた選手層の薄さというのは本当に課題だと思っているので、下級生が活躍できるフィールドやそういった練習システムも作っていけたらと思います。
伊藤 自分は何か副将として特別なことができているかと言ったらそうではないと思います。それでもやはり副将として自分のモチベーションや自覚が芽生えてきて、自分がまず行動できるように普段から意識的に練習に取り組んでいます。
――昨年までにはなかったチームの強みを教えてください
原 強みと少しずれるかもしれないのですが、みんな試合経験がほとんどなくてスタート地点にあまり差がない分、全員に平等のチャンスが与えられています。実際、前回の試合でも結果を出した下級生が一定数いたので、伸びしろという観点で言ったら今までのチームに比べて大きくあると思います。ヘッドコーチが荒木さん(荒木延祥ヘッドコーチ、平10スポ卒=大阪・高槻)に代わってチームも新体制になったということでこれから成長曲線が一気にあると思いますし、それぞれがここだけは負けないという自分の強みを見出して、成長してくれるのではないかと思います。
伊藤 原も言っていたように荒木さんがヘッドコーチに就任して、根本的な考え方やどうやったら勝てるのかという方向付けが変えられたのかなと思っています。例えば、フィジカル面が昨年も課題ではありましたが、明らかに昨年よりもフィジカルに関する意識が高くなっていて、少しずつ良くなっていると感じています。あとはフットボールのミーティングを週1回はやるようにしています。今までは考えたことを情報として流していたんですが、それだと選手層の厚さという課題が解決できないと思うので、全員がしっかり参加できるミーティングを定期的に行っています。それは新たな取り組みとして今年の強みになるのかなと思っています。
――今後どのようなチームにしていきたいですか
原 功能が掲げている自発性あるチームというものにも被ると思うんですが、僕は全員が何か目的を持って努力して、互いに切磋琢磨し合って成長できるチームを作っていきたいと思っています。そしてさっきも言ったように、その過程で自分にしかできない強みというのを春シーズンの中で色々な選手に見つけてほしいです。そういうのをみんなが見つけてチームの総合力が上がれば日本一につながると思うので、そこを突き詰めていきたいです。
伊藤 今やらなければならないことはたくさんあるので、それをしっかり1つ1つ春の段階から潰していきたいです。今、原も言っていたように自主性は大事にしてほしくて、自分の課題をどうやって解決していくかはやはり各々に任されている部分があります。そこをしっかり考えて、行動に移せる選手が増えていけば良いなと思っています。
――現在のチームの雰囲気を教えてください
原 前回ミーティングがスタートしてフットボールもだんだんと始まってきたというところです。フットボールに対する姿勢や取り組みは、チーム全体として高まっていると思うのですが、やはり昨年のチームに比べるとみんなまだまだ危機感が足りないと感じています。具体的にいうと、ディフェンスは本当に初歩的なパシュートミスやメンツの交代ミス、オフェンスだったらスナップミスとかです。日本一を目指す上で絶対にやってはいけないようなミスが出てしまっているので、ここから春シーズンで関西相手と戦うために気を引き締めていかないといけないと思っています。
伊藤 早慶戦だから浮き足立ってるとかは特にないんですが、原が言っていたようにもう少し春シーズンに入っているという自覚を持ってほしいと思います。やはり試合を経験したことのない選手も多いので、しっかり試合の場に準備して臨めるような練習をこれからやっていけたら良いなと思います。
「BIG BEARSの一員として、努力しきって終われたら」(伊藤)
質問に答える伊藤
――早慶戦に向けて意気込みを教えてください
原 早慶戦はライバル校の対決ということで、まず絶対に勝つというのは前提としてあります。完勝したいなと思っています。加えていうなら早慶戦は観客の方も大勢来てくれていて、早稲田も誇りを持って戦える場です。その中で楽しく戦いたいと思っています。
伊藤 早慶戦の意気込みは個人としては特にないんですが、日本一を目指す上で勝たなければならない試合だと思っています。そのステップとして勝てるよう、しっかり準備していきたいです。
――関西2大学との対戦を控えていますが、どのような試合展開を考えていますか
原 試合展開までは具体的に考えていませんが、第1クォーター(Q)から第4Qまで全力で臨み、相手に走り負けることなく、最後まで自分たちの力を出し切れる試合にしたいと思っています。そこに向けて、けがをしない体づくりや闘志などのマインドの部分を関西相手に準備していきたいです。
伊藤 早稲田はハードにタックルしてハードにヒットするとか、フィジカルで戦うところが課題としてあります。そこは関西相手にも臆することなく戦っていけたらと思います。
――チームメートで期待している選手はいますか
原 後輩だとDLの北村(玲應音、文構3=東京・早実)です。今年になってからすごく体も大きくなっていると思いますし、練習中の闘志やウェイトトレーニングにかける情熱もすごくあって、あとは結果を出すだけなので頑張ってほしいです。もう1人はLBの松井(悠大、法2=茨城・早稲田摂陵)です。松井は未経験で入ってきているんですけど、LBはすごく難しいポジションで、フィールドの指示役をしないといけなかったりとか、自分の集中したいプレー以外にも人のことも考えて動かないといけなかったりとかで、未経験の選手にはとてもハードルが高いと思います。それでもウエイトも真面目にやりますし、練習外でも質問とかも結構してくれるのでそういった努力が実ってくれたら良いなと思います。
伊藤 自分の後輩は結構みんな期待しているんですけど、しいて言うなら2年のDL中村(友亮、教2=神奈川・鎌倉学園)です。中村は顔が濃いのでマイケルって呼ばれていて(笑)。彼はすごく真面目で努力もしますし、結構ガッツがあって、その姿勢がDLには大切だと思うので彼には期待しています。
――個人としての目標を教えてください
原 今年は、誰よりも良い成績をLBとして残したいと思っています。今まで試合にはずっと出てきましたが、記録に関してはまだ満足できてない部分も多いです。今年は今までのアメフト人生の集大成として、自分の個人としての記録ももちろんですし、チームとしても良い記録を残せるように学生一のラインバッカ―を目指して頑張っていきたいと思っています。
伊藤 自分も学生一のDLになることが目標です。
――ラストイヤーの意気込みをお願いします
原 自分は今まで高校から7年間アメフトをやってきました。自分がこれまでにしてきた努力など全ての集大成の1年だと思っているので、本当に同期とか後輩含めて全員と一緒に全力で駆け抜けて、後悔ない成績を残せたらと思います。
伊藤 自分は今まで3つの代の先輩たちを見てきて、やはりラストイヤーが一番大切な年だと感じました。日本一に向けて、選手としてというよりかはBIG BEARSの一員として、努力しきって終われたら良いなと思います。
――ありがとうございました!
(取材、編集 大村谷芳、高津文音)
◆ 伊藤寛太郎 (いとう・かんたろう)
東京・成蹊高出身。180センチ。85キロ。商学部4年。DL。昨年はけがに苦しんだ伊藤選手ですが、完全復活に向けて準備は万全です!
◆原康介(はら・こうすけ)
東京・早大学院高出身。181センチ。99キロ。法学部4年。LB。学生一のLBを目指し、原選手が執る的確な指揮に注目です!