自分が一番輝ける場所
今年度、女子バスケットボール部の副主将を務めた江頭璃梨（スポ＝宮崎・小林）は、15年の競技生活に終止符を打った。早大での４年間、そして主将代理としてチームを引っ張ることとなったこの１年、江頭が抱えていた思いを振り返る。
小２のときに兄の影響でバスケを始めた江頭は、宮崎県の小林高校を経て、早大に入学。そのきっかけとなったのは、高校の先輩で2023年度に主将を務めていたフェスタ―ガードヤヤ（令６スポ卒）の存在が大きいという。彼女から早大の部活動の様子を聞き、江頭は自分が目指しているものとが早大にあると感じた。
公式戦初出場時の江頭
入学後、江頭は高校時代と比べ、その「自由さ」に衝撃を受ける。高校では寮生活の中で、娯楽も厳しく制限されていたのに対し、早大では私生活も練習メニューも制約がない代わりに自分たちで選択しなければならなかった。
また早大のバスケットの大きな特徴として、オフェンス時のフォーメーションが存在しない。チームメイトとコミュニケーションを重ね、意見をすり合わせることで攻撃を完成させる選手中心のバスケットに、１年時の江頭は驚かされた。
江頭は、着実にチームの一員として勝利に貢献し、４年生になると副主将を務めることになる。小中高とこれまでキャプテンを務めていたものの、チームのエース・江村優有（スポ＝愛知・桜花学園）の存在もあり、「自分は副主将だろう」という意識があった。実際に指名を受け、副主将に就任したときには、「副主将として、ひとりのプレイヤーとしてやれることをやろう」という思いが強かった。
しかし昨年５月、江村が3×3日本代表の試合中にひざの大怪我を負い、シーズン中の復帰は絶望的だった。その知らせを聞いた江頭は、強いショックを受けたという。
「自分はもう大学までしかバスケットをやらないと決めていたから、（江村と）一緒にバスケできるとしたらこの１年間だけだったので、本当に悲しかったし、優有はきついだろうなっていうのが最初に来ました。もうこの４年生全員がコートに立てることってないんだって思うと、悲しかったです。」
代理主将として早慶戦の優勝杯返還を行う江頭
これを受けて、江頭は代理キャプテンを務めることになった。自分は江村のようなプレーで示すタイプではない。果たして自分にチームはついてきてくれるのか、そんな不安が江頭の中にあった。
その中で過ごした大学生活、そして競技生活最後の１年間について、江頭は「きつかった、苦しかった」と振り返る。春先からプレー面でも悩みを抱えていたのに加え、キャプテン代理としてチームを引っ張らなければならない。自分が先頭に立ってプレーで示すことができないギャップに苦しめられた。どんどん自分を追い込んでしまい、スターティングメンバーを外れ、交代選手としても出場できない状況は、「思い出したくない」と思うほど辛いものだった。当時毎日涙を流し、何度も「もういいや」と諦めそうになっていた江頭は、残り数ヶ月を後悔なくやり切ること、どうにか踏ん張ることを自分に言い聞かせていた。
最後まで自分らしいプレーができず、悔いの残るシーズンだった。しかし、両親の「このバスケットの終わり方が全てではない。今後の人生で壁にぶつかったとき、この経験を生かせばいい。頑張ってきたことに意味がある」という言葉が、江頭の考え方を前向きに変えてくれた。
仲間に指示を出す江頭
江頭は早大での４年間について、自分に不自由なくバスケットをさせてくれた周りの人々への感謝を語った。例えば「インカレ優勝」や「ＭＶＰ」などといった明確な大きい成果には繋がっていないかもしれない。しかし、江頭を人間として大きく成長させてくれた４年間だった。
引退後、久々にバスケットから離れた生活を送ることになった江頭。「次」があったこれまでに対して、気持ちの面でどこか心の余裕があった。特に楽しかったことについて聞くと、かねてから企画していた友人や家族との韓国旅行に行ったりと、家族と過ごす時間が増えたという。また、最近は神社巡りと御朱印集めを趣味にしていると教えてくれた。
江頭にとって、バスケットボールとはどのような存在か。この問いに対して、江頭の回答は「自分が一番輝ける場所」であった。誰もが持ってる本気で取り組むことができるものが、江頭の場合はバスケットだった。周囲からも「璃梨はバスケしてる姿が輝いている」と言ってもらうことが多く、江頭自身も自分の魅力をより人に伝えることができると意識するようになった。
シュートをする江頭
15年の競技生活を終えて、江頭はまた新たなステージに進む。彼女であれば、どこであっても絶対に輝ける、江頭の姿はそんな確信を与えてくれるものだった。
（記事 田中瑠花）