全4回でお送りする、相撲部インカレ直前対談(注:インカレとは、全国学生選手権のこと。ことしは東京・両国国技館で開催)。本連載最終回の第4回に登場するのは、川副楓馬主将(スポ3=熊本・文徳)、鈴木大介(法3=埼玉・早稲田本庄)、そして相撲部唯一の4年生である大村晃央(社4=静岡・飛龍)。インカレに関する対談になると思いきや、「相撲部は『馬場歩かず』」? 監督には「負けていられない」? いまの相撲部が詰まりまくった対談になりました!

インタビューに応じる川副(左)、大村(中央)、鈴木
――まずは、お互いのことを紹介してください
鈴木 (大村を紹介)彼は大村晃央くんです。22歳。元気で明るいことが取り柄な男の子です。趣味は寝ることで、たまにご飯をいっぱい食べたり、体を大きくするのも得意です。
大村 (川副を紹介)川副楓馬と申します。出身は熊本の文徳高校で、寮のご飯をあんまり食べず、部屋でレンチンのご飯をよく食べています。
川副 夜食ですね。
大村 1、2年生のときは、相撲の安定感がちょっと欠けるかなと思っていたのですが、今はポイントゲッターとして、また主将としてみんなを引っ張ってくれている存在なので、安心して卒業できますね。
川副 (鈴木を紹介)鈴木大介です。3年法学部。大介は小中学校で相撲をやっていて、高校でラグビーをして、そしてもう一度大学で相撲を始めて。僕は結構助けられてばっかりなんですけど、まず優しいですね。人思いですよね。
大村 人思いだし、部活思いだよね。
川副 それこそ高校3年間は相撲から離れていたっていうのもあって、大学1年生のときはまず相撲を取り戻す、みたいな感じでやっていて。今はもう取り戻すというか、相撲の感覚を取り戻した以上になっているので。ここからまた激しい相撲を見せてくれるんじゃないかなと思っています。
鈴木 そんなことまで言われるとさっきの大村さんを紹介したくだりヤバいよ(笑)。
――追加情報ありますか(笑)
鈴木 大村さんは盛り上げ上手で、つらい中でも周りを楽しませることができるような存在。4年生なんですけど、去ってほしくないです。
川副 いつまでもいてほしいです。留年してもらったほうがありがたい(笑)。
大村 あと楓馬はお笑い芸人について教えてくれます。
川副 テレビを結構見るのは、相撲部の中で僕ぐらいなんですよ。「今どの芸人が〜」みたいのはみんな疎いんです。今こういう芸人が来てる、とかいうのはちゃんと僕が情報屋として教えています。
大村 ありがとうございます。
相撲部は「憩いの場」
ーーことしの相撲部の雰囲気はいかがですか
鈴木 仲が良い。ここ数年で一番仲良いし、それもだらけるような仲の良さではなくて、高め合えるっていうか。稽古でも高め合える仲であって、稽古外ではご飯を食べに行ったりとか、遊びに行ったりするような。友人であるし、部員である。その関係を築けているんじゃないかなと思います。
大村 もう言うことない(笑)。まさにそうだと思っていて、仲間でもあるし、ライバルでもあるし。こいつが10回相撲を取ったから、自分は11回やろうみたいな。その争いを普段の稽古からやっていて、それはすごく力になっていると思います。遊びに行ったりとか、ご飯に行ったりとかもあるので楽しいですね。憩いの場っていう感じで。4年目にして一番居心地がいいですけど、4年目だとみんなそうかな(笑)。上級生がいないから。
川副 盛り上がるところは盛り上がって仲良くやったりして。相撲を取るときになったら、みんな力を出し合って、ていう感じで雰囲気は良いと思います。あと、僕はどちらかっていうと「行くぞ!」みたいなことを言わないタイプなので。大村さんが一番声を出して雰囲気を作ってくれるので、本当にありがたいです。
監督には「負けていられない」
――初の女性部員(篠原茜、社1=東京・大妻)や新監督(橋本侑京監督、平31スポ卒=東京・足立新田。監督は現役選手としても活躍中 )といった、新たな風の影響はありますか
大村 監督が土俵に降りて稽古して一緒に相撲取っている、っていうのはおそらくなかなかなくて。それはすごく刺激というか、監督がこんなにやっているなら、もうやるしかないやんっていう気持ちになりますね。現役選手で監督を務めてくれているっていうのは本当にありがたいです。
鈴木 歳が近い(取材時、監督は26歳)っていうのもあって話しやすいし、親身に相談も乗ってくださったり、プレイヤー目線でアドバイスしてくれるので、1回の稽古でも収穫できることが多く感じられる。非常にありがたいなと思います。
――監督は頻繁に相撲部の土俵に上がるのですか
川副 もう普通に相撲を取っています。相撲部の稽古に来た時はまわしを巻いて、部員と一緒に相撲を取る感じです。
大村 監督が一番強い、とも言えると思う。
川副 負けていられないですね。
大村 負けるつもりはないですけどね、気づいたら負けている。
「今までの相撲人生史上一番いい仕上がりで来ている」
――今年度ここまでのご自身の成績はいかがですか
鈴木 自分はリーグ戦(東日本学生リーグ戦。9月に東京・靖国神社相撲場で開催)で全敗して、非常に悔しくて。それが逆に糧になるので、今後はその悔しさを取り戻すことができたらと思っています。負けたんですけど、試合を通じて得られることもあったので、前を向いてこれからも頑張っていきたいです。
大村 自分はこれまで上位の選手に勝てる気配が全くなかったんですよ。ただことしに入ってから、ちょくちょくいいところで勝つことができていて。今までの相撲人生史上一番いい仕上がりで来ていると思うので、インカレも上位を倒して頑張りたいなと思います。
川副 僕も勝たなきゃいけないところで、勝てるようになっている。安定感は昔に比べてついてきたかなっていうのはありますね。けど、正直今のままの成績でいいのかっていったら、まだ満足いく部分はないので。安定感は残しつつ、自分が持っている力を全部出し切れるように。とりあえず悔いが残らないように、力を全部出し切る相撲を取っていきたいです。
ーー川副さんはことしから主将に就任されました。主将から見て、今年度ここまでのチームはいかがですか
川副 みんな気合いが入っています。普段は仲が良いですけど、稽古場に降りたらお互い高め合えるような練習ができていると思っています。

東日本学生リーグ戦後の集合写真(早大相撲部提供、9月撮影)
ーー今年度が始まってから、一番印象に残っている取組を教えてください
鈴木 選抜の宇佐大会(全国大学選抜宇佐大会。5月に大分・宇佐市総合運動場相撲場で開催)の団体戦、関西大戦(鈴木は中堅で出場。1年・大山蓮斗初段に押し出しで勝利)。なかなかレベルが高い大会で勝てていなかったので、そういう土俵で勝つことができたのは自分の成長を感じました。ただそれで一喜一憂することなく、継続して勝てる存在になりたい。嬉しくもあり、それをバネにしてここまでやってこれた。そういった意味で非常に印象的です。
大村 僕は東日本(東日本学生選手権。6月に東京・両国国技館で開催)の日大戦、成田力道(2年)との一番です。年齢は下なんですけど、彼(成田)は言わずと知れたトップレベルの選手で。今までのトップの選手に勝てると思っていなかったのですが、彼に勝ったときに「俺もがっちり稽古したらいけるんじゃないか」って目覚めて。もちろんそれまでもしっかり稽古していたんですけど、そこからもう一段階ギアを上げて稽古して、今いい感じになっている。自分の中で大きなターニングポイントですね。
川副 僕の高校の先輩で、日大の山本剛瑠先輩(4年)と花岡真生先輩(4年)。その2人はずっとレギュラーで出場していて、真生先輩に関しては個人戦で優勝してタイトルを取ってるんですけど(注:花岡は全国学生個人体重別選手権・135㌔未満級で前人未到の4連覇を達成)。その2人とことしに入って戦う機会があって、やっぱり日大でレギュラーでトップの選手で、ということで気持ちが入りました。
高校のときは一緒にやっていましたけど、早稲田に入って当たることが全然なかったので。胸を借りるつもりじゃないですけど、思いっきり当たったときに、山本先輩には取り直しになって結局負けちゃったんすけど、内容的には結構いい相撲を取れたかなと思っています。花岡先輩と当たったときには、何とか思いっきり「どうにでもなれ」って感じで吹っ切れていったのもあって何とか勝てたので。まだ先輩たちに食らいつけるというか、先輩たちのところに追いつけるぐらいの力もあるんだなっていう自信になりましたね。安定感とかレベルでいったら先輩たちの方が全然上ですけど、そこの一番で勝てたのは、自分にとってめちゃくちゃいい経験というか、プラスになったかなと思っています。
ーーことしから立ち合いのルールが改正されました。何か影響はありましたか(注:詳しくはこちら)
大村 僕はだいぶ影響があって。手をつくつかないとか、どのタイミングで手をつくとか、立ち合いの駆け引きがなくなって、小兵としては最初やりにくかったです。自分が今までやってきたことが、大学最後の年でいきなり使えなくなったので。最初は厳しかったです。
川副 最初は慣れないというのはありましたけど、僕はどちらかというと先に手をついて、相手が手をつくのを待っていたのであんまり変わらなかったです。相撲界全員がちょっと慣らしながら、みたいな感じですよね。みんな探り探りなんだろうなっていう。

東日本学生選手権に出場した川副(右、6月撮影)
ーーインカレであと2週間です。現在特に意識して稽古していることは何ですか
鈴木 自分は足を出すことと、体のケア。たくさん稽古してもインカレで最大の力を出せなければ意味はないので、自分の体の様子を見ながら。その中でもできることを最大限やる、っていうことを意識しています。
大村 9月から10月はひたすらに追い込んできたんですけど、ここからはあと2週間ぐらいなので。洗練していくと同時にケアもしっかりして、大会にピークを持ってくるような稽古をできたらと思っています。
川副 ケガしちゃったら元も子もないので、そこは気をつけながら。とりあえず僕の持ち味は立ち合いから当たって、とにかく前に出るっていうことなので。そこを忘れずに意識しながら、ガンガン前に出られるような稽古をしないといけない。そのうえで体にちゃんと負担がかからないようにケアもしっかりして。主将としては、チームのみんなが全力を発揮できるような雰囲気作りであったり、声掛けだったり、そういういい雰囲気で稽古できるようにしていきたいです。僕1人じゃ難しい部分もあるので、同期や先輩に頼りながら頑張りたいと思ってます。
相撲部は「馬場歩かず」
ーー大村さんは4年間早稲田キャンパスと東伏見キャンパスを頻繁に行き来されていたと思いますが、部活動と学問の両立はいかがでしたか(注:大村は社会科学部。相撲道場は東伏見にある)
大村 非常に充実していましたね。残り12単位あるのですが、4年生にも関わらず週4で大学に行っていまして。学校に行くのが苦手で、4限も寝坊しちゃうんですよ。前期は全然単位が取れなくて、後期でも学校に通っています。
川副 その内容、全部早スポに載りますけど大丈夫ですか?
大村 恥さらしてもらって(笑)
鈴木 12単位取ってもらって、心地良く卒業してもらって。僕も頑張るんで。
川副 卒業でき…?
鈴木 できます。まだ余裕です。
ーー鈴木さんは法学部ですよね。結構大変ではないですか
鈴木 めちゃくちゃ大変なんですよ。今回本当に最悪で、テストの2日前まで金沢大会(全日本大学選抜金沢大会。7月に石川県立卯辰山相撲場で開催)があって、全然勉強できないみたいな(笑)。ほぼぶっつけ本番みたいな感じでした。後期は言い訳もできないので、しっかりと単位を取り切って勉強の方も頑張れたらいいなと思います。ずっと教科書を開きながら新幹線に乗っていました。
川副 僕はマジで大丈夫です。4年時はさらに相撲に意識を置いて頑張れるかなと思っています。
大村 素晴らしいっすね。来年この場にいないようにしないといけない(笑)。馬場歩き(早稲田キャンパスから高田馬場駅まで歩くこと)が最近しんどくて。
川副 高田馬場から早稲田まで歩いたことない。
鈴木 一時期さ、散歩にハマってなかった?
川副 教職志望の友達と帰っているときは歩いていたけど、自分1人で歩くことはないですね。
大村 相撲部は「馬場歩かず」です(笑)。
川副 いまだに「馬場のあそこにご飯屋さんがあるよね」とかも分からないです。駅前か大学近くのご飯屋さんしか分からない。
大村「死ぬ気で勝ちにいって、華々しく締めくくれたらいいな」
ーー大村さんと共にする、最初の最後のインカレです
川副 3年間ずっと一緒なので、その分ずっと声をかけてもらっていますし。ことしから僕は主将を務めていますけど、全然1人じゃどうにもならないので。そこも大村さんの支えがあって成り立ってるところがあります。今までやってもらったことをお返しするというか、そのためには僕が勝って、そしてみんなで勝って、良い成績を残して大村さんに卒業してもらうことが一番なので。気合いを入れてみんなで勝ちに行きます。
鈴木 自分も出会って3年、よくしてもらっている先輩なので。最後はちょっといい姿を見せられるように頑張りたいです。団体戦は自分がレギュラーではないので、最大限の力を出せるようにサポートしたいなと思っています。

東日本学生個人体重別選手権(7月、東京・靖国神社相撲場で開催)に出場した大村(右)
ーー逆に、後輩に期待するところを伺いたいです
川副 とりあえず、持っている力を全部出してもらえれば。もちろん勝ちに行ってほしいけど、勝った上でも負けた上でも、全力を出しきれたって思ってもらえるような相撲を取ってほしいです。そうやって思いっきり取れれば、自然と勝ちにつながると思うので。そこはもう縮こまらず、思いっきり大きくいってもらいたいですね。
大村 自分らしい相撲を楽しんで取ってくれれば一番かな。1、2年生はすごく良い相撲を取るので期待しています。
鈴木 1、2年生はみんな強いので。自信持って気を負わないというか、変なプレッシャーを感じないようにのびのびとやってくれれば、まず負けることはないと思うので。そうすればおのずと結果がついてくると思います。
ーーさいごに、インカレの意気込みや目標を教えてください
川副 まず予選でしっかり勝って、団体ベスト4。もちろん個人戦にも出るので、出るからには優勝狙って。みんなで自分らしい相撲を取り切って、全力出して勝つっていう。そしたら成績も上がりますので、そこはもう出し切る、自分の相撲を取り切って勝つっていうのが目標ですね。
大村 この大会が僕の相撲キャリア20年の、おそらく最後の試合になるので。もちろん死ぬ気で勝ちにいって、華々しく締めくくれたらいいな。悔いを残さないように、思いっきり自分の相撲を取りきっていきたいです。
鈴木 インカレであまりいい成績を残せたことがないので、個人戦の目標としては2勝できたら。あと、団体戦はレギュラーではないので、他のメンバーを支えられるように全力でサポートしていきます。
(取材・編集 中村環為、写真 上野慶太郎、田部井駿平)

◆川副楓馬(かわぞえ・ふうま)※写真左
熊本県・文徳高校出身。スポーツ科学部3年。今年度から主将に就任。2年前に弊会の取材で書いていただいた色紙を、ことしも掲げていただきました!
◆大村晃央(おおむら・あきひろ)※写真中央
静岡県・飛龍高校出身。社会科学部4年。5人制団体戦では中堅として出場。団体戦では最上級生ながら味方を鼓舞し、6月の東日本学生選手権では監督から「チームの起爆剤」として起用されました!
◆鈴木大介(すずき・だいすけ)※写真右
埼玉県・早稲田本庄高校出身。法学部3年。7月・金沢大会の帰路では「ずっと教科書を開きながら新幹線に乗っていました」と、文武両道を体現しています!