12月8日、早稲田アリーナにて第77回早慶対抗フェンシング競技定期戦大会(早慶戦)が開催された。今年はブラスバンドによる応援も加わり、試合の合間には両校応援部のパフォーマンスが披露されるなど、例年以上に熱気あふれる大会となった。フルーレ、エペ、サーブルの男女別の団体戦が行われ、計6試合の結果によって総合優勝が決まる早慶戦。早大は、男子が勝ち星をあげることができなかったものの女子が全勝し、成績は3勝3敗のイーブンに。得失点差で早大が総合優勝し、2連覇を果たした。
★女子フルーレ
開幕戦となった女子フルーレには、森多舞(スポ4=山口・岩国工)、早川葵彩(スポ2=東京・東亜学園)、沼田美咲(政経1=埼玉・早大本庄)が出場。長期間けがに苦しんでいた沼田も本来の調子を取り戻し、全員が万全のコンディションで臨んだ。日本一も経験しているこのメンバーの実力は圧倒的であり、「女子フルーレで失点数を抑えて、男子が気楽にできるようにしようという作戦だった」と、序盤から早大ペースで試合を進める。その勢いは終盤まで劣ることなく、「15点以下に抑えよう」という狙い通り45-14で勝利した。
★男子フルーレ
男子フルーレに出場したのは、竹内隆晟 (スポ3=岡山大安寺中教)、中本尚志 (スポ2=山口・岩国工)、圓尾晃生 (スポ1=香川・高松北)、川邉太郎 (社1=大分豊府)。手に汗を握る逆転劇を繰り広げたものの、惜しくも勝利とはならなかった。初戦から接戦が続く中、中本は素早い動きと長いリーチを活かした守備で相手を翻弄(ほんろう)し、序盤から得点を重ねた。続く試合では、竹内が持ち前の冷静な判断力と巧みな剣さばきで相手をエンドラインまで追い込み、8ポイントを連取する大逆転を見せたが、その後の試合で相手に再びリードを奪われる波乱の展開となった。川邉は無効面に当たる攻撃を避けながら冷静に対応し、重要な場面で得点を重ね、チームの士気を高めた。最終戦では竹内が相手の鋭い反撃に苦しみ、42-44と惜敗。それでも、全選手が全力を尽くし、観客を魅了する熱戦を展開した。
★女子エペ
女子エペには、池田佳央理(社2=岡山大安寺中教)、太田陽詩(スポ1=京都・龍谷大平安)、西岡瞳(スポ1=兵庫・三田学園)が出場。フルメンバーで臨んだ女子エペは、序盤からテンポよく得点を重ね相手を突き放していく。終盤、池田が慶大のリザーブ選手を相手に苦戦し5ポイントを取り切ることができなかったものの、続く西岡がしっかりとカバーし、アンカーの太田がさらに点差を広げてフィニッシュ。45-21で勝利をあげた。
★男子エペ
男子エペには中本、圓尾、竹内が出場。緻密な戦術を駆使したものの、勝利をあげることはかなわなかったが、個々の持ち味が光る一戦となった。中本は男子フルーレでの熱戦の疲れもあり思うようにプレーすることができなかったが、それでも序盤の失点から立て直し、粘り強い戦いを見せた。圓尾は巧みな動きで得点を重ね、竹内も柔軟なステップで敵の隙を突くなど、各々の実力を存分に発揮した。試合は32-45で敗れはしたが、接戦が続くなか最後まで諦めない姿勢が観客の心を打ち、見応えのある試合となった。
★女子サーブル
女子サーブル陣は海外遠征やけがのために出場できず、フルーレの森多、早川、沼田が試合に臨んだ。ここで3名は専門の違いをものともせず快進撃を見せつける。1試合目を森多が5-0で勝利し流れをつくると、軽いフットワークとフィジカルの強さを武器に全員が得点を重ね、45-25で勝利。9試合のうち4試合で慶大を無得点に抑えるなど、女子陣の頼もしさが光る一戦となった。
★男子サーブル
男子サーブルに出場したのは、田中智也(商4=千葉・東葛飾)、密田創太 (国教3=東京・早大学院)、藤田凛 (法1=東京・本郷)の3名。激戦の末、相手の強力な攻撃に苦しみ敗戦を喫した。序盤から相手の勢いに押される展開が続き、密田や田中が懸命に粘り強い攻撃を見せるも、相手の防御を崩すことができなかった。藤田も果敢に攻め込んだが、相手の素早い反撃により得点を伸ばすことができなかった。選手たちは最後まで諦めず戦い抜いたものの、20-45と相手に大きく差をつけられる結果に。それでもチームの努力と気迫が観客の心を打つ試合となった。
少数精鋭で部を率いてきた4年生の田中主将、森多、マネジャーの寺門陽(社4=神奈川・川和)、杉浦早紀(教4=神奈川・川和)、篠塚咲良(文構4=アメリカ・ノースビルハイスクール)はこの早慶戦をもって引退する。森多は先日行われた全日本選手権にも出場したが、同期と臨む試合はこの早慶戦が最後であった。森多は「やっぱり(早慶戦は)集大成で、友達とか両親が見てくれているなかで試合をするのは最後だったので、今までで一番緊張しました」と話し、「めちゃめちゃ楽しかった。応援団とチア、吹奏楽が(そろったのが)初めてで盛り上がりが全然違うなと思って、本当に来てもらえてよかったと思います」と笑顔を見せた。次シーズンからは竹内が新主将となりチームをけん引する。(狄詩霓、槌田花)
★コメント
竹内隆晟 (スポ3=岡山大安寺中教)
――フルーレの試合で、プレー前の(剣を収めるような)動作には何か特別な意味がありますか
去年までめちゃくちゃ緊張していたので、緊張をちょっとでもやわらげようかなと思って、試合の前に自分の右手触って伸ばすということをやろうかなと。実は秋ぐらいから始めたんですけど、ずっと続けています。
――実際効果はありましたか
あるって思いたいですね(笑)。まあやらないよりマシかなと思ったので。
――フルーレの9セット目の時(接戦で最後回りを務めた場面)は、どういう気持ちで戦いましたか?
やっぱり相手の萩原くんも本当にすごい強い選手なので、リードがあっても正直プレッシャーが強かったです。今思ったらもうちょっと戦いようがあったのかな、ちょっと緊張やプレッシャーとかで、自分の思い通りに動けなかった部分があったので、そういうところは次につなげたいなと思います。
――エペの試合でも攻撃に勢いがあり、何度も相手をエンドラインに追い込みましたが、失点してしまった原因は何だと思いますか
相手が強くて、レベルなかなか高い選手なので、どうしても自分の思い通りの動きをさせてくれなかったというか、やっぱり最初に上手に足が疲れて、そこから足が気になったりして、普段動きができなかったところがちょっと原因かなと思います。
――最後に、 4年生になることへの意気込みを教えてください
来年自分が主将になるんですけど、今までは本当に引っ張ってもらってばかりだったんですけど、今年からチームを引っ張る立場になって、すごい責任感とかも芽生えて頑張れているので、来年もこのまま責任感をちゃんと強く持って、部をどんどん強くしていきたいと思います。
森多舞(スポ4=山口・岩国工)
――フルーレは45-14と快勝でしたが、振り返っていかがですか
そうですね。女子フルーレで失点数を抑えて、男子が気楽にできるようにしようっていう作戦だったので、15点以下には収めようみたいなことは話していて、本当に抑えられたのでよかったです。
――コンデションもよかったですか
沼田が膝をけがしていて、インカレとかもあまり状態はよくなかったんですけど、そこからかなり回復して、今はいい状態と言っていたので。動きも結構よかったと思います。
――最後の早慶戦、最上級生としてどのような思いで臨みましたか
絶対勝つという気持ちでずっと臨んでいました。勝率的にも、女子は絶対勝たないといけないというなかでやっていたので、失点数をどれだけ減らせるかっていうところをずっと考えてやっていました。
――今までの早慶戦と比べて緊張感はいかがでしたか
やっぱり(早慶戦は)集大成で、友達とか両親が見てくれているなかで試合をするのは最後だったので、今までで一番緊張しました。でもめちゃめちゃ楽しかったし、応援団とチアと吹奏楽が初めてフェンシングの早慶戦に来てくれたから、それで盛り上がりが全然違うなと思って。本当に来てもらってよかったなと思います。ありがとうございます。
――サーブルは1人も専門の選手がいない状態でしたが、振り返っていかがですか
直前までサーブル陣が普通に出るってなっていて、私もパンフレットに「最後の年は1種目で許してあげる」って書いたのに(笑)まさかのフルーレのメンバーでサーブル出ることになって…でもみんな器用だし上手でした。相手も初心者とかいたと思うけど、もともとフィジカルは早稲田の方が全然強いから、勝ててよかったです。
――同期と臨むのは今日が最後でした
結構寂しい。マネジャーと智也は完全に今日で終わりだから、寂しい気持ちもあります。試合中はやっぱり試合にめっちゃ集中するからあまり考えないけど、やっぱり最後の1点の前、44点のときに、フルーレもサーブルも「これ1本取ったら…」という気持ちはありました。最後男子サーブルは負けてしまって「これで智也は引退か…」とも思ったけど、でも最高に楽しく終われたからよかったです。
――最後に全日本の目標をお願いします!
去年は2位で、決勝で日大に負けているんですけど、今年は(早大が)王座で優勝しているし、絶対勝てる相手ではあるので、最後日本一をとって有終の美を飾れたらうれしいです。