学生トップレベルの選手が集う全日本学生選抜卓球選手権大会(全日学選抜)が2年ぶりに開催された。全日学選抜は、全日本大学総合選手権・個人の部(全日学)でベスト16入りした選手や、各地域の学生連盟から推薦された選手、外国人留学生選手ら男女各48選手で行われる個人戦。早大女子部からは、笹尾明日香(社4=神奈川・横浜隼人)、黒野葵衣(スポ3=東京・武蔵野)、顧琳婧(スポ1=愛知・桜丘)の3人が出場した。3人全員が予選リーグ(※)を突破し決勝トーナメントへ駒を進めると、笹尾が順調に勝ち進み決勝へ。得意とするカットマンを相手にストレート勝ちを収め、笹尾は1年生時以来、2度目の全日学選抜優勝を果たした。
大会後、「予選リーグ敗退も優勝も紙一重。寸分の差で結果は変わってしまうと痛感した」と話した笹尾。言葉通り、予選リーグ3戦目で江戸絢音(愛知工大)にストレート負けを喫し、一時は決勝トーナメント進出に暗雲が漂った。しかし、希望を捨てずに残る2試合をゲームカウント3―1、3―0で勝ち切り、さらに江戸が2敗したため「危機的状況」を脱する。勝敗数で並んだ梅村優香(中大)に勝利した笹尾は、無事予選リーグ1位通過を決めた。
優勝を決め、ベンチの内田紘平(スポ4=北海道科学大高)とハイタッチする笹尾
混戦の予選リーグを突破した笹尾は、翌日の決勝トーナメントで失ゲーム数1の圧勝劇を繰り広げた。1回戦で幸先よくストレート勝ちを収めると、続く準々決勝で全日学3位の中田玲奈(筑波大)と対戦。得意とするカットマンを相手にフォアハンドを駆使して主導権を握り、危なげなく勝利した。快進撃を続ける笹尾だが、準決勝ではゲームカウント3-0から、この日初めて1ゲームを献上。しかしここでペースを乱さず、第5ゲームをわずか4失点で切り抜け、決勝進出を決めた。運命の決勝は、またしてもカットマンとの対決となった。試合は相手、山本真由(同志社大)のカットを攻略した笹尾が優位に展開。強打や回り込みのフォアドライブで積極的に攻め、6点差、4点差、6点差、7点差で突き放した。決勝トーナメントでは、3連敗している愛知工大勢や攻撃型の実力者が早い段階で姿を消すなか、盤石の試合運びを見せた笹尾。過去2年間苦杯をなめた全日学選抜で、優勝を勝ち取った。
他方、予選リーグを4勝1敗で2位通過した黒野と顧は、決勝トーナメント1回戦で予選1位通過の選手とぶつかった。黒野は前回対戦時にセットオールで勝利した大川真実(愛知工大)と1カ月ぶりの再戦。カットで粘る黒野に対して、大川は多彩なコース取りで得点を重ねていった。「きっちりやられた」(黒野)と、ストレート負けを喫し1回戦で姿を消すこととなった。黒野と同じくカットマンの顧は、出澤杏佳(専大)と対戦。第1、第2ゲームを連取され迎えた第3ゲーム、自ら攻める展開を増やしてリードを広げ、11―8でこのゲームを奪取した。しかし、反撃もここまで。続く2ゲームは出澤が立て直し、最後は顧のカウンターブロックが台からオーバーし万事休す。黒野と顧はベスト16で大会を終えた。
チャンスボールを強打する顧
笹尾は今回の優勝で、今年度未だ手にしていなかったシングルスの学生タイトルを獲得。実力を証明した一方で「愛知工大の監督に自分のやり方がわかられている」(笹尾)。年明けに控える全日本選手権やユニバーシアード代表選考会に向けて、取り組むべき課題を明確にした。また、黒野と顧も今月は関東学生リーグ戦、関東学生選手権と大会出場が続く。学生最高峰の戦いで得た経験を糧に、それぞれが今シーズンを全うする。
(記事、写真 鬼頭遥南)
※予選リーグ 男女各8ブロック、6名ずつで構成。上位2人までが決勝トーナメント出場権を得る。
結果
予選リーグ
▽笹尾明日香 女子Gブロック1位
○3-0安田優佳(福岡大)
○3-0三上紗希(東北福祉大)
●0-3江戸絢音(愛知工大)
○3-1李楠(東京富士大)
○3-0梅村優香(中大)
▽黒野葵衣 女子Aブロック2位
○3-0清水真梨(岡山商科大)
○3-1北澤梓(金城大)
○3-1趙虹雯(日本航空大)
●1-3出澤杏佳(専大)
▽顧琳婧 女子Hブロック2位
○3-0須藤未羽(札幌大)
○3-1何湛然(日大)
○3-0坂元睦月(福岡大)
●1-3大川真実(愛知工大)
決勝トーナメント
▽1回戦
○笹尾明日香4-0松岡(中大)
●黒野葵衣0-4大川真実(愛知工大)
●顧琳婧1-4出澤杏佳(専大)
▽準々決勝
○笹尾明日香4-0中田玲奈(筑波大)
▽準決勝
○笹尾明日香4-1田村美佳(立命館大)
▽決勝
○笹尾明日香4-0山本真由(同志社大)
コメント
笹尾明日香(社4=神奈川・横浜隼人)
――今大会を振り返っていかがですか
全日学選抜では1年生のときに優勝して2年生のときに予選リーグ落ちして、3年生ではベスト8で。今年、最後で優勝して有終の美を飾ることができてよかったです。
――試合の内容についてはいかがですか
最初、予選リーグで江戸選手(江戸絢音、日体大)に負けてしまい、今年も予選リーグ敗退が濃厚で、90%くらい諦めてしまうほどの状況でしたが、そこから梅村選手に3-0の21点以下で勝てたらチャンスがありそうということだったので、その気持ちで臨んだら3-0で勝つことができました。その後江戸選手が2敗になったので、自分と梅村選手が決勝トーナメントに上がれました。そんな危機的状況から優勝することができて、予選リーグ敗退も優勝も紙一重だなと思いました。寸分の差で結果は変わってしまうと痛感しました。
―― 予選リーグ3戦目の敗因はどのような点だったと考えられますか
江戸選手はあまり今まで対戦したことはなくて、強い選手だということは知っていましたが、あまり情報が自分の中になくて。愛知工大の選手に3連敗しているのですが、愛知工大の監督さんに自分のやり方がわかられていて。対策はしてきましたが、全部それが相手にやられてしまったのでそこを改善していかないといけないと思いました。
―― 決勝トーナメントは2度カットマンと対戦し、どちらも快勝でした
カットマンは好きで、得意です。高校生のときに韓国のカットマンの選手に2度負けて、そのときに猛特訓して得意になりました。今、大学では半分以上カットマンの日もあって、逆に攻撃マンと練習できないのが辛いところではあります(笑)。
―― 最後に、今後の意気込みをお願いいたします
12月はTリーグもありますし、1月は全日本選手権もありますし、2月にはユニバーシアードの選考会にも出場する予定で。イタリアのユニバーシアードでは3個メダルを獲ることができてすごくいい経験になりました。選考会で勝って、今回も出場してメダルが獲れるように頑張りたいです。
黒野葵衣(スポ3=東京・武蔵野)
――今大会を振り返っていかがですか
女子部としては(11月中旬の)日本リーグに出させていただいて、3日後には秋リーグがあるという過密なスケジュールで。団体戦に挟まれた個人戦だったのでどういうふうにしたらいいのかなと、心配事じゃありませんが、そういう思いがありました。とりあえず予選リーグを抜けられたのは良かったです。
――試合の内容についてはいかがですか
予選リーグは、2年前に負けた選手がブロックに入ってきて、その人に勝たないと抜けられない状態でした。少し厳しいかなと思っていましたが、そこで勝てたのが一番の収穫だったと思います。決勝トーナメントは、予選リーグ2位通過だったので違うブロックの1位と当たることは確定で。大川選手(愛知工大)は、前回セットオールで勝ちましたが、今回はきっちりやられたという感じでした。
―― 間もなく開幕するリーグ戦に向けて、意気込みをお願いいたします
今回は3年以下で出ることになったので、非公式という形ではありますが、3年以下でどのくらいできるかを試せればと思います。