岩渕が大会初優勝を飾り、「日本一」へ!

卓球ダブルス

 5年越しの悲願を達成した。国際クラス別肢体不自由者選手権は、全日本選手権と位置付けられ国内で最も重要度が高い。この大会では、障害の程度によってクラス分けがされ試合が行われる。車いすがクラス1〜5、立位がクラス6〜10、およびSとなり、数字が大きい程障害の程度が軽い。早大の岩渕幸洋(教2=東京・早実)は、男子シングルスのクラス9に所属。予選リーグを2勝で突破すると、決勝トーナメントも順当に勝ち上がる。昨年度覇者との決勝をゲームカウント3―1で制すると、ついに大会初優勝を飾った。

準決勝でプレーする岩渕

 圧倒的な強さで白星を挙げていった。予選Bブロックの岩渕は「当たる選手は決まっていたので、対策を入念にやってきた」(岩渕)との言葉通り、初戦を危なげなくストレート勝ち、2戦目は相手の棄権により不戦勝と、順調に1位で通過。午後からの決勝トーナメントでは、試合のレベルも徐々に上がっていく。準決勝では相手の変化のある返しにミスを誘われ、序盤から1点を争うシーソーゲームに。ジュースにもつれながら勝ち切ると、続くゲームからはしっかりと相手のプレーに対応し自分のペースに持ち込む。第2ゲーム以降は大きく点差を付けたストレート勝ちで、決勝進出を決めた。

 昨年度チャンピオンを破り、頂点へ。ついに迎えた決勝の相手は、「ここ3年はずっと負けていた」という大会2連覇の戦績を持つ実力者・鈴木伸幸(大分県)。障害者卓球では、それぞれの選手特有のプレースタイルを研究し、どのように応戦するかが勝利への大きなポイントとなる。岩渕は、主にサーブレシーブとクロスカウンターの精度を上げて試合に臨んできた。第2ゲームでは力で押され、今大会初めてゲームを奪われる。しかし、ここで勢いに飲まれるわけにはいかない。第3ゲーム1―5の場面から積極的に前陣へ出ると、持ち味のフォアドライブで怒濤の追い上げを見せ、そのまま流れを相手に返すことはなかった。「勝負を決定付けることができた」との言葉通り、決め手となったのは練習を重点的に行ったクロスカウンター。積み上げたものが結実してつかんだ初優勝に、大きなガッツポーズを見せた。

決勝で得点を決め、ガッツポーズする岩渕

 ジャパンオープンで2連覇を果たし、世界ランクもクラス9で日本人トップの岩渕は、この大会での優勝により名実共に日本一となった。年内の全試合を終え、次なる大会は3連覇を懸けたジャパンオープン。また、来年度からはリオデジャネイロパラ五輪へ向けての選考も本格化する。戦略や相性次第で上を目指せる障害者卓球では、今年度の海外選手との対戦経験は存分に生かされるだろう。最高の舞台への切符をつかむため、世界の強敵への挑戦が始まる。

(記事 村上夕季、写真 加藤万理子)

クラス9で見事優勝を果たした岩渕

結果

▽男子シングルスクラス9
決勝
○岩渕3―1鈴木伸幸(大分県)
準決勝
○岩渕3―0永井浩之(京都府)
準々決勝
○岩渕3―0塚崎智宏(岡山県)
予選リーグBブロック
○岩渕3―0大田勉(鹿児島県)
○岩渕―奥畑哲也(兵庫県) 不戦勝

コメント

岩渕幸洋(教2=東京・早実)

――優勝おめでとうございます。いまのお気持ちを教えてください

優勝するまでに5年という長い月日がかかってしまって。やっと優勝できて良かったです。

――初めて出場したのはいつでしょうか

第2回大会です。高校1年生の時でした。

――この大会は全日本選手権という位置付けですが、先日のアジアパラ競技大会後はどのような調整をされてきましたか

やはり当たる相手は決まっていたので、その対策を入念にやってきました。

――予選リーグ1試合目、大田勉選手との試合を振り返って

あまり気にしなくて、自分の調子を上げていこうという感じでした。

――決勝トーナメント1試合目で対戦した塚崎智宏選手の印象は

珍しく若手の選手なので、ちょっと成長しているのかなという印象で、しっかりと油断せずに試合に臨んだのですが、なんとか勝つことができました。

――決勝トーナメントからは声も出して気合いが入っている印象でした

そうですね。やはりこの大会は気を抜くことがないというか。やはり最初からエンジンをかけていかないといけないので、気持ちの面でも声を出してやってやろうかなと思っていました。

――決勝トーナメント2試合目の永井選手との試合は第1ゲームがジュース。勢いのある相手でした

自分が以前対戦したときもフルゲームにもつれて、結構やりにくい選手なので。最初はちょっと変なボールで自分のミスが出てしまって競ってしまったのですけど。次のセットからはレシーブをしっかりと変えて、自分のかたちになったので、そんなに慌てることなく試合ができました。

――どういったところがやりづらいのでしょうか

表を使っている選手で、フォアの打ち方とかレシーブとかも全然違うので。ロングサーブをフリックしたときに、普通はフリックで返すのですが、逆に待たれている感じがあったので。2セット目からは、ロングサーブをしっかりと突っついてちょっと変わったことをしていきました。

――決勝の対戦相手である鈴木伸幸選手にはどのような対策をされましたか

ここ3年はずっと負けていたのですけど、やはりいつも海外で一緒に戦っている選手でよく練習もするので。今回気を付けた点はサーブレシーブをまずしっかりすることと、対策としては結構フォアの上手い選手で、(練習では)ドライブを打ってもらったりスマッシュを打ってもらったりして、クロスに来ると分かっていたのでそれをしっかりカウンターできるように対策をしてきました。最後のポイントでやっと対応ができて。それで結構勝負を決定付けることができたと思います。

――試合展開としては2ゲーム目を取られ、3ゲーム目も最初は劣勢。どのように立て直していきましたか

相手の攻撃をしっかり、ゆっくりバックで返していこうと思っていたのですが、最初の方は少し下がり気味になってしまって、ちょっと合わなかったというのが点を取られてしまった原因かなと思います。最後の方はしっかり前に出て止めることができたので、挽回できたのだと思います。

――この大会を通して良かった点、成果を教えてください

サーブがいつもの健常者とはやはり違うので、レシーブとかでミスが出てしまって慌てるということが前まではあったのですけど、今回は最初から最後までレシーブがすごくうまくいったと思うので、本当に慌てずにできたことが収穫だと思います。

――今後につながる課題は見つかりましたか

バックでのミスが少し出たところがあったので、そういう細かいところですね。あとはバックのブロックの精度をもっと上げていきたいと思います。

――選手によってさまざまな特長があり選手によって対策をするという点が肢体不自由者卓球の面白さだと思いますが、岩渕選手自身の持ち味、得意なプレーは

自分はフォアのドライブが持ち味なので、しっかりと3球目をフォアでドライブして、どんどんフォアで寄せていけるようにする、そこが強みだと思っています。あとはカウンターや、バックで粘ってからしっかり打てる球をフォアでカウンターするというところが持ち味です。

――今後の大会の予定は

年内はこの大会で終わりで、次に3月に国内大会のジャパンオープンがあって、その次から海外の試合が始まるという感じです。来年の試合はリオ(リオデジャネイロパラ五輪)の予選の年になるので、ことしよりも多く海外の大会を回ろうと思っています。

――3連覇を目指すジャパンオープン向けて意気込みをお願いします

もちろん3連覇をして、前回個人戦では勝ったのですが団体戦で2回負けてしまったので団体戦でも負けないように。個人戦はしっかり全勝できるように頑張りたいと思います。

――リオパラ五輪への道が本格的になると思いますが、来年度への意気込みをお願いします

ことし世界の上位の選手とだいたい試合ができたので、次からはしっかりと対策を練って、勝つ試合をしっかりと勝てるようにしたいです。ポイント面でも、ランキングトップ10に入れるように頑張りたいと思っています。