ことしもカベは破れず…それでも見えた明るい兆し

女子アーチェリー

 「相手を気にせず自分に集中しよう」(倉坪絢女子リーダー、スポ4=岐阜・高山西)。その言葉通りの射だった。関東学生リーグ戦(リーグ戦)でことしもブロック全勝を果たした早大。優勝決定戦は9年連続で日体大とのマッチアップとなった。強豪校の空気にのまれることなく、それぞれが本来の力を発揮する。2419-2541で敗れまたしてもその牙城を崩すことはできなかったが、約200点の大差をつけられた1年前とは違い、試合後は選手たちの晴れやかな表情が目立った。

 この日の会場は無声レンジ。その影響からか序盤はどこか緊張感に包まれていた。空気を変えたのは4年生の二人だ。下級生の硬さをすぐに察した倉坪が、大きくはなくとも聞きやすい声を出そうと指示を送る。さらに倉坪以外の唯一の4年生である渡辺香蓮(文構4=東京・共立女子二)が率先して声を出し盛り上げると、いつもの早大らしい明るいムードが戻ってきた。昨季は陰でチームを支えていた渡辺は、今季は全試合でベストメンバー入り。最上級生となり立ち位置が変わっても、声と笑顔で仲間を鼓舞する姿勢は変わらない。1ラウンド目を終えた時点で上位4人の得点では離されたが、徐々に50点台のコールも増えいいかたちで前半を折り返した。

最上級生として倉坪と共にチームを支え続けた渡辺

 3年生以下のメンバーもプレーで応える。今季は苦しむ時期も多かった狐塚佑姫(社3=岐阜・聖マリア女学院)は、この日は安定感抜群の射を披露。600点には惜しくも届かなかったが、昨季の優勝決定戦から30点近く得点を伸ばした。初めてのリーグ戦を戦い抜いた、三好夏実(人2=東京・国際)と助川茜(政経2=岩手・花巻北)の2年生コンビも結果を残す。「夏実が頑張っている分私も頑張らなきゃという気持ちになる」と語った助川。お互いを刺激し合いながら成長を続ける二人が、この試合でも共に高得点をたたき出した。疲れの出る終盤も大きく数字を落とすことなく、リーグ戦の戦いが終幕。絶対王者にはかなわなかったが、確かに近づいた。

助川は今リーグ戦での経験を今後に生かしたい

 70メートル2ラウンドでのこの得点は、7月の日本学生王座決定戦(王座)に向け大きな収穫だ。また、「下の人たちのレベルが上がっている」(守屋麻樹監督、平3政経卒=東京・杉並)、「エイトとしても点数を伸ばすことができた」(倉坪)といった言葉が示すように、チーム力の底上げにも成功している。伸び悩んだ直近の2試合から立て直し、その勢いのまま臨む王座。ここ2年準々決勝敗退に終わっている大舞台で、今度こそ夢をかなえたい。

(記事、写真 川浪康太郎)

結果

▽女子
●早大2419-2541日体大

コメント

守屋麻樹監督(平3政経卒=東京・杉並)

――きょうの女子の試合をご覧になっていかがでしたか

実力の差がそのまま出た試合だったなというのが正直な感想です。

――去年と比べると高い点数が出ましたが、その点に関しては

よかった点としては、上の点数が出ていないにしても、下の人たちのレベルが上がっているので、チームとしての力が上がってきているというところかなと思います。

――関東学生リーグ戦(リーグ戦)全体を振り返って

ここ9年間、毎年リーグ戦5試合は負けなしできていて、最後の優勝決定戦で日体大さんとやって負けるというのを繰り返して、ある程度力があることは間違いないんだけれども、もう一皮もう二皮むけていかないといけないなと感じています。

――一方、男子部は振り返っていかがですか

男子の方も新戦力が加わって、さらにチーム力が上がってきていて、そういう意味では第5戦で負けたのが残念だったのですが、王座(全日本学生王座決定戦)に向けていいかたちで終えられたのではないかなと思います。

――全日本学生東日本(東日本)、王座ではどんなことを期待していますか

まず東日本に関しては、上位の人はインカレ(全日本学生個人選手権)の切符を取れる試合なので、チャレンジして全部出し切ってほしいです。去年は男子が準優勝だったのですが、ことしは男女そろって優勝を目指して頑張ってほしいです。王座の方式では、チームとして頑張ると勝てる試合でもあるので、自信を持ってやってほしいと思います。

倉坪絢女子リーダー(スポ4=岐阜・高山西)

――前回の試合から2週間空きましたが、どのような調整をしてきましたか

今回自分たちより強い相手と戦うに当たって、相手の様子を気にしてしまう面があるので、相手を気にせず自分に集中しようということを呼び掛けてこの2週間過ごしてきました。

――70メートルの対策はしてきましたか

私自身はリーグ戦(関東学生リーグ戦)の途中にも少し70メートルの練習をしていたので、いきなりという感じではなく、短い時間でしたが準備はできていました。

――ここ2試合はチームとして点数を落としていましたが、修正はできましたか

リーグ戦は進むにつれて強い相手と当たるようになっていたので、それもあって自分に集中し切れなくて相手チームに意識がいってしまって点数が出ないということがありました。それだけは絶対にないように、自分がやりたいことをしっかりやって自分に対して評価ができるようにということを考えて臨みました。今回強い相手だったのですが、相手の点数を気にせずに明るい雰囲気を保てたのでよかったです。

――優勝決定戦ということで緊張はありませんでしたか

無声ということもあって、少し声を落として声のトーンが落ちてしまって、そこで暗い雰囲気になることもあったのですが、大きな声を出すのではなく声を張って聞きやすい声を出そうという意識をしてからは、みんな明るくなったのでよかったです。

――敗れはしましたが、点数自体は去年と比べて100点近く上がりました。そのことに関してはいかがですか

負けてはしまったのですが、去年より100点近く点数が上がったと共に、下の4人も頑張ってエイトとしても点数を伸ばすことができた試合になったので、自分の実力を出すという意味ではいい試合だったと思います。

――リーグ戦全体を振り返って

リーグ戦はやはり最後の2試合の印象が強くて、少し暗い雰囲気で終わってしまって、上の4人がどうしても経験者で固まってしまう部分がありました。今回は全員で戦っている雰囲気があってすごくよかったです。

――最後に、全日本学生王座決定戦に向けて意気込みをお願いします

今回の試合で再確認させられたのが、上の4人の点数でも日本一になる学校とは圧倒的な差をつけられるということでした。短い期間なのですが、2本にどれだけ懸けられるかということを意識してやっていきたいなと思います。

狐塚佑姫(社3=岐阜・聖マリア女学院)

――試合を終えて

点差をつけられてはしまったのですが、ワセダはやるべきことはやれたかなという感じで、王座(日本学生王座決定戦)に向けていい経験になったと思います。

――70メートルのイメージはいかがでしたか

あまり射ち込めてはいなくて、私自身調子がよくなくて矢が散ってしまっていたのですが、練習よりはいい射ができたかなと思います。

――1年前のこの試合も経験されていますが、去年と比べてみていかがですか

去年は相当点数が悪かったのですが、去年よりは相手の雰囲気にのまれずに自分のやるべきことだけをできました。

――関東学生リーグ戦全体を通して、個人としてはどう振り返りますか

ショートハーフの試合が全然点数が出なくて悔しい思いをしていたのですが、気持ちを切り替えて悪い結果を引きずらずに、新しい気持ちでやれています。

――チームとしてはどうですか

8人ともが、誰かに任せるのではなく自分の点数を出すということを思っていて、誰もが頼りになる一選手として試合に臨めていました。外を向いている人がいないというか、みんな同じ方向を向いているということはすごく感じます。

――王座に向けた意気込みをお願いします

まだ選手になるかは分からないのですが、まずは選手を狙って、予選はもちろんいい点数を出して、トーナメントという新しい試合形式が出てくるので、それに向けて自分自身の心も強くしていきたいです。

助川茜(政経2=岩手・花巻北)

――試合を終えて

リーグ戦(関東学生リーグ戦)が始まってからずっと試合に調子を合わせることができなくて悔しい思いをしていたので、優勝決定戦に少しでも調子を合わせることができてよかったです。

――前回の試合で高得点が出たことは自信になりましたか

そうですね。最終戦で前の4戦よりもいい点数が出せたことは自信にもなりましたし、切り替えて臨むことができたのでよかったです。

――きょうは慣れない70メートルでしたが、対策は

高校の時にたくさん射っていたので、その時のことを思い出しながら射ちました。今後の王座(日本学生王座決定戦)などにもつながっていくので、いいスタートが切れればいいなと思っていました。

――リーグ戦を戦ってみていかがでしたか

初めて1カ月くらい毎週試合があるということがあって、疲労も溜まってくるし、うまく気持ちの切り替えができないということもあったのですが、先輩や同期に声を掛けていただいて、なんとか1カ月の試合を終えることができました。今回で悔しい思いもたくさんしたので、来年につなげられればいいかなと思っています。

――同期では三好夏実選手(人2=東京・国際)も活躍されていますが、刺激にはなりますか

そうですね、刺激にはなります。夏実が頑張っている分私も頑張らなきゃという気持ちになるので、いい存在というか、二人で頑張っていきたいです。

――王座に向けた意気込みをお願いします

1カ月空くのでフォームが崩れないように調整していきたいです。全国の舞台ということで今までよりも強いチームと当たることになるので、王座ということよりも、自分たちのフォームで射つことができればなと思います。