優勝は逃すも3位入賞!現体制を笑顔で終える

男子アーチェリー

 全国のアーチェリー部が一年間の全てを懸けて臨む、全日本学生王座決定戦(王座)。早大は、この試合で現体制が終了。まさに集大成となる一戦だ。5年連続で大舞台への出場を果たした早大は、創部史上初の優勝を狙い、2日間の熱戦に臨んだ。準決勝で関西の強豪・近大に敗れたものの、3位決定戦では関東大学リーグ戦(リーグ戦)で苦戦を強いられた立大を全く寄せ付けず、完勝。出場した4選手をはじめ、全部員が笑顔で大会を終えた。

 大学アーチェリーの頂上決戦である今大会。初日の予選では各大学の4名が70メートルを計72射放ち、上位3名の合計点で順位を決する。早大のメンバーは、野村翼主将(スポ4=愛知・岡崎北)、鬼塚聡(スポ4=千葉黎明)、市川遼治(スポ2=群馬・高崎商大付)、棚田歩(スポ2=北海道・帯広三条)の4名。リーグ戦終了後、約2週間にわたる熾烈(しれつ)な選考を突破した精鋭たちが、部員全員の思いを背負い、出場した。万全を整えてきた選手たち。各々が実力通りの射を披露し、3位という好位置で予選を通過した。2日目は、予選順位に応じたトーナメント方式。出場する3選手が各セット2射ずつ射ち、合計点の多いチームに2ポイント、同点の場合は1ポイントが加算される。5ポイントを先取した方が勝ち上がる、緊迫した戦いだ。昨年は優勝を狙える戦力が整いながら、実力を発揮できず初戦敗退と苦杯をなめた早大。昨年の悔しさを晴らすべく、前日の結果を受けて、野村、鬼塚、市川の3人がトーナメントに臨んだ。いずれも昨年までの王座経験者。その経験が生きたのか、ここでも危なげない射を見せ、準々決勝までを順当に突破した。

グータッチで鼓舞しあうメンバー

 1時間の休憩をはさんだ後、迎えた準決勝。相手は関西の強豪・近大だ。「強豪でも引け目をとるような先入観はなかった」(鬼塚)と、それまでと変わらず強い気持ちで挑んだ。しかし、「あまり波に乗り切れなかった」と野村。3人とも感覚としては悪くなかったものの、点数を伸ばし切れなかった。一方で、近大は確実に中心近くを射抜き、5ポイントを先取。ここで早大の王座制覇への道は断たれた。しかし、3位決定戦に進むことに。「後悔しないように、丁寧に大事に、思いを込めて一射一射射っていった」(市川)。泣いても笑っても最後の試合。敗戦から切り替え、大一番に臨んだ。相手は同じ関東の立大。準々決勝で昨年王者・日体大を破った今大会のダークホースだ。早大もリーグ戦では苦戦を強いられたが、この日は立大を寄せ付けなかった。緊迫した状況の中、1セット目の第一射で鬼塚がいきなり10点を射抜く。これで勢い付いた早大は、3人とも中心付近に射を集め、セットカウント6-0と完勝。結果がアナウンスされると、サポートとして支え続けた棚田を含めた4人で手をつなぎ、笑顔で高々と両手を突き上げた。

3位が決まり、喜びを爆発させる4人

 「57代として一年間頑張ってきた成果として3位という結果をいただけたことは、自分たち自身でも本当にうれしいことです」(野村)。試合後、主将は晴れやかな表情で語った。昨年の王座初戦敗退からスタートした現体制。秋の早慶戦での大敗など不安要素もあったが、全員が心を一つにチームの力を高めていくという意味である『昇華一心』をスローガンに掲げ、チームをつくり上げてきた。その結果、リーグ戦では初めて優勝決定戦に出場。実績を手に挑んだ王座だっただけに、日本一に届かなかった悔しさは残る。しかし、今年は実力を出し切っての3位。「試合がとても楽しかった」(鬼塚)と語った選手のみならず、応援に駆け付けた部員にも笑顔があふれていた。

 この試合をもって、現体制は終了。下級生のときから主力として戦ってきた野村、鬼塚は抜けるが、目標とするところは変わらず王座制覇だ。一年間で培ったチーム力を武器に、新たな一歩を踏み出す。

(記事 吉田優、写真 吉田優、森迫雄介)

結果

▽予選ラウンド
早大 3位 1958点


▽決勝ラウンド
2回戦
◯早大6ー0九大●
準々決勝
◯早大6ー0愛知産業大
準決勝
●早大1ー5近大
3位決定戦
◯早大6ー0立大

コメント

野村翼主将(スポ4=愛知・岡崎北)

――いまの率直な気持ちはいかがですか

3位という結果がとれたことはすごくうれしいことだと思っています。57代として一年頑張ってきた成果として3位という結果をいただけたことは、本当にうれしいことです。ただ一方で日本一をとれなかったことは悔しいなと思っています。

――昨日の予選から振り返ってみてチームの状態はいかがでしたか

予選も普段の練習くらいの点数は出ていて、堂々と試合に臨めていたのかなと思っていました。そういう状態であったのできょうも普段通りに臨めるかなと思っていて、その通りしっかりできたかなと思っています。きょうの試合についても普段通りに射てて普段通りの実力が出たからこその3位なのかなと思いました。

――きょう射つメンバーについてはどのように決めましたか

普段の練習を見てということと、安定感、あとは昨日の調子を見てというところが大きいです。でもどのメンバーが出てもしっかり実力、点数は出せていたと思います。

――近大との準決勝で敗れるかたちになってしまいました

あの試合についてはあまり乗り切れなかったかなという感じです。自分たちもそんなにすごく悪かったという感じでもなかったんですけど、毎回2、3点ずつくらいはもっと出すことができたのかなと思います。

――そこの数点を出し切れなかった原因はどこにあると思いますか

やはり実力不足というところも少しあったのかなと思いますし、普段通り射てたとしても実力がなければしっかり点数を出すことはできないと思うので、もっと実力を高めていくことが必要なのかなと思いました。

――そこから3位決定戦まではどのように切り替えましたか

負けてしまったものは仕方がないことですし、近大との試合もそこまで悪いものではなかったので、しっかり自分たちのプレーをしていこうということで練習で調整して、いつも通りできたと思います。落ち着いて射てていてしかも試合を楽しみながら臨むことができたので、本当によかったなと思います。

――57代として最後の試合でした。主将としても振り返ってどのような一年でしたか

一年間チームをまとめてきたんですけど、なかなかうまくいかない、大変なこともありました。でも去年の秋の早慶戦だとか、大事なところでしっかりとチームを立て直すことができたので、リーグ戦や王座の結果につなげることができたと思います。そこは本当によかったなと思います。

――58代に向けて伝えたいことや期待することは何でしょうか

王座のメンバーでいうと半分が4年生だったということで、戦力的にはやはり一時的には落ちてしまうと思います。ですがしっかりいまの現状を見つめて、強い選手を育てていくためにはどのようなことが必要なのかっていうのをしっかり考えて活動してほしいなと思います。いまの部員の様子を見ていて、今回の王座でも後輩の頑張りっていうのはたくさん見ることができたので、そういうところをしっかり引き伸ばしていけば来年もっともっといい成績を残せると思うので、期待しています。

鬼塚聡(スポ4=千葉黎明)

――まずはいまの気持ちをお聞かせください

3位で悔しい気持ちが半分と、試合がとても楽しかったので、楽しく終えられたなっていう気持ちが半分ですね。

――2日間を振り返って調子の方はいかがでしたか

きのうの70メートルダブルで640点は切らないだろうという自信はありました。打ってみたら前半は緊張もあって少し点数を落としてしまったんですけど、後半で点数を伸ばせたので、点数はガタガタだったんですけど、72射の合計としてはいつもどおりの点数が出せたと思います。きょうに関しては終始適度な緊張はずっとあって、思いどおりの射が全部できたかと言われるとそうではないです。出し切れなかったという感じが少しあります。

――出し切れなかったというのは準決勝の近大戦になるのでしょうか

はい、そうですね。準決勝は1本も10点を打てなくて、8点とか9点とか周りをずっと射ち続けた感じです。

――強豪の近大という部分は意識しましたか

勝ち上がってくるのは分かっていたので、いつも通りのチームの力を出していれば本当は勝てたんじゃないかという感じの点数だったので、強豪は強豪ですけど引け目をとるような先入観はなかったと思います。

――そこから3位決定戦まではどのように切り替えましたか

やっぱり一回気持ちが切れちゃいました。3位決定戦に勝っても王座制覇はできないので、だめだったかという気持ちはありました。でも先ほど申し上げたとおり楽しみたかったので、3位決定戦は楽しもうという気持ちで切り替えてやりました。

――3位決定戦に関してはやり切れましたか

結構緊張したんですけど、その中でも10点を結構入れられたので、そこに関してはよかったです。

――これで57代として最後の試合となります。改めていままでを振り返ってみていかがですか

三年間は先輩についていくっていう感じで言われたことをやったり、これをやればいいのかなっていう気持ちでやっていました。最後の一年間で自分たちが部活を回すってなって、同期にめちゃめちゃ頼ったりして私が自らみんなを動かしたかと言われるとそうではなかったかなという感じはします。本当に好きな感じに四年間ずっとやらせてもらったので、そこはすごく感謝しています。

――これからまた新しいチームがつくられていきます。後輩たちへのメッセージなどはありますか

最初58代は実力がまだまだ足りないなっていうのを実は結構感じていたんですけど、王座が近づくにつれて58代の成長を感じられました。このままずっと伸びていけば王座制覇も夢ではないと思うので、頑張ってほしいなと思います。

市川遼治(スポ2=群馬・高崎商大付)

――いまの率直な気持ちはいかがですか

優勝を狙っていて目標は達成できなかったのでやり切った感じはあまりないです。ただ悔しいという気持ちもあまりなくて、最後勝ちで終われるのが3位と優勝ということで、優勝はできなかったですけど、57代の先輩方は最後の試合ですし、最後勝てて終われたのはうれしいという気持ちがまず一番にあります。

――昨日の予選では70メートルでの自己新記録も出ましたが、好調でしたか

昨日は手ごたえとしてはあまり感じられなくて、点数がたまたまよかったっていう感じでした。自分の中で納得できない部分も多かったので実感はなかったんですが、これからまたいろいろ改善していけばこれくらいの点数は出るんじゃないかなという自信にはつながりました。

――きょうに関してはいかがでしたか

昨日よりはバシッと感というか、感触としてはよかったです。1、2射外してしまったのはあったんですが、全体的に落ち着いて点数をまとめられたと感じています。

――準決勝の近大戦を振り返っていただけますか

あまり相手を気にせずそれまで通りに射てたつもりだったんですけど、あまり意識しなくてもどこかで相手が近大だからと臆していた自分がいたのかもしれないですね。意識してないつもりでも少し感覚とずれてほんの少し外してしまうという射が三人とも続いてしまって、そこで点数がそれまでよりかは落としてしまうというのが続いてしまった感じでした。

――3位決定戦にはどのように切り替えて臨みましたか

これが本当に最後という気持ちでした。射てる射も最短で6射でしたし、後悔しないように、丁寧に大事に、思いを込めて一射一射射っていきました。

――昨年は自分の射ができなかったと悔しさの残る王座でした。一年経って、今年の王座はいかがでしたか

去年から悔しい思いがずっとあって、一年間それを大事にしてきました。低迷期とかもあったんですけど、なんとかリーグ戦にも間に合わせて、ここまで来れて、リーグ戦が終わってからはずっと王座のことを意識していました。56代で達成しえなかった、悔しかった思いを晴らそうという気持ち、57代としても勝ちたいという気持ちで、去年の悔しさをずっと大事に持ってこられたのはよかったと思います。

――これから58代としての一年が始まりますが、どのように過ごしていきたいですか

同期の棚田(歩、スポ2=北海道・帯広三条)はまた来年も一緒に戦えますし、同期や先輩、後輩も一緒に来年また王座に出られるようにという気持ちです。王座までにもいろいろ大会はありますが、一つ一つの大会に集中することが結果的に王座優勝にもつながってくると思うので、どの試合も大切に、真剣に取り組みたいと思います。

――個人的な目標はありますか

一番近い試合は9月のインカレになるのでそこももちろんですが、個人的にはきょうの点数で全日本に出られるくらいの点数はそろえられたと思うので、去年出られなかった分、全日本でいかに自分の力を発揮できるかっていうのを近い目標にしたいです。

棚田歩(スポ2=北海道・帯広三条)

――いまの率直な気持ちをお聞かせください

目標としていた優勝には届かなかったんですけど、3位ということで、勝ちで終われたのがとても大きいかなと思います。

――ご自身としては昨日の予選は少し悔しい結果となったと思いますが、振り返ってみていかがですか

去年出られなくて今年初めての王座だったので、やっぱり緊張して思ったより自分の射ち方ができなかったのが問題だったかなと思います。

――きょうはサポートに回りましたがどんな気持ちでいましたか

本当にただもうワセダが勝つことだけを祈ってずっと応援していました。

――選手3人はどのように見ていましたか

予選の点数を見ても分かるとおり、3人ともしっかり実力がある選手なので、ずっと安心して見ていました。

――きょうで57代としての試合が最後になりますが、一年間を振り返ってみていかがですか

やはり57代の皆さんは強い人が多い代っていうイメージがあって、結果も一年間しっかり残してきて、準備、実力をしっかり整えた状態で王座に来たなと思っています。思うような結果は出せなかったんですけど、57代として最後にしっかり勝ちで終われたのはよかったです。

――ここから58代としての一年が始まります。目標とするところを教えてください

個人としては今回の王座で全国の舞台で強い人たちと比べたらまだまだ実力が足りないということがよく分かりました。しっかりここから気持ちを切り替えて練習をして、個人の全国タイトルというものがまだないので、そこをとりたいと思います。チームとしては今まで4年生が引っ張っていたところがあると思うので、4年生がいなくなるということは大きな力がなくなるという感じはします。でもそこで僕たちがしっかり点数を出せることで、もう一度この舞台で優勝を目指すことができると思うので、しっかり僕たちが引っ張っていくという気持ちでやりたいと思います。