2014年に1部に昇格して以降、初めてブロック全勝を果たして迎えた関東学生リーグ戦(リーグ戦)優勝決定戦。関東最強を決めるこの試合で、長年早大の前に立ちはだかっている強敵、日体大と激突した。シーズンベストを更新するなど尻上がりに調子を上げてきている男子部は勢いそのままに関東の絶対王者に挑んだが、3748−3888で敗戦。リーグ戦優勝はならず、関東2位で全日本学生王座決定戦(王座)に臨むこととなった。
ブロック全勝を決めた最終戦(○3943−3911)から2週間。ゴールデンウィークの集中練習を挟み、これまでのリーグ戦と異なる70メートルという射程への対策も入念にこなして優勝決定戦を迎えた。しかし、序盤から早大は苦戦を強いられる。試合の入りに失敗した早大を尻目に、日体大はいきなり選手全員が50点以上を記録。その後早大は持ち直し高得点が出始めるも、日体大との差を一向に詰めることができない。それどころか点差は徐々に広がり、前半を約60点差で折り返した。
復調の兆しを見せている鬼塚聡(スポ4=千葉黎明)
何とか流れを引き寄せたい早大は、選手からの要望もあり、エンドごとに行われる円陣で遠藤宏之監督(平4政経卒=東京・早大学院)が声を掛けた。「良い雰囲気で試合はできているが、もっとできるはず!日体大は強いがもっと追い詰められる」と強めの激励を飛ばし、選手を鼓舞する。しかし、流れは最後まで早大に傾かなかった。後半も点差の広がりを止めることかなわず、最終的スコアは3748ー3888。140点差をつけられての完敗を喫した。
負けはしたが、雰囲気の良さは健在だった
「日体大さんも決して好調だったわけではなかった。ただ、こちらが食らいつけずに突き放されてしまった」と、遠藤監督は話す。アーチェリーはメンタルが非常に大きい影響をもたらすスポーツである。いくら日体大といえども、調子が良くない中で早大が点差を詰めた場合には焦りも生まれ、さらなるミスが誘発されたはずだ。つまり早大が本来の力を発揮できれば十分に勝機があった試合だったが、日体大にプレッシャーをかけられずに、立ち直させる猶予を与えてしまったことが敗因だと言えるだろう。しかし、決してこの敗戦は無駄にはならない。「全員でやっていくというチームづくりは順調。この悔しさ、危機感をプラスに持っていければ」(遠藤監督)、チームとしてさらなる成長が見込めるに違いない。そして1部昇格後初めて優勝決定戦まで駒を進めたことによって自信も得られたはずだ。王座開幕まで1カ月と少し。残された時間はそう多くはないが、日本一という最大の目標を射抜くべく、チーム力に磨きをかけにいく
(記事 森迫雄介、写真 松谷果林)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果
●早大3748-3888日体大
コメント
遠藤宏之監督(平4政経卒=東京・早大学院)
――午前に行われた男子の戦いぶりについて
勝てなかったということでは結果としては残念ですし、約140点差をつけられての敗戦です。これは地力でいってももっと(点差を)詰めることができたのではないかと思います。試合の流れで言っても、前半の5エンド目まではおよそ30点差くらいでした。6エンド目でさらに点差が30点ほど開き、後半に入ってもズルズル行ってしまった。そういう意味では、十分逆転可能なそれなりの点差であった前半のところで、最後のところで地力の差で突き放されたところはあると思います。また日体大の男子部もきょうは決して良い点数ではなかったです。お互いの持ち点でいうと、我々も点数を落としましたが、日体大さんも良いスコアではなかった。相手が本来の実力より点数を落としている中で、点差を詰めたら、アーチェリーはメンタルスポーツですのでなお相手は苦しんで戦局が見えなくなり、我々チャレンジャーにも十分勝機が芽生える場面はあったのですが、そこで食らい付けず、逆に突き放されたことで、楽に射たせてしまったところがあると思います。そういった意味で、流れのもったいなさ、もっとできたのではないかというのはあります。
――2巡目序盤の円陣で強めの激励をしたのも流れを良くするためですか
そうですね。実は4年生の方から「監督から言ってもらえませんか」と、流れを変えたいという話がありました。以前の立大戦や拓大戦であったように、途中で流れを変えるには何か声をかけたりすることが大事なので、円陣に入りましたが、やはりあれは必要だったと思います。
――これで男子は関東2位として全日本学生王座決定戦(王座)に挑むわけですが、期待することは
もちろん王座制覇です。十分に可能性はあります。リーグ戦と違い、王座は3人勝負になります。しかも全射の合計点数を競うのではなくセットカウントごとにポイントを取った取られたで戦っていますので、きょうのような試合形式ですと1本の大きなミスがダメージとなって引きずってしまいますけど、王座の試合形式だと大きなミスショットがあっても切り替えが可能です。いくらでも番狂わせが起きる試合形式なので、その時その瞬間に調子や雰囲気が良いチームが勝ち上がる。王座戦はある程度以上の実力が備わっていれば、その後のトーナメントで勝ち抜くのはその時の流れやチームワークが非常に大きいです。我々ワセダは一昨年準優勝を果たしたように、実力は備わっています。そういった意味でも今回の男子部も十分に王座制覇を狙えるところに来ています。全員でやっていくというチームづくりも順調です。結果は敗戦でしたが、彼らのチームワークや気持ちの部分のバインドはできていると思います。むしろ関東学生リーグ戦(リーグ戦)で準優勝で終わったことで、そのことに対する悔しさ、危機感をプラスに持っていけると思いますので、監督としてはこれはこれで王座に向けて良い弾みになると思っています。
野村翼(スポ4=愛知・岡崎北)
――優勝決定戦までの2週間はどのようなことを意識して過ごされましたか
ゴールデンウィークということで練習が頻繁に行われた時期であったので、本数をしっかりこなすということと、それぞれに目標をしっかりたててもらって練習に取り組んでもらうことを意識していました。
――70メートルの対策もそこで集中して取り組んだということですか
そうですね。70メートルを射ち始めたのが関東学生リーグ戦(リーグ戦)が終わった後のゴールデンウィークからだったので、時期的には遅くなってしまいましたが、しっかり70メートルを射ち込める時期であったので、しっかり取り組んでもらいました。70メートルだからこのように射たなければならないということもないので、しっかりいつも通り射とうという話はしました。
――それを踏まえて、きょうの日体大戦振り返っていかがですか
雰囲気は
無声応援の中でもしっかり楽しみながら試合ができたのかなとは思います。これはリーグ戦5試合を通してチームが成長できている証かなとは思いますが、一方の点数面ではまだまだ日体大さんには及ばず、目標点にも達しませんでした。
――試合中と試合後に、遠藤監督から強めの激励がありましたが
監督がおっしゃるように、このチームはまだまだできると思っていますし、実際にきょうの点数は練習と比べて伸び悩んでいるところはあるので、もっと自分たちの実力を出し切ったり、伸ばしていくことが必要だと思います。
――来週の全日本学生東日本選手権(東日本)はどういった位置付けで挑みますか
東日本は70メートルで行われ、風がかなり吹く会場なので、王座に向けての風対策ということも考えながら取り組んでいきたいです。また、全日本学生選手権(インカレ)予選でもあるので上位を目指して頑張りたいです。
――王座へ向けて主将としてどのようにチームを引っ張りたいですか
まずは選手として王座のメンバーに入ること。そして自分がチームのためにできることを考えていきたいです。選手としてチームを引っ張るのはもちろん、応援の人たちにも自分たちの思いを伝えて、しっかりみんながついてきてくれることを心がけながらチーム一丸となって王座に向けて頑張っていきたいと思います。
鬼塚聡(スポ4=千葉黎明)
――これまでのリーグ戦と異なり70メートルでの試合でしたが、どのような準備をしてきましたか
準備という準備はしてないんですけど、心持ちとして高校の時にずっと70メートルを射っていたので、そのことに関しては自信を持って臨めました。
――自身のプレーを振り返って
最近調子が悪くて点数が伸び悩んでいましたが、その中では自分では納得のいく点数を出せました。でも、昨年と比べると実力を最大限発揮することができなかったなと思います。
――きょうの試合を振り返って
こちらのスタートが出遅れたというのと、日体大さんが序盤からきっちり点数を取ってきたというのもあって結構実力差が出てしまった試合だったと思います。監督も最後の円陣で仰っていましたが、(日体大の)下の順位の人は、確かに射てない点数ではない点数を射っていたので、日体大といえど全員が凄くうまい訳ではないことが分かり、来年以降に向けては経験を得られる試合になったのではないかと思います。
――監督からの強めの激励について
いつも監督が仰っていることですが「もっとできる、もっとやれる」という言葉は、自分の中ではやり切ったと思って帰ってきたエンドでも、しばらく経つと「もっとやれたかな」という、後悔ではないですけど、そういった思いが生まれるエンドが多々あったので、そこで監督の言葉が入ったりすると改めて気を引き締めて射つことができたかなと思います。
――東日本はどのような位置付けで臨みますか
上位に食い込めばインカレの切符を手に入れられる試合なので、まずはそこを目指したいです。個人の試合になるので、ある程度の点数を出せば全日本ターゲットにも申請できるので、そこも目指していきたいです。
――王座に向けて
心の中では昨年より点数が出ていないのが引っかかっているので、持ち直して昨年同様良い点数を出せるようにというのと、一昨年準優勝した時にどういう練習、生活をしていたかというのを思い出して調子を戻していきたいです。
竹内寛人(スポ3=愛知・東海)
――きょうの試合を振り返って
チームとしては、無声というレンジの中でしたがいい雰囲気で進めることができたのではないかと思います。選手としては序盤で優勝決定戦の緊張感にうまく乗れなかった部分があり、飲まれてしまったかなと思います。
――相手の様子などはプレッシャーになりましたか
上手いということは分かっていたので、どれくらいの点数を射つのだろうかということは気になりましたが試合に入ってからはプレーで圧倒されたり飲まれたりということはなかったと思います。
――前半終了後の監督の言葉を聞いてどう思われましたか
最近個人としてはあまり結果が出ていない状況で、気持ちみたいなものが足りていないのかなと思いました。後半は監督のおっしゃる通り、自分が勝つんだという気持ちを持って射つことができました。
――前半と後半で調子に変化があったということでしょうか
前半は上手くいく射と上手くいかない射というのが大きく出ていて点数を落とす結果でしたが、後半はその波がだいぶ小さくなってきて、6本ちゃんと打てるエンドが多かったので、点数も上がりました。
――リーグ戦6試合を振り返って、成長できた点は
5回出場しましたが、それまでは点数が低いと基本的に気持ちがふさぎこんでしまって周りが見えなくなることが多かったです。それが今年のリーグ戦を通して周りを見ることができたり、ふさぎこまずに元気よくできるようになったと思います。
――王座決定戦に向けた課題や意気込みはありますか
チームとしては非常にいい状態だと思うので、自分を含め個人が自分自身の射形や緊張した時にどう射つのかとかというのをしっかり見直していければ王座を取れると思います。