王座制覇ならずも、35年ぶりの準優勝!

男子アーチェリー

 学生アーチャーにとって夢の舞台である全日本学生王座決定戦(王座)。『王座制覇』を目標に掲げ戦い抜いてきた1年間の集大成となる今大会に、男子部からは衣斐直也(スポ4=岐阜・大垣西)、池田亮(人3=東京・国際)、鬼塚聡(スポ2=千葉黎明)、野村翼(スポ2=愛知・岡崎北)の4人が挑んだ。前日の予選を2位という好成績で通過した早大の勢いは、決勝ラウンドでもとどまることを知らない。しかし『学生日本一』の称号は簡単に手に入るものではなかった。迎えた決勝戦、王座最多優勝を誇る西の強豪・近大の前に散り、準優勝で現体制を締めくくった。

 決勝ラウンドは2回戦からの登場となった早大。順調に勝ち進み盛り上がるチームを準決勝で待ち構えていたのは、昨年の王座優勝校である慶大だった。共に関東学生リーグ1部に所属し、普段から練習試合を行うなど切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲。「思い入れが強い分、絶対に負けられない」(野村)。そう意気込んで臨んだ一戦は、白熱した展開となった。序盤で相手にポイントを奪われてしまったものの、部員たちが本気の応援で選手たちを鼓舞する。選手が高得点を出すたびに沸き上がる大歓声。チーム一体となって勝利をつかみに行く姿は、リーグ戦のときから変わらない。応援の力も借りて、5-3で接戦を制した早大が最終決戦へと駒を進めた。

次期主将として期待のかかる池田

 目標まであと一勝。この1年間欲してきた『王座制覇』という悲願を成し遂げるためには、絶対に負けられない大一番だ。その相手は昨年の王座準々決勝で0-6と完敗を喫した強敵・近大。厳しい戦いが予想されたが、リーグ戦や東日本大会を通して着実に力を付けてきた早大が必死の食らいつきを見せる。そして引き分けのまま迎えた最終4セット目、プレッシャーからか射が乱れてしまい得点を伸ばすことができない。最後に実力差を痛感するかたちとなり、3-5で敗戦。長かった挑戦は幕を閉じた。

チームの雰囲気は最高だった

 男子部が歩んできた道のりは、決して平たんなものではなかった。13年まで関東学生リーグ2部に所属しており、王座へ出場することすら叶わなかったのだ。それでもひたむきに努力を続け、王座準優勝という結果に至った。「諦めないこと」。衣斐がアーチェリー部での3年間で学んだものだ。今大会をもって4年生は引退となるが、その思いは後輩たちの胸にしっかり届いたはずだ。新体制でのスタートに向け、橋本尚記主将(政経4=東京・早大学院)は「新しいことにたくさんチャレンジしてほしい」とエールを送る。今度こそ王者の座を射抜けるように。『学生日本一』の称号は、もう目の前だ。

(記事、写真 山下夢未)

笑顔で現体制を終えた

結果

2回戦

○早大217-199岡山大

準々決勝

○早大216-213同大

準決勝

○早大208-208慶大

決勝

●早大206-211近大

コメント

守屋麻樹監督(平3政経卒=東京・杉並)

――男女それぞれの戦いぶりをどうご覧になりましたか

女子については、きのうの予選の最後の方で順位を落としてしまったんですよね。それできょうは6位からのスタートになってしまったので、予選を4位以内で通過できていたら、また違った結果になったのかなと思います。ただ、女子の実力はフルに発揮できていたと思うので、この結果はしょうがないですし、切り替えてやっていきたいですね。男子の方は、決勝でも本当に堂々として落ち着いていて、すごく良い試合展開でした。何よりも選手が楽しそうにプレーしていて、応援の人たちも本気でやってくれて、チームとして一体感がありましたね。出場していた中で1番良いチームとして試合ができたのではないかなと思います。ただ、やっぱり残念だし悔しいので、徹底的に課題を潰して更に良いチームを作っていきたいです。

――チームの雰囲気の良さは、橋本主将ら幹部の力によるところが大きいのですか

55代は54代とは大きく違うんですよね。きょねんのチームは元気にみんなで盛り上がるという感じだったんですけど、ことしのチームは冷静で淡々としているというか、危機管理が得意な人たちが多かったです。それゆえに、4年生の誰か1人がチームを引っ張るというよりは、みんなで話し合って解決するかたちをとっていましたね。学年が上の人たちは実力が出しやすく、下の人たちも実力が上がりやすいという感じで、バランスのとれた良いチームだったなと思っています。

――次期主将の池田選手と、次期女子リーダーである倉坪選手に期待することは

毎年言っているんですけど、自分たちのやり方を尊重して、やりたいようにやって欲しいですね。それぞれ自分のリーダーシップというものがあるので、本当にのびのびと楽しくやって欲しいなと思います。

――監督として、今後どのような指導を行っていきたいですか

技術面についてはコーチに任せている部分があるので、どちらかというと誰もがちゃんとチームに貢献しているという意識を持てるような場や、それぞれに与えられた役割をしっかり認識できる雰囲気をつくっていきたいです。また、上を目指す選手が高いところにセルフイメージを持って、互いに切磋琢磨(せっさたくま)するようなチームを目指していきたいと思います。

橋本尚記主将(政経4=東京・早大学院)

――王座を終えての率直なお気持ちは

男子は35年ぶりの2位ということで、それは本当にすごいことだなと感じています。優勝はできませんでしたが、足りなかった部分を反省して、またがんばってほしいです。部員がきつい練習やミーティングをきちんとこなしてくれて、自分たちが理想としてきた雰囲気づくりなどができたことは誇りに思っています。本当にいいチームで締めくくることができました。

――準決勝と決勝、共に白熱した試合展開でした

思った以上に選手たちはリラックスしていて、緊張感がないと言うわけではないんですけど(笑)、射線に入るまで練習どおりの雰囲気だったのはすごいと思いましたね。慶大や近大に対して物怖じせずチャレンジできたこと、そういった雰囲気をつくることができたのはチーム全体の力だと感じました。

――準決勝が終わった時点で涙ぐんでいらっしゃいましたね

びっくりしちゃって不覚にも泣いてしまいました。みんなには「早い!」と言われたんですけど、うれしかったので(笑)。慶大とは王座前の練習で1勝1敗の接戦だったので、勝って涙腺が緩んでしまいました。

――主将としての1年間を振り返って

最初はチームとしての一体感もなかったですし、いろいろと大変でしたね。きょねんの王座メンバーは4人中3人が4年生だったので、ことしは一からチームを作り直すという感じでしたし、自分の指導力不足などもあって、ごちゃごちゃした期間が長かったです。このチームがまとまってきたのが春合宿後とかなんですけど、最後は楽しく終わることができて、この1年が報われたと思います。

――これからのチームに期待することは

ことしの王座メンバーのうち3人はらいねんもありますし、今回の経験を生かしてがんばってほしいと思います。あとは、下の学年にはアグレッシブな子たちが多いので、新しいことにたくさんチャレンジして、自分たちのチームをつくっていってほしいです。

衣斐直也(スポ4=岐阜・大垣西)

――王座を終えての率直なお気持ちは

3年間この王座に懸けてやってきたので、終わってしまったのかという虚無感を感じています。

――決勝後の涙ぐむ姿が印象的でした

優勝することしか頭になかったので、負けてしまった悔しさから涙が出てしまいました。近大は強いので、そこを倒して優勝するという前提でしたし、決勝という最高の舞台で負けたことがやっぱり悔しかったですね。

――近大との差はどのような点に感じましたか

雨などでコンディションが悪い中でも、安定して高い点数を出すところです。コンディションが悪くても点数を出すための練習はしてきたんですけど、近大には及びませんでした。

――アーチェリー部での3年間で得たことは

諦めないことです。入部当初は王座に出場できるようなチームではなかったんですけど、諦めずにやってきて、優勝こそできませんでしたが準優勝で終わることができました。諦めなければ結果は出るということを学びました。

――アーチェリーは続けられますか

正直なところ、今はやりきった感があるので、続けようという気にはならないですね(笑)。でもアーチェリーが好きなので、時間が経てば、またやりたい気持ちが戻ってくると思います。

――これからのチームに期待することは

ことしよりもいいチームをつくって、次こそは王座制覇を成し遂げてくれると期待しています。

池田亮(人3=東京・国際)

――本日の試合を振り返っていかがですか

衣斐(直也、スポ4=岐阜・大垣西)さんが出ないということで自分が2年生2人を引っ張っていかないといけない立場でしたが、自分も団体戦の経験は少ないですし決勝に出るなどめったにないことだったので緊張していました。でもそれを見せると皆に影響してしまうと思ったのでなるべく冷静に頑張りました。

――ご自身の調子はいかがでしたか

そんなに悪くなくて、いつも通りという感じだったので良かったです。

――池田選手のみが王座経験者、残り2名は初出場という状況でした

2回目だからといって自分に経験があるかといえばそうでもないのですが、それでも経験があるという顔をして後輩2人を引っ張っていこうと思っていました。実際2人を引っ張っていくことも少しはできたんじゃないのかなと思います。

――近大との決勝戦を振り返っていかがでしたか

近大にはあと一歩で勝てるとか言われていましたけど、やっぱり選手にとっては食らいつくのが精一杯で、あと一歩というより三歩くらいは前にいる相手じゃないかと思います。だからもうすぐだからいいやっていうんじゃなくてそれ以上に力をつけて、今度は近大と渡り合えるように頑張りたいと思います。

――決勝戦では、池田選手が10点を取らなければそこで負けが決定するという場面がありましたが

自分はあの時そのことを知らなくて、10点出て勝ったかなって思ったんですけれど同点でしたね。ただ、あのような緊迫した場面で9点、10点を取れたことは自信になりました。

――チームメイトからの応援は力になりましたか

本当に色々なサポートをしていただいて自分たちは競技に集中できて、すごくいい環境でやらせてもらえたと感謝しています。4年生が引退して自分たちが幹部になって、そういうマネジメントの役割も必要になってくるんですけどその中でも選手として、そういった面と競技とを両立させていきたいと思っています。

――これから新体制が始まって、池田選手が主将になるとのことでしたが

そうなんですよ(笑)。実際自分が今までやったことのない職務ですし、探り探りですが皆がついてきてくれるなら、自分なりに、王座で優勝できるようなチームを作っていきたいと思います。

――試合中には他校の選手からの応援もありました

他校から応援をもらったのがすごく嬉しくて。やっぱり(決勝戦が)関東対関西の学校の対決だったので、その中で関東の他の大学に一致団結して早大を応援してもらえるというのは本当に嬉しい状況で、その中で試合ができるというとてもおもしろい経験をさせていただきました。

――最後に、今後の目標を教えてください

また1年頑張らないといけなくて大変だとは思うのですが、地道に、全国大会で優勝できるようワセダのエースとして頑張っていきたいと思います。

鬼塚聡(スポ2=千葉黎明)

――本日の試合を振り返って

予選5位くらいから上を狙っていこうという感じだったのが、意外に2位でいけて良いスタートを切ることができました。決勝戦は、序盤に結構点数が取れて勝てるイメージができていたのですが、そこまできて2位になってしまったことは悔しかったです。

――ご自身の調子はいかがでしたか

東日本大会の頃から自信がついてきていて今回も実力を割と発揮できていたと思うのですが、風に惑わされたりして目標点には届きませんでした。それでも調子は良かった方かなと思います。

――やはり雨や風の影響は大きかったですか

それほど大きいって程でもなかったのですが、実際に試合でちゃんと射てるかとなった時に、(風雨に)びびってしまって緩んだ射があったかなと思います。

――初の王座出場でしたね

そうなんですけどあまり初めてという感じはしなくて。高校でも団体戦の経験はあったので、すごく久しぶりで懐かしいな、という感じでした。いつも通り普通にプレーできたかなと思います。

――試合中も笑顔が見られ、緊張の中でも試合を楽しんでおられるという印象を受けましたが、試合中の雰囲気はいかがでしたか

応援がすごく楽しそうに盛り上げてくれて、射っている方もいいプレーができました。みんなで試合を楽しんでいる感じで自然と笑顔が出ました。

――今後新体制が始まりますが、その中でどのような役割を果たしたいですか

この王座決勝戦を経験した1人として、ここから1位になるにはどうしたらいいのか考えて実行し、56代の方々の力になれたらと思います。

――今後の目標をお願いします

秋にインカレや全日本があるので、インカレで個人で優勝すること、あとはまだ出場できるか分からないのですか全日本で入賞すること、そして1年後にこの王座に来て、決勝戦で勝って1位になりたいと思います。

野村翼(スポ2=愛知・岡崎北)

――本日の試合を振り返っていかがですか

そうですね、決勝まで行ったのに優勝を逃してしまったことは本当に残念です。それでも2位まで上り詰められたのは、この1年間の努力の表れだと思っています。

――ご自身の調子はいかがでしたか

自分としてはあまり良い調子ではなかったんですけれど、チームの皆さんが支えてくれて射ちきることができました。

――初の王座出場でしたね

はい、1日目の予選ではすごく緊張してしまって最初の方は点数が伸び悩んでしまったのですが、途中から切り替えることができて点数も出るようになりました。

――切り替えることができた要因は

選手同士だけではなく応援の方とも話をしたりするうちに、普段通りの自分を出せるようになりました。

――試合中も笑顔が見られ、緊張の中でも試合を楽しんでおられるような印象を受けましたが、試合中の雰囲気はいかがでしたか

あえて笑うとかではなく、みんなで試合を楽しめて自然に出てくる笑顔だったかなと思います。

――準決勝のあと対戦した慶大の選手と会話する姿も見られました

慶大とは早慶戦などでの交流もあって普段から親しくさせていただいていて思い入れが強い分、絶対に負けられないと思っていました。

――新体制が始まって、今後は主力として活躍する立場となるかと思います

きょねんは応援として王座に来てまだ70メートルも打てなかったので、今回の王座に向けて急ピッチで仕上げてきたという感じでした。これから1年はじっくりと自分の力をつけていきたいと思います。

――最後に、今後の目標をお願いいたします

らいねんの王座に向けて、しっかり自分に厳しく取り組んでいきたいと思います。