4勝1敗という結果で全日本学生王座決定戦(王座)への出場を決めた早大はライバル・慶大との3位決定戦に臨んだ。慶大は昨年、王座制覇を成し遂げていることもあり、早大にとっては意識せざるを得ない相手。そんな宿敵同士の対決は、互いに譲らぬ熱戦となった。早大は序盤、風に悩まされ思うように点を重ねることができず、慶大にリードを許す。しかし徐々にリズムをつかみ始めた50メートル後半、見事逆転に成功。3835-3816で粘り勝ち、4年生にとっては最後となるリーグ戦を勝利で締めくくった。
仙譽晋一郎副将(スポ4=山口・宇部フロンティア大学付属香川)は試合を振り返って、「前日の練習では風が全く吹いていなかったので、50メートルは特にやりにくかった」と語った。出だしでつまずく選手も多く、慶大に遅れをとってしまう。そんな中で選手を後押ししたのは、いつも以上に力の入った応援だ。「後ろの人たちが健気にやってくれると選手も頑張れる」という守屋麻樹監督(平3政経卒=東京・杉並)の言葉通り、仲間に支えられペースをつかみ始めた早大は怒涛(どとう)の追い上げを見せた。
副将としてチームを勢いづけた仙譽
10点のリードを保ち迎えた30メートル。実力者ぞろいの慶大との点差はなかなか広がらない。それでも、「他の大学と違って慶大さんということで、必ず勝ちたい」と語った野村翼(スポ2=愛知・岡崎北)を筆頭に落ち着いて射を展開する。ブロック最終戦の時とは打って変わって、堂々とプレーする姿は成長を感じさせるものであった。試合は早大がそのまま逃げ切り19点差で終了。ライバルに競り勝った選手たちの顔には、満面の笑みが浮かんでいた。
3位決定戦でベストメンバーに選ばれた8人
4年生にとっては最後のリーグ戦。引退まで残すところ1か月となった。橋本尚記主将(政経4=東京・早大学院)は「今までかなりつらい練習やトレーニングをさせてきたが、みんな良くついてきてくれた」とうれしそうに語った。橋本が主将として1年間目指してきた『理想のチーム』とは、選手と応援する部員が共に戦い、良い雰囲気を作っていくことができるチームだ。王座に出場メンバーとして選考されるのはたったの4人。メンバー争いの激化は必至だ。そのような状況においても、「メンバーに選ばれても選ばれなくても、チームを良い方向に動かしたい」と語った仙譽の言葉から分かるように、アーチェリー部は今まさに『理想のチーム』を体現している。王座制覇のカギは集中を切らすことなく流れを作っていけるかどうか。学生日本一の夢に向かって、王者の座を射抜く時は来た。
(記事 山下夢未、写真 川浪康太郎)
結果
▽男子
○早大3835-3816慶大
コメント
守屋麻樹監督(平3政経卒=東京・杉並)
――リーグ戦を総括してみて、いかがですか
男子は予想外に良い出だしで、最初の方で思っていたよりも点数が出ていたんですけど、授業が始まって少し失速してしまったところが残念です。ただ、いろいろな人が頑張ってくれたという意味では王座に良い形で向かっていけるのではないかなと思います。女子については、毎年の話なんですけど、本来もうちょっと点数が出るべきだし、出さなきゃいけないと思っています。甘さというか、自分たちの課題としっかり向き合ってもっと高いレベルで争えるようにならないといけないと感じています。
――リーグ戦を通してチームが得たことは
今回のリーグ戦では、後ろの応援の人たちが一生懸命仕事をしてくれていましたね。そうやって健気にやってくれる人たちがいると選手も頑張れますし、それでチームが作られていくので、そこが今回の良いところだったと思います。
――先ほどおっしゃっていた『甘さ』以外に何か課題はありますか
『甘さ』にも通じることではあるのですが、自分たちはこのレベルに行くんだ、このレベルにふさわしい自分なんだというセルフイメージを持っていないと、「まあこれくらいで良いかな」という感じになってしまいますよね。今のチームはもっと高いところにセルフイメージを持つべきだと考えているので、そこに向けてどんな行動や思考、在り方が必要なのかということをもう一度見つめ直して、やるべきことをやってほしいです。
――リーグ戦を通して特に活躍が目立った選手は
男子は池田亮(人3=東京・国際)がエースとして頑張ってくれたし、野村翼(スポ2=愛知・岡崎北)もそれに続く存在としてすごく頑張ってくれたなと思います。女子は舩見真奈(スポ2=山形・鶴岡南)ですかね。
――2年生の活躍が目立ったリーグ戦という印象でした
そうですね、若いチームでしたよね(笑)。2年生はよく頑張りました。
――東日本大会、王座と試合が続きますが、どのような試合をしたいですか
残念ながら西日本大会が地震の影響で中止になってしまったので、東日本大会で得られるインカレのシード権は無くなってしまったのですが、公認の試合ということで、出場する選手には全日本につながるような結果を期待しています。王座については、昨年は慶大が優勝していますし、ことしはうちが獲るという気持ちで、男女共にきょねん以上に強いチームを作っていきたいなと思います。
橋本尚記主将(政経4=東京・早大学院)
――3位決定戦を終えての感想をお願いします
ひとまずは良かったなと安心しています。冷静に点数を見ると、早大も慶大さんもあまり点数は出ていなかったので、お互いに反省材料は見つかったかなと思っています。実際3位決定戦ということで自分たちは熱くなっていても周りから見るとそんなに重要な試合ではなくて、本当に重要なのは王座なので、そこに向けて課題が見つかった良い試合だったと思います。
――きょうの試合内容を振り返って
風と、相手が慶大さんということでそこを意識してしまった部分があったと思っています。風とかの外的要因に極力影響を受けないようにしようという話はずっとしていたのですが、弱さが出てしまったのかなという感じですね。ただ、50メートル折り返しぐらいで巻き返せたのを見ると強くなれたのかなと思います。
――きょうは応援にいつも以上に力が入っていると感じましたが
僕は常にいつも通りでやろうと言っているつもりなんですけど、自然と力が入ってしまったのかもしれないですね(笑)。
――きょうの試合で以前おっしゃっていた『理想のチーム』に近づけましたか
少しは近づいたかなと思います。点数が負けている状態から逆転できたというのは精神的な強さがついたのかなと感じる一方で、出だしの部分や風に影響を受けてしまった点で課題が見えました。良い意味でも悪い意味でも若いチームで発展途中なので、8人制の試合はきょうで最後ですが、下の世代には課題を克服してもらって、もっと良いチームを作っていってほしいです。
――主将としての残り1か月でチームに伝えたいことはありますか
かなりつらい練習や筋力トレーニングなどをさせてきた中で、みんな良くついてきてくれました。これまでやってきたことが最後の1か月で調整できるかできないかで大きく雰囲気が変わってしまうし、調整できなかったらもったいないので、みんなには最後まで集中してほしいです。
仙譽晋一郎副将(スポ4=山口・宇部フロンティア大学付属香川)
――3位決定戦を終えての感想をお願いします
個人的な感想としては、きのうからかなり点数が下がってしまって、そこが反省点です。もしかしたらきょうの試合が引退試合かもしれないのですが(笑)、まだ個人で試合に出るのでそこに生かしていきたいです。チームとしては勝ったのでとりあえず安心しました。王座に向けて良い流れだと思います。
――きょうは風が強かったですが、影響はありましたか
きのうはまったく吹いていなかったので、50メートルは特にやりにくかったです。30メートルではそんなに吹いていなかったので影響は無かったです。
――接戦でしたが
接戦だというのは何となく分かっていたのですが、射っている時はそんなに接戦という感じがしなくて、ただ楽しく射てたので特に意識することはなかったです。早慶戦だからというわけではなくて、第4戦、第5戦とあまり自分たちの雰囲気が作れていなくて、そこの反省で楽しくやろうって言っていたのが生かせたからだと思います。
――リーグ戦を総括して
チームとして歴代初めての3900点を出せたことはすごく嬉しかったのですが、惜しかった試合が2試合と、まったく届かなかった試合がきょうを含めて3試合あったので、及第点ぐらいかなと思っています。後輩たちが主力のチームなので、らいねんも頑張ってほしいです。
――王座に向けての意気込みをお願いします
ことしは勝てると思うので、メンバーに選考されてもされなくても幹部としてチームを良い方向に動かせるように頑張っていきたいです。
野村翼(スポ2=愛知・岡崎北)
――3位決定戦を終えての感想をお願いします
今までの試合よりは楽しめたのではないかなと思います。部の雰囲気も良くて、チームみんなで盛り上がることができました。
――きょうの試合内容を振り返って
50メートルで風を意識してしまい、いつも通りに射てなくて点数が低かったので、風に負けないように練習していきたいです。
――きょうの相手は慶大でしたが、特別に意識したことなどはありましたか
他の大学と違って慶大さんということで、この試合に必ず勝てるように意識してきました。
――リーグ戦を総括して
リーグ戦にはすべて出ることができたんですけど、後半になるにつれて点数が落ちてしまったのでらいねんのリーグ戦ではすべての試合で良い点数が出せるようにしたいと思います。
――東日本大会、王座と試合が続きますがどのように練習していきたいですか
東日本大会と王座は70メートルになるのでしっかり射ち込んで、東日本では入賞、王座ではまず選手として出場して、制覇を目指したいです。