ついに迎えた最終決戦。田寺洋貴主将(人4=茨城)が率いるチーム最後の戦いである全日本学生男子王座決定戦(王座)に臨んだ。各地方のリーグで上位に入った18校が集う今大会は、4人の選手登録の内3選手が試合に出場するトーナメント方式。6射4セットのセット制で行われ、得点の多い大学に2点、同点で両者に1点が入り5点先取した大学が勝ち進む。『男女王座制覇』を掲げ学生アーチェリー界最高峰の舞台に挑んだ早大は、準々決勝で強豪・近大に敗れベスト8で終幕。悲願達成はかなわなかった。
し烈な部内選考を勝ち抜いたのは田寺、寺澤紀彦(スポ4=東京・足立学園)、山本周平(スポ4=山梨・甲府一)、池田亮(人2=東京・国際)の四選手。4年生の三選手は昨年に続いての出場となった。2回戦から姿を現した早大は関大と対戦。実力的には決して楽に勝てる相手ではなかったが、選手と応援が一体となったスタイルを存分に発揮し得点を重ねていく。一射ごとに大歓声が沸き上がり、選手もそれに応えてガッツポーズ。「大きい舞台になるほど応援の力はすごいなととても思います」(寺澤)。目指し続けてきた舞台ゆえに固くなってしまう心配もあったが、それをチーム一丸となって吹き飛ばした。初戦は6-0のストレート勝ち。目標に向け、順調なスタートを切った。
円陣を組んで気合を入れる男子チーム
準々決勝に対するのは近大。昨年同じく準々決勝で対戦し、準決勝進出を阻まれた因縁の相手だ。前年度王者だけに厳しい戦いが予想されたが、日本一になるためには倒さなければいけない敵。「相手どうこうではなく僕たちの中でもらっていこう」(山本)と練習通りの射を心掛けた。だがカベは高く1セット目、2セット目を奪われ、0-4と後がない状況に追い込まれる。『男女王座制覇』へ、そして仲間たちと少しでも長くアーチェリーを続けるために、一射に気持ちを込める。応援も一層盛り上がりを見せ、選手を懸命に鼓舞。最後まで、諦めることは決してなかった。しかし、力及ばず0-6で敗戦。志半ばで途絶えた道に、選手たちは「悔しい」と口を揃え涙を流した。
主将として最後までチームをけん引した田寺主将
「楽しかった」。悔しいという言葉と同時に、選手が口にした言葉だ。目標には手が届かなかったが、ハイレベルな戦いの中でも自分たちのスタイルを貫き通した。2年前まで関東リーグ2部に沈んでいた早大は、王座制覇を目指せるまでに成長。その躍進を中心で支えてきたのが、今大会をもって引退を迎えた54代だ。主将として1年間部をけん引してきた田寺は、「これからも勝つことに貪欲になってほしい」と後輩にエールを送る。橋本尚記新主将(政経3=東京・早大学院)の下、再スタートを切る早大アーチェリー部。先輩たちの思いを受け継ぎ、果たせなかった夢に向けて歩み始める。
(記事 谷田部友香、写真 新庄佳恵)
結果
2回戦
○早大154-144関大
準々決勝
●早大143-162近大
コメント
守屋麻樹監督(平3政経卒=東京・杉並)
――今大会の男女それぞれの戦いぶりはいかがでしたか
正直なところ、もう少し当然いけると考えていました。最後は男女共に残念な結果になってしまったなというのがいまの気持ちですね。
――男子は近大に、女子はシュートオフまで持ち込んで同大に敗戦となりました。どちらもベスト8止まりとなりましたが結果については
男子の方の試合は見ていなかったんですけど、女子の方については、最初2点、4点と順調にとってこのままストレート勝ちすると思っていました。しかし最後の最後で不安が出てきたのかもしれないですね。やっぱり今年のチームは、チームとしてどう戦うかというのを一生懸命やってきていいチームにはなってきたとは思います。ただ、個人個人でもう少し自信であったりだとか、実力というものが必要なんだなということを男女の試合を見て思い知らされました。
――54代はもう引退となりますが、それに伴って何か伝えたいことはありますか
これまで色々ありましたが頑張りましたね、すごく。うちのチームはいますごく成長していて、次の成長に向かう新たな段階にきています。そういう意味ではいままで考えたことがないようなことや、思っていなかったことが試練という形で出てきました。それに対して真正面に向き合って頑張って解決をして、いいチームを作っていきたいと思います。
――全国でも戦っていける力をつけるためには、どんなチーム作りをしていかなければならないのでしょうか
やはり個人の強化だと思うんですよね。皆でではなくて、一人一人がしっかり射ちきってたくさん練習をして点数を出していくというところで、相手に対して怯むことなく点数を出していくんだ、というのを植え付けていかなければやらないと思います。
――次期主将橋本尚記(政経3=東京・早大学院)選手が中心となる新チームに期待したいこととは
どうなんでしょうね(笑)。何が起こるか分からないチームを作ってくれるのではないかなと思います。
――監督という視点からはどんな指導をしていきたいですか
これまでやってきた良いところは残して、でも変えるべきところもたくさんあると思うんですよね。でも変えるときって色々怖さみたいのも出てくると思うんですけど、そこは一旦手放してもらって、新しいことにどんどんチャレンジしてもらいたいです。失敗してもいいと思います。失敗から学んでいって、次につなげて来年はこの場でいい笑顔で終われるようなチームになっていってほしいなと思います。
田寺洋貴主将(人4=茨城)
――王座を終えていまの率直なお気持ちをお聞かせください
悔しいです。悔しいけど、楽しかったですね。
――ベスト8という結果については
目標は男女王座制覇ということで、優勝まで残るつもりでした。去年と一緒で、相手は同じ近大ということで満足まではいきませんね。もうちょっと食らいついていきたかったです。
――昨年同様近大は手強い相手だったのでしょうか
ランキングが1位だったので、実力的にもまだまだ格上だったのかなと
感じました。
――チームの点数については
1エンド目は向こうも動揺していたのかなと思います。応援の力も強くて、単純に一人一人の力だけではないのかなと感じていて、全く歯が立たなかったわけではないです。本当に1点2点の差でうちが勝てるのではないかなと思っていました。
――王座に向けて4人で話し合われていたことはありますか
王座のためにどうしていこうというのはそこまでないです。1年間かけてチームがどう戦っていくかというのはゆっくり時間をかけて作ってきたものなので。トーナメントのやり方についてはどう戦っていくかとうのは話しました。
――試合前にメンバー同士で話しかけあっていたことはありますか
いつも通り心からの応援というか、みんな当たってほしいなとい気持ちをもって、全力で気持ちがこもった言葉をかけていたのではないかなと思います。
――田寺選手方54代はきょうで引退となりますが
終わってしまったなという感じですねやっぱり。正直もう終わり?という感じでまだまだやりたいなというのがあるんですけど、後輩たちに残していかなくちゃいけないものもあるので正直実感はないですね。この後円陣をするときに、自分の主将の役目も終わるんだなという感じですね。次の代にしっかり受け渡しができたらいいなと思います。
――主将としてと1年間でチームに残せたものとは
何を残せたのかな(笑)。正直、現段階で自分が何を残せたのかは分からないです。それが見えてくるのは後輩たちがこれから1年間頑張って、成長した後にこれまで自分が残してきたものが見えるんじゃないかなと思います。自分がこの場に立っているのも先輩たちが頑張ってきてくれたおかげだし、先輩たちの王座に対する熱い思いを自分たちが受けてここまで頑張ってこれたので、いま現段階では自分たちが何を残せたのかは分からないですね。
――橋本選手が主将となり、これからは新体制となります。チームに期待していることはありますか
結果を残せるチームになってほしいなと思います。男女王座制覇を掲げてほしいかなと思います。1年間に自分は厳しい主将だったと思うので、これからも勝つことに貪欲になってほしいかなと思います。
寺澤紀彦(スポ4=東京・足立学園)
――最後の王座を終えて、いまのお気持ちは
近大にことしも負けてしまって、近大を倒して王座制覇するということをずっと目標としてやってきたので悔しいというそれだけですね。
――部内選考を勝ち抜いて再び選手として王座に出場してどのような意識で臨みましたか
僕は4番手で選手として入ったのですが、土曜日のランキングラウンドではあくまで僕は4番手として誰かが緊張して落ちた時に僕が止められるように意識して、ある意味あまり気負わないように臨みました。
――初戦は選手として出場していましたが、良いスタートを切ることはできましたか
初戦は関大が相手で、決して楽に勝てる相手ではなく実力も同じぐらいの相手だったので少し心配なところはあったのですが、それでもランキングとしてはこちらの方が上なのでいつもの練習通り射てれば勝てることは間違いなかったので、少し不安はあったのですが負けるなという考えは全くなく、絶対勝つと思っていたのでいいスタートは切れたと思います。
――準々決勝は昨年敗れた近大が相手でしたが、仲間の戦いを見ていていかがでしたか
近大とは、(ランキングラウンドで)僕たちが8位、近大が1位という(昨年と)同じかたちで対戦して、僕は準々決勝では応援に回るときのうの段階で決まっていたのですが、ことしはこの4人でいつも団体練習をしていて僕以外の3人で射とうが僕を含めた3人で射とうがどのメンバーで射っても十分にベストなパフォーマンスができると思っていたので、僕が応援になるということに何ら不安や不満もなく応援することができました。いまワセダが出せる全力だと思うので、このチームで負けたら仕方ないかなと。そういう意味では安心して後ろから応援することができました。
――応援は力になりましたか
射っているときに後ろに人がいてリアクションしてくれているということは、最初はすごく緊張しているのですが慣れてくると応援がすごく力になっているということが分かるので、こういう大きい舞台になるほど応援の力はすごいなととても思います。
――今後競技を続ける予定は
続けるというほど続ける予定はないのですが、ちょくちょくOB戦に出るくらいは関わろうと思っています。先輩たちがずっと王座王座と言って目標としてきた舞台に僕たちが出ることができて、そこで早稲田大学としてベストなパフォーマンスを尽くして優勝したいという思いがすごく強かったのですが、それでもまだ届かなかったということで、逆に思いだけでは駄目だというか、そういう舞台だからこそ勝って優勝することに意味があるのだと思っていたので、ことしの結果は駄目ですがある意味仕方がないというか、全力でやることはやったと思います。この舞台で立てるということは当たり前のことではないので、すごく楽しかったですし、悔いはないと言ったら嘘になりますが思い残すことはないのではないかなと思います。
――部としてはこれで引退となりますが、アーチェリー部での4年間はどんな4年間でしたか
アーチェリー部に入った時、男子は(関東学生リーグ)2部にいてそこからここまで上がって来られたのは先輩たちがつないできてくれたのもありますし、後輩、同期みんなでやって来られたことだと思うので、これまでいろんなスポーツをやってきたのですが、こんなに短期間で変化がある経験はしたことがなかったので、一言で言えばめちゃくちゃ楽しかったですね。
――大学から競技を始めて、主力としてチームに大きく貢献してきたと思いますが、ご自身のチームの中で果たしてきた役割というのはどのように捉えていますか
大学から(アーチェリーを)始めて、自分は割と早い段階から点数を出せるようになったのですが、やっているときは自分がすごいとかは思わないので、特に思っていたことはないのですが、2年生の2部から1部の入れ替え戦の時に、当時の主将の高城先輩(佳之氏、平26スポ卒)に「入部してきてくれてありがとう」と真顔で言われて、それがすごくうれしかったということを覚えています。そこから僕は上がることはなく、ある程度のところで落ち着いてずっと同じような調子でやってきて、その中で同期や後輩が上がってきていまの王座で2年生の池田(亮、人2=東京・国際)や田寺(洋貴主将、人4=茨城)が僕よりも点数を出すようになって、それが僕が同じ部員としている以上ちょっとはきっかけになれたのではないかなと思ったので、僕が具体的に何かをしたということはできなかったのかもしれないですが、いい影響を与えられたのではないかなと思うようにしています。
――後輩に向けてメッセージをお願いします
僕たちの王座に対する思いというのは全国で優勝するチームに匹敵するぐらい強かったと思うのですが、それでも届かないのが王座だと思うので、力だけあっても駄目ですし、思いだけあっても駄目だと思います。ワセダというチームは思いの方はすごく上達して一流のチームに負けないぐらいのものになってきたと思うので、あとはこの気持ちを忘れないで力を付けてもらって、努力をしていけば絶対に優勝できるし、それができる後輩たちだと思っているので頑張っててっぺんを取ってきてほしいです。
山本周平(スポ4=山梨・甲府一)
――試合を終えていまのお気持ちは
楽しかった時間があっという間に終わってしまったので悔しいですね。
――『男女王座制覇』を目標に掲げていた中、ベスト8という結果については
途中で近大に当たったのですが、そこを倒して上へ上へと行こうと思っていたのでそれが途中で終わってしまったことは悔しかったです。
――きのうのランキングラウンドからきょうに向けてどのように気持ちを向けてきましたか
きのうは2年生の池田(亮、人2=東京・国際)がすごい点数を出したので、池田を越すようなイメージで本番でも実力を発揮していきたいなと思っていたのですが時折ミスをしてしまいました。負けまいとしてきたのですが、結果としては負けてしまったので残念です。
――初戦の関大戦では6-0といいスタートになったと思いますがいかがですか
初戦は関西大学で、まあまあ当ててくるということは考えていたのですが、それでも僕たちの中で練習でやってきたイメージがあったので、最初こそははっきりとは発揮できなかったのですが、2エンド目からは発揮できたのですごくいいイメージができました。
――準々決勝の相手は昨年と同じく近大でしたが、どのように戦っていきたいと思っていましたか
初戦でいつも通りのことができたということを思い起こして、相手どうこうではなく僕らの中でもらっていこうと思っていました。いろんな方法を試行錯誤してやってきたのですが、その中でチーム内で盛り上げていくというのが一番の目標だったので、それは結構できたのですが少しミスが出てしまって駄目でしたね。
――点数面はいかがでしたか
関大の時は良かったのですが、近大の時は尻すぼみになってしまったのは感じました。僕としては緊張はしなかったのですが、相手が相手だったので意識してしまう部分はあったのかなと思います。
――山本選手は2度王座に出場されましたが、山本選手にとって王座とはどのような舞台でしたか
学生として一番活躍できる場だと思っていたので、その場所でいかに結果を出せるのかということを試せる場だと思います。一生で一度でも出られればいいと思っていた試合なので二回も出られて良かったのですが、そこで勝ちたかったなと思います。
――ご自身として今後アーチェリーとはどう関わっていきますか
個人試合としてはインカレターゲット(全日本学生個人選手権)などには出るのですが、基本的に僕らの代はこれで終わりなのであまりできなくなりますね。
――4年間エースとして部を支えてきましたが、大学での4年間はどんな4年間でしたか
ずっと僕の中では強くあり続けようというイメージはあったので、それが最後までみんなの中でつくれたなら良かったなと思います。ただもう少しやりたかったなと思います。
――今後競技を続ける中での目標は何ですか
インカレでは優勝を取っていないので、これからでも優勝を狙っていきたいです。
――後輩に向けてメッセージをお願いします
王座の舞台に立ったことのない子たちばかりだと思うので、その子たちに楽しんでもらいたいです。楽しんで、良くしただけでは勝てないので、全力で楽しんで、全力で貪る気持ちで食らいついてほしいなと思っています。
池田亮(人2=東京・国際)
――王座を総括してみていかがですか
楽しかったですね。終わってすぐなのであんまりまとまってないのですが、始まったと思えば終わってしまっていて、競技自体も短いのですがいつもより短い感じがします。もちろん負けてしまったからというのもあるのですがあっという間で、もう少し何かできたのではないかなと思います。
――王座に向けて出場メンバーの4人でどう練習に取り組んできましたか
上4人の点数が高かったので、とにかく団体練習をして1射に強い形で臨もうということで、とにかくたくさん団体練習をしていました。ですが本番では予選ラウンドでミスをしてしまったりしたので、もう少し詰められたのではないかなと思います。
――ベスト8という結果については
もう少し楽しみたかったですね。勝てればあと2試合確実にできたので、もっと楽しめたかなという気がします。
――3回戦目に当たった近大はいかがでしたか
やはり強かったですね。ちょうど予選ラウンドが近大の後ろだったのですが、3回戦目は近大と当たって物怖じしてしまいました。
――3回戦目での敗戦の要因とは
去年の感覚が残っていて、勝てると思っていてもやはり近大というところがらあって、実際に予選ラウンドでは近大と当たらないようにしようと話していたのですが見事当たってしまいました。やはり去年近大と当たった感覚が残って物怖じしてしまいましたね。
――来年近大にリベンジを果たすためにこれからのチームに必要なこととは
ちょうど今回は4年生が3人入って、来年は違うメンバーになると思います。来年はまた今年と同じようにならないようにしよう、というのがなくなって新しいチャレンジ精神で臨めると思います。
――きょうで54代は引退となります
ここまで連れてきてくださったのは先輩方のおかげですし、自分も先輩のために活躍して力になれていたらいいなと思います。
――次は橋本選手が主将となります
卒業をしてしまう4年生が点数としてもリーダー格としてもすごく引っ張ってくださったので、それを引き継げるかと言われたら難しいと思います。また違う形で引っ張っていってほしいです。
――今後の大会に向けての意気込みをお願いします
全日本選手権やインカレターゲットにも出場できるように頑張っていきたいです。