チームで挑んだ夢の舞台

男子アーチェリー

 「大学でアーチェリーを続ける理由の全て」(鈴木淳志主将、創理4=東京・早大学院)。夢にまで見た舞台が、ついにやってきた。各地方のリーグ戦を勝ち抜いた強豪、16校が集結する全日本学生王座決定戦(王座)。大学アーチェリー界最高峰の今大会は、各大学4人の選手を登録し、内3人が70メートルを8本ずつ射つ。その合計点を相手校と競い、より高い得点の大学が上位へ勝ち進むといったトーナメント方式だ。9年ぶりの出場となった男子部は、1回戦を突破するも2回戦で優勝候補の近大に挑み敗戦。念願の王座制覇は果たせなかった。

 ワセダの命運を託されたのは、鈴木、田寺洋貴(人3=茨城)、寺澤紀彦(スポ3=東京・足立学園)、山本周平(スポ3=山梨・甲府一)の4人。戦いは京都産業大との一戦で始まった。全ての選手にとって初めての大舞台だが、緊張した様子を見せることはない。一射放つごとに互いに声をかけあい、また必死の応援を続ける部員らの方を向いて、その声に応えることも欠かさなかった。ワセダは終始リードを保ち、201-197で勝利。女子に続いて男子部も2回戦進出を決めたことで、ワセダの陣営は大きく盛り上がった。しかしそのとき、隣の試合では210点がマークされていた。2回戦の相手校、歴代最多優勝を誇る近大である。

笑顔でハイタッチを交わす寺澤

 そのカベはあまりにも高かった。1エンド終了時点は4点差だったものの、2エンドで98-108と大きく突き放される。3エンドが終了し、その差は11点。それでも、ワセダから悲壮感や諦めのムードはみじんも感じられなかった。応援が選手を鼓舞し、選手がガッツポーズと笑顔で応援を盛り上げる。それはまさに、『チームで作り上げる』というワセダらしさのつまった試合。最後の矢取りの時間には、ここまでで一番大きな『紺碧の空』が、会場中に響き渡っていた。最終結果発表――近大の216点に対し、ワセダの的の下に示された数字は206。常にどの大学にも負けない大きな掛け声を放ち、最後の最後まで声援に笑顔で応え続けた4人の選手。だがその瞬間、あふれ出る涙をこらえることは誰もできなかった。

試合終了後涙を流す選手たち

 「後悔はない」(鈴木)、「とても楽しかった」(山本)。 目標には手が届かなかったものの、試合後の選手たちから伝わってきたのは全力を出し切った充実感だった。出し切ったからこそ、見えてきたものがある。「うちと近大、日体大の明確な差は、素の実力」(寺澤)、「単純に実力不足」(田寺)。今よりもっと強くなるために、そして再びこの場所に戻ってくるために。この一日を、ただの思い出では終わらせない。

(記事 建部沙紀、写真 谷田部友香、建部沙紀)

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結果

▽1回戦

○早大201-197京都産業大

▽2回戦

●早大206-216近大

コメント

鈴木惇志主将(創理4=東京・早大学院)

――試合を終えて今の気持ちは

悔しいです。悔しいですが、後悔はないです。満足しています。

――上位4人の選手として、チームの戦いを1番近くで見られていかがでしたか

全国のカベというものを感じましたし、まだまだチームとしても個人としても成長できる部分がたくさんあるなということを感じました。ですがこの感じで成長していけば日本一を獲れるだろうなということを確信しました。

――部としては引退となりますが、4年間を振り返って

最高に楽しかったです。満足しています。

――この後から田寺洋貴(人3=茨城)新主将のもとでチームは再出発をしますが、田寺選手に期待することは

ワセダの良さを生かしながら、自分たちができなかったことを成し遂げて欲しいと思います。後輩が優秀な子揃いなのでやりたいようにやれば結果はついてくるので、しっかりと後輩たちを育てて引っ張って行って欲しいなと思います。

――ワセダの良さとはなんだと考えますか

選手と応援が一体となっていることとチーム力の高さがワセダの良さだと思います。

――後輩に向けてメッセージをお願いします

きょうここで泣いたことを忘れないでらいねんもう1回戻ってきて、優勝旗をワセダに連れて帰って初めての王座を手にして欲しいなと思います。

田寺洋貴(人3=茨城)

――試合を終えて今の気持ちは

すごくいい試合だったと思います。負けたことは悔しいのですが、今までチーム力を上げてきてここまで来られたので、その形は十二分に発揮できたと思います。

――ずっと目指してきた舞台で実際に行射を行ってみていかがでしたか

楽しかったの一言です。これがまたらいねん、さらいねんと自分、また後輩につながっていけるようにさらに良いチームにしていきたいと思います。

――2回戦敗退という結果については

単純に実力不足だったと思います。もっと次は鍛え上げてリベンジを果たします。

――今大会に向けてどのような準備をしてきましたか

練習は王座に向けてずっと70メートルをメインで射ってきました。リーグ戦(関東学生リーグ戦)前からもこの試合を見据えて応援などを練習してきました。

――応援は力になりましたか

最初のランキングラウンドは2エンド目くらいまで応援が到着しなくて緊張がくがくで全然当たらなかったのですが、応援してもらってからはうなぎ上りだったので、応援の力さまさまです。

――今大会で4年生は引退ですが、4年生に向けて一言お願いします

ありがとうございましたの一言です。本当にお世話になったので一言でまとめるのは難しいですが、なにか言葉にするならありがとうございましたです。

――次戦から田寺選手がチームを引っ張って行くことになりますが、どのようなチームにしていきたいですか

今まで53代の先輩方が築いてきてくださったチーム力を軸に個人力も合わせていって、ことし王座に出場できたのでさらにそこから次のステージにステップアップできるようにしていきたいです。もっともっと一人一人の力を強めて、さらにチーム力を加えていけたらと思います。

寺澤紀彦(スポ3=東京・足立学園)

――今のお気持ちをお願いします

楽しかったのと悔しかったのと…。僕らワセダが目標としている男女で王座制覇の舞台にようやくこぎつけたんですけど。相手が日本一をよくとっている近大だったとはいえ、(目標である)日本一をとるならいずれ倒さなければならない相手であるわけですから、2回戦で負けてしまったのは本当に悔しい思いでいっぱいですね。

――2回戦の相手が近大であると分かった時点で、チームで話し合ったことはありましたか

前日の予選ラウンド(終了時点)でどこと当たるのか、というトーナメントの形はだいたい把握してはいたんですけど、どの大学とあたっても「負ける」という選択肢は絶対にないので、どの大学とどのタイミングであたっても関係ないという考えはみんなありました。相手が近大だろうがケイオーだろうが日体大だろうが関係なく、いつも通り自分達の最高のパフォーマンスをしていこう、という考えでした。

――ご自身のプレーについては満足していますか

1試合で1人8本しか射たないんですけど、数が少ないので1本もミスしてはいけない、全部の射でベストパフォーマンスをしてやっと勝てる試合だと思うので、勝ちに至らなかったということは、やっぱりどこか足りてない部分があったんだと思います。でも最後の2エンド、4本はとても自分の中で納得できる射が射てたので、最高に楽しかったです。同時に、こういう良い射ができるのにそれでも負けてしまうことがとても悔しいと思いました。

――敗因はなんだと思われますか

うちと近大、日体大の明確な差は、素の実力だと思います。100パーセントの状態のときの実力が、僕らの方が劣っているというのはどうしても否めないところがあるので、そこは、どの競技でもみんなそうしているように、精進して100パーセントの力をあげていくしかないです。その中でさらに、このような大きな大会で僕たちにできることは、今まで自分達がやってきたことをどれだけ引き出せるか。相手がどうじゃなくて、僕らが100パーセント出せることが大前提になると思います。

――きょうは100パーセント出せましたか

出だしと終わりは90パーセントくらいですかね。全体的にとてもいい感じで運べたと思います。

――らいねんに向けての意気込みをお願いします

先輩達がつないで下さったバトンをつなぐのももちろんそうですが、ことしは先輩達が王座の舞台に立たせてくれたので、らいねんは僕らが男女で王座制覇することが目標です。

山本周平(スポ3=山梨・甲府一)

――感想をお願いします

とても楽しかった、というのが第一ですが、次に出てくるのは悔しかった、という気持ちです。本当にどうしても僕らはこの年で優勝したい、というのがあったので悔しかったです。

――敗因は

簡単には出てこないですけど…まだ力が足りてないんだと思います。ただ、久々の王座出場にも関わらず、男子がここまで来られたことは、とてもいいことだとおもうので、僕らの代はらいねんまだ勝負があるので、そこに向かっていきたいと思います。

――山本選手の代から3選手が出場しましたが、事前に話し合われたことはありますか

チームメイトが射ちやすくするために、チーム全体を盛り上げていくために、僕らなりの作戦は練りました。チームとしてモチベーションをあげること、ミスした射は仕方ないから、その次の射に向けてどう切り替えるかを特に考えました。

――それらはきょう実行できましたか

結構活かせたと思います。本当に良かったです。

――ご自身のパフォーマンスはいかがでしたか

自分のなかで精一杯頑張った結果なので、満足はしています。でもまだ上げられるところもあると思うので、まだまだここから成長していかなければいけないなと思いました。

――きょうで4年生の方は引退ですが、何かメッセージはありますか

本当に感謝の言葉でいっぱいです。僕は1年生の頃から迷惑かけっぱなしだったので、この試合で少しでも恩返しできたらなって思って…まずはありがとうございました、ですね。

――今後の意気込みをお願いします

来年は絶対この場で優勝カップをもって、取材受けられるように頑張ります。