全日本選手権(全日本)も佳境となる大会5日目を迎え、早大からは前日までのトーナメントを勝ち進んだ上村慶哉主将(スポ3=福岡・希望が丘)と硴塚将人(スポ1=東京・エリートアカデミー/帝京)の2名が出場した。上村が接戦を落とした一方で、硴塚はランク決定戦となる5回戦を突破。6回戦で格上選手に敗れたものの、全日本という大舞台で堂々のランク入りを果たした。
2年連続のランク入りを目指す上村は、5回戦で早大OBの御内健太郎(平24スポ卒=現シチズン)と対戦。御内は苦手意識のあるカットマンである上に、これまで1ゲームも奪ったことがないという難敵だった。しかしボールを相手のフォアサイドに集める戦術が奏功し、第1ゲームを11―9で先取。その後は一進一退の攻防が続き、ゲームカウント2―2で迎えた第5ゲームが運命の分かれ目だった。「リードした場面で勝ち急いでしまった」(上村)。ゲームスコアを9―4としてゲーム奪取が見えてきたところで、上村の決め球にミスが相次ぐ。このゲームをデュースの末に落とすと、試合の主導権は相手へ。フルゲームにもつれ込んだ大熱戦に敗れ、ランク入りを目前に上村の全日本は幕を閉じた。
ランク入りの逃した上村は、試合後に悔しさをにじませた
昨年の全日本は、ランク決定戦で上村に敗れて涙をのんだ硴塚。ことしは「何が何でもランクに入りたい」と強い意気込みで5回戦に臨んだ。カットマンを相手に、硴塚は得意のラリー戦に持ち込んで得点を積み重ねていく。相手の攻撃を多用する戦術への変更にも、硴塚は落ち着いていた。徹底的にバックサイドを狙い、ひたすらカット打ちを続ける。敵の攻撃の芽をことごとく摘んだ硴塚は、ゲームカウント4―2で念願のランク入りを決めた。続く6回戦で対するは、東京選手権で優勝経験もある平野友樹(協和発酵キリン)。「向かっていくだけ」(硴塚)という言葉通り、格上選手に強気のプレーを見せ、一時はゲームカウント2―1とリードを奪う。しかし地力で上回る相手に戦術を変えられると、得意の両ハンド攻撃は鳴りを潜めた。第4ゲーム以降を大差で落とし、惜敗。準々決勝進出はかなわなかったものの、大学1年生ながら『全日本ベスト16』という大きな称号を手にした。
ランク入りを果たし自信を深めた硴塚
「この経験は自信になった」(硴塚)。目標としてきた全日本でのランク入りを達成し、早大のルーキーは満足げに今大会を振り返る。一方で、早大のエースである上村はあと一歩のところでランク入りを逃し、「悔しい、のひと言」と肩を落とした。悲喜こもごもとなった全日本だったが、この結果を今後につなげたい。3月には東京選手権、5月には8季ぶりの優勝を狙う春季関東学生リーグ戦が控えている。そこには、さらなる成長を遂げた選手たちの姿があるはずだ。
(記事 稲満美也、写真 大島悠輔、本田京太郎)
★未来の早大生が大舞台で快進撃!
緒方の加入が待ち遠しい
現役の早大卓球部員に劣らぬ大躍進だった。早大に進学予定の緒方遼太郎(エリートアカデミー/帝京)は、全日本ジュニア選手権で銀メダルに輝いた実績を持つ実力者。今大会2回戦から勝ち上がってきた緒方は、ランク決定戦で社会人選手をゲームカウント4―1で下し自身初の全日本でのランク入りを果たした。6回戦で水谷隼(beacon.LAB)の前に沈んだが、日本最高峰の舞台で確かな爪痕を残した。4月からはエンジのユニフォームに袖を通す緒方。リーグ戦優勝を悲願に掲げる早大卓球部にとって、大きな戦力となりそうだ。
(記事 稲満美也、写真 本田京太郎)
結果
▽男子シングルス
5回戦
●上村3―4御内(シチズン)
◯硴塚4―2厚谷(信号器材)
6回戦
●硴塚2―4平野友樹(協和発酵キリン)
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コメント
上村慶哉主将(スポ3=福岡・希望が丘)
――シングルスの5回戦を振り返ってみていかがですか
ゲームカウント2ー2の第5ゲーム、9ー4とリードした場面で勝ち急いでしまいました。高く浮いて、甘く入った球を力んで打ちにいってしまい、それをミスしてしまいました。結果的にそれを引きずってしまって…。それが敗因だと思います。
――対戦相手は早大OBの御内健太郎(シチズン)でした。それについては
昨年、3試合して1ゲームすら取ったことのない相手でした。自分なりに戦術を大胆に変えることが必要だと感じていました。いつもはバックにボールを集めていたのですが、今回はフォア側に集めました。それがうまくはまってくれた部分がありました。ただ、最後は自分の打ちミスで負けてしまいましたね。
――相手はどんな戦術で向かってきましたか
(御内選手の)バックのカットはミスが少ないので、なるべくバックにボールを集めないようにしていました。逆にボールをフォア側に集めるとミスが目立つようになってきて、そこが狙い目だなと思っていました。
――惜しくもランク入りを逃してしまいました
きょうはこの試合が一番のヤマ場だと思っていたので…。いい試合はしたと思うのですが、勝てなければ関係ないです。悔しいのひと言ですね。
――収穫や見えた課題はありましたか
今までよりは確実にいい内容の試合でした。最後に勝ち切れないというのは自分の中でどこか甘い部分があると思います。きょうの勝負所でも相手のミスを願って、プレーをしてしまっていた場面もありましたし。そういうところで自分から攻めていかないといけないと感じましたね。日頃の練習から、心掛けていきたいと思いました。
――後輩である硴塚選手がランク入りを果たしました。それについては
これを自信にして、もっと上を目指して頑張ってもらいたいですね。
硴塚将人(スポ1=東京・エリートアカデミー/帝京)
――シングルスの6回戦を振り返ってみていかがですか
組み合わせの運が良かったというのもありますが、初めてランク入りが達成できて安心しました。ベスト8決めは挑戦者の気持ちを忘れず、プレッシャーを感じず、向かっていくだけだなと思って戦いました。
――平野友樹(協和発酵キリン)選手についてはどんな印象をお持ちですか
日本卓球リーグで活躍している選手で、小さい頃から名の知れた存在でした。格上の選手として意識していて、僕はただ向かっていくだけでした。
――途中、リードを奪う場面もありましたが
僕は挑戦者なので、1点でも多く点を取ってやろうと考えて戦っていました。第2ゲームを僕が取った時に、相手が緊張しているのがわかったので、そこにつけ込めた結果です。でも、リードを奪った瞬間から相手も戦術を変えてきて、僕の方が崩れてしまいました。それ以降は何もさせてもらえませんでしたね。
――シングルスの5回戦については
昨年、負けてしまったラウンドだったので、何が何でもランクに入りたいと思っていました。対戦相手も、これまで何回か対戦したことがある選手だったので、勝つチャンスはあるなと思って試合に臨みました。ランク入りを果たせて良かったです。
――勝てた要因というのは
序盤は自分から攻めて、ラリー戦に持ち込みました。でも、相手はカットマンでありながら、攻撃も上手い選手で、すぐに追いついてきました。なので、カットばかりさせて、とにかくバック側にボールを集めて、ひたすらカット打ち。自分が粘り勝ちしてやるくらいの思いで、戦術を変えました。それがうまくはまって勝てたのかなと思います。
――カットマンに対しての印象は
苦手意識は特にありません。
――この大会を通して、得たものはありますか
ラウンドが上がっていくにつれて、格上の選手と対戦することが多くなっていったのですが、挑戦者の気持ちを忘れずに戦い抜くことができました。ランク入り達成と、この経験は自信になりますね。