【連載】新体制特集『WASEDA FIRST』最終回 大田尾竜彦監督

ラグビー男子

 特集最終回を飾るのは大田尾竜彦監督(平16人卒=佐賀工)だ。就任3年目となる年、昨シーズンを踏まえチームをどう指導していくのか。『日本一』に向け新たなスタートをきった選手たちへの思いも伺った。

※この取材は3月13日にオンラインで行われたものです。

「これまでの歩みがすべて間違っていたわけではない」

昨年の関東大学対抗戦(対抗戦)・帝京大戦後、記者会見に応じる大田尾監督

――昨年、監督に就任されて2年目となりましたが、一昨年と比べて重点的に取り組んだことや工夫したことはありましたか

大田尾 戦術、戦略の面はもちろん、昨年はチームの主体性やチームワークと言ったチームビルディングの面にも重きを置いて、チーム作りを意識してきました。

――相良昌彦元主将(令5社卒=東京サントリーサンゴリアス)が率いたチームはどのようなチームでしたか

大田尾  意見を昌彦にぶつけやすかったのかなというのがあって、チーム内のコミュニケーションの量がすごく増えたと思いました。4年生たちはそれぞれのポジションでリーダー格の選手が多く、非常にチームワークに長けた代だったと思います。

――様々な選手がインタビューの中で12月18日の早明オープン戦が大きな転機だったとおっしゃいますが、大田尾監督はこの試合をどのように見ていましたか

大田尾  この試合の翌週に大学選手権(全国大学選手権)の早明戦を控えていた段階だったので、正直、試合前は結果を含め、この試合がもたらす影響に関して不安な部分がありました。ただ、ふたを開けてみれば昨年1年間の非常に大きなターニングポイントになったというのは間違いありません。本当の意味で4年生達の心の奥の熱い気持ちが聞けたというか、それを言葉だけではなく、プレーで示してくれたことでみんなが元気をもらいました。結果としてチームがまとまったので非常に意味のあった試合だったと思います。

――その試合でチームがさらに勢いづいたということですか

大田尾  そうですね。前に行われていた東洋大戦もかなりいい影響を与えたと思います。主将がいない、佐藤(健次、スポ3=神奈川・桐蔭学園)がいない、前田(知暉、令5社卒)がいないという本当に瀬戸際のところで、春にBチームだったメンバーと副将の吉村(紘、令5スポ卒=NECグリーンロケッツ東葛)を中心に4年生が頑張ってくれました。メンタル的に非常に追い込まれたゲームをノーメンバーたちが見て「次は自分たちの番だ」というような気持ちが乗ったというのも大きいと思います。

――改めて大学選手権決勝の結果をどのように受け止めていますか

大田尾  非常に大きな点差をつけられて負けましたが、よくよく振り返ってみると、手も足も出ない状態だったかというと決してそうではなかったようにも思えます。もう少し早稲田が厳しさであったり、精度高くやれていたりすれば結果は大きく変わっていたと思っています。終わった直後はショックを受ける点差でしたが、あの結果だからこれまでの歩みがすべて間違っていたわけでは絶対にないというのが、今の感想です。

新チームへの期待

選手たちの練習を見守る大田尾監督

――では、新チームが始動して約2カ月が経ちますが、チームの雰囲気はいかがでしょうか

大田尾 今はモチベーションが高く、非常に良い状態だと思います。

――伊藤大祐(スポ4=神奈川・桐蔭学園)選手を主将に選出した理由を教えてください

大田尾  明日もし大会が始まるとしたらおそらく岡﨑(颯馬、スポ4=長崎北陽台)や永嶋(仁、社4=東福岡)の方がリーダーとしてはいいかもしれない。ただ、10カ月後にチームが成長できているには、キャプテンはおそらく伊藤だろうと。本人も「自分が変わらないといけない」という思いが強いですし、伸びしろは、1番あります。なにより、世代を代表する選手の一人だと思っていますが、まだまだ潜在能力だけでプレーしているようにも映ります。そこに責任感やリーダーとしての意識が芽生えた時は爆発的な成長をするだろう、そういったところで主将にするには伊藤しかいないと思いました。

――昨シーズン、伊藤選手はケガで長らく試合に出ることができませんでしたが、その時期に大田尾監督は伊藤選手に対してどのようなアプローチをしていましたか

大田尾 ただ「復帰する姿だけを目指せ」と。「チームが優勝するためには必要な存在だから、自分が復帰してプレーするイメージだけして頑張りなさい」という話はしていました。

――その時から伊藤選手が主将になるというイメージはありましたか

大田尾  リーダー陣の一人にはなると思っていましたね。それが主将かどうかというのは置いといて、中心になっていかなければいけない選手だとは思っていました。

――伊藤選手に期待することは

大田尾  やはり主将として強い意志を持ち、自分自身を変えるチャレンジをして、150人を引っ張れる背中を見せてくれることに期待しています。

――副将の2人についても選出した理由をお聞かせください

大田尾  この2人なら副将として頑張ってくれるだろうと思って選出しました。

――副将の2人にはどのようなことを期待していますか

大田尾  本当に素晴らしい男たちなので、自分が思った通りに振舞ってほしいと思います。

――具体的にどのような点が素晴らしいのでしょうか

大田尾  やはりどんなにきつい時でも自分に勝てる2人で、周りにも流されないですし、信頼できる男たちだと思います。

――新4年生の雰囲気は大田尾監督にどのように映っていますか

大田尾  非常にモチベーション高くやっていますし、チーム長田、チーム相良が残した財産をしっかり継承している学年だなというのが1番印象的です。

――BKの主力選手が多く抜けましたが、その点について今年はどのように工夫していきますか

大田尾 やはり部内競争かなと思っています。BK3だけでなく、全てのポジションで競争を促したいなと思いますね。

――今年BKでキーマンだと思う選手は誰ですか

大田尾 BKでキーマンになってきそうな選手は・・・、やはり宮尾(昌典、スポ3=京都成章)、伊藤でしょうね。彼らがどれだけ強気でゲームをコントロールできるかが重要かなと思います。

――セットプレーで強化すべき点はありますか

大田尾  これまでのプロセスが間違っているわけではないと思うので、これを重ねてきた経験値を踏まえ、学生たちが自分で考えて、チームを動かすことができるようになることがすごく重要だと思います。

――FWで今年キーマンになる選手は誰でしょうか

大田尾 佐藤健次でしょうね。

――どのような部分に期待していますか

大田尾  全部ですね。『日本一』を獲ることを考えた時に相手のキーマンを健次が狙うというのが1番早いということをよく言うので。学生界で全てが飛び抜けた、異次元のプレーを期待しています。

――では現在、成長を感じるホットな選手はいますか

大田尾  宮尾が今伸びていますね。非常に良い状態だと思います。また、決勝に行ったことで選手各々が優勝するためにはここまで必要なんだという指標ができてきているので、そういった意味ではどの選手も成長は著しいと思います。

――新入生に期待していることはありますか

大田尾  ポジション争いに1人でも多く絡んできてくれたら良いと思いますが、新人は新人なので。2年以上の、昨年の決勝までに行った過程を知っていて、かつ決勝で負けた結果を知っている選手たちに、まずは期待しています。

『日本一』につながる春シーズンに

昨年の対抗戦・立大戦での一枚

――監督自身、新シーズンに向けて今の心境はいかがですか

大田尾 非常に楽しみですね。

――現在のチームの課題は

大田尾 常に試合で勝つことや、赤黒を着て国立に立つということを他人ごとにしないで、自分が試合に出て勝つんだと信じきることを課題というか期待したいと思っています。

――今年新たに力を入れていきたいことはありますか

大田尾  今すでに行っていますが、他競技のレスリングや相撲をさせてもらっていて、新しい体の使い方を覚えることが一つです。あとはそれをタックルの部分に生かしたいなと思っています。

――伊藤選手にインタビューした際、ウエイトに重きを置いているとお聞きしましたが、フィジカル面を春は強化しているのですか

大田尾  そうですね、フィジカルとディフェンスが中心だと思っています。

――まずは春シーズンどの試合に焦点を当てていますか

大田尾  初戦に向けて、そこでしっかりパフォーマンスができるように部内競争を促しています。今年は春から一試合一試合勝ちに行きたいと思っています。そのために毎試合のテーマを学生と共に作り上げるということをしています。

――改めて今年はどのようなチームを作っていきたいですか

大田尾 早い段階からチームの成熟度が高く、チーム内の緊張や厳しさがにじみ出るようなチーム作りができればと思っています。

――どんなラグビーを見せていきたいですか

大田尾 今年はより激しいラグビーを見せていきたいと思います。

――春シーズンへの意気込みをお願いします。

大田尾 春シーズンは一試合一試合強いマインドを持って、春から自分たちでテーマに対してコミットできるような意志のあるゲームを何回重ねられるかが重要だと思います。「まだ春シーズンだから」という言葉を使わず、秋シーズンにつながる良い試合をしていきたいです。

――最後に、早稲田ラグビーファンの皆様に一言お願いします

大田尾  常日頃よりご声援ありがとうございます。昨季は決勝まで行きましたが、非常に多くの方が期待されていた中で大敗してしまい、落胆させてしまったと思いますし、結果に心配される方もいらっしゃったと思います。ですが、そこで歩みを止めないのが早稲田でありますし、今季挑戦して絶対に結果を出そうという強い気持ちなので期待してほしいと思います。引き続きご声援の程、何卒宜しくお願い致します。

――ありがとうございました!

(取材・編集 川上璃々)

意気込みを書いていただきました!

◆大田尾竜彦(おおたお・たつひこ)

1982(昭57)年1月31日生まれ。佐賀工業高出身。2004(平16)年人間科学部卒業。4年時には主将を務め、対抗戦優勝、大学選手権準優勝にチームを導いた大田尾監督。卒業後はヤマハ発動機ジュビロ(現静岡ブルーレヴス)で競技を続け、その後2021年に早大の監督に就任した。就任1年目は年越しならず、2年目は準優勝という結果に終わっている。今年こそ3度目の正直となるか。