第7回は今年で就任6年目を迎える髙岡勝監督(平4人卒=静岡・聖光学院出身)の登場。昨シーズンの振り返りやチームの現在地、そして「甲子園で勝つこと」についてなど、幅広くお伺いしました!
※この取材は4月2日に行われたものです。氏名に旧字体を含む場合は、原則として新字体に直して掲載しております。
一つのことを一途にやり遂げる
就任6年目を迎えた髙岡監督
――今年で就任6年目になりますが、どんな思いでいますか
髙岡 学生がのびのびとやるべきことを明確にして、一つのことを一途にやり遂げるというようなチームを、どうやって作るかということを常々考えています。体制も昨年と大きく変わってきていて、それも含めて6年目の集大成というか。ずっと掲げている目標を達成するために、心機一転して取り組んでいます。
――リーグ2位に終わった昨シーズンを監督を振り返って
髙岡 5年目のシーズンの振り返りということで総括はしたんですけれども、我々は他の強豪校と比べてスポーツ推薦があるわけではないです。近年(早大の)付属校も実力を取り戻しつつありますが、それでも昔のようにクリスマスボウル(全国高校アメリカンフットボール選手権大会の決勝戦)の常連校ではないので、その中で経験のない選手たちをいかにトレーニングするか、やはり2年前のコロナによる活動自粛期間によって、練習試合や秋のリーグ戦も大きく減少しましたから、経験のない選手を実践に向けて戦えるようにするかフォーカスしていました。選手たちは頑張ったと思います。その結果が関東2位で、目標に達することはできませんでしたが、力は出し切ったと思います。
――下級生の頃から活躍されている選手も多いと思いますが、現時点でのチームのデプスだったり、それぞれのレベルの高さだったりはいかがですか
髙岡 学生スポーツの常で入れ替わりがありますけれども、キャプテンの亀井(理陽、法4=東京・早実)もそうですし、クォーターバックの國元(孝凱、社3=東京・早大学院)、ディフェンスだったらDL山田琳太郎(商4=神奈川・川和)、DB間瀬(琢巳、法4=東京・早大学院)といったキーとなるようなメンバーが残っていますので、彼らを中心にどれだけ他の2年生・3年生が出てくるのかということですね。競争してこの春シーズンに臨んでもらいたいと思って期待しています。
――今も亀井主将の名前を挙げられていましたが、主将に就任された亀井主将の印象を聞かせてください
髙岡 亀井は非常に大人のキャプテンだと思います。存在感があって、理性的であって、それでいて情熱家なので、欠点がないキャプテンです。そういう意味では欠点がなさ過ぎて逆に不満なところもあります(笑)。
――今年の4年生の印象はいかがですか。また、その中で求めることはありますか
髙岡 キャプテン候補の選出にあたっては、最初から4年生が満場一致で亀井を選びまして、そういう点では、人数が多いですが1年生・2年生のころからまとまりのある学年でした。幹部になったメンバーがそれぞれ自分の役割を明確にして取り組んでくれています。4年だからというチームには今年はしたくないと彼ら自身が言っていますので、1年生・2年生・3年生がスローガンにある通り『一丸』となっていけたらと。そういうチームにしていくのが4年生の役割ですので、一人一人がリーダーシップを持って取り組んでいって欲しいと思います。
スタッフはチームの根幹を成す
――BIG BEARSの監督という立場で求められる役割についてはどのようにお考えですか
髙岡 私はどういうチーム、組織を作るかということにこの5年間費やしてきて、今年もコーチ・学生問わず、みんなが役割明確にしてチームのために頑張れるかということを、トータルで見る人間が監督だと思っています。スタッフを含めてみんなを見て、チームをつないでいきたいと思っています。
――これまでの対談でスタッフの方ともお話しさせていただきました。その中で、どの方も監督がスタッフのミーティングや業務にも顔を出して気にかけてくださるというようにおっしゃっていました。選手はもちろん、スタッフの方とのコミュニケーションも意識されていますか
髙岡 やはりチームは全員でひとつの目標を達成するためにどう役割を果たすかが重要なので、特にスタッフのメンバーはチームの根幹を成すと常々伝えています。スタッフがどれだけ頑張れるのかというのは、チームの強さにつながってくると思いますので、私は重要視しています。
――早大の選手に求められるのは技術面だけではなく、「一人の人間として」どう成長していくかということだと思います。監督が選手やスタッフにこの4年間で求めるものはなんですか
髙岡 私は入部する時と、シーズンが始まる時、そして秋シーズンを迎える時に必ず伝えていることがあります。それは、早稲田大学の建学の理念である学問の独立、学問の活用が根底にあっての部活だということです。大学がどのような人間を作りたいのかということを、フットボールを通じて学び、大学4年間を通して学んだことを世の中にどう生かすのかということを考えなさいと。模範国民の造就という部分なのですが、それを作り上げるために教育するのがコーチ陣の役割だと思っています。
――そのなかで、監督にとって甲子園で勝つというのはどんな価値のあることなのでしょうか
髙岡 先ほど述べたのはこのチームの活動目的であって、目標はやはり勝つことです。そのために、自分が何をするべきかということをいろいろ考えるのが大事だと思っていますので。勝ちにこだわる、しかもどういう「勝ち」にこだわるのかというのが「価値」があることだと考えています。そういう意味では日本一を目標にする、勝つことを目標にすることはぶれていません。
――今回の対談で多くの4年生が、「甲子園に帰ってくるということが全ての原動力」とお話をされていました。監督としても、甲子園を経験している選手やスタッフとそうでない選手やスタッフとは違いが大きいと考えていますか
髙岡 やはり甲子園に行って戦うということは、関東で戦うことと全く違う景色です。そこを経験しているか、してないかというのは本当に大きな違いがあると考えています。特に甲子園ボウルは、ライスボウルが1クォーター12分になってしまいましたので、国内で唯一の15分クォーターの試合です。両者はまるで違いますし、天然芝でやる試合もまるで違います。そんな中で出続けることが、非常に意味のあることだというのは学生にも伝えています。
――監督としてどのように一つの方向に向かわせていくかという、マインドセットの部分で意識されていることはありますか
髙岡 私が監督になってから関学(関西学院大学)に2度負けて、監督になる前も負けています。立命館大さんとは毎年交流試合をさせていただいていますが、やはり関西学院大さんとの文化の違いをすごく感じていて。文化ってどんなところからあるのかなと考えた時に、それは学年を問わずどういうフットボールをするのかということだと強く感じました。学生には常々、学年問わず役割を問わずどのように考えるかというのを話はしています。『一丸』という言葉を今年の4年生が考えてくれましたので、私も含めて同じ気持ちになっているんだなというのを肌で感じました。
『無事之名馬』
――全国からリクルートしておらず、未経験者も多く活躍されているBIG BEARSですが、監督としてどういった選手の育成を心がけていますか
髙岡 『無事是名馬なり』と学生に伝えています。高校で活躍した選手、特にコンタクトのない競技の選手が、幸いにもBIG BEARSでフットボールをやりたいと来てくれます。そういう選手をどう戦える選手にしていくかということで、1つはコンタクトする、ヒットする、タックルするという部分がフィジカル的に大学トップレベルになれるかということを重視しています。うちのチームの1年生はなかなか試合に出られていません。それは大学レベルでの体づくりと、基本動作のファンダメンタルをどれだけ重要視して当たれる選手にするということに重きを置いて、プログラムを作ってもらっています。育成としてはその部分を重視しています。
――そういった選手のいるチームにとって重要となる試合経験がコロナ禍で減少してしまいましたが、ここ2シーズン、チームとしてどう乗り越えて来ましたか
髙岡 乗り越えてこれたかと言われると(笑)。やはり非常に経験が足りなかったのがこの2年の結果に出ていると思います。他のチームも同じように試合ができていなかったのでしょうけど、学生のみんなが少ない試合の中で1戦1戦成長してくれたのが、昨年何とかブロック優勝して、法大との順位決定戦に出られたということで。結果的には法大さんに歯が立たなかったですが、思ったよりも食らいついて行けたんじゃないかなと思います。
――春季オープン戦は久しぶりに関西の大学との試合が予定されています。春のトレーニングの成果やチームの現在地を知る上で重要な試合が予定されていますが、監督としてこれらの試合を秋に向けてどう位置付けていますか
髙岡 春は各チームにお願いをして試合を組んで、それぞれに意味づけを持ってある練習試合なので、非常にありがたい気持ちでいっぱいです。デプスもいろいろ試したいメンバーがいるので、各試合に出して新しい戦力を見つけたり、この選手は関西相手にも通用するんだということを見極めたりして、秋のリーグ戦に向かっていきたいと考えています。
――現時点で、今年のチームのキーマンとなる選手だったり期待を寄せている選手だったりを教えていただきたいです
髙岡 オフェンスはやはり国元がエースQBということで経験も豊富な選手ですが、今年は彼以外にも人材が豊富なので。彼に加えてプラスアルファでどのようなフットボールができるかということも重要です。QB陣の争いにも注目しています。ディフェンスは、昨年活躍したDL山田が中心のフロントになってくると思います。これ以外には(昨年の)LBが抜けてしまって新たにやっていますので、小粒ですが闘志あふれるプレーをする斧田(康太郎、スポ4=愛知・海陽学園)がどれだけ相手をかき混ぜるかはひとつ見物かなと思っています。
――最後に、今シーズンの意気込みをお願いします
髙岡 1年生から、私や(部長の)ロー先生も含めて本当に一つになれるか、『一丸』になれるかということがキーだと思いますので。みんなで甲子園に行って、みんなで勝ちたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 安齋健、五十嵐香音 写真 五十嵐香音)
意気込みを書いていただきました!
◆髙岡勝(たかおか・まさる)
静岡・聖光学院高出身。1992(平4)年人間科学部卒。選手はもちろんスタッフの存在を大事にしている高岡監督。ここ2年逃している甲子園ボウル出場、そして創部初の日本一に向けてのチームマネジメントに期待です!