【連載】新体制対談『一丸』【第3回】島田芙希主務×平田智裕副務

米式蹴球

 第3回はマネジャーのリーダーでありながら主務に就任した島田芙希(法4=東京・早実)と選手でありながら副務に就任したK/P平田智裕(人4=東京・早実)の登場。多方面からチームを支えているお二人に、今シーズンの意気込みを伺った。
※この取材は3月31日に行われたものです。氏名に旧字体を含む場合は、原則として新字体に直して掲載しております。

自分にしかできないことを

ラストイヤーへの意気込みを熱く力強く語る平田

ーーはじめに、BIG BEARSに入ったきっかけや経緯を教えてください

島田 もともと大学で体育会のマネジャーをやりたいと思っていて。高校の先輩でBIG BEARSでスタッフをされている方がいたので、その方のお話しを聞いたり、練習見学や早慶戦を見に行ったりして、最終的に入部することを決意しました。

平田 学生時代に目の前に誰もいない「日本一」というものになりたくて。小中高と全力でスポーツをやっていて、日本一になる難しさは重々承知していましたが、それでも学生のうちに日本一になりたいという気持ちが強くあったのでBIG BEARSに入部しました。

ーー入部した当時を振り返っていただきます。この組織に入って感じたこと、驚いたことはありますか

島田 日本一を本気で目指す組織の一員として活動したことが私は今までなかったので、いざ入ってみると部員一人一人の熱量の高さに驚きました

平田 楽しさっていろいろあると思うのですが、ふざけていて楽しいとかではなくて、「勝つこと」が楽しくて、その中で自分が成長できて楽しいと思っている部員が多いなという印象を受けました。

ーー今までの3年間を振り返っていただいていかがですか

島田 コロナ禍で無観客での試合がありましたが、その中でマネジャーとして、どうしたらファンやOBの方たちに近い距離感で応援していただけるかとか、どうしたらチームの勝ちに導けるかということを考え続けていたと思います。

平田 僕は今年度から副務に就任したので、選手からの目線にはなるのですが、与えられている環境の中でいかに10割に近い練習や努力ができるかということを常に考えなくてはいけないなということを思っていました。コロナ禍によって多くを失ったということもあるのですが、逆に自分とって本当に必要なことが何かを精査できるいい時間だったと思います。

ーー昨年秋の1位決定戦で法大に敗れてから、オフシーズンをどのように過ごされていましたか

島田 4年生になるにあたって、マネジャーの仕事の見直しや、関東学生アメリカンフットボール連盟(KCFA)の学生執行部として他大学のマネジャーと活動するなかで、いいところを吸収して4年生での活動に生かせるように学んでいました。

平田 選手としては、今までの振り返りと自分自身を疑う作業をしていました。チーム全体に関わるところという点で言えば、やはりBIG BEARSという88年の長い歴史がある大きな組織にいる一員として、自分自身が何かのピースになるように、自分にしかできないことを考えたという期間ではありました。

ーーお二人が主務、副務というそれぞれの役職についた経緯やきっかけについて教えてください

島田 私はマネジャーというチームの運営をする立場なので、スタッフの中でも選手とは一番距離の遠いポジションだったのですが、日本一に向けてより主体的に関わりたいと思ったので立候補させていただきました。これまでの3年間でBIG BEARSのマネジャーやKCFAの学生執行部の一員としてたくさんの方と関わってきたなかで、自分がやってきた仕事には自信があったので、それをもっと生かしていきたいという思いもありました。

平田 僕としては選手とスタッフが同じ熱量で喜んだり悔しがったりするのが理想なのですが、これまでの3年間を振り返ると、スタッフと選手の気持ちの乖離(かいり)があると感じたというのが正直なところで。そのくらいスタッフも大切な存在なので、選手とスタッフの垣根を越えて自分が何かできないかということで立候補させていただきました。その後に「一丸」というスローガンができたのですが、とても理にかなっていますし、僕自身もこのスローガンで良かったなと思っています。

ーー具体的な仕事内容について教えてください

島田 主務としてなのかマネジャーリーダーとしてなのかは曖昧な部分もあるのですが、部の窓口ということで早稲田大学の競技スポーツセンターやOB・OGの方と連絡を取り合ったり、試合の運営やタイムスケジュール作成をしたり、スタッフをまとめたりなど、たくさんの仕事があります。

平田 チームの代表として外部との連携を取るというのが島田の仕事で、副務の僕としてはチームをどうやって動かすかということで、簡単なところでいうと、練習メニューの内容であったり、練習するグラウンドの時間をとったりという仕事ですね。あとは選手としてコーチやチーム内のスタッフと関わる機会が多いのかなと思います。

ーーBIG BEARSという大人数の組織の中でのご自身の強みを教えてください

平田 状況把握力と実行力だと思っています。状況把握力というのは物事を俯瞰して、何が問題なのか、何がチームに足りないかを捉えるということで、そのときに最善だと思う解決策に対して全力で取り組めるという実行力はあるのかなと思いますね。あとは自己分析の力はかなり強いかなと思っていて。自分自身の練習の動画を振り返ってみて、良くなかったところを直線的に深掘りしていくということは得意かもしれないです。

島田 忍耐力はあるかなと思っています。長い歴史があるなかで、応援してくださっているOB・OGや企業の方などがたくさんいらっしゃるので、その方達の信頼を崩さないのはもちろん、期待以上の成果を出していきたいと思っています。

ーー個人的な今後の目標はありますか

平田 副務としては、幹部の一員としてこのチームを日本一にしなくてはならないということと、その中で自分にしかできないことを全力で取り組みたいと思っています。選手としてはコーチにも言っているのですが、僕自身が日本一のプレーヤーになることです。選手一人一人が日本で一番の選手ではなくても総合力で日本一になることはできるのかもしれませんが、僕は必ずしもそうではないと思っていて、まず自分が日本一の原動力になるために自分自身が日本一の人間になるというところは目標にしています。

島田 マネジャーは仕事柄的に選手からは少し遠い立場にはなりますが、「一丸」というスローガンを掲げて今年度は戦っていくので自分だけではなくて、他のスタッフも巻き込んで主体的に選手と関わっていきたいなと思っています。

(甲子園ボウルは)特別な雰囲気を感じた

ーー現時点で今のチームの雰囲気を教えてください

平田 僕自身は全然ダメだと思っています。僕らより下の代は(学生日本一を決める)甲子園ボウルに行ったことがないのですが、そのことが非常に大きなことだと思っていて。なんとなく頑張って東日本代表になって甲子園に行くという感覚はあるのですが、グラウンドに立っていただけで試合に出ていなかった僕でさえ、ここに絶対に戻ってこなくてはいけないという感情が湧いてきたんですね。僕の恩師の言葉で「選手である前に戦士であれ」という言葉をいただいたのですが、大学スポーツをしている選手として華やかさやかっこよさという部分を押し出すあまり、勝負の中で戦う姿勢に欠けている選手が多いなというふうに感じていて、技術を必要とする選手である前に、甲子園に行くための戦う気持ちを持った戦士でなければならないという姿勢がまだ足りないのかなと感じています。そこを幹部や上級生である4年生が追求できるかが今年一番の鍵だと思っています。

島田 私は例年よりも下級生の意見を取り入れていて、そこで出た課題を幹部の中で話し合うことをしているので、風通しは良くなっていると思っています。しかし、先ほど平田も言いましたが、甲子園に行っていない人がほとんどなので、日本一になることがどれくらい大変なことなのかが分かっていない人が多いような気がしています。私が甲子園に行った時はサイドラインに立っていてフィールドに出てプレーをしたわけではないのですが、それでも特別な雰囲気を感じたので、それを下級生たちにいかに伝達していって、創部初の日本一への思いが高まっていけばいいなと思います。

ーーOL亀井理陽主将(法4=東京・早実)の印象について教えてください

島田 亀井も早実から一緒で、亀井が野球部で私はチアリーディング部で応援する立場だったので、今こうして同じ部活で3年間一緒にいるのが不思議な感じがします。もちろん他の4年生も大事ですが、特に亀井を日本一の男にしたいなという気持ちがあります。

平田 僕としては彼が主将でなければ誰が主将になるんだということを下級生の頃から思っていたので。とても頼りになるやつですし、選手たちを多面的に捉えていろんな話を聞いて、自分の答えを導き出すというところに長けていると思います。大学からアメフトを始めて日本一になりたいと思って入ってきた選手なので、僕らとしては亀井を日本一の主将にしたいなという思いはすごく強いですね。

ーーOL笹隈弘起副将(スポ4=東京・早大学院)やDL金子智哉副将(教4=大阪・豊中)の印象はいかがですか

島田 金子は立場が上の人に対しても、選手を代表して意見を言うことができますし、「一丸」というスローガンがある中で、4年生の意識統一など、チームに足りていないことを見つけて行動に移してくれる人だと思っています。笹隈はチームルールやグラウンドの環境に関することや、練習中の声出しなどで、チームの環境をより良いものにしようと先頭に立って取り組んでくれているところがとてもいいなと思います。

平田 2人に対しての印象なのですが、チームに対する忠誠心が強いなと思っています。チームのためにかなり自己犠牲をするタイプですし、チームが良くなるためどうすれば良いかというところを常に考えてくれていて、その水準を日本一に合わせているので、幹部の在り方としてはすごくいいと思います。

ーー髙岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院)の印象はいかがですか

島田 監督というと戦略面を考えるという印象があると思いますが、マネジャーのミーティングにも毎回出席してくださっていて、例えば部の機材を買うときとかも詳しく調べてくださってありがたいなと思っています。今までは自分から話に行くことはなかったのですが、主務となると話に行く機会が増えるので。少し緊張はしますが(笑)。

平田 監督自身がどう思われているのかは分からないのですが、「監督」というのは肩書きであって、役割としては部員一人一人をしっかり見ていただいているなという印象です。僕自身が積極的に監督に話しかけるのですが、相談にも乗ってくれますし、たわいのない話もたくさんするので、今まで会った監督の中でもすごくフランクに話しかけることができるなという印象です。

ーーフットボールの好きなところとBIG BEARSの好きなところを教えてください

島田 KCFAの学生執行部としていろいろな試合を見ているのですが、身長が高い人や低い人、体が大きい人や細い人など、足が速い人などそれぞれの選手の得意な部分を集めてそれが一つになったときに、はじめて競技が成り立つというところがいいなと思っています。その中でBIG BEARSは、未経験の選手もスタメンとして活躍していることが多い印象があるので、どんな人でも努力を重ねていけば、チームを代表して戦うことができるということを証明しているところがいいなと思います。

平田 いろんなバックボーンを持っていたり、アメフト以外のスポーツをしていたりする人でも活躍する場があるというところがフットボールのいいところかなと思います。BIG BEARSのいいところは、いい意味でも悪い意味でもいろんなやつがいるというところですね(笑)。そういうやつらが同じ方向を向いて同じ場所に向かって活動していくという面白さはあるかなと思います。

ーー島田さんはマネジャーですが、もし自分が選手だったらしてみたいポジションはありますか

島田 DL(ディフェンスライン)はやってみたくて。セットの格好から野獣っぽい感じがして、ディフェンスでありながら攻撃的な部分があるのがかっこいいと思っていて、QBサックをして会場を沸かせてみたいなと思います(笑)。

ーー最後にラストイヤーにかける意気込みをお願いします

島田 1年生の甲子園ボウルに連れていってもらった時に、第4Qで逆転されて日本一を逃したのですが、そこで選手たちが泣いている姿を見たという経験があったから、ここまでやってくることができました。昨年も一昨年も日本一を目指していましたが叶わなかったので、今年は日本一を目指せる最後の機会ですし、マネジャーや主務としてチームの環境を整えるのはもちろん、個人としても選手と主体的に関わることでチームに貢献して、必ず日本一になりたいと思います。

平田 今まで日本一になるためにはということを逆算してやってきましたが、いまだに日本一にはなれていないので、どうすれば日本一になれるのかということは頭に置きつつも、4年として、副務としてどうすればみんなが最善を尽くせるいい環境で戦えるかというのを考えなくてはいけないというのが副務として思っていることです。選手として思っていることは、チームに所属しているだけでは日本一になれないので、自分自身や周りの選手たちが自らの行動によって日本一になるということを刷り込ませていくということは自分にできることだと思いますし、自分のために最後の1年間を使うというよりかは、チームのためにこの1年間を使っていきたいと思います。

ーーありがとうございました!

(取材・編集 安齋健、山田彩愛 写真 山田彩愛)

献身的にチームを支えるお二人の活躍に期待です!

◆島田芙希(しまだ・ふき)(※写真左)

東京・早実高校出身。法学部4年。主務。マネジャー。高校時代はチアリーディング部で野球部だった亀井主将を応援していたという島田さん。今年度は主務として、マネジャーのリーダーとして日本一に貢献します!

◆平田智裕(ひらた・ともひろ)(※写真右)

東京・早実高出身。人間科学部4年。162センチ。72キロ。副務。K/P。状況把握力と実行力に長けている平田さん。私たち取材班のお腹が減っていたのが伝わってしまったのか、対談後にお団子を差し入れてくださいました!