尽力
BIGBEARSで4年間、セーフティと呼ばれるディフェンスの最後尾を守備するポジションに君臨した2020年度BIGBEARSの主将・大西郁也(法=東京・早大学院)。1年時から試合に出場し、2年生からはスタメンになり、BIGBEARSの最後の砦(とりで)としてチームを何度も救ってきた。2年時と3年時には甲子園ボウルに出場し、4年時には主将としてコロナ禍での難しいシーズンの中、180人にも及ぶ選手とスタッフをまとめ上げた。チームの核として走り抜けた4年間を振り返る。
フットボールは、小学生の頃に始め、高校では名門である早大学院でプレーをした。大西が高校3年生の時、BIGBEARSは、甲子園ボウルに出場し立命館大と対戦した。惜しくも1点差で敗れたが、最後のプレーまで勝利がどちらに転ぶか分からない試合を見て感動し大西はBIGBEARSでプレーをする決意をした。
2019秋季リーグ法大戦でインターセプトを決めた直後の大西
BIGBEARSに入部した大西は「とにかく試合に出て活躍したいという気持ちで日々の練習や試合に臨んでいた」と着実に大学でも通用する力をつけていき、秋季リーグでは1年生ながら試合に出場もした。そして、秋季リーグ最終戦の早慶戦で大西は力を発揮した。逆転に次ぐ逆転となったこの試合であったが、最後に試合を決定づけたのは大西のインターセプトだった。絶対に負けられない戦いで最後の最後にビッグプレーをし、引退する4年生に花を添えた。そして翌年からスタメンとなりBIGBEARSの守備を支えていく。その2年時には、早慶戦の勝利に貢献し、また秋季リーグでは全勝し2年ぶりのリーグ優勝、そして甲子園ボウルの切符を手に入れた。創部初の学生日本一をかけて戦ったものの、20-37と完敗。大西も「何も結果を残せなかった」と振り返った。「DBとしてはまだまだ闘志が足りなかった」と反省し、迎えた3年。早慶戦も2年連続で勝利し、春シーズンでは苦戦するも、秋季リーグでは昨年の王者の力を見せつけ、リーグ連覇まであと1勝まで順調に勝ち進む。しかし、ここで試練が待っていた。相手は法大。試合開始直後に、キックオフリターンタッチダウンを取られ、さらにターンオーバーも絡み立て続けに失点。後半に14点差を逆転したものの、試合終了間際にゴールライン手前まで攻め込まれてしまう。このまま追いつかれてしまうのか。そこで早大を救ったのは大西だった。大西が培ってきた勘で、相手のエースレシーバーへのパスを完全に読み切りインターセプト。「チームの同期、先輩、後輩、コーチ、スタッフへありがとうという感謝の気持ちが込み上げてきた」とインターセプト直後に感情を爆発させた。東日本代表決定戦にも勝利し、迎えた甲子園ボウル。大西は「試合の中で存在感を示すことができ、成長を感じることができた」と要所でタックルを決め関学大に応戦するも、徐々に守備を崩されていき第4クオーターに逆転され敗戦。昨年からの成長を見せるもまたしても涙をのんだ。
最後尾で守備をする大西
「どれだけの人間が4年生の『闘志』を受け継いで次につなげていけるかが大事だなと思います」。大西は引退していった4年生の思いを受け継ぎ主将に就任した。しかし新しい体制で動き出し少し経った頃に、新型コロナウイルスの影響で部活動ができなくなった。主将として大変だったことについて「日々、選手のモチベーションをコントロールすることに苦労した」と答えた。また、BIGBEARSは推薦で取れる選手の人数が少なく、未経験者も多く入部するため、経験が多く積める春シーズンや夏合宿が中止となりチームは痛手を負った。それでも、活動再開後は「いかに気持ちを入れて日々の練習に取り組むかに注視した」と少ない練習期間でもチームをまとめ上げていった。そして迎えた秋季リーグ。初戦の桜美林大戦に勝利し、大一番の明大戦。勝てば1位決定戦に進める試合であったが、試合序盤から追いかける展開に。前半で同点に追いつくも、後半に突き放された。ここ一番でビッグプレーを起こしてきた大西だが、この試合では流れを変えられるプレーができず惜しくも敗れ、甲子園ボウルへの道は断たれた。最終戦の東大戦では、「早稲田のディフェンスの力を遺憾無く発揮できたと思います。最高のディフェンスだったと思います」と7失点に抑え大西のBIGBEARS最後の試合を締めくくった。その一方で大西は試合終了直後、「甲子園ボウルでみんなをプレーさせてあげられなかったことに無力感を感じた」といった気持ちになったという。
「ケガが多かったのですが、たくさんのことを学び、大きく成長させていただきました」と大西は4年間の競技人生を振り返る。悲願の日本一とはならなかったものの、大西の「日本一のために日々尽力して欲しい。後悔することのないよう頑張れ。全力を出し切ってほしい」という後輩への思いは十分に伝わっただろう。大西は卒業後、社会人でも選手としてプレーを続け、学生時代に成し遂げられなかった日本一を目指す。
(記事 小野寺純平、写真 足立優大、小野寺純平、安岡菜月氏)