【連載】甲子園ボウル直前特集『闘志』【第7回】高岡勝監督

米式蹴球

 2年連続の甲子園ボウル出場を果たした早大米式蹴球部。高岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院)は監督として挑む2度目の甲子園ボウルとなる。創部史上初の日本一を懸けた戦いに向けた意気込みを伺った。


「チームとして成長することができました」(高岡)

2年連続のリーグ戦優勝を振り返る高岡監督

――2年連続での全勝優勝となりましたが、リーグ戦での戦いを振り返っていかがでしたか

高岡 初戦が一番緊張した東大戦でしたが、そこで色々な課題が出て、それを潰していくうちにチームとして成長することができました。結果として全勝で勝たせていただけたので、リーグ戦の間も進化できたことが良かったかなと思います。

――リーグ戦の中で一番の山場となった試合はどの試合でしたか

高岡 やはり法政戦ですね。リードされるということに慣れていない中で(前半)2ポゼッション差というのはかなり大きなビハインドで、その中で最後2ミニッツで勝てたというのはいい経験になりましたね。

――今シーズンのクオーター(Q)ごとの得点総数では第2Qが一番多かったのですが、2ミニッツのオフェンスへの準備はしっかりされていますか

高岡 タイムコントロールというか、今年のリーグ戦ではFGを狙いにいったときにたまたまTDできたっていう場面が多かったんですけど、そういう点ではこれまでのチームからすると成長できているのかなと思います。」

――リーグ戦を通してのチームとしての課題はありましたか

高岡 今年はタレントが非常に少ない中で、RBを見てもらえれば分かるようにスターターが常に変わったり、DBでもスターターが変わったりで、ある程度デプス(選手層)を厚くできたっていうのはみんな努力した結果かなと思います。試合で結果を出してくれる若い選手が多くいたのが今シーズンの収穫ですね。

――課題としてはいかがですか

高岡 やはりスロースターターと言われるように、第1クオーター(Q)の入りと、キックオフカバーですね。法政戦でも大きくゲインされましたし、春の明治戦もかなりゲインされているので、キッキングをどれだけ仕上げていくかというのは今まさに課題だと思っています。

――キッキングカバーではディフェンスのスターターとは別の選手が出場していますが、タックルの精度という面ではいかがですか

高岡 キックのメンバー表を見てもらえれば分かるように、決してメンバーを落としているわけではなくて、一本目のメンバーも多く入っていて。私は常々から「キッキングはチームの強さを表す」と思っていますので、技術力では少し劣るかもしれないんですけど、気持ちとヒットの強い選手を当てていますので、メンバーが落ちているとは思っていません。キッキングメンツについてはベストアスリートを使うように言っていますので、メンバー選定についてはベストだと考えています。ただ、スピードなどのアスリート能力の点で法政や明治はいい選手層が揃っていますので、そういったところで力負けしてしまったのは春、秋ともにあったかなと思います。

――キックで大きくゲインされてしまう要因というのはどこにあると思いますか

高岡 ほんのちょっとしたところですけど、ブロッカーの処理であったりだとか、法政戦ではリバースに引っかかってしまったりだとかで、自分のやるべきことの遂行能力の点でどこか綻びが出た時に、キッキングはスピード勝負なので失敗してゲインされてしまうというところがあるのかなと思います。

――キッキングに関しては現在どのようなトレーニングをされていますか

高岡 キックはフットボールの根幹なので、しっかりと当たれるように、しっかりとパシュートできるようにっていうのを春からずっと取り組んでいるので、そこの精度をどうやって上げるかですね。特別な練習はやっていないので、基本的なところに立ち返って今一度練習しています。

――チームをけん引してきたLB池田直人主将(法4=東京・早大学院)のリーダーシップというのは監督からご覧になっていかがですか

高岡 やっぱり池田のいいところは、愚直に真っすぐフットボールに向き合うということをずっとやってきていますので、ぶれることない信念があるところだと思います。チームでやるべきことを理解していますし、それを選手たち仲間に伝えていってるところがすごく成長したなと思います。

――池田選手が4年生になって成長した点はありますか

高岡 話が上手くなりました。(笑)選手たちが池田が話している時は聞き入ってるので、彼の話す言葉の重みっていうのはどんどん出てきているなと思います。

――新チーム当初はどの選手に聞いても「口下手」という印象でしたね

高岡 そうです。(笑)最初はなに言ってるんだか分らなかったですからね。今はすごくいいことを言うようになりましたね。

――副将のQB柴崎哲平選手(政経4=東京・早大学院)と二村康介選手(文構4=東京・獨協)のリーダーシップに関してはいかがですか

高岡 柴崎はQBというポジション柄リーダーシップを取らなくてはいけないので、オフェンスの司令塔として頑張ってくれていますね。彼も小さい頃から知っていますけれども、非常にストイックにフットボールに取り組んでいるので、最初は空回りするというか、(周りに)理解されない部分も出てきてしまうこともあるんですけど、実力もありますし、努力しているところも他の選手たちは見て分かっているので、そういう意味ではシーズンが深まれば深まるほど、彼の頑張ってきたこと、人前にでて話すこと、リーダーシップ、というのがチームのみんなに理解されて、QBとして、副将としてオフェンスをまとめてくれていると思います。

――二村選手についてはいかがですか

高岡 二村も口下手というか、寡黙なタイプで黙々と努力していますよね。彼はけががちだったので、復帰へ向けたトレーニングの姿であったりとか、二村はまさに自分の態度で示すというタイプの副将です。特にDLはやんちゃなメンバーが多いですので、その中で彼の存在感は大きいですね。二村になにか言われたら終わりだという存在感があるので、二村の背中で見せるというのは非常にいい効果を表しているなと思います。

――4年生の意識の変化というのは感じられていますか

高岡 今年シーズンインした時に、4年生は大人しい子が多いのかなという印象でしたね。昨年の4年生がやんちゃだった反動もありますけど、このままいくと気がついたら終わっていたっていうチームになりそうだなと思っていたんですけど、その中で私も彼らと一緒に格闘しながらリーダーシップをどのように出してくれるかなというところで色々な働きかけをしてきました。意識のレベルとしては4年生全員が池田主将のもと、一つの方向を向いてくれているかなと思います。チームの一員として何をすべきかというのを4年生はみんな意識してやってくれているなと思います。

――下級生はいかがですか

高岡 そうですね。主力の下級生もだいぶ4年生と同じようなことを言い始めている選手もいるので、そういう意味では彼らの取り組みっていうのは早稲田の新しい文化として少しずつ根付いているのかなと思います。代が変わると反動で前の年の否定から入りますので、彼らが苦労して作ってきた部分をここで絶やすことなくどう伝承して早稲田の文化としていくのかっていうのを下級生にはやってほしいなと思います。

――下級生の中でもリーダーシップを張っている選手はいらっしゃいますか

高岡 まぁ、今の代も昨年のこの時期はリーダーシップがあるような、ないようなっていう感じだったので、そういう意味ではいままで4年生にある程度おんぶされていたメンバーが、自分たちが最上級生になった時にどう取り組んでいくのかっていう部分で自分たちでもがき苦しんで、見つけ出してくれればいいかなと思います。これは私が指名して決めるのではよくないと思っているので、彼らの中で自分たちのリーダーは誰かっていうのを見つけ出してくれることを楽しみにしています。

――チームとしてはRBを始め多くのポジションで競争が生まれていましたが、その点監督としてどのように捉えられていましたが

高岡 抜きん出た選手が非常に少ないチームなので、例年より遅い夏以降に背番号を決めて、真剣に取り組んでいれば試合に出れるんだと。試合に出ることが全てではないんですけど、試合に出て活躍をするということが競技スポーツをやる上では一つの目標でありますし、そこで活躍するってことを夢見て日々取り組んでいると思うので、切磋琢磨できる環境というか、そういう気持ちをみんなが持ってくれてるということは頼もしいですね。けが人が出た時にも、少しは劣るかもしれないけど他の選手を出してみたりして、練習よりも試合の方が良い成果を出してくれたりっていうのが見れましたね。春で言えば福田(WR福田晋也、社4=東京・早実)が出てきたり、この前の明治戦も我妻(DB我妻航汰、商3=茨城・茗渓学園)が急遽鏡(DB鏡桜ノ介、教3=東京・城北)の代わりに出ていい働きをしたりと、目立たないところでも努力していた結果が出たんだなと思います。そういうのをこれからも継続して取り組んでほしいし、1年生とかもそういう先輩を見て頑張ってほしいなと思います。

「自分たちのフットボールをできるのか」(高岡)

甲子園ボウルを想定する高岡監督

――甲子園ボウルについてお聞きしていきます。監督として臨まれるのは昨年に続いて2度目となりますが、出場が決まった今のお気持ちとしてはいかがですか

高岡 昨年初めて監督として甲子園に行かせてもらって、コーチの時も何回か行ったことがあったんですけど全然違うなという印象でしたね。関西に対してどういう取り組みをすればいいかというところで、思っていた以上に関西学院さんの巧さといいますか、甲子園での常勝常連校っていうところの厚みを感じさせられましたね。その経験が今年のチームを作っていく上で一つの肥やしになったなと思います。

――マネジメントの部分で工夫されていることはありますか

高岡 やはり常々選手には言っていますが、自分たちのフットボールをできるのかというところですね。甲子園だからといってよそいきなことをするのではなくて、やはりやり切るというところで平常心を持って今までと変わらず甲子園に入れるかというところで、選手とコーチと一緒に取り組んでいます。

――関学大の今年のチームの印象としてはいかがですか

高岡 春から色々なビデオを見させていただいて、奥野選手(QB奥野耕世)の次の2番手3番手のQBをどう育てていくのかというところを取り組まれているなと思いました。ここまでの戦いを見ると、ウィークポイントがないなと思っています。ディフェンスは相変わらず強力なフロントを持っているので、どれだけライン戦で勝てるかなというところです。奥野選手は走れるので、そういうQBをうちは苦手としてますから、それはすごく嫌だなと思いますね。非常に大変な試合になると思いますが、15分クオーターの最後第4Qが終わるまで、うちが走り勝てたら結果もついてくるんじゃないかなと思います。

――早稲田のオフェンス、ディフェンスでキーマンになってくる選手はどの選手ですか

高岡 オフェンスはどうしてもQBがキーになってくるので、柴崎がどれだけ平常心で自分のプレーができるかで変わってくると思います。ディフェンスはLB野城(翔也、創理4=東京・西)ですね。彼がLBの中心なので、彼の動きがパスにもランにも影響してきますので彼はキーマンになりますね。

――野城選手の成長というのは監督から見てどのように感じられていますか

高岡 昨年からスターターに落ち着いてきて、彼はもともと高校の時から素晴らしいLBだったんですけども、体が追いついてきていなかったりけがだったりがありました。そんなに目立ってはいないかもしれないんですけど、彼がどれだけタックルできるかでディフェンスが締まってくると思います。試合慣れしてきたことによって、動きにも正確さが出てきたので、コンディションよく彼が甲子園で活躍できることを期待しています。

――早稲田が出場した甲子園ボウルといいますと、2015年惜しくも1点差で敗れた試合が思い浮かびますが、あの試合のようにキックでの得点が試合を左右する場面もあるかと思います。今年キッカーを務めるK/P髙坂將太選手(創理3=東京・国立)への信頼はいかがですか

高岡 高坂は敏基(佐藤敏基、平28社卒=現IBM)と全然違う性格ですがで、敏基同様に極めて集中力のある選手なので本番に合わせてくるのは得意ですね。ただ、FGの正確性っていうのはキッカーの髙坂だけではなくて、スナッパー、ホルダーの3人の呼吸だと思っています。ですので、スナッパーに竹(LB竹舞哉、社3=東京・早大学院)が入るのか、河波(WR河波正樹、スポ3=カナダ・シアクァムセカンダリースクール)が入るのかは分かりませんけれども、このスナッパーとホルダーの吉村(QB吉村優、基理=東京・早大学院)の呼吸を合わせて髙坂のキック力が生かせると思っていますので、この3人の呼吸をどう甲子園に持っていくかというところが、髙坂の結果を出すと思っています。

――今年の甲子園ボウルではどのような戦いを見せたいと思っていますか

高岡 勝敗は相手あっての結果なので、正直どうなるかは分かりません。ただ、我々が1年間取り組んできたことがどれだけフィールドで出せるか。最後まで諦めずに足を動かし続けられるか、ボールを追いかけ続けられるかっていうのをみんなにやってほしいです。スタッフもすべての自分の仕事を全うして、やり切ったというゲームを甲子園でやりたいと思っています。結果がどうであり、やり切ったという試合をしたいと思います。

――最後に、甲子園ボウルに向けた意気込みをお願い致します

高岡 今年は異常気象など、いろいろなことがありました。いつもボランティアに行っている福島でも水害があって、お世話になっている方々も被害に遭いました。そんな中でも我々を応援してくれています。学内の先生方、サポート企業の方々、OBOG、ファンクラブ、父母会、あげたらきりがないんですが、ほんとうに多く方々の支えがあって、我々は、いまここにいられるんだと思います。皆さまの期待に応えられるよう、選手・スタッフ・コーチが一つになって甲子園でチーム力を出し切ります!

――ありがとうございました!

甲子園ボウルへの意気込みを色紙に書いてくださりました!

(取材・編集 涌井統矢 写真 黒田琴子)

◆高岡勝(たかおか・まさる)

1968(昭43)年6月22日生まれ。静岡聖光学院高出身。1992(平4)年人間科学部卒。監督として挑む2度目の甲子園ボウル。高岡監督のマネジメントにも注目が集まります!