数えきれないほどのパスを取り、幾度となくチームの勝利に貢献してきたWRブレナン翼(国教4=米国・ユニバーシティラボラトリースクール)もついに最終学年を迎えた。誰もが認める早大のエースレシーバーに甲子園ボウルへの意気込みを伺った。
「本当にこれでラストイヤーだから何かチームに残さなきゃなって思って」(ブレナン)
最上級生となり、後輩の育成にも目を向け始めたというブレナン
――全勝優勝おめでとうございます
ブレナンありがとうございます。
――まず、今シーズンを振り返っていかがですか
ブレナン 今年は春シーズンに明大に負けていたので、秋シーズンをいい感じに進めてきた中で、やはり明大が怖いなと思っていました。今季途中で明大が第3節で負けたことで、少し心の緩みがあったのですが、やはり春に負けた相手として関東リーグの最終戦で明大に勝って甲子園に行きたいという思いで秋季シーズンを過ごしてきたので、結果的に勝つことができて、全勝優勝できて良かったのではないかなと思います。
――2年連続の関東制覇となりましたが、昨年とチームの雰囲気で違いなどはありますか
ブレナン 昨年のチームは緩い雰囲気がなかったのですが、今年は僕や哲平(QB柴崎哲平、政経4=東京・早大学院)など性格がふわふわした選手が多いので、そこまでピリピリした雰囲気はないかなと思います。でもちゃんとオンとオフをしっかりして、フィールドにいる時は真面目に、オフの時はふざけあったりしています。
――そんなチームの最高学年の一員として、チームのために取り組んできたことはありますか
ブレナン 頑張って下級生に指摘するようになりました。今年で自分はラストイヤーなのですが、来年、再来年のチームのことを考えて、甲子園に今後も行けるように、育てなきゃなという責任感は感じていて、意識しています。
――チームへの責任感が生まれたきっかけはありますか
ブレナン 結構春シーズンから4年ミーティングが多くて、4年生だけが集まって、今年のチームをどうするかなどの話し合いがたくさんあったのがきっかけでした。本当にこれでラストイヤーだから何かチームに残さなきゃなって思って、そう考えた時に僕たちがいなくなってからも勝ち続けられるチームを作れたらいいなと思いました。
――今シーズンで一番記憶に残っている試合はどの試合ですか
ブレナン ぱっと思いついたのは、中大戦かなと思います。最初のシリーズの2プレー目でロングパスを取ったのですが、最後の1ヤードでタックルされて、TDできなかったシーンがあって。いい印象ではないのですが、すごく悔しかったので、一番印象に残っている試合ですね。
――法大戦では苦しい展開の中、ビハインドから迎えた第4クオーター(Q)で逆転TDを決められました
ブレナン 法大にキックオフリターンでそのままTDを決められて、「こういう試合になるんだ」と思って。0-14で迎えたオフェンスのシリーズで、一瞬だけ「この試合負けるかも」と思ってからは、気持ちが振り切れて、もうやるしかないという一心でした。前半が14-28で終わってからは、わくわくしてきて、楽しくなってきて。4年間早稲田でやってきてはじめてのシチュエーションで、緊張もあったのですが、とりあえず楽しくて、わくわくが止まらなかったです。
――追い詰められた方がアドレナリンが出るタイプなんですね
ブレナン チャレンジするのがすごく好きなので、一番楽しかった試合かもしれないです。
「甲子園が一番楽しめる舞台」(ブレナン)
甲子園での一戦を心待ちにするブレナン
――甲子園でもタフな試合展開が予想されます
ブレナン すごく楽しみです。甲子園が一番楽しめる舞台だし、ベストなディフェンスとプレーできるというのも楽しみで、すごくわくわくしています。
――関西のディフェンスの印象はいかがですか
ブレナン 関西のチームはフィジカルやスピード感が関東のチームとは違って。ものすごくハードタックルをするし、リアクションスピードも速いですね。関東だったらボールをキャッチした後タックルされない場面でも、関西だったらすぐタックルされる場面が多いので、とにかく強いです。
――そんな強いディフェンスに勝つために何が必要だと思いますか
ブレナン やっぱりQBとの意思疎通ですね。タイミングを攻めて、相手のリアクションスピードが速い分、レシーバーとディフェンスの勝負が厳しくなるので、QBとの意思疎通が一番大事になってくるかなと思います。
――QB柴崎選手とのパスユニットの完成度はどのくらいですか
ブレナン まだ100パーセントではないと思っています。立教戦で僕が違うルートでオーディブルをかけたかった場面で、哲平もこっちを見ていて意思疎通はできていたのですが、そこからプレーを変えて、僕たちがやろうとしていることをやり通すというのがまだできていなくて。そこを残り3週間で詰めて、お互い100パーセント信頼してできるように練習していきたいですね。
――改めて、4年間一緒にやってきた柴崎さんのプレーヤーとしての印象はいかがですか
ブレナン やっぱり彼はすごくストイックで、本当にこのチームを勝たせたいんだなという思いを僕は感じています。みんなの前では厳しく言ったりする場面もあるのですが、それは心の底から日本一になりたいから、自分を鬼にしてでも厳しく言うような人がいないから自分がやるしかないみたいなメンタルでやっていて。練習の外でもストレスを感じることがあると思うのですが、微塵(みじん)も見せない所とかが本当にすごいなって思っています。僕はすぐ顔に出ちゃうタイプで、嫌だったら嫌な顔をしてしまうので、本当にすごいなって。本当にチームを勝たせたいんだなって感じます。
プレーヤーとしては投げどころが良くて、しかも1、2年の時から課題であった肩の強さを3、4年になってから本格的に鍛えた成果が出ていて、チームを勝たせるためなら何でもするその気持ちが4年間でめちゃくちゃ伝わりました。
――甲子園に勝つためにはディフェンスもカギとなってくるかと思います。ディフェンス陣への信頼はいかがですか
ブレナン すごい信頼はしているのですが、ユニットとしてはオフェンスのユニットに比べるとレベル的には低いかなと思っていて、点を取られてしまうというのはアメフトの試合なのでしょうがないのですが、たまにハラハラする場面があったりして。でも大事な場面でファンブルリカバー、インターセプト、サックなどを今年はしてくれているので、そういうプレーが出ると、オフェンスからするとありがたいし、モメンタムをつかみやすくなるので感謝しています。
――今季で大学を卒業して、アメフトキャリアの節目の年となるかと思いますが、ここでアメフトを始めたきっかけを教えてください
ブレナン きっかけは小学校4年生の時で、義理のお父さんがアメフトをしていて、普段から家でアメフトのカレッジやプロの試合が流れていたのもあって、お父さんにやってみないかと誘われてクラブチームに入りました。最初はルールとかも全く知らなくて、面白みがわからなくて、「なんだこのスポーツ??」みたいな感じでした。1年間やってみたものの、そのあと5年生で実は一回お休みしていて。僕はOLをやっていたのですが、これはOLに申し訳ないのですけど、楽しくなくて。でも6年生の時に友達から人が足りないから来ないかと誘われた時に、今度はWRをやりたいと立候補して、そしたらすごく楽しくて、ずっとWRとしてアメフトを続けてきました。
――長年続けてきて来られたからこそ、WRというポジションへの思いがアメフト愛につながっていそうですね
ブレナン 小学校6年生からずっとやってきたのでそうかもしれないですね。WRって外から見たら、ただ走って、ボールを取って、また走る、っていう単純な流れなのですが、僕の中ではボールがスナップされる前からもうすでに勝負が始まっていて、相手との目線とか、体の小さな動作とか、走っている時にちょっとした角度のズレとか、マインドゲームをしているみたいで楽しいです。将棋やチェスみたいに。僕がこうしたら相手はこうしてくるだろうなっていう予想をいくつか持っておいて、それに本当にハマった時の面白さが、WRをやっていて一番楽しいなと思う瞬間です。
――早大を選んだ理由はどこにありましたか
ブレナン 日本の大学に行くと決めた時に、いくつか候補を見ていて。高校を卒業してから、京大、関学、関大、立命、早稲田、慶応、日大、法政、の8校を実際に回って見学しました。その時に雰囲気が一番合うなと思ったのが早稲田でした。
――早大に進学したからこそできたこと、苦労したことはありますか
ブレナン 早稲田だったからこそ、自由にアメフトをできたかなと思っています。下級生の頃は、許可をもらって年に2回くらい実家に帰らせてもらったりしていて、そういう面では他の大学に行っていたらできなかったことで、ストレスフリーで4年間アメフトができたと思います。また、早稲田のコーチ陣やチームメートたちが、最初の頃は日本語もできていなかったし敬語も苦手だった僕のことをすごくウェルカムに受け入れてくれました。日本の上下関係などの文化の面でも先輩が敬語で話さなくていいよと声をかけてくれたりして、そこまで苦戦しなかったです。早稲田じゃなかったら苦労していたのではないかなと思います。
――高校までをハワイで過ごされて、日本に来てカルチャーショックもあったのではないでしょうか
ブレナン 部活という概念に一番カルチャーショックを受けたかなと思っています。練習時間の長さが全然違って、高校の時は4時から6時でぴったり練習が終わって、6時以降グラウンドにいてはいけなくて。日本の文化が悪いという訳ではないのですが、長時間練習して、徹底的に、自分の課題を潰せるまでやるという文化に最初は戸惑いました。
――甲子園ボウルの対戦校に決まった関学大の印象はいかがですか
ブレナン 関学のディフェンスはシステム的に精度が高くて、昨年の甲子園もWRからしたら嫌な位置にいたり、一人一人の役割を果たしてオフェンスを止めに来ている感じがします。
――最後の甲子園ボウルへ向けて、意気込みをお願いします
ブレナン最後の甲子園ボウルということで、絶対勝ちたいというのは大前提なのですが、勝っても負けても悔いなく大学アメフトキャリアを終わらせたいなと思っています。でも、絶対勝ちます!!!
――ありがとうございました!
甲子園ボウルへの意気込みを色紙に書いていただきました!
(取材・編集 平川茜音 写真 黒田琴子)
◆ブレナン翼(ブレナン・つばさ)
1997(平9)年7月29日生まれ。184センチ、88キロ。米国・ユニバーシティラボラトリースクール出身。国際教養学部4年。WR。これまで数々のビッグプレーでチームの窮地(きゅうち)を救ってきたブレナン選手。最後となる甲子園の舞台でも創部85年の歴史を変える、スーパーキャッチに注目です!