『85年の歴史を未来へ繋ぐ』、記念試合「ROOTS BOWL」で立大に土壇場での逆転勝利!

米式蹴球
TEAM 1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
早大 BIG BEARS 10 18
立大 RUSHERS 17

 1934(昭9)年、日本で「東京学生米式蹴球競技連盟」(現在の日本アメリカンフットボール協会)が設立されてから85周年を記念し、創立時から加盟しているルーツ校である立大、明大、早大の3校三つ巴による記念試合が開催されることとなった。『85年の歴史を未来へ繋ぐ』という大会宣言のもと、代々受け継がれてきた伝統、歴史、誇りを懸けた一戦に挑んだ。


 5月にもかかわらず30度を超える猛暑の中行われた一戦。試合開始早々、立大のエースRB・荒竹悠大に2度のロングゲインを許し自陣深くまで攻め込まれ、FGで先制点を奪われる。昨年の関東大学秋季リーグ戦2位のラッシングヤードを誇る荒竹に苦しめられ、快晴の空とは対照的にチームには暗雲が立ち込める。第1クオーター(Q)終盤、オフェンスのスナップミスで自陣15ヤードからのディフェンス。反則も絡みゴール前5ヤードまで攻め込まれると、最後はショートパスを決められTDを献上。オフェンスも噛み合わず、0-10とビハインドで前半を終える。

前半は立大オフェンスに苦しめられた


 後半に入ると徐々にランプレーが出始める。K/P長谷川絢也(社4=東京・早実)がFGを決めると、続けざまにRB荒巻俊介(法3=東京・早大学院)が47ヤードの独走TD。同点に追いつく。その後は両者ディフェンス陣が奮闘し均衡状態に。迎えた第4Q中盤、自陣深くからのパントをブロックされそのままリターンTD。「毎試合毎試合キッキングのところで負けている」(LB池田直人主将、法4=東京・早大学院)と、課題であったキッキングの隙を付かれ、万事休すかと思われた。しかし、「今まで出ていなかった選手が活躍してくれた」(高岡勝監督、平4人卒=静岡聖光学院)と、早大オフェンスはここから真価を見せた。残り時間1分31秒の場面でQB宅和真人(政経3=東京・早大学院)からWR福田晋也(社4=東京・早実)へのロングパスがヒットし一気にゴール前9ヤードへ。DBからコンバートした福田の活躍に負けじとWR黒木優人(法4=東京・早大学院)へがショートパスをキャッチしTD。16-17。流れが早大に傾いたこの場面、オフェンスが勝負に出る。TFP(トライ・フォー・ポイント)でプレーを選択。逆転勝利に望みを懸ける。1度目のTFPは黒木へのパスプレーも、相手の反則がありやり直し。ゴール前での反則のため、残り3ヤードから半分前に進み、1.5ヤードからのオフェンス。「俺がこの試合を決めてやる」と、荒巻が中央の僅かな穴に飛び込みエンドゾーンを突破。土壇場での逆転劇に「オフェンスにとっても力になる」(池田)と、秋シーズンへ向けての大きな経験を確信した。

RB荒巻が47ヤードの独走TDなどの活躍を見せた


 「関大戦の時は途中で雰囲気が沈んでしまっていたところをこの試合はその反省を生かしてくれました」(高岡監督)と、前半無得点に抑えられたオフェンス陣が後半に18点を取るなど健闘。春シーズンでメンタル面での成長を体現してみせた。キッキングでは課題を修正しきれていない部分もあるが、普段控えに回っていた選手たちが要所でビッグプレーを起こすなど、チーム全体として成長を感じられる要素も多く、更なるチーム力の向上に期待が懸かる。ROOTS BOWLの次戦はもう1つのルーツ校である明大戦。先日、昨年の学生王者・関学大に勝利をあげるなど波に乗っている、昨年のリーグ戦2位の強豪に臨む早大。新チームが発足してから積み重ねてきた全てをぶつけるにはもってこいの相手だ。春を締めくくる一戦を勝利で飾れるか。楽しみだ。

(記事、写真 涌井統矢)


コメント


高岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院)

――きょうは日本でのアメリカンフットボール85周年を記念した試合ということでしたが、どのような思いを持って臨まれましたか

きのうも4年生と話をしまして。ルーツ校の名に恥じないような試合をしようというところで臨みました。


――前半は0-10のビハインドでしたが、前半を振り返っていかがでしたか

普段センターをやっていない選手にきょうはセンターをやってもらっていたので、スナップミスとかもあったりして。前半を振り返ってみると残念でしたね。


――後半は荒巻選手のランを中心にオフェンスが機能しました。荒巻選手の印象としてはいかがですか

もともとポテンシャルのある選手なので、彼がいつ活躍する姿を見せてくれるかなと思っていたんですけど、きょうは良い走りをしてくれました。インサイドのランがしっかり出てくれていたので良かったです。


――オフェンス全体としても後半はドライブがしっかりとできていた印象でした

そうですね。最後苦しいところでロングゲインしてくれたWRの福田くんはもともとQBをやったりDBをやったりしていて、スピードのある選手なのでWRに転向していつ出てきてくれるかというところで楽しみにしていたんですけど。今回たぶん公式戦で出るのは初めてだったと思うんですけど、ロングゲインの前にもショートパスをしっかりとキャッチしていたりと、今まで出ていなかった選手が活躍してくれたっていうのは我々にとっても明るい材料ですね。


――最後の2ポイントコンバージョンの場面で、直前にオフェンス11人選手全員をフィールドから呼び戻して何かを話されていましたが、どのようなお話をされていましたか

まぁ、残り1.5ヤードだったのでここはメンタル的なところでどう仕切るかという場面で。あそこは気持ちだけの問題だったので。僕も現役時代はOLだったので、「OLの見せ所だと」選手たちには伝えて、見事ショートヤード取ってくれたので良かったです。


――チームとしては土壇場での勝利でしたが、この勝利はどのように捉えられていますか

関大戦の時は途中で雰囲気が沈んでしまっていたところをこの試合はその反省を生かしてくれました。そういうことがないようにメンタル面で最後まで集中できるかというところを課題にしていたので、そういう意味ではそれができていたので良かったかなと思います。


――ROOTS BOWLとしては次戦屈指のRB陣をそろえた明大との一戦です。

明治さんはQBの西本くん(晟)であったりWRの九里くん(遼太)、渡邊くん(圭介)であったりもいて本当にタレントぞろいで。監督としては良い選手をたくさんとれるリクルートがしっかりしているので羨ましいですね。その明治に対して良い試合ができるかというところが楽しみですね。


――明治は先日関学大に勝利するなど、春シーズンで結果を残しています

最後の集中力っていうのが凄いなと思います。怖いですね。




LB池田直人主将(法4=東京・早大学院)


――試合を振り返っていかがでしたか

スコアを見ても分かる通りなんですけど、ディフェンスもオフェンスもキッキングに関しても全部中途半端な出来だったなと思います。ディフェンスに関して言うと、タックルミスの多さであったり。LBではメンツを変えたことで、普段控えの選手がフィジカル負けしてしまうところがあって。そういうところが課題だなと思います。あとは毎試合毎試合キッキングのところで負けているので、そこでのミスが目立ったところは修正していかないとなと思います。


――きょうの試合はROOTS BOWLということでしたが、何か意気込みなどはありましたか

僕らの中ではROOTS BOWLだからというのはあまり気にしていなくて、TOP8のチームが相手で秋に戦うチームということで、そこに勝とうという意識で気持ちを入れてやっていきました。


――今年の立大の印象はいかがですか

全体的にというか、RBであったりとかタックル(OL)であったりとかに上手い選手が随所にいて。特にRBを僕らが一発で仕留めきれなかったりだとかっていうのがあったので。オフェンスの思いっきりの良さがあったので苦戦しましたね。


――立大のエースRB荒竹選手のランでゲインされる場面が目立ちました

僕自身はきょうはあまり当たっていないんですけど。見た感じでいうとDBやLBがタックルを一発でできてなかったり引きずられる場面もあったので、対人の強さっていうのは感じました。


――チームとしては最後2ポイントコンバージョンを決めての逆転勝利でしたが、その点はいかがですか

オフェンスはきょうはQBが宅和ということだったんですけど、宅和が割とリズムを作って18点を取ってくれて。最後のコンバージョンを決めたっていうのは彼にとってもプラスになりますし、オフェンスもいつもと違ったメンツで戦った中で、しっかりと点を取って勝てたというのはオフェンスにとっても力になると思うので良かったなと思います。


――ROOTS BOWLの次の相手は明大です。そこへ向けた意気込みをお願い致します

明治は去年リーグ戦2位のチームで、僕らも苦戦したチームです。春シーズンでは関学大にも勝っているので、僕らとしてもそこを山場としてしっかりと勝てるように意識しています。RBとか各ポジションに良い選手がそろっているので、特にディフェンスとしては課題となっているタックルをしっかりと練習して、そこをしっかり克服して勝ちたいと思います。




RB荒巻俊介(法3=東京・早大学院)


――後半立ち上がりから荒巻選手のランがよく出ていた印象でしたが、後半を振り返っていかがでしたか

坂本コーチ(智信、平19教卒=東京・早大学院)からフルスイングでプレーしろっていうのは言われてて。自分は4ヤードゲインとかが多くて、ビッグゲインっていうのができていなかったんですけど、後半はフルスイングっていうのを意識して思いっきり走ったら相手のセーフティまで抜けれて、冷静にセーフティの動きとかも見れたのでうまくかわせたかなと思います。


――フルスイングというのは

守ったプレーをしないというか。気持ち的な部分ですね。

――第3Qの独走TDの場面を振り返っといかがでしたか

OLが良いプレーをしてくれて一線目(フロント陣)は抜けられたので、そこはOL陣の手柄だなと思います。そのあとでセーフティに対して自分から勝負を仕掛けられたのは1つ成長なのかなと思います。


――逆転のかかった2ポイントコンバージョンの場面はどのような気持ちで臨まれましたか

その1つ前のプレーがパスの選択だったのもあって、そこからのランプレーだったので、「よっしゃこれは俺のプレーだ」と思って。俺がやってやるんだという気持ちでプレーに入りました。(残り1.5ヤードで)ランだというのは分かっていたので、「俺がこの試合を決めてやる」という気持ちだけで走りました


――同期のRB広川耕大(社3=東京・早実)選手や2年生の吉澤祥(スポ2=東京・成蹊)選手がこれまでの試合で活躍を見せてきましたが、そこへ対するライバル意識などはありますか

もちろん練習の中であの2人が僕より上の位置でやっている姿を見て、自分ではくすぶっている部分とかもあって。きょうの試合は3人とも平等に出場機会があったので、ここで自分がやってやるぞという気持ちを持って臨みました。普通にやってても抜かせないっていうのは分かっているので、ライバル意識っていうのは普段から意識して練習しています。その2人だけじゃなくて、RBユニット全体でお互いを意識して練習できていると思います。


――先日、早大学院と早実が共に関東大会出場を決めましたが、荒巻選手と広川選手は両校のキャプテンをやられていました。後輩たちの活躍から刺激を受けたりなどはありますか

僕も広川も母校の活躍は凄い嬉しいと思っています。早実は創部してから初めてで、学院も久しぶりの関東出場ということなので。学院時代の同期で高校のコーチをやってる人がいて、そこから話を聞いたりしているのでそこからの刺激はあるんじゃないかなと思います。


――ご自身の状態としてはいかがですか

まだまだ身体的な強さという部分が弱いのが自分の1番の課題だと思っています。それはウエイトの強度という意味でもですし、試合を戦い抜くというハードさでも足りていないと思うので、2つの意味で『強さ』っていうのを身につけていきたいなと思います。


――今後へ向けた意気込みをお願い致します

RBがチームで1番練習をして、試合でも活躍するっていうポジションにしたいなと思っていて。その中でも自分がやってやるぞという気持ちを持って日々の練習と春シーズン残りの試合をやっていきたいと思っています。そして秋にはRBが早稲田の看板だなと思われるような活躍をしていきたいなと思います。