この春、新進気鋭のルーキーたちが早大米式蹴球部の門を叩いた。その中でも、第5回U19世界選手権の代表入りを果たしたDL光本周平(国教1=京都・立命館宇治)、WR田窪大渡(政経1=東京・早大学院)には、今後の活躍に大きな期待がかかる。これからのBIG BEARSを背負うお二人に、大学でのフットボール生活や今後の抱負を伺った。
※この取材は8月21日に行われたものです。
「思いっ切りの部分をもっと出して」(光本)
和やかな雰囲気で対談するお二人
――入部から5ヶ月ほど経ちましたが、大学でのフットボールはいかがですか
光本 自分の場合は高校では下校時間というものがあって縛りがあったので、土日を除いて平日は長くても3時間ぐらいしか練習はできなかったんですけど、大学は夜遅くまでフットボールに集中できる環境が高校と比べてあるかなと思いますね。
田窪 僕は学院(早大学院高)だったので、アサイメント的には似ているところがあったんですけど、同じアサイメントでもプレーに対する理解度やそういったものが高校と大学では全然違っていて、大学の方がより深かったですね。
――今年の1年生の雰囲気はいかがですか
光本 未経験者が多いので、結構フットボールの伸びしろしかないですね。
田窪 結構みんな真面目ですね。この前合宿が終わったんですけど、みんな上手くなっていましたね。
――光本選手が早大を目指したきっかけは
光本 僕の場合は高校の時に留学していて、一部の人が留学というバックグラウンドを使って、AO入試を受けうる風潮が自分の高校にはあって、自分は何にも考えていなかったんですけど、結構担任の先生たちと話をしていて、早大の国際教養学部を勧められて、親にも話したら受けてみなさいということで目指したよりかは勧められて受けた感じです。
――大学に入ってから今後伸していきたいポイントは
田窪 僕はまずはアサイメントなどのプレーの理解度を高めて、あとは身長が高いので高さを活かしたキャッチを磨いていきたいと思っています。
光本 自分は高校から結構しっかりとフットボールしていた高校だったので、スキル面ではすべきことは分かっているんですけど、高校でできていたものが春は全然大学ではできなくて、それはやはりフィジカル不足かなと考えています。高校では強いと言われたフィジカルを持っていたとしても、大学と高校では違うのでそこは痛感しました。あとはスキル面においても思いっ切りが自分には足りていないので、思いっ切りの部分をもっと出していけたらなと思います。
――春シーズンを振り返っていかがですか
光本 僕たち2人は春シーズンの最後にU19日本代表でメキシコに遠征したんですけど、メキシコに行って海外国と対戦した他にも春シーズンを通してフィジカルが足りていないということなので、トレーニングには熱を入れてやっていますし、プレー中に考え過ぎていた部分があったので、秋大会に入ったらしっかりと自分のやることだけを頭に入れて、思いっ切りやっていこうと思います。
田窪 メキシコに行ったときに、周りの選手もそうですけど、日本のトップレベルの選手が集まっていて、みんな上手かったので、スキルの面もあるんですけどやっぱり気持ち的にもっと上手くなりたいなと思わされたのが、1番印象的ですね。
「すごく刺激を受けた」(光本)
国際大会を振り返る光本
――U19日本代表を目指した経緯は
光本 フットボールを始めた時からの1つの目標でした。
田窪 僕の高校は秋に2回戦ぐらいで負けちゃって、周りのチームのレベルもあまり知らずに高校を終えたので、周りがどのくらい上手かったのかを知るために受けてみたというのもあります。
――U19のチームメイトで印象に残っている選手は
光本 僕のポジションは計8人いたんですけど、その中でもDLは中(DT)と外(DE)に4人ずつに区別されていて、僕を除く3人は日大の選手だったんですけど、同期で自分のポジションで1番上手かったと言われた日大のDL窪田選手(弦太朗)や他の日大の2人は春にスタメンを張っていた選手で、3人ともすごく力のある選手ですごく刺激を受けましたし、色々とフットボールについて教えてくれたので、その3人はすごく印象に残っていますね。
田窪 僕はQBの野沢研選手(立命大)ですね。
光本 凄かったよな(笑)。
田窪 彼のプレーもそうなんですけど、レシーバーのことも分かってくれていて、レシーバーがどう走って、どうルートを通ればパスをもらえるかを本当に全部分かっていましたね。
光本 パスが一生通ってましたね。高校からめちゃくちゃ有名だったんですけど、自分の予想を越えていましたね。パスが正確すぎて。オーバースローとかほとんどなかったもんね。
田窪 次元が違ってましたね。
――海外の選手と対戦してみてどの辺りに差を感じましたか
光本 フィジカルと気性ですね。めちゃくちゃ荒いですね。あとは自分が自分がというのがプレーからすごく伝わってきて、気持ちの部分で負けたらずっと負け続ける感じでした。フィジカルの部分だとカナダ戦では、自分の前の選手は140キロもあって腕の太さが尋常じゃなくて身長も高かったんですけど、それでも自分の場合はスピードと低さがあったので、相手に臆さずに思いっ切り突っ込んでいけた時は意外といい勝負はできたかなと思います。
田窪 僕はフィジカル負けしたのと、メキシコとカナダとオーストラリアの3ヵ国と戦ったんですけど、ただ単に身体能力が高かったのか分からないですけど相手は速かったですね。フィジカルの上にスピードもあったので、日本では味わえない感じでしたね。
――大会を通じて収穫や課題は見えてきましたか
光本 国際大会で1番感じる課題はどこのポジションもそうだと思うんですけど、やっぱりフィジカルだと思いますね。みんな口を揃えて言っていたのが、帰ったら筋トレ頑張ろうって言っていました(笑)。それぐらい速さと低さで差し込んで勝負ができたとしても、やっぱり力勝負になると体重もそうですしフィジカルが物を言わせるスポーツなので、どんなに技術を補ったとしても限界があるので、ある程度はフィジカルがあった上での技術なので。
――テクニック部分の差はあまり感じませんでしたか
光本 日本と海外のOLには違いがあるなと思っていて、日本のOLはどっちかというと最前列を縦に押し上げているのに対して、海外は体を入れ込んで穴をつくってそこを走るという感じなので、最初のメキシコ戦では結構苦労しました。それでも体を入れるとかは上手かったんですけど、テクニックの面では日本の方が上だと正直感じましたね。
田窪 賢さ的には勝っていると思います。
光本 プレーIQは勝っていますね。日本の方が考えてやるフットボールなので。
田窪 戦略的に勝っている場面は沢山あったと思います。
光本 プレーコールとかもカナダ戦では、自分はオフェンスを見ていただけなのであまり分からないですけど、オフェンスは一生プレー通ってたもんな。
――メキシコ遠征で大変だったことはありましたか
田窪 メキシコに着いて2、3日でお腹を壊して、僕は熱も出して死んでいました。
光本 結構みんなが熱を出して、大人数が熱を出していましたね。自分も試合の前日に微熱を出して、それは直ぐに治ったんですけど。水が汚いので飲んではいけなかったですね。
田窪 生野菜も食べちゃダメで。
光本 ホテルのご飯だったんですけど味はそんなに良くなくて、自分は体重を落としたくなかったので、そもそも僕は早大に入って実家を離れてから5キロぐらい痩せてしまったので、これ以上痩せる訳にはいかないと思って、大会期間中は結構食べていたつもりだったんですけど、それでも体重が1、2キロ減ってしまいましたね。メキシコっぽいものはほとんど食べてないですね。最後の空港でバーガーみたいなのを食べたくらいで(笑)。
田窪 ホテルのルームサービスでタコスを頼んだんですけど、これ、タ、タコ、タコス?って感じでしたね(笑)。
――遠征中で他校の選手との交流はありましたか
光本 僕はU18(インターナショナルボウル日本選抜)の時に一緒だった選手も多くいたので、6、7割くらいは知っている選手で結構仲が良かったです。元々高校が同じ選手も多かったんですけど、いつも一緒にいた選手たちは今回U19で初めて会った選手でしたね。
田窪 僕は知り合い0でした。同期で同じポジションで立大の選手がいて、その選手とはホテルの部屋も一緒だったので、ずっと仲良くやっていました。
――U19の遠征の直後に大学の期末試験でしたが学業との両立は大変でしたか
光本 結構U19の遠征の間も勉強して、U19から帰って来てからも結構勉強したんですけど、自分は国際教養学部なので成績順に留学先が決まるので、単位を取るのではなくて高いGPAを取らないといけなかったので、単位は絶対取れていると思いますし落単は絶対にないですけど、まあやばいです。
田窪 僕はそもそもそんなに試験は多くなくて、5つぐらいの内2つは未済制度みたいなのがあって、国際大会などで試験を受けられない場合は9月の始めぐらいに試験を受けられる制度が政経にはあったのでそれを使いました。でもメキシコから帰って来た翌日に試験があったんですけど、それは大変でした。
「1プレー1プレーに自覚を持って」(田窪)
リーグ戦への抱負を語る田窪
――遠征後には大学での初めての合宿がありました
光本 10泊11日がかなりタフだったんですけど自分的には実りある合宿でした。丁度合宿が始まる前に試合に出られるチームに入ることができていて、上手くいけば秋にも出られる感じだったんですけど、合宿の中日まで全然自分は成果を出せていなくて序列が落ちるかなとも思っていた時に同期の同じポジションの選手がいるんですけど、その選手が中日までにめちゃくちゃ調子を上げて一気に試合に出られるチームまで上がってきて、自分の中ではひやひやしていました。それでも中日を越えて、自分ももっとやってやるという気持ちがあったのかプレーに絡むシーンが増えて、この合宿で成長できた感はちょっとあります。
田窪 上のチームと練習することが結構多かったんですけど、1番は技術面でちょっとは上手くなったかなという感じもあったんですけど、上の1本目のチームの選手は1本目としての 責任があると思うので、この合宿を通じて1本目の人たちはすごいなと思いましたし頑張ろうという気持ちにもなりました。
――リーグ戦開幕が迫っていきましたが、いま必要となる力は
光本 ユニットとしては、1プレー1プレーの精度を上げることが必要になると思います。春シーズンに比べてポジション的にやってはいけないことが少なくなってはいるんですけど、それでも秋シーズンでは1つのミスが命取りになると思いますし、まだ全員が全員ユニットとして自分の役割を全うできていない時もたまにありますし、1年生が何を言っているんだという感じになるかもしれませんが、プレーの精度が4年生の方が目標としているものではまだないと思うので、あと日体大戦までの間にしっかりと仕上げていきたいと思っています。
田窪 4年生の先輩も言っていたんですけど、春は色々なプレーを試していたんですけど、秋は限られたプレーで精度を高めて成功率を上げ、チームとしてはコンビネーションを高めることが大事だと思います。
――このリーグ戦で山になりそうなカードは
光本 ディフェンス的には初戦の日体大のQBがかなり上手くて、彼も前回の世代別代表に選ばれていて、走れるし投げられる結構上手い選手なので、彼を止めるという意味でもこの日体大戦はカギかなと思います。あとは最終戦の法大だと思いますね。法大は毎年強いですし、めちゃくちゃフィジカルなチームなので、筋トレにすごく力を入れていて法大の選手はみんな大きいですし、そういった意味でも法大は怖い存在だと思っています。
田窪 日体大はオフェンスが強く試合は点の取り合いになる可能性があるので、オフェンスでやられていたらオフェンスでやり返して、日体大戦ではオフェンスで勝って勢いを付けていくという意味でも初戦は大事かなと思います。
――リーグ戦ではどのような戦い方をしたいですか
光本 思いっ切りさと、がむしゃらさで。
田窪 フレッシュマンなので気負うことなく、思いっ切りやれればいいかなと思います。
――最後にリーグ戦への抱負をお願いします
光本 この合宿中にすごくコーチに言われた言葉がすごく今でも心に残っていて、上級生の方でも上のチームに入れていない人もいる訳で、その中でも自分は1年生で上のチームに入らせてもらっている以上は、4年生のためではないですけど、自分らが4年生を勝たせる、自分らが上級生を勝たせる気持ちで臨んでいかないといけないという話をされて、自分の中ではその言葉が心の中に入って、春は自分が目立つためにプレーをしていたんですけど、秋は日本一も懸かっていますし引退も懸かっているので、自分らにはその責任があるので、僕は今の4年生はめちゃくちゃ好きですし、今の4年生と一緒に日本一になりたいと思っているので頑張ろうと思っています。
田窪 ケガで出られない選手もいて、そういった選手のためにではないですけど、そういった選手のことを考えて責任を持ってプレーしたいと思います。あと、今のレシーバーの先輩は歴代で見てもすごく上手い先輩が多いので、少しでも長く一緒にプレーができるようにしながら、先輩から色々なことを吸収して自分が上手くなるためにも1プレー1プレーに自覚を持って、練習から取り組んでいきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 成瀬允)
色紙に力強く抱負を書いていただきました!
◆光本周平(みつもと・しゅうへい)(※写真右)
1999(平11)年11月6日生まれ。176センチ。103キロ。AB型。京都・立命館宇治高出身。国際教養学部1年。DL。第5回U19世界選手権日本代表。高校時代にも現在と同じDLとして活躍した光本選手。リーグ戦では新人離れした強烈なパスラッシュに注目です!
◆田窪大渡(たくぼ・ひろと)(※写真左)
1999(平11)年10月4日生まれ。182センチ。81キロ。O型。東京・早大学院高出身。政治経済学部1年。WR。第5回U19世界選手権日本代表。少しフランス語が話せるという田窪選手。リーグ戦では高さを活かしたキャッチを披露してくれることでしょう!