2018年6月10日。東伏見キャンパスにて早大及び米式蹴球部の取り組みに関する説明会が催された。内容については早大における体育各部へのガバナンスや米式蹴球部の活動目的とその理念、加えて安全への取り組みやコーチング体制など細部にまで及んだ。会場に詰めかけた100名ほどのアメフットに関わる保護者たちは、真剣な眼差しで90分を超える説明に耳を傾けた。
部長を務めるロー・グレアム氏の挨拶に続いて、早大の職員を務める八木研作OLコーチ(平8文卒=広島・英数学館)から大学と体育各部との関係の説明が行われた。その内容は、体育各部を統括する競技スポーツセンターの規則とその役割。コンプライアンスに則った事故やトラブル発生時の対応について。また「管理委員によってチェック機能が働く体制となっている」と、体育会部に直接関与していない教員及び職員で構成された管理委員会についても詳細に述べられた。その後、「チームづくりの根底には大学があり、その上にはワセダスポーツがあり、そして最終的にはクラブのミッションがある。この3つの層で学生にアプローチしている」(高岡勝監督、平4人卒=静岡聖光学院)と、大学が掲げる建学の精神を根底とし、ワセダアスリート宣言に則った米式蹴球部の理念を説明。また、学生に考えさせ練習の意図を気付かせるコーチングに徹し、日本一になるだけではなく、日本一にふさわしいチームを目指すといった方針についても語られた。
チーム体制について説明する高岡監督
会の後半は安全管理に関しての説明に。メディカルスタッフのヘッドトレーナーを務める長瀬エリカ氏(平3人卒=埼玉・浦和西)からは、ケガをした際の対応、練習復帰へのプロセスについて。また、選手たちのコンディション調整を任された一原克裕フィジカルコーディネーター(平20スポ卒=千葉・日大習志野)は「選手の状態を把握し、見極めることが一番重要」と、2年前から毎日スマートフォンで睡眠時間や体の調子といったデータを全選手から収集するなど、フィールドでのパフォーマンスを向上させる取り組みを明かした。その後、竹田匡GM補佐(昭56商卒=東京・早大学院)からは様々な事例を取り上げ、「コンプライアンスは日本一を目指す上で全員が守らなくてはならない」と、見解を述べた。
また、先日公表された関東学生アメリカンフットボール共同宣言2018について触れる場面もあった。今年の2月からアメフトの魅力や安全性の追求、競技人口増加を図ることを目的に、関東1部リーグに所属する大学の監督及びヘッドコーチで定期的に会議を開くこととなった。しかし、その矢先の5月6日。日大と関学大の定期戦で事件が発生。「我々にとっても悲しい事件でしたし、腹ただしい事件でもありました」と、高岡監督は当時の心境を語った。様々な思いが交錯する中で、連盟任せではなく監督としてライバルであるPHOENIXを再生させる方法を監督会議で話し合い、その思いを発信するための共同宣言を作成。その文書には「私たちは、フットボールという素晴らしいスポーツ、そして私たちが心から愛するスポーツに対して、今後も真摯な姿勢で取り組んでいく」と、意を表した。そして指揮官は「監督会議の中では、日大自体のコンプライアンスの部分でしっかり再生して復活してもらいたい。世間の情に流される訳ではなく、日大さんの復活を願う。きっちりと大学としてガバナンスを利かせて同じことが起こらないように取り組んで欲しい。(中略)日大さん以外の関東1部リーグに所属する15校の監督は、皆そういった気持ちで日大の学生、日大PHOENIXのことを思って行動していることをご理解いただきたい」と、神妙な面持ちでその胸中を明かした。
ガバナンスついて説明する八木コーチ
早大だけではなく、早実、早大学院、ワセダクラブといったアメフットに携わる全ての保護者を対象に行われた今回の説明会。開催の経緯について高岡監督は「アメフトが素晴らしいスポーツであることを体現するのは大学のクラブではありますが、その前に早大としての取り組みについて皆さん(保護者の方々)に安心していただいて、息子さん娘さんを預けていただきたい」と、力強く語った。数あるスポーツの中で、最も事故発生率が高いとされているアメリカンフットボールだからこそ、選手を守る体制が重要。そして体制を築くには、信頼が不可欠であることを忘れてはならない。
(記事、写真 成瀬允)
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