【連載】『第65回早慶戦直前特集』【第7回】QB坂梨陽木主将×WR中村航主務

米式蹴球

 QBでありながら主将を任された坂梨陽木(政経4=東京・早大学院)。そして、選手でありながら主務を務めるWR中村航(法4=東京・早大学院)。新体制となるBIG BEARSを引っ張る二人に、チームの裏側、早慶戦に向けての意気込みを聞いた。


※この取材は3月21日に行われたものです。

「勝ちに導いていけるQB」(坂梨)

主将としての決意を示す坂梨

――甲子園ボウルが終わってからの期間は何をしていましたか

坂梨 リフレッシュというよりは、去年の悔しさがすごい残っていてオフ期間なんですけどトレーニングを始めました。負けた悔しさが残っていたオフでした。

中村航 やっぱり負けたというのを受けて、自分がアメフトのプレーヤーとして足りなかったものはなんだろう、と考えると同時に4年生として自分は何をするべきなのかを考える時期でした。プレーヤーとしては色々足りないものがあったので、それを補おうとトレーニングをしていました。

坂梨 緊張してるの(笑)。声裏返ってるよ。

中村航 こういうの初めてだから(笑)。

――坂梨主将は昨年のシーズン前半はスタメンでプレーされていましたが、振り返っていかがでしたか

坂梨 最初は一本目として試合には出させていただいたんですけど、結局自分のミスでチームを負けさせてしまうというのがあって、それはすごい悔しかったですし、4年生に対して申し訳ない、という思いがいっぱいありました。最終戦(日大戦)だったり、慶大の後の法大戦というのは、自分ができる最大限のことをしようと考えて、一本目ではないんですけど今までとは違った使い方をされて、それを頑張ろうとずっとやっていました。

――それを象徴するような試合はありますか

坂梨 日大戦だと思うんですけど、今までパスやランでやってきていたのをほぼラン中心になって、自分も持って走るというプレーがかなり多かったです。自分の持ち味を生かせた試合だったなと思います。

――中村航選手は試合機会には恵まれませんでしたが、昨年はいかがでしたか

中村航 去年は二本目で、点差がついた試合にしか出られなかったです。その中で自分に飛んできたボールはキャッチするのはできたんですけど、やっぱり大舞台の緊張感のある試合で活躍したことはなくて、ことしの目標でもあるんですが、どれだけ緊張感のある試合で自分が活躍できるか、というのが勝負所だなと思っています。そういう部分で春から色んな試合は経験して、秋シーズンの大事な試合で活躍できたらな、と思います。

――坂梨主将はどのような経緯で主将になりましたか

坂梨 立候補制で、ことしは多くて9人の立候補が出ました。そこでプレゼンをしてコーチの方が選んで面談をして、という感じでした。

――中村選手は主務に選手がなるというのは今までなかったと思いますが、いかがですか

中村航 自分が選手兼主務になったことというのは、監督やコーチが入れ代わり新しい体制になった中で、いかに監督と選手、スタッフのコミュニケーションを取っていくか。新体制で今まで以上の結果を出さなければならないので、もっと意志疎通を図りたいということで、選手としての立場で主務をやっています。チームのリーダーがもう一人増えるイメージです。

――主務に立候補した理由はなんでしたか

中村航 濱部前監督(濱部昇、昭62教卒=東京・早大学院)がずっと昔から、ひとりひとりにはアメフト以外にも役割があるとおっしゃっていました。それを自分はずっと考え続けていて、自分がアメフト以外に何ができるのか考えたときに、色んな人とのコミュニケーションだったり、人と人をつなぐというのが一番向いてて、できることだなと考え立候補しました。

――選手兼任の主務だからこその特別な役割などはありますか

中村航 コーチ、監督、選手、スタッフの意見のバランスを取ることです。個人には自分のやりたいことがあって、でもチームとして日本一という目標があって、そこをどう擦り合わせていくか、それぞれの意見をいかに一本にまとめるか、というのが自分の役割だと考えています。

――選手が主務になることに不安はありましたか

中村航 今も少しあるんですけど、スタッフの人にしたら突然訳の分からないやつが入ってくるわけで、そこでいかに信頼関係を築けるかですね。今も100パーセントではないと思っていて、アメフトはポジション柄がすごく強いので、3年間選手をやっていた自分をどこまで信頼してもらえるかの不安は感じます。

――坂梨主将から見て、中村航選手の働きはどうですか

坂梨 とりあえず、むちゃくちゃ忙しそう(笑)。後輩であったり同期であったりとのコミュニケーションを大事にしていますね。そこがすごくいいと思います。

――中村航選手から見て、坂梨主将の働きはどうですか

中村航 主将でありQBということで、アメフトとチームのリーダーを兼任していて、これもほとんど前例のないことです。自分から見て、大変そうというのはありますが、自分の発言のことだったりすごくいろいろなことを考えていて、2人で話していて、こいつこんなに考えてるんだって思うことがあります。

――2人で話し合うことはよくあるのですか

坂梨 そうですね、松屋で話し合います(笑)。そこでずっとコミュニケーションを取ってます。

――監督が代わったことで、チームにはどのような影響がありますか

坂梨 一番変わったのは、今までずっとグラウンドにいることができた監督が、どうしても仕事の関係とかで毎日来られない、というのがひとつの要素だと思っています。その中でどれだけ自分たちが主体性を持ってやれるか、というのが大事だと思っています。

――坂梨主将はQBリーダーもされていますが、リーダーとしてどのようにチームを導いていきますか

坂梨 去年の反省でもあるんですけど、シーズンを通してチームを勝ちに導けなかった悔しさがあって、そういう思いはみんなにもさせたくないし自分もしたくないです。そのためには何をどう改善していくか、というのはこれからずっとやっていくつもりです。勝ちに導いていけるQBを目指していきます。

――ことしのスローガンはなんですか

坂梨 ことしのスローガンは『執念』です。意味は日々の練習を取り組む中で大事になってくる強い気持ち、つまり執念であると僕たちは考えています。ワセダの泥臭いフットボールを体現するために、日々の練習から執念を持とう、ということで決まりました。また、グラウンド外でも強い気持ちを持って日々取り組んでいく、というのがことしのスローガンです。

「両立することで、今の立場が初めて成り立つ」(中村航)

初めての選手兼主務を務める中村航

――今のチームの現状はいかがですか

坂梨 プレー面でいうと、意識改革を掲げています。特にこの春シーズンは、去年のアジリティーや最初の一歩が関西のレベルではなかったという反省を元に意識改革をしている途中です。

中村航 今のチームは、全体としての風通しのよさは去年から引き続きいいと思います。ただ、ひとつ自分が思っているのは、学年の色が足りないかなと思っています。もうちょっと学年のまとまり感があるとチームとしてもいい方向に進むんじゃないかと思っていて、これからミーティングを重ねて学年としてどうしていきたいかをまとめていきたいです。

――中村航選手は高校の頃とは違うポジションですが、プレーヤーとしての目標はありますか

中村航 目標は大舞台で活躍したいというのがあります。アメフトをやるからには選手として活躍しなければ主務とやっている意味もないと思っていて、しっかり両立することで、今の立場が初めて成り立つと思います。昨年は2本目で終わりましたが、ことしは1本目で日本一に貢献したいです。

――坂梨主将はご自身と松原寛志前主将(東京・早大学院)を比べると、どのような違いがありますか

坂梨 自分と松原寛さんで一番違うのは実力です。松原寛さんは(学生)日本代表であったし、1年生の頃から圧倒的存在としてOLをやられていました。自分はまだ日本一にも導けていないQBですし、そういうところが絶対的な差としてあると思います。自分の実力を上げることは、ことし一年の課題として取り組み続けたいと思います。

――昨年のパスに特化したQB笹木雄太選手(平29法卒=東京・早大学院)とはタイプが違うと思います。オフェンスへの影響などはありますか

坂梨 新しいオフェンスコーディネーターの奈良さん(奈良貴充)とは、ことしどういう風に自分を使うかというのはいろいろ話し合っています。でも前提としてあるのが、自分が走るだけでは絶対に成り立たないということです。一本目として試合に出るというのは、パスもラン必要になるので、パスの精度に関しては、去年の笹木さんに負けないくらい頑張ります。

――高校の頃から続く早慶戦もついに最後となりました

坂梨 すごい、感慨深いですね(笑)。僕はフラッグフットボールをやっていたので中学はバスケでしたが、小4からずっと早慶戦がありました。やっぱり、どうしても自分たちの代で勝ちたいです。先輩たちを見てても、勝ってすごくうれしそうでしたし、絶対に勝ちたいです。

中村航 自分たちの代というのは全然見方が変わって、負けるというのが考えられないです。ことし勝つことが、今までやってきた早慶戦の集大成ですね。

――勝つために、自分のやるべきことはなんだと思いますか

坂梨 ミスをなくすことだと思っています。アメフトのオフェンスは特に、ミスを少なくすればするほどTDに近づきます。QBの自分がリードミスやスローミスをしてしまうとチームの流れは悪くなります。ミスをしない、ロスをしないというのが自分のやるべきことだと思います。

中村航 主務としても選手としても、どれだけ当日のイメージができるか、というのがあります。自分のプレーや走り方を考える中でも、普段の練習から実際に慶大をイメージできているか、と言われるとまだ足りないと思います。これは選手としてもスタッフとしても言えて、どれだけ色付きのイメージで普段の生活ができるのか、というのが大事だと思います。

――慶大の注意人物はどなたですか

坂梨 もちろん、主将の染矢君(優生)ですね。なんといっても実力のある選手で、タックルもエイミングも高校の時から苦しめられている印象があります。この前日吉で対談をしましたが、すごく熱い男で(笑)。そういった意味でもチームを盛り上げられる人間なので、勢い付かせると怖いですね。

中村航 実は工藤選手(勇輝)と中学の塾から一緒で(笑)。アメフトを始める前から知っていました。彼は慶大が大好きで、その分ワセダが嫌いなんです。ずっとそれを言われてきていて、やっぱり負けるわけにはいかないなと思っています。

――最後に早慶戦への意気込みをお願いします

坂梨 春の最後の早慶戦ということで、早慶のプライドがぶつかり合う試合だと思うので、とにかくオフェンス、ディフェンス、キッキングで圧倒して絶対勝ちたいと思います。

中村航 監督、コーチ、選手、スタッフ、応援してくれるファンの人たち、全員で勝つというのを目標に、絶対に勝ちます。

――ありがとうございました!

(取材・編集 高橋団)

二人を中心に新たな一歩を踏み出します!

◆坂梨陽木(さかなし・はるき)(※写真右)

1995(平7)年5月17日生まれ。172センチ、76キロ。QB。東京・早大学院高出身。政治経済学部4年。1年生時から試合に出場する坂梨選手。抜群の運動神経はパスだけではなくランプレーにも生かされています!早慶戦は坂梨選手から目が離せません!

◆中村航(なかむら・こう)(※写真左)

1995(平7)年9月15日生まれ。172センチ、75キロ。WR。東京・早大学院高出身。法学部4年。初めての対談で少し緊張気味だった中村航選手。高校時代はDBをやっていましたが、大学から新しく始めたWRでスターターを狙います!