昨年の二枚看板が抜け新たな戦力育成が急がれるRBユニットが、リーダーのRB木村達也(国教4=東京・早大学院)を中心に変革の時を迎えようとしている。躍動が期待されるRB片岡遼也(法3=東京・早大学院)、RB元山伊織(商3=大阪・豊中)の伸びしろは充分。早慶戦の勝利には安定したランプレーが不可欠だ。ことしのユニットはグラウンドでどんな走りを見せてくれるのか。攻撃の核となるRBの三人に話を聞いた。
※この取材は3月21日に行われたものです。
「一人一人の努力がうかがえる」(木村達)
RBユニットについて語る木村達
――オフの期間は何をしていたのですか
片岡 遊びに行ってリフレッシュもしましたが、トレーニングに励んで体を大きくしつつ、それをスピードに変えるトレーニングを加えて、アメフトの技術というよりは身体能力を上げるようなトレーニングを頑張りました。
元山 僕も片岡と似たような感じで、オフシーズンはアメリカンフットボールのスキル向上というよりは、自分のフィジカルに重きを置いていました。甲子園ボウルが終わってから2月までは、主にウェイトに取り組んで、体を増量して、筋量と筋力をアップすることにフォーカスしていました。2月後半から今までは逆に減量して、動ける体を意識してやっています。
――ご自身の昨シーズンのプレーを振り返っていかがですか
片岡 自分の理想としているプレーと自分のプレーにまだまだどうしても差があるなというのを感じたシーズンでした。自分の良さである、思い切り勢いよく走るということが、去年はできていなかったのかなと思います。
元山 春は正直なかなかアメフトのスキルアップに集中できないことが多かったです。夏からは日本代表に選ばれて、世界各国の選手と試合することができて、それは自分の中でとてもいい経験になったのですが、それを秋に生かすことができたかと言えばなかなか生かすことができなくて。そこで得た技術を、自分の思いのままに出すことの難しさを去年は知りました。去年は一本目が北條さん(淳士、平29社卒=東京・佼成学園)と須貝さん(和弘、平29創理卒=東京・早大学院)で、その次が片岡、その次が僕、という状況だったのですが、となると厳しい試合が続く中でチャンスというのはあまりなくて。その少ないチャンスの中で自分をアピールすることを意識しすぎてプレッシャーになって、大きなミスを犯してしまったりだとか、去年は空回りしてしまうことが多かったので、ことしは悔しさをバネにして頑張りたいと思います。
――昨年は人数が多かったと思いますが、ことしのRBユニットはどのような雰囲気ですか
片岡 4年生が抜けてまだ1年生が入ってきていないので人数のことは分からないのですが、変わらずに比較的人数の多いユニットではあると思います。ことしのRBはみんな努力家で一生懸命練習に取り組んでいて、自分が試合に出て活躍するんだという気持ちが練習からも私生活からもうかがえるので、木村達さんが育てていいユニットなんじゃないですかね。
一同 (笑)
木村達 やかましいわ(笑)。今はフィールド外から見ることの方が多いのですが、客観的に見ても一人一人の努力がうかがえますし、そこはコーチにも見えている部分だと思います。3年生の活躍にもことしは期待していて、この2人はある程度育ってくれていて、ここからは個人の努力だと思うのですが、3年生はまだ伸びしろも多くて、学ぶべきことも多いので、その部分で分からないことがあったら上級生やコーチにすぐ質問するという面では変わってきているので、いいユニットになりそうだなというのは感じています。
元山 昨年北條さん須貝さんが4年だったときも、いまきむたつさん(木村達也選手)や越智さん(俊光、法4=埼玉・早大本庄)、山崎龍哉さん(文構4=東京・佼成学園)が4年生になってからも、下級生に自由にやらせてくれる雰囲気を作ってくださっているので、すごくやりやすいですね。去年は僕と片岡が今残っているメンバーの中では試合に出ていたのですが、1年中試合に出ていたわけではなくて、その下のメンバーはまだ全然試合に出ていないと思うので、そういう意味ではRB全員がフラットな立場で競争できていると思います。先ほどおっしゃっていたように、下級生にもうまい選手がそろっていて、すごくいいユニットだなと思います。
――昨年の4年生が抜けた影響や、感じることはありますか
元山 4年生はけっこう自由人なお2人で、試合前も緊張している素振りがあまり見られないし、どんな試合でも平常心でやっていたのですごいなと。僕と片岡は緊張しちゃうので(笑)。
片岡 そうですね(笑)。
元山 緊張しがちなので、そういうところは見習っていきたいです。でも、去年の秋シーズン後半のリーグ優勝がかかった試合や、甲子園ボウル出場がかかった試合では、4年生の覚悟や気迫を見せてくれたので、すごく良い先輩だったなと思います。
木村達 伊織も言ったのですが、良い意味で楽観的で、個々が強くて、自由な2人が率いる自由なRBユニットという感じでした。やっぱり2人が抜けた穴はすごく大きいと感じていて、そこを僕ら上級生がどのように埋めていったらいいのかなというところを試行錯誤しています。それは2年生も3年生もみんな感じていることだと思うので、そこは僕らが調整してカバーできていけたらと感じています。
「目標とされる選手に自分がなれるように」(片岡)
時折いじられる明るいキャラクターの片岡
――ここから個別にお話を伺っていきたいと思います。木村達選手はRBリーダーに就任しましたが、就任の経緯を教えてください
木村達 それは僕がやるって言って決まりました。
――ご自身で立候補したということでしょうか
木村達 4年になって最上級生になって、責任を負うべきなのかなと。下級生の底上げも大きくて、そこで僕に何ができるのかなと考えたときに、上級生としてユニットを育てられたらいいなと思って立候補しました。
――どんなユニットにしていきたいですか
木村達 もうある程度の形はできていると思うのですが、去年のユニットは、僕から見たら自由なユニットでまとまりがなかったかなと。極端な話、他のポジションが試合前にハドルブレイクして、先輩が熱い言葉をかけるみたいなことをやっているときに、RBは流れ解散みたいで。よっしゃ頑張ろうみたいな。そういう感じのユニットではあったので、そこは変えていきたいなと思っています。組織力のあるユニットにしていきたいです。
――下級生に期待することは何ですか
木村達 4年生が成長すると言うよりは、下級生にどんどん成長してほしくて。下級生が4年生になるときに僕らが何を残していけるかが、4年生の使命だと思っています。2人(元山選手、片岡選手)はもちろん、まだ試合に出ていない下級生にも、この春シーズンにどんどん成長してほしいと思っています。
――RBのキーマンは誰でしょうか
木村達 それはもちろんこの2人です。2人が引っ張って行ってくれると思います。
――次に片岡選手にお伺いしたいのですが、どのようなプレーヤーを目指してやっていこうと思っていますか
片岡 難しいですね(笑)。日本一うまいRBには自分はなれないと思うので、こいつすごいなと思われるようなRBになりたいですね。誰を目標としているとかがないわけではないのですが、目標とされる選手に自分がなれるようになりたいです。
――ご自身のアピールポイントはどこですか
片岡 そうですね…。
元山 いっぱいあるやん。でかい、速い。
片岡 絶対に4ヤードは取れるところでいいですか(笑)。
木村達 そんなRBあんまりいないよ。
――お2人から見て、片岡選手はどのようなプレーヤーですか
片岡 え、そういう感じですか(笑)。
一同 (笑)
元山 すごくおもしろいです。片岡は真面目で、自分が予想していなかったことが起こると、「わああ」って挙動不審になっちゃうので、そういうところ好きですね(笑)。あと、片岡キャパが狭いので(笑)。
一同 (笑)
元山 片岡をいじって怒らせて、ごめんごめんみたいなくだりが僕はすごく好きですね(笑)。
――そう言われていますが
片岡 間違いないです(笑)。毎日あります。
一同 (笑)
――元山選手は、ことしランユニットリーダーに就任されました
元山 前々からリーダーになるということには憧れていて、その中でことしからオフェンスリーダー、パスユニットリーダー、ランユニットリーダーという新しい役職ができて。やる気は初めからすごくあったのですが、正直前から試合に出ていた人に比べれば理解力も出場経験もまだ全然ないので、初めはいけるかなと思っていました。でも、山崎龍哉さんが「やる気があるんだったらやった方がいいよ」と元気づけてくれて、立候補して、就任させていただきました。
――具体的には、主にどのようなことをする役職なのですか
元山 今は対戦校想定をやっています。去年はスカウティングなどは松原さん(寛志前主将=東京・早大学院)が全部やっていたのですが、僕の理解度ではまだまだそんなことはできないので、OLの鈴木敬太さん(法4=東京・早大学院)だったりTEの田島広大さん(法4=東京・早大学院)だったりの力を借りながら協力してやっているかたちですね。その中で全体を一歩引いて見て、もっとこうした方がいいんじゃないかという部分を見つけたりと、自分にできることを日々探してやっています。
――リーダーとしてチームに求めることはありますか
元山 泥臭さですね。去年はOLの3人が4年生で、RBも4年生の2人が出ていたので、ことしは経験の浅いメンバーがスターティングメンバーとして多く出ると思います。そうなってくると、技術や経験で劣ってくると思うので、泥臭さは僕の持ち味でもあるのですが、それをランユニットにも定着させていきたいと思っています。気持ちの強さでまず相手に勝って、そこからランユニットでチームを勝利に導きたいと思います。
――お2人から見た、元山選手の印象を教えてください
木村達 僕は留学していて1年間会っていなかったので、1年のときのイメージしかなかったんですよ。帰ってきたら、日本代表に行っていて、ことしランユニットリーダーにもなって。責任を負うと人って変わるんだなってことが伝わってきました。RBの中でリーダーに立候補してくれて、学んだことを全て快く還元してくれているし、後輩の勉強も見てくれていて、そういった面ではすごく助かりますね。
片岡 伊織はすごくムードメーカーだなと思います。伊織がいるだけで笑いが起こるので。誰かがミスをして雰囲気が悪い時も元気づけてくれて、チームの雰囲気もこいつがいるだけでよくなるので、そういう意味でもチームになくてはならない存在だなと思います。
――では、木村達選手の印象はいかがですか
元山 きむたつさんが僕に言ってくれたことと被るのですが、僕の前までのきむたつさんの印象は、去年の4年生に負けず劣らず、いやちょっと勝ってるんじゃないかってくらい自由人で(笑)。
一同 (笑)
元山 それもすごく好きだったのですが、正直主任タイプではないかなと思っていて。でも、主任に就任した時から僕らRBのためにすごく頑張ってくれているなと思います。そういうところをとても尊敬しています。
片岡 こういう人がRBのリーダーでよかったなと思いますね。リーダーがいるだけでこんなに統制がとれるんだなと。やっぱり頼りになりますね。
元山 プレー面に関しては、僕と片岡はけっこう何も考えずバーって感じなんですけど、きむたつさんはセンスがあって。センス型RBというか、ここ走るんや!ってところを走ったりとか、僕らにはできないことを平気でやってのけますね。
片岡 タイプで言えば天才タイプですね。努力型か天才型かと言ったら天才型です。
「タッチダウンを取る」(元山)
早慶戦への思いを語る元山
――続いて早慶戦に関してお聞きしたいと思います。慶大の要注意プレーヤーは誰ですか
一同 主将の染谷優生さんですね。
――それはどのようなところですか
元山 抜け目がないですね。パワーもあればスピードもある。下級生の頃から試合にも出ていて、経験もあるし。慶大の全LBに共通することなのですが、すごく思い切りがいいです。がむしゃらに、思い切り全速力で突進してきて。去年はそういったところで受け身になってしまったので、思い切りのよさはすごいなと思います。
――少し話が出ましたが、去年の秋の早慶戦はランが出ずに負けてしまいました。何か思うところはありますか
片岡 毎年そうなのですが、対慶大ではランが本当に出なくて。ここ何年か見ても、全然ランが通っていないです。春もロングランが全然なくて、どこかしらでしっかり止められるんですよね。相性が悪いという言葉だけで済ませたくはないのですが、慶大はしっかり研究して、僕らが攻めたいところをつぶしてくる賢いチームだなと思います。
――早慶戦への意気込みを聞かせてください
片岡 去年は緊張して全然プレーを覚えていないのですが…。今回は1プレー1プレーに意思を持ってプレーしたいです。その結果チームが勝てれば幸いだと思います。
元山 僕が1年生の秋に初めて一本目で出してもらったのが慶大戦で、それは消化試合で優勝が決まっていた試合だったのですが、それで自分のランが出なくてとても悔しい思いをしました。ことしは自分が出て、慶大に対してタッチダウンを取るのももちろんなのですが、慶大のディフェンスを痛めつけて、これから試合するときに「こいつとやるの嫌だな」と思わせられるようなRBになりたいです。
木村達 2人とも謙遜しがちな賢いタイプなのですが、2人が思っているよりも早大が誇るRBに育ってくれていると思うので、そこは自身を持ってほしいです。2人が早大を勝利に導いてくれると信じています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 本田理奈)
RBの仲の良さがうかがえた
◆片岡遼也(かたおか・りょうや)(※写真左)
1996(平8)年7月22日生まれ。176センチ、89キロ。RB。東京・早大学院高出身。法学部3年。昨年から試合に出場している片岡選手。大きな体から繰り出される、パワフルなランプレーに注目です!
◆木村達也(きむら・たつや)(※写真中央)
1995(平7)年10月17日生まれ。166センチ、78キロ。RB。東京・早大学院高出身。国際教養学部4年。クールでイケメンの木村達選手。もちろん実力も折り紙付きで、華麗なカットで敵の間を縫うように進むランは芸術ものです!
◆元山伊織(もとやま・いおり)(※写真右)
1997(平9)年1月25日生まれ。173センチ、80キロ。RB。大阪・豊中高出身。商学部3年。片岡選手をいじりながらの明るい返答が印象的でした。実は2016年Uー19日本代表で主将を務めた実力者。早慶戦でも注目です!