【第5回】ディフェンス4年生対談 DL佐野泰弘×DB安部修平

米式蹴球

 守備のワセダ。濱部昇監督(昭62教卒=東京・早大学院)も「ディフェンスが安定しないとゲームコントロールが難しくなる」と話すように、BIG BEARSは代々守りの堅いチームを作り上げてきた。ディフェンスのスター選手が多く卒業したことし、戦力低下が懸念されていた。しかし、ここまでの総失点の少なさはリーグトップ。不安は跡形もなく消え去った。大学アメフト界屈指の防御力を誇るディフェンス陣の4年生、DL佐野泰弘(スポ4=愛知・千種)とDB安部修平(国教4=東京・早大学院)に今後についてお話を伺った。

※この取材は11月19日に行われたものです。

年功序列でなくなっている

4年生としてワセダの守備陣を引っ張る

――先日の法大戦は、ディフェンスではどのような意識で臨まれましたか

佐野  オフェンスは結果的には、大量得点で良かったんですけど、ディフェンスはあまり慶応戦を見てかんばしくないということで、なるべく10点以内に、できれば7点くらいに抑えてという感じで臨みました。できたので良かったです。

安部  後ろとしては、DBの数を多くしてパスをカバーするようにしました。ランは前に任せていたので、後ろはパスゲームになったら任せてという感じで臨みました。

――個人としては自分のプレーを振り返ってみていかがですか

佐野 法政戦は、ちょっと調子が悪くて、後輩の調子が良かったので、後輩に機会を譲った形になってしまいました。ただ、GLで点を取られそうになった時に、4DLでしっかりランを止めて、オフェンスがTDを取ってきてくれたので、あれは大きなプレーだったと思いますね。

安部 インターセプトできるシチュエーションが3つあって、そのうち1個しかものにできなかったことが僕の中の反省です。後半パスゲームになっていたのに、1個しかインターセプトできなかったので、そこが大きな課題でした。

――レッドゾーンに入られてから粘り強いディフェンスを見せましたが、意識されたことはありますか

佐野 慶応戦で、結構ポンポン前に出されてそのまま楽に取られる場面が多かったので、法政戦前は割とGL中心に練習したというくらいで、特に意識したことはありません。GLを課題として2週間練習したことが、いい結果につながりました。

安部 僕はショートのパスだけなので、どれだけマンツーマンで勝てるかということを意識していました。

――ポジションごとにシーズンを通して成長された部分はありますか

佐野 最近DLは、暇なときに春のビデオとかを見ているんですけど、春に比べてめちゃくちゃ全体的に成長していますね。去年DLはスター選手が多かったので、それがごっそり抜けてヤバいなという感じでした。ただ、相手の特徴をしっかりつかんで、それに対応することを何度も念押しして、あとは個人の成長に任せてという感じで、そんな厳しくやらなかったことが功を奏したのか、後輩達がちゃんと育ってくれて、全体として良い感じになりました。底上げは大事ですね。他のポジションのTEとかLBからもDLをやりたいという人達が今シーズンは結構いて、そういう意味で活気もあります。メリハリもしっかりついていて、ふざける後輩も多いですけど、DLは元気なのがいいですね(笑)。

安部 DBとしてもやっぱりユニット全体としての能力が上がってきています。昔だったら4年はすごく強くて、年功序列じゃないですけど、年齢が上がるにつれて上手くなるということが多かったです。ただ、いま4年で出ているのは僕だったり、州戸健吾(スポ4=東京・東農大一)くらいで、3年のDBが多くて、2年や1年のDBも出たりするので、いろんな学年が自分の思い通りにできていて、しっかり表現のできるユニットになっているのが、いいところだと思います。その分4年としての威厳がないのかなと思ったりもするんですけど、自由に気ままにやってくれるので、僕としては結構好きなユニットですね。 

――シーズンを通して見つかった課題はありますか

安部 ディフェンスに関しては、タックリングはずっと挙がるポイントで、春からもずっと言われているし、秋もそうなので。DBとしては、ボールへのアジャスト力がまだまだ足りないのかなと思います。

佐野 2DLということもあって、普段4人でやるOLの相手を2人でしないといけなくて。大変といえば大変なんですけど、OLと2対1なり、1対1でしっかり圧倒してサックであったり、ロスタックルであったりとDLだけでプレーを破壊するところは強豪校に比べて、あまりまだないのかなと思います。なので、体の強さと1対1でしっかり圧倒していくというところが課題ですね。

――今シーズンで印象に残っている試合はありますか

安部 個人的には、日体大戦のFGでのリターンTDが印象に残っていますね。あと法政戦はサイドラインもオフェンスもディフェンスも、キッキングも一体感があるような感じがして、雰囲気がすごく良くて、試合後も勝ったんだなという感じでした。ビッグゲームになっているからかもしれないですけど、試合を重ねていくごとに、楽しさや達成感が出てきている感じがしますね。あとは慶応戦かな。負けたのはすごく印象的でした。慶応には勝ちたい気持ちはありましたし、今だけのことだけじゃなくて将来的に考えても、会社の同期に慶応のアメフト部がいるので。話すときに何か言われるんだろうなと、ちょっと思っちゃいますね。

佐野 慶応の副将と来年から同期なんですけど、内定者研修の時に、早慶戦が終わったら飲もうと誘われて。俺ミーティングあるんだよなと思いながら、これは勝てるなと思ったんですけどね…(笑)。

――個人としてシーズンを振り返って、点数をつけると何点ですか

安部 50点ぐらいですね。やっぱりまだ納得のいくプレーは試合を通してできていないので、日大戦もそうですし、その後の試合もそうなんですけど、どれだけ練習で自分のプレーを磨いていって、試合で出せるかということが大事になるので、まだ50点です。

佐野 40点です。自分を一選手として見たときに、割と無難なプレーが多くて。ビッグプレーを起こさないタイプのDLなので、もうちょっと派手にやりたいなと。1年の頃はもうちょっと派手になる予定だったので(笑)。その理想の自分と比べると少し足りないので、残りの60点を少しでも多く稼いでいきたいなと思います。

――個人として成長した面はありますか

佐野 ウエイトは元々強かったんですけど、それを3年の頃はなかなかフィールドで発揮できなくて。今も100パーセント表現できているかと言われたら、そうではないんですけど、少しずつ自分のフィジカルの強さを表現できつつあるかなという気がしますね。

安部 プレーの嗅覚とかは最初よりもついていて、苦手だったことをむしろ楽しく思えるようになったことが、成長したところだと思います。レシーバーがパスコースを走る前に、目線とかでなんとなく読めるようになったところとか、経験値が上がってきたなと思いますね。

――個人としての課題はありますか

安部 僕はタックルですね。タックルはこれからもずっと課題になっていくと思います。

佐野 ウエイトルームから東伏見のグラウンドへという(プレーの)表現はできているんですけど、東伏見のグラウンドから、試合会場までの表現が100パーセントできてないですね。練習台で出てくれるOLは相手とは違うんですけど、そこで想像力を豊かにして、いかに相手だと思ってできるかということと、それを試合会場で練習通りできるかというところが課題ですね。

――安部選手はご自身のパントを振り返ってみていかがですか

安部 楕円形のボールを蹴ることは、もう12年くらいやっていて。人より経験があるので、やっぱり関東の中では1位にならなきゃいけないなと思います。ただ個人記録を見ても3位で、中央と法政のパンターに負けていて、まだまだ追う立場だと思うので、飛距離を出していかないとトップチームには勝てないなと思います。

――パンターとしての成長面や課題はありますか

安部 安定的に距離を出せるようになったことが、今シーズン成長したところです。ある程度プレッシャーがかかっていても、安定して飛距離を出せることがいいところなんですけど、コントロールという面でまだまだな部分がありますね。

――重点的に練習していることはありますか

安部 とりあえずDBはレシーバーに勝つことだけだと思っているので、レシーバーにどういう風に勝つかということを重点的にやっています。

佐野 DLは、言ってしまえばLBの駒なので。そのLBの思っている通りしっかり動いてOLをつって、後ろを自由に行かせてあげるようにするために、相手の思い通りに流されたりせずに、OLを奥に差し込めるよう練習しています。永遠のテーマですけど。

――一推しの選手はいますか

佐野 DLは3、4人いるんだよな(笑)。とりあえず、実力枠。実力枠は、仲田遼(政経3=東京・早大学院)と斉川尚之(スポ2=東京・獨協)の2人がすごいです。仲田は、高校からやっている経験値もあって、アサイメントの遂行力が高くて、後ろの思い通りにしっかり動いていて、しかもパスラッシュはたぶんチームで一番上手いので、後輩ですけど信頼していますね。斉川は、まだアメフトを始めて2年で、去年とかは怪我をしていて、ほとんどやっていなかったんですけど、とにかく体がでかくて。重くて強くて、ただ全くでくの坊みたいな感じではなくて、ちゃんと自分で理想の選手とかを研究して、自分の技に取り入れたりしていて。向上心がすごいので、2年後が楽しみです。

安部 実力なら間違いなく小野寺郁朗(社2=東京・早大学院)ですね。DBに求めるものは全て持っていて、僕はあいつには勝てないと思っています。

佐野 ラッパー枠でいくと上田雄大(人科2=東京・明治学院)ですね(笑)。LBから今年の夏に転向してきて、僕もラッパーなので2人で一緒にやったりしています。上田もDLとして最近伸び盛りなので、これからが楽しみです。面白いんだよね上田は。丸茂宏太郞(スポ2=山梨・甲府西)ってやつもいるんですけど、ちょっと路線が違うんだよね(笑)。

安部 面白枠でいくと間違いなく湯舟大地(創理3=東京・早大学院)ですね。あいつのカマキリっていうネタがあるんですけど、あれはマジで面白いです。みんな結構笑わないんですけど、僕はツボですね(笑)。面白いのは、丸茂と湯舟です。あと、精神的にサポートになっているのは、高祖夢麿(文構4=大阪・大阪学芸)ですね。ポジションリーダーとして客観的な視点を持ってくれていて、今のプレーはどうだったとか教えてくれます。それがあるからこそ自分の中で良いプレーだと思っていても、違う部分とか、もうちょっとできる部分とかが見えてくるので。大きな存在ですね。

佐野 精神サポート枠でいくと、武上雅将史(社3=神奈川・法大二)ですね。武上はダントツのエースDLで。みんなのプレーもしっかり見てくれて、試合中や練習中にアドバイスをくれて、ふざける時はふざけますし、良いやつです。

――理想の選手や目標とする選手はいますか

安部 アドリー・ジャクソンですね。USCの2番のコーナーバックなんですけど、めちゃくちゃアスリートで、ボールへのアジャスト力や、タックリングとかもすごく良くて、かっこいいですね。自分のポジション以外だと、ミシガン大学のジャブリル・ペッパーズですね。僕はカレッジフットボール派なので、カレッジの選手が好きです。それと、自分にはできないプレーをする選手はかっこいいですね。

佐野 僕はNFLもカレッジも見ないので、日本でいくとオービックシーガルズの清家拓也さんですね。僕路線の日本のDLの頂点にいる人です。特別身長が高いわけでもなくて、腕が長いわけでもないのに、とにかく1対1で圧倒できて、2対1でも圧倒できるんじゃないかって程のレベルで。前に出る力がすごいですね。お腹がちょっと出ているのに、足が速いんですよね。あこがれというと庭田和幸(平27年卒)さんです。身長が190くらいあって手足が長くて、テクニックもすごいです。試合の後半で、みんな疲れているところでビッグプレーを起こしたりするので、もう芸術ですね。

――試合前のルーティーンはありますか

安部 僕は全くないです。ルーティーンを作ると壊れたときが心配なので、むしろ練習と同じようにしています。試合用のグローブとかスパイクを作るのが普通だと思うんですけど、僕は緊張しいなので(笑)。慣れないようなことをすると、感覚とかも変わってきていつものプレーができなくなってしまうんですよ。特にDBは相手に合わせて動かなきゃいけなくて、足の感覚がずれると相手に負けてしまうので、僕は練習で使う全ての物は試合でも使います。試合の日こそいつも通りにしていますね。

佐野 僕は試合前日の練習が軽めなので、春シーズンはそのあとに後輩の上田と2人でラップしていたんですけど、最近はディフェンス幹部のミーティングが練習の後にあって。たぶん僕が練習と試合でうまくいかないのは、ラップしていないからだと思います(笑)。イヤホンも最近壊れたので音楽は聴いてないですね。イヤホンを買ってくれる人、募集してます(笑)。

――やってみたいポジションはありますか

佐野 テイルバックですね。高校でラグビーをやっていて、走るのが好きなので。僕は球技が好きでアメフト部に入ろうと思ったんですけど、一切ボールに触れなくて(笑)。おかしいなと思いながら4年間過ごしていたんですけど、やっぱりボールを持って走るのが好きなので、テイルバックをやりたいです(笑)。

安部 元々、高校の時にレシーバーをやっていて、大学の時にDBになったんですけど、本当はレシーバーとRBを兼任したかったんですよ。モーションからランニングバックの位置について、リードオプションしてみたいなのもできるレシーバーになりたくて。ディアンスリー・トーマスとかチャールズ・ネルソンっていうオレゴン大学の選手がいて、そういう選手になりたかったんですけど、気づいたらDBをやっていたので(笑)。やれるんだったら、レシーバーとRBを兼任して、プレーの幅を広げられる選手になりたいと思います。

――佐野選手は、ラグビーの経験がアメフトに生きたことはありますか

佐野 体の強さですね。高校の時は公立高校でちょっとだけ強いところにいたので。公立のちょっと強いところって効率の悪い練習をするじゃないですか、根性練みたいな(笑)。でも逆にそういうのがあったおかげで、大学の練習でそんなに辛いなって思ったことがないですね。

「『良い試合だった』とロッカールームで言えるようなゲームを」

――日大の印象はいかがですか

佐野 OLはとにかくでかい。うちのOLに島崎貴弘(スポ4=神奈川・横浜立野)っていう選手がいるんですけど、彼が5人いるような感じです。

安部 パスをきれいに決めてくる印象です。法政とは違うやり方で勝たなくてはならないのが日大で、QBの球を落とす位置がすごくいいので、それをどこまでDB陣とLB陣で止めきれるかっていうのが大事になってくると思います。

――ワセダのキーマンになりそうな選手はいますか

安部 高校の時から同じクラスでやっている須貝和弘(創理4=東京・早大学院)ですね。飛び抜けた存在だと僕は思っているので、須貝のプレーが鍵になるのは間違いないです。

佐野 やっぱりDLの後輩の斉川ですかね。段々、シーズン通して調子を上げてきて、強いと言われている日大OLに対して、互角以上に戦えるのではないかと期待しています。

――これからの意気込みをお願いします

安部 まだ秋シーズンを通して、100点の試合はできていなくて。自分たちの中で良いことと悪いこととが分かってきていると思うので、良いプレーを日大戦や他の試合でできるかが勝敗につながってくると思います。チームとして日本一になることを掲げているので、日大戦ではオフェンス・ディフェンス・キッキング全てで良い試合をして、終わったあとに「良い試合だった」とロッカールームで言えるようなゲームをできたらなと思います。

佐野 ライスを見据えてとか、甲子園を見据えてとかと言ってしまうと足元をすくわれてしまうので。とりあえず目の前の日大をいかに自分らのベストで勝つかというところにフォーカスをして、日本一のチームの日本一のDLになれるように頑張ります。

安部 世間では、慶応が勝ったらとか、法政が勝ったらとかと言われているんですけど、僕たちにやれることは日大に勝つということだけなので、そこに向けて頑張ります。

――ありがとうございました!

(取材・編集 成瀬允、太田萌枝)

前衛、後衛に死角なし!

◆佐野泰弘(さの・やすひろ)(※写真左)

1993(平5)年9月23日生まれ。175センチ、108キロ。愛知・千種高校出身。スポーツ科学部4年。DL。対談中にラッパーという意外な一面を見せてくださった佐野選手。法大戦の良いリズムでこの先も勝ち進んでほしいですね!

◆安部修平(あべ・しゅうへい)(※写真右)

1994(平6)年5月20日生まれ。178センチ、72キロ。東京・早大高等学院出身。国際教養学部4年。DB。今季はDBとしてもPとしても重要な役割を担ってきた安部選手。チーム状況から憧れの選手まで、ざっくばらんにお話ししてくださいました!