中核失い崩れるオフェンス、関大を相手に惜しまれる敗北

米式蹴球
TEAM 1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
早大 BIG BEARS 13 13
関大 KAISERS 15

 今回で71回目を迎える関大との定期戦。第1シリーズ、テンポよくダウンを更新し幸先の良いスタートを切ったかに見えたが、OL稲葉玲央(法3=東京・早大学院)の負傷により早大のオフェンスは崩壊を始めた。ディフェンスも奮闘するがタックルミスが重なり0-9で前半を終える。しかし後半、浮足立ったチームを立て直す。QB坂梨陽木(政経3=東京・早大学院)のスクランブルもさえ、1年生のWRブレナン翼(国教1=米国・ユニバーシティラボラトリースクール)がTDを挙げるなど2点差まで詰め寄ったが、追い上げもここまで。最後はインターセプトを喫し15-13で敗北した。

 ランを中心に組み立てた第1シリーズは、敵陣に入ったところで失速しFG失敗に終わる。原因はQBにボールを渡すセンター稲葉の負傷交代。攻撃の起点となるこのポジションを失ったことでオフェンスが崩れた。続くディフェンスも相手のテンポの速いノーハドルオフェンスで、休む暇なくじりじりと攻められ続けた。しかし、ゴール前5ヤードまで侵攻されながらもなんとか持ちこたえここはFGに抑える。第2クオーターに入っても早大オフェンスはセンター不在の穴を埋めることができず、スナップミスが頻発し自らチャンスをつぶす。その隙に関大に1TDを奪われ0-9となり前半を折り返した。浮足立つオフェンス、ディフェンスのタックルミス、薄暗いフィールドには小雨が降り始める。

WRブレナンはTDで存在感を見せる

 立て直しが重要な後半、BIG BEARSは息を吹き返す。ずるずると出されていたディフェンスはハーフタイムを経て対応力を高め、けが人が続出し慌ただしかったオフェンスも冷静さを取り戻した。しかし、相手も関西の強豪。プレーが崩れながらも、LBが相手QBにプレッシャーかけに行った裏を通され被TD。0-15と差が広がる。負けられない早大、4thダウンギャンブルを連続で成功させチャンスを作り、最後はブレナンが「最高でした」と振り返る待望のTDを挙げる。その後も猛追は続き、WR小原嶺(法2=東京・早大学院)がTDを追加。2ポイントコンバージョンは惜しくも失敗したが13-15となる。守備ではLB長尾裕二郎(スポ3=愛知・海陽学園)のプレッシャーが相手のスナップミスを誘発させ、残り約4分を残し逆転への攻撃が始まった。順調にゲインする中、誰もがFG成功で逆転勝利のイメージを浮かべた。しかし一瞬の油断が生じたのか、残り1分20秒。ゴール前に投じたパスはディフェンスの手中に収まり、それ以降ボールが早大に渡ることはなかった。

スクランブルで気炎を上げたQBの坂梨

 オフェンスの層の薄さが露呈した。それを補うためにディフェンスが奮闘し素晴らしいパスカバーを見せたが、タックルミスや詰めの甘いプレーが見られた。何より、春の締めくくりの試合を不完全燃焼で終えたことには「全ての面で残念でした」と濱部昇監督(昭62教卒=東京・早大学院)も唇をかむ。ユニバーシアードで主将を含む主力がいなかったとはいえ、このままでは日本一はまだ遠い。課題はボトムアップ。夏での修正がチームの命運を分けるだろう。

(記事 高橋団、写真 大槻竜平)

コメント

濱部昇監督(昭62教卒=東京・早大学院)

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

見ての通り非常に反省点の多い試合だったと思います。

――試合中にケガで選手が抜けることも多かったと思いますが

そうですね。ラインも全然足りなくて、急遽TEの田島広大(法3=東京・早大学院)を入れたりしました。ただそういうことはリーグ戦ではありうることですし、致し方のないことです。それを差し引いても、プレーを途中で止めたり最後までやれてなかったり、最後のエール交換の場でしっかりやっていなくて自分に注意されるとか、そもそもの姿勢がきょうは駄目だったと思います。自分は監督なのでそういったことは自分の責任かとは思うのですが、選手には東京で私生活から見直して臨んで行こうということと、春の締めくくりとして良い形で試合をやろうという話をしていたなかで、きょうの試合は全ての面で残念でしたね。

――タックルで一度に止まらず走られる場面が多々ありましたが

日頃からもう少し足をしっかり運んでタックルしようとか、パックをしようとか口を酸っぱくして言っているのですが、はいはいと右から左に流れてしまって、練習で改善されていないんですね。同じことをずっと言われ続けていたし、僕も言っただけで満足してしまっていた部分もあったので、こういう結果になってしまったのかなと思います。

――後半立て直したシーンもありました。何か意識を変えたところがあったのでしょうか

前半の止まっているシリーズは途中でミスをしたというものが多くて、後半はある程度割り切ってフォースダウンでもギャンブルして、ミスもあったのですが、それもギャンブルでなんとかリカバリーしてという状況でした。一人一人がやることをやってくれればそれなりにできるですが、それも言うのは簡単で、実際に一人一人が強い気持ちを持って集中するというのは難しくて、きょうは全員が試合をするという気持ちができていなかったと思います。

――秋に向けて今後はどのように取り組んでいくのでしょうか

チームは生き物で、良いチームを作るにはすごく時間がかかるのですが、コツコツ積み上げてきて良いチームになっても、選手の気持ちしだいで次の日にはこのようなことになってしまうので、チーム運営というのは非常に難しいなといま改めて痛感しています。一度落ちてしまったチームを再び上げていくのはエネルギーが要りますし、時間もかかるので、まずはこれからどうリカバリーしていこうかというところから考えていきたいと思います。

LB栗田嵩大(教4=神奈川・鎌倉)

――きょうの試合を振り返って

立ち上がりは止められたのですがスコアリングされてしまいました。きょうはオフェンスのメンバーが抜けていてディフェンスで試合を作ろうと話していたのですがそれが達成できなくて非常に残念でした。

――ディフェンスとしてあまり良くはなかったということでしょうか

そうですね、完全に僕のタックルミスでTDに抜かれてしまったので反省点が多く残るところです。

――タックルミスの原因としては

足が動いていなかったことが大きな原因だと思います。

――LB陣の連携は

田口(凌、社3=東京・早大学院)がリーダーシップを発揮してディフェンスをまとめてくれ、その分は非常に感謝しています。LB陣の連携は完全ではないものの、前回よりは良かったのではないかと思います。

――前半、後半でなにか変えた部分はありますか

特に変えた部分はないのですが、パスラッシュをアレンジしてみるなどのことをASの方が提案してくれてそれをアジャストメントできたのは良かったです。

――秋季シーズンに向けてどのような夏を過ごしていきたいですか

この試合でチーム力のなさが出てしまったと思うのですが、一人一人がチームのことを考えて行動できるようなチームを作っていきたいと思います。

QB坂梨陽木(政経3=東京・早大学院)

――前半、オフェンスは慌ただしかった印象でしたが、やはりセンター不在が原因でしたか

普段やらないポジションをやる選手が出たりと厳しい状況にはなりましたが、最後まで諦めないということをオフェンス全体で共有していました。

――新人センターのスナップミスが勝敗に響きましたが、オフェンスの層の厚さはいかがですか

誰が出ても早稲田のオフェンスを体現できるように目指しているので、これから層を厚くできるようオフェンス全体で意識していきたいです。

――後半に向けてどのようにオフェンスを立て直していきましたか

球離れがはやいオフェンスと最後までドライブして得点するオフェンスをしようと話し合いました。

――スクランブルが多かったですがそれについては

とにかく球離れがはやいオフェンスを意識しました。

――ブレナン選手やTE鎌田陵介選手(法2=東京・早大学院)など、いつも試合に出ていなかった選手たちとの連携はどうでしたか

練習では合わせていたので、試合中も連携できました。

――無理に投げ込みインターされかけるプレーが目立ちましたが、焦りなどはありましたか

WRの一対一を信じて投げたので焦りはありませんでした。

――春の試合は終わりましたが、夏での強化ポイントを教えてください

夏は秋に向けてフィジカルの強化と、よりコミュニケーションをオフェンス全体でとっていきたいと思います。

DB洲戸健吾(スポ4=東京・東農大一)

――今日の試合を振り返っていかがですが

止めるべきところで止められませんでした。タックルミスが永遠に課題として出ているので踏み込みの一歩までこだわって練習します。

――セーフティーから見た今日のディフェンスはどうでしたか

相手がいつもと少しは違うことをしてきて慌ててしまったというのが1つあります。準備のところで詰め切れなかったところが出てしまいました。常に最悪の状況を想定して動けるようにならないといけません。

――個人のプレーとしてパスカバーがすごく良かったと思うのですがその点については

自分のところにはあまり投げられなかったというだけのことかと思います。QBの選手がとても上手くて駆け引きに負けてしまったところが多かったです。

――後半、ラン重視の相手の攻撃への対応はどうでしたか

各々の役割を徹底することで徐々に止めることができるようになってきていたと思います。僕らは最初のシリーズでずるずるやられてしまうことが多いのでそこは改善しなければならないと思っています。

――主力の四年生を怪我などで欠いているなか、下級生が多く出ている状況をみて思うことはありますか

彼らの成長が秋とても重要になってきますし、そういった意味では経験を積めているのでチームにとってとても良いことだと思います。

――秋にむけての意気込みをお願いします

まだまだ日本一には程遠いです。しっかりとこの春の課題を潰してさらに一回り成長して秋必ず日本一になります。

WRブレナン翼(国教1=米国・ユニバーシティラボラトリースクール)

――試合を振り返って

きょうはユニバーシティアードで主力のメンバーたちがいなくて、下級生中心でした。そこで自分たちの力で勝とうという目標でしたが、達成はできませんでした。しかし下級生なりにできることはしたと思います。

――QBとの連携はいかがでしたか

最初の方は良かったと思います。しかしインターセプトをされた際に、まだまだQBとのコネクションがうまくないなと思いました。

――ハーフタイムに何かアドバイスはありましたか

とにかく早稲田のフットボールを泥臭くやろう、とうにかくギブアップをしないというアドバイスがありました。

――リターナーとしてリターンする機会が何回かありましたがいかがでしたか

すごく楽しかったです。楽しかったのですが、1発で持って行けなかったのが悔しかったですね。そこをもっとがんばって相手のディフェンスを分析して、秋に1発で持って行けるようにしたいです。

――後半TDを決めましたが

もう最高でした。最高の気分で何も言えなかったです。

――個人的な目標は何かありますか

まずはアサイメントをすべて覚えて、秋シーズンのスタメンを目標にしています。そこからハワイでの高校3年生時のスタッツを超えることが目標です。

――秋シーズンに向けてどのような夏にしたいですか

ちゃんとしたリズムを作れるように頑張りたいと思います。まず学校の授業や課題を、部活をやりながらでも一生懸命やって、その上でアサインメントをすべて覚えられるように頑張りたいです。