ボールがスナップされ、手に渡ったのちわずか数秒間で状況を判断し、最適な選択肢を探す。毎回チームの勝敗をかけた選択を迫られるオフェンスの司令塔、それがQBだ。昨年からライバルとして切磋琢磨してきたワセダのQB、笹木雄太(法4=東京・早大学院)と坂梨陽木(政経3=東京・早大学院)に現在の状況と早慶戦への思いを伺った。
※この取材は4月12日に行われたものです。
笹木は正確なパスでスターター定着を狙う
――昨年お聞きしたアメリカンフットボールを始めたきっかけは、笹木選手がフラッグフットボール、坂梨選手はお兄さんの影響ということでしたが、アメリカンフットボール自体は高校から始められたのですか
坂梨 そうですね。フラッグフットボールは小学4年から6年まででやっていて、中学ではバスケットボールでした。本格的にアメリカンフットボールを始めたのは高校からですね。
――笹木選手はフラッグフットボール以外に何かやられていたスポーツなどはありますか
笹木 小学校の時は器械体操をやって、中学では野球部に所属していました。
――ご自身のQBとしてのプレースタイルはどのように分析されていますか
笹木 僕と坂梨は結構対照的だと思うんですけど、僕は走るというよりかはパスをメインで見ていますね。
坂梨 僕は笹木さんと違ってパスがあまりうまくはないので、その分走ってオフェンスのリズムをつくるようなプレーがしたいですね。
――お互いの印象は
坂梨 笹木さんはすごくパスの精度が高くて。高校1年の時からずっと1個上の先輩として見てきて、この人がパスの完成形だと思って見ているので、すごく参考にしています。
笹木 坂梨はすごく理解力に長けていて。「こういうときにはこういう判断がいい」というのを状況ごとにしっかり頭の中で整理して、それを実際のプレーで生かすことができていると思います。そこは見習いたいですね。
――昨シーズンのことについてお聞きしますが、まずはどういったシーズンでしたか
坂梨 僕はとにかく不完全燃焼のシーズンでした。春だと関大戦、秋だと初戦でケガをしてしまって、チームに加わることができず貢献できなかったというのが反省です。ことしはそれも踏まえてフィジカルを上げて、ケガにも対応できるように頑張っています。
笹木 総じてケガに悩まされたシーズンでした。春は結構自分がやりたいことをやれていたんですけど、秋シーズンが深まるにつれて自分かケガをしてしまってどんどんパフォーマンスが落ちていって、結局甲子園ボウルでも全然活躍できなかったので。ことしはそれを踏まえてまずはケガをしないということと、甲子園でやり残したことをしっかりやって次のライスボウルにつなげる、そしてライスで絶対勝つということを目標にしてやっています。
――その中でも何か成長した点などは
坂梨 甲子園ボウルに出場できたということは、自分の中でも成長というより大きなモチベーションになっていて。今まで手が届いていなかったというのが現状で、どこまでやればいいのかというのが全然分かっていませんでした。シリーズとしては1シリーズしか出られませんでしたが、それが現実になったことですごくモチベーションにつながりました。
笹木 試合で、練習通りのプレーができるようになったことが成長した点だと思っています。特に、おととしまでは緊張で舞い上がってしまってボールが手につかないような状態だったんですけど、きょねんは「当たり前のことを当たり前にやる」というのを目標に掲げて、練習でやってきたことを常に試合で出すと決めてやりました。それが達成できた試合もあったので、そこが成長した点だと思います。
――後輩QBには小玉峻也選手(法2=東京・早大学院)がいらっしゃいますが、どのような印象をお持ちでしょうか
坂梨 小玉はとにかく真面目ですね。
笹木 ザ・真面目。
坂梨 もう真面目そのものというくらいです(笑)。アメフトに真摯(しんし)に取り組んでいて、この冬もフィジカルを頑張っていました。練習とかもこの3人でするんですけど、本当に成長していましたね。ことしは自分にフォーカスして頑張ってほしいです。
――新1年生QBでは柴崎哲平(政経1=東京・早大学院)選手もいらっしゃいますが
笹木 結局全員、早大学院出身のQBなんですよね。
坂梨 そうですね(笑)。笹木さんにタイプがすごく似ているのかなと思います。
笹木 自分を見ているかのようですね。左利きなので(笑)。
――松原寛志主将(法4=東京・早大学院)についてはどういった印象をお持ちですか
笹木 僕たち4年生が元々、去年よりもリーダーシップがないといわれている代で。誰が主将になるかというのも分からない状況だったんですけど、その中でも「チームを勝たせたい」という願望だったり、「俺がやる」という強い気持ちを一番見せてくれたのが松原だったので、行動面でも精神面でも彼が一番の柱なのではないかなと思っています。
坂梨 笹木さんもおっしゃいましたが、勝たせるという気持ちだったり、アメフトに対する姿勢や取り組み方が尋常じゃないくらい熱い人で。練習に早く来て外でストレッチをやっていたり、練習が終わった後もビデオをずっと見ていたりだとか、そういう姿勢が僕らからも感じられて。アメフトに対して真摯(しんし)に取り組んでいるんだなと思います。
坂梨は自らのランでも突破口を切り開く
――早慶戦について伺います。ことしのケイオーの印象はどのようなものでしょうか
笹木 去年から僕らはボコボコにやられていたので。(ワセダは昨年から)メンバーが替わっているといえどもオフェンスは全然替わっていない状況で、去年も全く点が取れませんでした。ことしは「オフェンスのチームにしたい」と自分たちでも言っているので、パスを絶対に通したいですね。自信を持って早慶戦に臨みたいと思っています。
坂梨 相手は本当にアグレッシブに動いてくるチームで、早慶戦ということもあって気迫が感じられます。他のチームとは少し違った空気を感じるチームというのが僕の中での印象ですね。笹木さんもおっしゃっていたようにことしはオフェンスで勝ちたいので、頑張ります!
――警戒する選手はいますか
坂梨 やっぱり主将の李卓さんがすごい選手なので、ディフェンスには彼を止めてほしいですね(笑)。
笹木 ディフェンスではセーフティーの兵頭(宣俊、4年)ですね。トモダチボウルだったり結構いろいろ接点があって、うまいなと思っているので彼に注意したいですね。
坂梨 僕の同期でLBの染矢くん(優生、3年)ですね。彼とは高校時代から試合で戦っていて、その時からすごいプレーヤーだなというのは思っていたので、警戒しないといけないなと思います。
――逆にワセダのキーマンは誰でしょうか
笹木 ことしはQBだと思っています。去年から出ているメンバーが多くて、あとはもうやるのはQB次第ということで。いかにチームを勝たせられるかというのがことしの重要なカギだと思いますし、キーパーソンだと思います。
――最後に早慶戦に向けての意気込みをお願いします
坂梨 毎年言っているのですが、早慶戦は『ワセダとして勝つ』というのがすごく大事な試合だと思いますし、春で盛り上がる大一番だと思うので、絶対にケイオーには負けないという気持ちでQBから勝たせられるように、そういう試合をしていきたいです。
笹木 ことしは『オフェンスで勝つ』ということを掲げていて、いままで積み上げてきたものを皆さんに見てほしいと思っています。その中でも特にQBは一番競争してきた、一番成長したユニットだと思っているので、クオーターバッキングだったりオフェンスの完成度を見てもらって、絶対にオフェンスで勝つと。ディフェンスがどれだけ点を取られてもオフェンスが毎シリーズ点を取ることを目標に掲げるので、頑張ります。
――ありがとうございました!
(取材・編集 中丸卓己、高橋団)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
良いライバル関係がさらにチーム力を高めていく
◆笹木雄太(ささき・ゆうた)(※写真右)
1994年(平6)7月24日生まれ。173センチ、76キロ。東京・早大学院高出身。法学部4年。QB。フラッグフットボールからアメフトに親しんでいた笹木選手。センス抜群のパスで今シーズンも観客を魅了してくれるはずです!
◆坂梨陽木(さかなし・はるき)(※写真左)
1995(平7)年5月17日生まれ。172センチ、70キロ。東京・早大学院高出身。政治経済学部3年。QB。笹木選手とは高校時代から同じポジションの先輩後輩という関係だそうです。得意のスクランブルを生かして先輩に負けじとスターター獲得を目指します!