第64回早慶戦直前特集 第4回 副将対談 加藤樹×樋口央次朗×鈴木隆貴

米式蹴球

 主将とともにチームをリードしていく存在、副主将。補佐と見られることもあるだろう。だが、150人を超えるBIGBEARSではその役割が非常に重要になってくる。今回は副主将のOL樋口央次朗(創理4=東京・早大学院)、LB加藤樹(商4=東京・早大学院)、WR鈴木隆貴(法4=東京・早大学院)に幹部としての心持ちと早慶戦に対する意気込みをお聞きする。

※この取材は4月10日に行われたものです。

誰よりも熱くチームを盛り上げる樋口

――アメフトを始めたきっかけは

樋口 中学まではサッカーをやっていたんですけど、高校に入るときに新しいスポーツを始めようと思って、サッカーの体をぶつけるのが好きでしたし、アメフトもかっこいいなと感じて始めました。

加藤 僕も中学まではサッカーをやっていたんですけど、高校のサッカー部のレベルが少し物足りなく感じて、そのときにアメフト部に勧誘されて半ば強制的に練習に参加してみたら結構楽しかったので入部しました。

鈴木 僕もサッカーをやっていて高校でも続けるつもりだったんですけど、もっと高い目標を持ってやりたいと思って。アメフト部が日本一を目指していると聞いて、勧誘で来てやってみたらすごく楽しかったし、練習に本気で取り組んでいる様子を見て心にビビッときたので入ろうと思いました。

――なぜ大学でも続けようと思ったのですか

樋口 大学は一回やるかどうか迷って、新歓とかでサークルとかも見てみたんですけど、やっぱり目標を持ってやらないと自分は無理だと思ったので、また本気で日本一を目指そうということで戻ってきました。

加藤 僕はそこまで迷わなくて。アメフトが好きだったし、高2のときに一つ上のケビンさんの代が同点優勝だったんですけど、勝たせられなかったのが悔しくて。大学では絶対日本一にしたいなという気持ちがあって、入部しました。 

鈴木 僕も迷わなかったです。高校で引退して年が明けたころには大学でも続けようかなと頭の中で考えていました。高3のときにアメフトを面白いと思い始めることが出来たのも大きくて、続ければもっと上手くなるし面白くなるだろうなと。引退してから5か月くらい高校のほうでコーチをやっていたときに、自分もやりたいなと強く思ったことも決め手でした。

――実際BIGBEARSに入ってみて驚いたことなどはありましたか

樋口 設備とかは高校とほぼ同じなんですけど、一番違うのはプレー面、スピードとフィジカルだと思っていて、他の大学もそうですけどプレースピードが全然違いました。

加藤 高校のとき夕方から練習して9時過ぎくらいに帰っていたのに比べると、時間にかなり余裕があると思います。ただ有効活用しないともったいないので、自分で動かないといけないのは大変ですね。

鈴木 スタッフがたくさんいることですかね。社会人のコーチとかは高校のときもいたんですけど、それを大学では学生がやっていたり、マネージャーやトレーナーもいて。ビデオも帰るころには見られるようになっていますし、環境が充実しているなと感じています。

――今のポジションにはどういう経緯でなったのですか

樋口 高1のころはLBとOLをどっちもやっていたんですけど、体重が順調に増えていったのと性格的に二つを比較するとOLの方が合っていると思ったので、専念して高2からはずっとOLです。

加藤 僕は基本LB一本なんですけど、勧誘されたときQBが花形と聞いて少しやっていました。でもボールが投げられるようになったくらいのころに、フラッグ出身でめちゃ上手い笹木雄太(法4=東京・早大学院)がいて、これはきついなと(笑)。LBも楽しかったのでこれで行こうと思いました。OLも経験あるんですけど、結局あまり上手くならなくて。

鈴木 僕は最初からレシーバーです。いままでサッカーやっていたのでボールを手に取るのが新鮮でしたけど、キャッチも意外とできたので、そのままWRを続けました。

――自身のポジションの魅力はどこだとお考えですか

樋口 あまり目立つことはないんですけど、レシーバーがボールをキャッチしてくれたときとか、RBがタッチダウンしてくれたときに、自分たちのブロックがタッチダウンに繋がっているのが分かると嬉しいですね。

加藤 LBはアメフトの醍醐味が詰まっていますね。考えないといけないし、指示も出さなきゃいけないんですけど、全部のプレーに絡めるというのが良いと思います。

鈴木 WRはロングボールを取って、観客や仲間が沸く瞬間が一番気持ちよくて最高ですね。チャンスは数多くあるわけではなくて、取るかとらないかの境目がはっきりしているのも魅力です。

――逆に大変なところなどはありますか

樋口 体が大きくないといけないこと。あとはやることが地味で、最初の一歩とか細かいところにフォーカスした練習が多いので、こんなに細かいことをやって成長できるのか不安を感じる人もいて、そこが大変だと思います。ただ、練習がタッチダウンとかの結果に繋がると嬉しいので、それをモチベーションにして頑張っています。

加藤 魅力と表裏一体なんですけど、考えていないとすぐにやられてしまうのでそこは難しいですね。あとはレシーバーに走り負けると足が遅いと言われるし、かといってOLに当たり負けるとまた言われるのでそこも大変です。

鈴木 練習中でもパスを落とすと、みんなに「落とすなー」って言われるので、精神的にきます(笑)。取るときも結果だけじゃなくて過程がすごく大事というのも難しいところで、相手の守り方を読んで、どう勝負するかの駆け引きが重要になってきます。それが難しいところでもあり、レシーバーとしての本質でもあるのかなと思います。

――できたらやってみたいというポジションはありますか

樋口 ボールは持ちたくないんですよ。タックルされると確実にどこか怪我するので(笑)。そういう意味ではやっぱりLBですかね。かっこいいし。

加藤 僕もボールを持ちたくないです(笑)。高校卒業後にOB戦という、現役がチームを作って引退した僕らと戦う試合があって、そのときにTEをやったんですけど、ボールを落として蹴って15ヤードロスしたんですよ。それからボールを持つのが怖くなっちゃって。ディフェンスエンドは純粋に勝負をやっているみたいで楽しそうだなと思います。

鈴木 タックルが結構好きなのでセーフティとかをやりたいですね。

加藤 絶対センスないわ。

鈴木 おーい(笑)。

――自身の強みは

樋口 プレー中でも冷静に判断できるところかなと思います。熱くなることもあるんですけど、頭の中は冷静になるようにしています。

加藤 僕はスピードですね。いつもスピードをどう生かすか、どれだけ早くトップスピードに乗れるかということを考えています。

鈴木 ボールへの執着心です。相手と対峙するときの気持ちの部分は強いかなと。あとは経験で培ったカンも武器になっていると思います。

大学屈指のLBとして名をはせる加藤

――代も替わって副将になりましたが、個人的に何か変わったことは

樋口 やっぱりチーム全体を見るようになりました。常に全体を見てチームをどういう方向に修正しなきゃいけないかということを考えています。

加藤 役職に就いたので責任をより感じるようになりました。今までもチームを引っ張ろうと思っていたんですけど、責任があるのとないのでは全然違っていて、自分次第で勝敗も変わってしまうので「やらないといけない」という責任感があります。

鈴木 一番変わったのはチーム全体を考えるようになったということです。実際に動くと難しい部分はありますけど、どうすれば150人の部員が同じ日本一という方向を向けるのかとか、どんな言葉をかけたらやる気を出してくれるのか、とかを考えるようにしていますね。

――幹部として、今年はこんなチームにしたいというイメージはありますか

樋口 自分が何か思ったとしても、すぐ実行に移せない人が多かったと思っていたので、何か思ったら発言するとか、こうしたらいいんじゃないかと思ったら変えてみるとか、常に全員が自主的に動けるようにしたいですね。それができればもっと良いチームになると思います。

加藤 僕も一緒で、各自が行動する前に「自分はチームのために何ができるか」ということを考えられるようになれば良いチームになると思います。きょねん自分はチームの中心に携わらせてもらって、その様子を見てきたので、それをしっかり今年のチームにも生かしたいと思います。

鈴木 風通しの良いチームになることが一番で、そのためにはやっぱり全員が喋らないといけないと思っています。考えを発信できる場を作ることで、全員が意思統一を図れるようになることが大事だと思います。

――実績を残した次の年ということでプレッシャーはありますか。

樋口 ないといったら嘘になりますけど、去年高いスタンダードを築いて、その高いスタンダードで今年始められるということは大きいと思うので、基本的にはプラスにしか考えていないです。

加藤 同じです。去年のチームを総合力で超えられれば、日本一にもなれると思うし、そのためにはもっとやらなきゃいけないと思うんですけど、プレッシャーというよりは一つのスタンダードというか、超えるべき目標が分かったという感じです。

鈴木 むしろワクワクしています。みんなが同じ方向を向けるチームで日本一になったら、僕らが一年取り組んできたことが正しいという証明ができますし、メディアにも取り上げてもらえるかもしれない。フットボールの歴史を変えられるかもしれないと思っているので、そういう意味で楽しみだという気持ちのほうが大きいです。

――松原寛志主将(法4=東京・早大学院)の印象は

樋口 一番努力していると思いますね。静かで口下手な部分もあるんですけど、チームが良い方向になるように常に考えています。

加藤 悩みを僕とか周りに相談してくれたりとか、頼ろうとしている感じが見て取れますし、実力があるので安心して主将を任せられる存在です。最近もメキメキ強くなっている感じがします。

樋口 今までは頭の中だけでチームを捉えていて、そんなに発信することもなかったんですけど、主将になって常にチーム内にも発信してくれるようになって。人間的な意味でも大きく変わったと思います。

鈴木 チームを良くしていきたい、勝利に導きたいという強い思いを感じます。チームの中で絶対的な存在になっていますけど、僕らもしっかり支えて、さらに支えるだけじゃなくて一緒に引っ張ってもいけるようにしたいです。

――主将は立候補で決まったのでしょうか

鈴木 はい。僕らも全員立候補して、そのなかで決まりました。

全員が同じ方向に向くチームでありたいと語った鈴木

――早慶戦に対して、何かこだわりのようなものはありますか

樋口 去年の秋ボコボコにされたことが常に頭の中にあって、ことしこそはケイオーに勝ちたいですね。

加藤 ここまでの長い準備期間の取り組みが慶応と比較されて試されると思うので、絶対負けたくないです。

鈴木 7年目にして一番気合が入っていますね。あの大きな舞台を早稲田と慶応だけで貸し切ってやるのは人生でも多分最後ですし。今から眠れないくらい楽しみです。

樋口 怪我とかでいままで春の早慶戦に出たことがないので、ようやくあの舞台でプレーできるとなると熱い思いがありますね。

――警戒する選手はいますか

加藤 李卓選手を止めるか止めないかでチームの勝敗も変わってくると思います。彼を止めるために何か月間も準備してやってきているので、絶対止めたいです。

鈴木 慶応のディフェンス全体です。組織としてうちのオフェンスをすごく研究していて、システマチックに止めてくるんですよ。僕らの弱点を突いてくる。ことしはそれでも自分たちのやるべきことをやる、というのをオフェンスリーダーとして言っています。複雑なことをやってくる相手に対して、最初の一歩をどう踏めるかがこの1年のかたちを決めるとも思いますし。

樋口 ほとんど同じで、去年の秋はこっちが混乱していつもとは違うことをしてしまって、相手が調子に乗っていくみたいな悪い循環ができてしまったので、駒沢を東伏見だと思っていつも通りにやっていこうと思います。

――ワセダのキーマンは誰でしょうか

樋口 ランユニットに注目してほしいです。この春のもランを出していこうということで高いモチベーションを持ってやってきているので。ディフェンスで言ったら、加藤が去年から中心部分にいましたし、頑張ってくれると思います。

加藤 松原ですかね。ことしに入ってからもすごく成長しているので、良い働きをしてくれるんじゃないかなと。

鈴木 一番はOLだと思っています。1年生から出場しているメンバーも多くて、僕らパスユニットからしてもすごく心強いですし。ランオフェンスを展開するための主軸になって、それが生きれば僕らのパスも引き立ってくると思います。

――最後にご自身の早慶戦に向けての意気込みをお願いします

樋口 春の早慶戦に出るのが初めてで、特別な思いもありますし、チームの初戦ということで、自分たちのスタンダードがある程度ここで決まると思うので、なるべく高い位置に行くためにも圧倒して勝ちたいです。

加藤 ことし一年のチームを作っていくうえで絶対重要な試合になってくると思うので、慶応に負けたくないですし、勝って終わりたいです。

鈴木 新チームをお披露目する場なので、多くのお客さんにこのチーム応援をしたいと思ってもらえるような試合にしたいです。その中で勝って全員で喜びを味わって、学生最後の春の早慶戦として有終の美を飾りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 辻本紗支子、高橋団)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

主将とともにチームを日本一に導きます!

◆樋口央次朗(ひぐち・おうじろう)(※写真左)

1995(平)年2月22日生まれ。175センチ、113キロ。東京・早大学院高出身。創造理工学部4年。OL。今回の対談でグルメだと発覚した樋口選手。樋口選手に教えてもらうお店は高確率でおいしいとの評判でした!

◆鈴木隆貴(すずき・りゅうき)(※写真中央)

1995(平7)年2月25日生まれ。177センチ、81キロ。東京・早大学院高出身。法学部4年。WR。チームのムードメーカーとして、風通しの良い雰囲気づくりに大きく貢献しているという鈴木選手。話が面白いだけでなく、伝え方のうまさも他の対談で話題になっていました!

◆加藤樹(かとう・いつき)(※写真右)

1994(平6)年5月1日生まれ。177センチ、84キロ。東京・早大学院高出身。商学部4年。LB。大学アメフト界で既に注目を集めている加藤選手。ことしはディフェンスの司令塔として、再び堅守のワセダを実現してくれるはずです!