昨年、BIGBEARSを甲子園ボウルに導いた知将、濱部昇監督(昭62教卒=東京・早大学院)に現在の状況と、早慶戦に向けての意気込みを伺った。監督就任後4年目となることしは、どのようなチーム像をえがいているのであろうか。
※この取材は4月10日に行われたものです。
「順調に来ている」
チームを率いるのはこれで4シーズン目となる
――はじめに現在のチーム状況についてお伺いしたいのですが
昨シーズンが終わり、新チームが1月の中ごろから立ち上がって、トレーニング期間のあと3月からはフットボールの練習が始まって、今は春のオープン戦に向けて調整をしているところです。去年を振り返って、良かった部分はさらに伸ばし、課題が残った部分をいかにこの春に磨けるか、ということでここまで取り組んできています。昨シーズンからのけが人もいますが、今のところは順調に来ています。
――昨シーズンで良かった点は何でしょうか
ディフェンスは日大戦から新しいシステムを使ったのですが、それが大学の一部レベルでも通用するということがまず分かりました。あとは昨年が監督に就いてから3年目だったのですが、徐々に自分の考え方やチームで大切にすべきことが浸透してきて、個々の取り組みの質も上がって、一部で戦えるチームになってきたというところが一つの成果だったのではないかと思います。
――昨シーズンを振り返って今年の課題を挙げるとすると、どういったところなのでしょうか
毎年同じことなのですが、全国から優秀な選手をリクルートしてこられるわけではないので、フットボールでまず重要なフィジカルを鍛えるという部分を課題にしています。去年は村橋や庭田、上石といったサイズのある選手がいたのですけれども、彼らも卒業してしまって全体的に少しサイズダウンしたところもあるので、それをパワーやスピードでカバーしていこうと取り組んでいます。
――去年の日大戦と法大戦に勝つことができた要因は何でしょうか
いろいろな要因があるとは思うのですが、一番の要因はやはり準備の部分ですね。日大や法大はどうしても越えなければならないチームとして、春先から準備をしてきたので、それが結果につながったのだと思います。逆に日大や法大は、もっと先の相手を見据えて準備していて、ひょっとするとうちへの対策が少し足りなくなっていた部分もあるのかなと思います。
――チームのなかで最近伸びてきたと感じる選手はいらっしゃいますか
全体的に伸びているとは思いますが、伸びしろで考えるとディフェンス全体ですね。去年の4年生が抜けて、損失が大きいと思っていたのですが、今のところトレーニングも順調で、個々の動きにもキレが出てきたというふうに見えます。選手の中にも同じ危機感があって、それも伸びにつながっているのではないかと。
――きょねんは守備のチームといわれてきましたが、今年はどのようなチームにしていくのでしょうか
守備のメインだった4年生が抜けて、今年は攻撃のチームという意識が選手たちにはあるかもしれないのですが、フットボールの試合においては、やはりディフェンスが安定しないとゲームコントロールが難しくなってしまいます。なので、今年も堅いディフェンスというところを目指して、チームを作り上げていこうと考えています。
――主将の印象はどうでしょうか
去年は最終的には村橋が就任しましたけれども、ケビンや寺中、藤原といった良いキャプテンになりそうだという人材が多くいた一方で、今年の4年生はプレイヤーとしては優秀な選手が多いのですが、見るからにキャプテンというようなリーダーシップを発揮するタイプの選手は少なかったので、主将を決めるのに少し悩んだ部分もありました。ただ、今年の幹部は、幹部になったことで良い化学反応が起こっていると思います。現に松原は主将に就任してから、今までなら自分の中に秘めていたであろう自分の考えを、なんとかチームに向けて発信しようとしてくれていますし。きょねんと違っている、というのも逆に面白いのではないかなというふうに思っています。
――今年のスローガン『超越』についてはどのようにお考えでしょうか
これは学生たちがアイデアを出し合って決めるのですが、昨年1点差というところで学生日本一に届かなくて悔しい思いをしたのを、今年はなんとしても目標を達成して、今までの自分たちや部の歴史を超えていきたい、という選手の意志とか決意が強く伝わってきます。
――濱部監督も早大のご出身でいらっしゃいますが、早慶戦に対しての印象というのはどうでしょうか
自分が現役のころは、慶大のほうが人数も多くフットボールの質も高くて、なかなかライバルとして肩を並べられるというチームではなかったので、昔はああいうチームを目指したいという存在でした。ただ社会人になってワセダに戻ってきて、何年か早慶戦に携わっているうちに、年を追うごとに負けられない相手になってきたなというふうに感じていますね。
――慶大に対しての対策はどのようにお考えでしょうか
慶大のオフェンスは相手のディフェンスを分散させて、バックフィールドの優秀な選手個人の能力を最大限に発揮させるチームなので、こちらはライン戦などの勝負に勝って、広いスペースをそういった選手になるべく与えないようにしていかなければならないです。ただ、それでもフォーメーションで広げられてしまう部分もあるので、そこはキーリード(相手の攻撃の状況に応じてディフェンスをしていくこと)や個々の素早いリアクション、スピードで一対一の状況を作らせないということが守備の鍵になってくると思います。オフェンスでは、ワセダにはスピードとクイックネスのある選手に加えて、良いラインが揃っているので、力勝負に持ち込めればと考えています。
――最後に早慶戦に向けての意気込みをお願いします
昨年の秋のリーグ戦で大敗して悔しい思いをしているので、今回こそは試合を支配して、ワセダらしいゲームをしたいです。また秋にもリーグで当たりますので、そこに向けてワセダに対する苦手意識といいますか、そういったイメージを植え付けられるような試合をしていきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 井上陽介)
ざっくばらんに質問に答えてくださいました
◆濱部昇(はまべ・のぼる)
1963年(昭38)10月7日生まれ。東京・早大学院高出身。1987(昭62)年教育学部体育学専修卒。インタビューの後にも、フラッグフットボールの魅力など、たくさんお話を聞かせてくださいました。監督ご自身は現役時代、QBをはじめOLなど様々なポジションを経験されたそうです。アメフトに精通した指揮官が、ことしはどんな試合を見せてくれるのか、楽しみです。