【連載】『PRIDE』第4回 OL中村洸介主将×DB石川瑛二郎×WR金澤秀明

米式蹴球

 『日本一』――。高き頂に立つべく、関東大学秋季リーグ戦(リーグ戦)に臨んだBIG BEARS。しかし最終節の慶大戦を残して6戦4勝2敗と、『日本一』は再び夢と散った。集大成となるラストシーズンを迎えた4年生は、敗北の瞬間なにを思ったのか。そして、残るは1戦、伝統の早慶戦を目の前に控えたいま、なにを思うのか。100名以上の部員の先頭に立ちチームを率いてきたOL中村洸介主将(スポ4=東京・日大三)と、ユニットリーダーを務めるWR金澤秀明(教4=東京・早大学院)、DB石川瑛二郎(人4=東京・早大学院)にお話を伺った

※この取材は11月13日に行われたものです。

『日本一』への挑戦

――ラストシーズンをどのような気持ちで迎えましたか

中村 『日本一』という目標をチームで掲げてきました。ことしは主将という立場なので、必ずチームを『日本一』に導くという気持ちで、強い意思を持ってこの一年間戦ってきました。

金澤 4年生の気持ちは一緒で『日本一』というところを目標にしてきたので、いま洸介(中村主将)が言ったことと大体一緒です。あえて個人的なことを言えばWRユニットの主任として、自分が入部してから四年間色々なWRユニットがあった中で、そのどのユニットよりも、ことしのユニットを一番WRで勝つことのできるユニットにしようと思って練習してきました。

石川 1年生のときからずっと『日本一』を目標に掲げてきたのですが、実際にはまだ一度もなったことはないので、自分が4年生の代では絶対にその目標を叶えたいという気持ちを持ってやってきました。

メインターゲットとしてキャリアハイの成績を残している金澤

――明大戦(○16―15)、立大戦(○52―7)とリーグ戦開幕2連勝を飾りました。春、夏の取り組みの成果は出ましたか

金澤 明大戦は点差から言ってもかなり接戦だったので、明大戦でできなかったことを2週間でしっかりとつぶしたものが、次の立大戦ではしっかりとできてある程度良いかたちで点を取ることができましたね。

石川 新しいTOP8というリーグの中で初戦からどうやって戦っていくかがすごく難しかったのですが、明大戦は競った試合になって少しの油断も許されないということにチーム全体が気づくことができたので、そこで気を引き締め直して立大戦に臨むことができました。立大戦はゲーム内容も良かったのではないかと思います。

中村 昨年の法大戦(●0―39)で負けてからコンタクトの強さに力を入れて取り組んできたのですが、初戦から1試合も落とすことは許されないという状況で明大と戦って、オフェンス、ディフェンスともにまだ明大に対して押し負けている部分を感じました。結果としては1点差で勝つことができましたが、良かったのは勝ったということだけで、いままでやってきたことを全て明大にぶつけることができたかといえばそうではなかったので、自分たちがまだ実力的にも足りていないことを明大戦で気付かされました。次の立大戦は良いかたちで試合ができたと思います。

――日大戦(●7―14)、法大戦(●24―28)と連敗を喫しました。いま改めて振り返るといかがですか

石川 日大戦ではオフェンスが強い相手に対してディフェンスが頑張って失点をなんとか14点に抑えることができましたが、逆にオフェンスはあまり点数をとることができませんでした。次の法大戦ではその逆で、オフェンスがたくさん点を取ってくれたにもかかわらずディフェンスがずるずると相手に出されていてたくさん失点してしまったので、オフェンスとディフェンスがうまく噛み合うのは難しいということを改めて感じます。

中村 最初の2戦の勝利で僕たちが今までやってきたことは正しかったということが証明されたと思っていて、次の試合では自分たちのやるべきことを全て出せば勝てるという気持ちで試合に臨みました。でも実際に試合をしてみると、得点だけの差で言えばTD1本差で負けたのですが、実際はそれ以上に大きな差を感じました。監督(濱部昇監督、昭62教卒=東京・早大学院)に試合が終わってから「最後の一歩で負けた」と言われたのですが、その「最後の一歩」が出なかったいままでの早大から自分たちは成長できていなくて、実力以上に勝負強さも含めて日大、法大は勝ち方を知っていると感じたし、まだまだ僕たちは『日本一』を目指せるチームではないと、その2戦で気付かされました。

石川 それ、すごくそう思う。日大と法大は先制したり逆転してもすごく落ち着いて余裕のある雰囲気で試合をしていて、相手の方が試合巧者でしたね。

金澤 日大戦は最初のドライブでかたち良く点を取ることができたのですが、瑛二郎(石川)からもあったようにそこで終わってしまって、振り返ってみれば良いかたちはそれだけだったと思います。点を取ってなんぼのオフェンスなので7点しか取れなかったことがすごく悔しくて、いくら日大が強豪だといってもショックでした。それ以降、試合に負けてしまった以上はやるしかないと思って、法大戦は無我夢中でやりましたね。でも法大に対しても勝つことができなかったので、まだチームとしてもオフェンスとしても、WRユニットとしても取り組みが足りなかったということだと思います。

――日大戦を落として優勝のためには後がない状況となりましたが、4年生のみなさんはどのようにチームの士気を高めたのですか

中村 日大に負けて確かにショックだったのですが、負けたからといって『日本一』という目標はまだ消えていなくて、そこでチームの士気を落としていたらリーダーである主将や主任に就いている人間としての責務を果たせないので、僕たちがチームの士気を高めるためになにをすればいいのか、掲げた目標に対して諦めることなく取り組むためにはなにをすべきかを考えました。目の前に法大という敵がいたので、しっかり相手をスカウティングして試合に臨む、ということを、日大に負けたあとの2週間でやっていました。

石川 結果的には負けてしまったので日大戦でのディフェンスの出来については忘れて、勝つしかないという状況だった法大戦に集中していました。濱部監督や洸介が下を向かずに、しっかりと法大戦を見据えてチームの士気を高めていたので、自分もDB主任としてその姿勢を見習って気持ちを切り替えなくてはいけないと思いました。

金澤 日大戦に負けたあとはみんなショックだったと思いますが、そこで下を向かないで前に進むしかないという状況だったし、目標への道がなくなったわけではなかったので、やるべきことは変えずいかにやりこむか、という強い気持ちで法大戦に向けて練習に取り組んでいました。

対談は笑みもこぼれながら行われた

――法大戦での敗戦で優勝戦線から外れましたが、その後、チームとしてはどのように気持ちを切り替えたのですが

中村  法大に負けて『日本一』という目標がほとんどなくなった状況の中で、これから先どうしたらいいか分からないということを自分自身も感じましたし、同じように考えていた人も多いのではないかということを、試合に負けた直後に感じていました。11月23日のリーグ最終戦の早慶戦まで1ヶ月半ある中で、自分たち4年生やリーダーがどのように残された時間でチームを良い方向に持っていくか、どうすれば『日本一』に少しでも近づけられるか、ということを考えるべきだということを感じました。残りの時間が決まっているからこそ、自分たちのやるべきことをもっと明確にしてやればこのチームはもっと成長できると思いましたし、モチベーションの下がっている人間をどうやって上げるかということも考えながら、これから早慶戦まで取り組もうと思っています。

石川 11月23日が最後の試合になるとわかっている状況で、4年生がやる気をなくしたり士気を下げてしまったらチームに悪い影響を及ぼすということについては4年生全体が共通の理解を持っていたので、確かに目標はなくなってしまったかもしれないけれど、だからこそ4年生が一番盛り上げて、チームを良い雰囲気にして成長し続けようということを話し合いました。

金澤 どうしても話がWRに寄っていてしまうんですけど、さっきも言ったように試合に負けて『日本一』への道が厳しくなったとしてもまだそこから試合はあるわけで、その試合を通して歴代最高のWRユニットをつくることはできるので、法大戦後の3試合への取り組み方を通してユニットとして成長するために努力したいと思っていました。

――その後中大戦(○43―14)、日体大戦(○41―13)と勝利が続きますが、出来としてはいかがでしたか

中村 法大に負けて残り3試合しかない中で、最低条件としてその3試合全てに必ず勝たなくてはいけないという状況でした。中大、日体大と勝つことはできたのですが内容としてはあまり良くなくて、中大戦で言えば最終的に差はつきましたが前半は接戦で、相手の主力選手が欠けていたということもありましたし、日体大戦も同じく立ち上がりにもたついて、反則も含め自分たちのモメンタムに持っていくことができなかったということが反省として上がりました。その2試合で感じたのは、出だしに相手に持たせてしまってこちらがスロースターターになってしまうということで、最初から出し切ってフィニッシュまでしっかりとやるということをもっと徹底しないといけないと思いました。もう終わった話ですが、それができていれば日大戦と法大戦でももっと良い試合ができて、もしかしたら勝てたかもしれなかったということを感じているので、残りの1試合に向けて修正しないといけないと思います。

金澤 中大戦、日体大戦はあまり自分たちのかたち通りに試合ができませんでした。あの内容でもし相手が日大、法大だったら、自分たちでゲームをつくることができなくて勝てなかっただろうし、内容を見ればまだまだ目標に届くまでの努力が足りないということだと思います。

石川 中大戦では立ち上がりにキックオフリターンTDを取られましたし、日体大戦でも「試合の入り方が良くない」と監督から注意されたように出だしの部分があまり良くなかったです。勝ったことは良かったのですが、チームとして見直すべきところはまだまだあると思いました。ディフェンスについて言うと、日体大戦では反則が続いたシリーズでTDを取られてしまったので、それまでに出た反省を、中大戦、日体大戦で直せなかったことが反省点だと思います。

――リーグ編成によって今季はTOP8での厳しい戦いが続いていますが、ここまで戦ってきた感想はいかがですか

金澤 それぞれのチームに対してしっかりスカウティングをして戦術を考えるので精神的にもハードだし、毎回フル出場してタックル、ヒットを繰り返すと痛いところも増えてきて肉体的にもハードなのですが、その反面やっていてすごく楽しいですね。単純に出場時間が増えたことだったり、すごくうまい選手相手にWRがキャッチできたり活躍すると自分もうまくなっていると実感するし、自分たちがTOP8という厳しいリーグの中でも通用するととういうことが分かると嬉しさを感じます。

石川 一戦一戦がビッグゲームなので試合に来てくれる人が多いということを感じていて、いつも以上にたくさんの人が応援してくれている中で、「必ず勝たなくてはいけない」という使命感も生まれますし、そういう意味では精神的にもハードな試合が続いていたと思います。

中村 きょねんの秋は2敗だったのですが、その結果のおかげでTOP8に入ることができたので、先輩たちにすごく感謝しています。ことしは色々な強豪のチームと対戦することができるし、だからこそ練習をできる限り厳しくやってきたので、自分たちの取り組みが試される良い機会だと思って試合を楽しみにしてきました。

――リーグ戦を戦う中で、ユニットとしての成長は感じられますか

金澤 WRは夏合宿の序盤から練習中のプレーの成功率を記録しているんですけど、シーズンを追うごとに数字で目に見えて成功率が上がってきています。最初は目標を7割にしていて達成できないときもあったのですが、シーズンを通して危機感を感じてくるとみんなの意識も変わってきて、最近はさらに高い成功率になってきています。そういう数字を見ると、パスのタイミングも合ってきているという実感がありますね。

中村 初戦の明大戦ではコンタクトの面で押し負けてしまってランプレーが全然出なかったことが課題として挙がったので、しつこさや接点での技術に関して重点的に取り組みました。その後の日大戦、法大戦ではオフェンスコーディネーターの監督もランを比較的多くコールしてくれましたし、試合後にビデオで見たらすごく雑な部分もあったのですが、数字だけで見ればランの成功率も上がっていて勝負どころでも良い動きができていたので、ランユニットとしては昨年と比べて成長できていると思います。サイズに関しても昨年よりも良い数値が出ていますし、ユニットとして仕上がってきていると感じています。

石川 DBはセイフティー(SF)とコーナーバック(CB)に分かれているのですが、SFに関してはこのリーグ戦、勝てた試合が続いた中でスタータークラスの人間が3、4人以上いる状況で、寺中(DB寺中健悟、教3=東京・早大学院)、藤原(DB藤原健太郎、政経3=東京・早大学院)、三好(DB三好邦英、スポ4=大阪・高槻)という上級生の中に1年生の山口(DB山口昴一郎、社1=東京・佼成学園)などが入ってきて競争ができているのは良いことだと思います。逆にCBでは自分と田中(DB田中慶行、政経4=東京・早大学院)ばかりが試合に出ているので、もっと他の選手がスターターを脅かす存在になってくれればと思います。

「この代でよかった」

――中村主将はどんな方ですか

石川 オンとオフがはっきりしていますね。練習中は人一倍自分にも人にも厳しくてキャプテンシーも強いのですが、練習が終われば1年生にも気さくに話しかけているので、下級生はやりやすいのではないかと思います。

金澤 全部がチームのため、という軸がしっかりとあって、そういうところが頼りになるキャプテンだなと思っています。

石川 主将は洸介しかいないと思います。

中村 ちょっと、なにも言えないです、ありがとうございます(笑)。残り時間は少ないですけど、自分にできることを考えながらやっていきたいと思います。

――目標にしている主将像はありますか

金澤・石川 聞きたい(笑)。

中村 悩むなあ。

金澤 でも確かに、自分たちが1年生のときから色々な主将がいましたけど、みんなそれぞれタイプが違いますね。洸介は洸介、という感じで、それぞれのキャプテン像は違う気がします。

中村 『日本一』という目標に対して、何が足りないかということを常に考えてやっていますね。その中でも自分が一番やらなくてはいけないということを感じていて、できているのかいないのかということは自分ではわからないですが、常に足りないということは自分自身がわかっていますし、キャプテンとして、『日本一』の選手としての実力とリーダーシップを兼ね備えなくてはいけないなということを考えながら、この一年間やってきました。

中村主将への信頼度は人一倍高い

――では次に、石川選手はどんな存在でしょうか

金澤 瑛二郎は、高校からの仲なので付き合いが長いんですよね。ポジションもずっと対面ですし。さっきも話していたんですけど、何回マンツーマンで練習をしたか、数え切れないと思います。未経験からアメフトを初めて、ポジションが近いということもあって7年間一緒に成長してきた感じがあるので、僕にとっては『良きライバル』ですね。恥ずかしいっすね、これ(笑)。

石川 (笑)。金澤がライバルと言ってくれましたけど、自分も高校からのライバルとして一緒に成長してきたと思っています。金澤の人柄はすごく明るくて盛り上げ隊長みたいな部分もあるし、自分が落ち込んでいるときに励ましてくれたり、部活やプライベート関係なく元気をもらっているので、感謝しています。

――お互い大切な存在なのですね

石川 夫婦みたいな、ね(笑)?

金澤 それでいこう(笑)。

――中村主将にとって石川選手と金澤選手はどんな存在ですか

中村 二人ともタイプがすごく似ていていますね。盛り上げるのがすごくうまくて。彼らがユニット主任をやっているDB、WRユニットはもちろん、他の選手にもしっかりと声をかけてすごく明るく下級生を引っ張ってくれているので、頼りになる同期ですね。

金澤 いやー、ありがとうございます(笑)。

石川 感謝です(笑)。

――最近はまっていることはありますか

中村 残り2週間ぐらいしかチームにいられないので、一人でも多くの仲間とご飯を食べにいくことですね。コミュニケーションを取ることがすごく楽しいです。

石川 僕はやっぱり勉強ですね。火曜日から日曜日まではフットボール一本に集中しているので、月曜日は勉強しています。

中村 ほんと?

石川 ほんとだよ(笑)。月曜日は資格の勉強をして、残り同期と過ごせる期間も少ないので、その後はご飯に行ったりしてリラックスしています。

金澤 はまっているのは英語の勉強です。

中村 英語?しゃべれないじゃん(笑)。

金澤 これから社会に羽ばたくには英語が必須になってくるので。

石川 こいつはドライブでいいっす(笑)。

中村 じゃあ俺が考えてあげる(笑)。漢検。

一同 (笑)。

中村 あ、自転車好きじゃん。

金澤 じゃあそういうことで(笑)。後輩関係で言えば、WRはファミリーなんですよ。人数も多いし個性豊かでおもしろいので。二人も言っていましたけど、自分たち4年生はもう残り時間が決まっているので寂しいですね、ファミリーなので。

中村 いや、ファミリー何回言うんだよ(笑)。

石川 スタッフともご飯行きたいよね。

中村 僕は東伏見近辺の店は全て把握しているんですよ。

金澤 どこが美味しいの?

中村 『龍』ですね。ラーメン屋の。

石川 「大盛り大盛り」っていうすごい量の油そばがあるんですけど、それをこいつ3分で完食していました。

金澤 それにハシゴとかするんですよ(笑)。

中村 ちゃんと噛むようにしているので。大丈夫です(笑)。

石川 食べ終わったあとに、僕がまだ食べているラーメンをずっと見ていてかわいそうだったので、スープをあげました。

一同 (笑)。

――4年生はどんな学年ですか

金澤 それがチームとして良いときと悪いときがあるんですけど、みんな仲がいいですね。4年生が絡んでいると、みんななにをしても笑っているんですよ。だから僕はこの学年が好きです。楽しくて仲がいいので。

石川 やっぱり仲がいいですね。みんなのことが好きだし、なにをやっていても一緒にいると楽しいなと思います。でも時にそれがチームとしてあまり良い方向にいかないこともあって、それが4年生になってから考えなくてはいけないことではあったのですが、でもやっぱりこの代でよかったと思います。洸介が主将で引っ張って、みんながそれについていって、洸介を先頭に同じ方向を向いてやってこられたので楽しかったです。

中村 4年間一緒にやってきて辛かった経験も多かったけれど、それ以上に乗り越えて楽しかったことも色々あって、同期には本当に感謝しています。同期がいたから僕もここまでやってこられたと思います。結果的に『日本一』という目標は閉ざされましたが、このメンバーでいままでやってこられたのはすごく良かったと思います。まだ振り返っちゃいけないんですけどね(笑)。

金澤 なんかしんみりしちゃったね。

石川 悲しいね。

金澤 4年生はすごく仲がいいんですけど、そのせいで洸介にすごく迷惑をかけたなと思う部分もありますね。個性が強いしそれぞれの気持ちが強い分、それをまとめる洸介は自分が分からないくらい苦労したんだろうなと思います。北村(TE北村卓也副将、先理4=東京・早大学院)とも仲が良くてよく話をするんですけど、幹部の話を聞くと、4年生は本当に洸介に迷惑をかけたなと思いつつ、やっぱりそれでも自分がこの学年でやれてよかったなと思っているので、もうあと少ししか残されていないとなると寂しいですね。

「勝って終わる。絶対に」

――慶大とは今シーズンの初戦に戦っていますが、そのときの相手の印象はどうでしたか

石川 相手がノーハドルオフェンスでテンポが速くてあたふたしてしまって、それに最後までアジャストしきれず結局は何点も取られてしまったという印象ですね。最後、同点になったときに自分がマンツーマンした相手にパスを取られて負けてしまったので、個人的には高校からアメフトをやってきて一番悔しかった試合でした。

金澤 春の初戦の早慶アメリカンフットボール対校戦(春の早慶戦)で最後の1プレーのパスを決めきれずに勝てなかったというのが、ことしのWRユニットの最初の課題であり、夏合宿、秋シーズンの課題でもあったので、そういう意味ではすごく思い出深い試合でした。その借りは次の早慶戦、WRユニット全体で返したいと思います。

中村 春の早慶戦はオープン戦最初の試合だったのですが、スタッフを含めてみんなで色々な準備をして盛り上げることができたと思います。慶大はBIG BEARSにとって一番のライバルで初戦の段階から色々な仕掛けをしてきて、相手の強い気持ちがすごく伝わってきたので、僕たちにとっても慶大が特別な存在だということを改めて気付かさされました。

ボールを狙う石川

――早慶戦のキーマンを挙げるとしたら

中村 OLから言うと、左ガードの松原(OL松原寛志、法2=東京・早大学院)ですね。僕は左タックルなので一緒にやってきたんですけど、すごく信頼していて、左のランプレー、パスプレーだったらコンビネーションで絶対に勝つという自信があります。すごく頭が良くて、サイズも入部当初は80キロちょっとくらいだったのですがウエイトも上がってきたし、僕が言ったことを素直に聞いて成長してくれていたので、いま隣にいてすごく信頼できる選手です。あとはQBの坂梨陽木(政経1=早大・早大学院)ですね。すごく落ち着いていてオフェンスのテンポを作るのがうまいし、1年生ながら存在感があります。春は試合に出ていなかったんですけど、秋シーズンは活躍しているので早慶戦でも期待したいです。同じQBでは内村(竜也、法4=東京・早実)にも期待していますね。2年生のときにスターターで3年からはあまり試合に出ていないのですが、一緒に四年間やってきて、下級生の面倒見が良くて、自分の立ち位置もわかりつつ最後まであきらめずに試合に出ているので、早慶戦では絶対に試合に出てほしいです。あと、もうちょっといいですか(笑)?

金澤 長いよ(笑)。

石川 なに言おうか考えているからいいよ(笑)。

中村 北村(副将)と峯(LB峯佑輔副将、教4=東京・早大学院)、挙げたいなー(笑)。北村は高校時代にはQBをやっていたんですけど、2年生からTEをやっていて、すごく努力家でリーダーシップもあるプレイヤーです。TEとしてまだ今シーズンTDを取っていないので、彼には絶対にTDを取ってもらいたいという熱い気持ちがあります。あと峯に関してはオフェンスの自分から見ていてもディフェンスを支えていて、1年生から試合に出て実力はもちろんリーダーシップも兼ね備えているので、ビックプレーメーカーとして活躍してほしいと思っています。あとちょっと待って(笑)!

金澤 何人いるんだよ(笑)。

中村 あと二人だけ。一気に挙げるから(笑)。かわいい後輩いっぱいいるからな(笑)。あとは庭田(DL庭田和幸、創理3=東京・早大学院)、村橋(DL村橋洋祐、スポ3=大阪・豊中)ですね。僕はフットボールを中1からやってきたんですけど、その二人は初めて下級生なのにライバルと思った存在で、自分も彼らに成長させてもらっていると感じているので皆さんにも注目してほしいです。

金澤 WRは下級生が試合にたくさん出ていて、みんな本当にかわいいんですよ、やっぱり。4年生は特に試合に出ている子たちにたくさん支えてもらっていて、中でもWR鈴木隆貴(法2=東京・早大学院)、WR西川大地(商2=東京・早大学院)、WR諸口貴則(政経3=東京・早大学院)、WR鈴木拓馬(社3=大阪・豊中)、WR岡田義博(教3=東京・早実)、WR西川遼(教3=埼玉・狭山ヶ丘)の6人はすごく実力があって言うべきことはしっかりと言うし、この6人にはWRユニットを本当に支えてもらっています。特に僕は諸口に注目してほしくて、付き合いが長いというのもあるしすごくいいやつなんですよ。めっちゃいいやつなんですよ、本当に(笑)。すごく器用だし頭も良くてアメフトもうまくて、優しくて完璧なんです(笑)。今季まだあまりキャッチできていないんですけど、本当にうまくて球際の強さもピカイチだし、いざとなったら諸口、という安心感があります。だから僕は最後に諸口と一緒に活躍して、早慶戦に勝ちたいと思っています。

石川 拓馬(鈴木)もいいよね。

中村 拓馬ね!

金澤 あと、岡田もすごくうまいんですよ。

中村 ちょっと待って、拓馬よ(笑)。元々兼ね備えている実力とセンスのほかに、努力の量がすごいんです。

金澤 しかもそれを見せないんですよね、人に。

中村 そうなんです。超かっこいいです。3年までケガが多くてあまり試合に出る機会がなかったんですけど、ことしの秋の法大戦でキャッチを決めて。

金澤 あれやばかったね。

中村 あいつは本当にかっこいいです。

金澤 数少ない、中村洸介が尊敬している男なので。WRは本当にみんな頑張っています。下級生に支えてもらっています。

石川 DBも下級生に支えられている部分があるんですけど、あえて僕は4年生の三好と田中をキーマンに挙げたいですね。三好は春の早慶戦前の練習ではあまり調子が良くなくて試合に出場できないという悔しい思いをしていたのですが、夏合宿で頑張って秋の初戦のスターターを勝ち取ったので、最後の早慶戦ではスターターで一緒に出たいと思っています。思い切りの良さとか彼にしかできない動きを、最後の試合で出してくれると信じています。あと、田中とは4年生のCBが二人しかいない中でずっと一緒に頑張ってきました。自分とは全然違うタイプのCBで運動神経抜群なので、その良いところを早慶戦でぶつけてくれると思います。その二人がキーマンになると信じています。

金澤 田中は高校のクラスが一緒で、ずっと知っているんですよ。高校のときからアメフトをやりたがっていて高校2年の時に自分が強引にアメフト部に入れようとしたんですけど、彼はバスケ部を選んだんです。それで大学に入ってからアメフトを始めて、未経験なのにすごく頑張っている姿を知っているので、彼に対しては強い思い入れがあります。

――ラスト一戦となりましたが、今の心境はいかがですか

金澤 最後だし相手が慶大ということで、どの試合よりも絶対に負けられないと思っています。

石川 高校からずっとワセダでアメフトをやってきたんですけど、これでこのユニホームを着て試合をできるのも最後だし、相手は慶大でこれ以上ない相手だと思うので、最後は絶対に慶大を倒すという熱い気持ちを持ってやっています。

中村 結果的に『日本一』になれなくて目標を達成できなかったのですが、自分たちがこれまでこのチームでやってきたことを全て慶大にぶつけたいです。いままで完全に満足できた試合はないですし、練習でやってきたことが試合に出ると思うので、残り少しの練習で良いかたちで課題をつぶして最高の練習をして、早慶戦では全てを出し切って最高のゲームにしたいと思います。

――練習ではどのような取り組みをしていきたいですか

石川 このメンバーでできるのももう最後なので、悔いなく練習で出し切りたいです。4年間の集大成をぶつけるだけだと思います。ここまで色々な人に支えられてアメフトを続けることができたので、感謝の気持ちをフィールドで表現して慶大に勝って終わることが感謝の気持ちを一番示すことのできる方法だと思います。練習でもその気持ちを忘れず、集中して取り組みたいです。

金澤 具体的になりますけど、WRはボールを扱うポジションなのでボールにフォーカスしたいです。ボールを進めるためには投げるためにブロックしてくれるOLがいて、投げてくれるQBがいて、それ以前のことを言えば自分たちがアメフトをする環境をつくってくれるOBの方や両親がいて、自分が一つのパスを取るためにたくさんの人がつながっているので、そういう意味でもボールを大切にして、1ヤードでも前に進められるようにしたいです。そして最終的には慶大に勝ちたいです。

中村 残りの練習時間が限られている中でスキル面でも限界まで取り組んで成長するのももちろんですが、気持ちの部分がまだまだ足りていないと思うので、気持ちをしっかり出して練習に取り組んでいきたいです。気持ちの入れ方によって結果も変わってくると思うし、プレーの精度や内容も変わってくるので、自分も含めすべての選手とスタッフが気持ちをつくって練習、そして早慶戦に臨みたいと思います。

――では、最後に早慶戦への意気込みをお願いします

石川 春は悔しい結果に終わってしまったので、個人としては目の前のWRを圧倒することだけを心がけて戦いたいと思います。絶対にリベンジを果たしたいです。BIGBEARSとして試合ができる最後の機会なので、悔いなく終わることができればと思います。いままで、濱部監督を始めコーチの方々、OBの方、両親、洸介や同期に支えてもらってここまできたので、その感謝の気持ちをフィールドで表現して、勝って終わります。

金澤 最後の相手が因縁の相手の慶大であることや、色々な方への感謝の気持ちであったりと特別な思いはたくさんありますが、それを最終的にどう表現するかといったら自分たちはグラウンドで最高のプレーをするだけなので、強い気持ちで取り組んで絶対に慶大に勝ちます。

中村 このチームが始動してから最初に負けた相手が慶大で、最後にまたその相手と試合をできるということに対して運命的だと感じています。借りを返すチャンスなので、絶対に勝たなくてはいけないです。いままで自分たちがやってきたことの全てを出さなくてはいけないという使命感もありますし、僕自身としても、主将としてこのチームを勝たせたいと思います。全ての気持ちをぶつけて絶対に勝ちます。

――ありがとうございました!

(取材・編集 巖千咲)

★BIG BEARSを応援しよう!

早大生は早稲田側の窓口で学生証を提示すると先着50人は入場無料!

みんなで横浜スタジアムに駆けつけてBIG BEARSに声援を送ろう!

日時:11月23日(日) 10:45キックオフ

会場:横浜スタジアム(JR根岸線関内駅より徒歩1分)

料金:大人¥1,200 高校生¥500 中学生以下は無料

◆中村洸介(なかむら・こうすけ)(※写真中央)

1992(平4)年7月21日生まれ。185センチ、115キロ。東京・日大三高出身。スポーツ科学部4年。主将。練習がオフの月曜日、授業でバスケットボールを楽しんでリフレッシュしているという中村主将。同期のDB関幸太郎選手(スポ4=埼玉・西武学園文理)とOL廣瀬隆太郎選手(スポ4=奈良・智弁学園)と同じ接骨院に通っていて、残り少ない同期との時間を大切にしているそう。主将の人柄が伺えるエピソードでした

◆金澤秀明(かなざわ・ひであき)(※写真左)

1992年(平4)9月16日生まれ。180センチ。84キロ。東京・早大学院高出身。教育学部4年。オフの日の過ごし方を聞くと、RB井上広大選手(教4=東京・早大学院)と実家近くの温泉に通っていると答えてくださいました。ハードなTOP8を戦い抜いてきた選手にとって、温泉は最高のリラックス方法かもしれませんね

◆石川瑛二郎(いしかわ・えいじろう)(※写真右)

1992(平4)年7月22日生まれ。177センチ、76キロ。東京・早大学院高出身。人間科学部4年。オフの日は資格の勉強に励んでいるそう。「勉強に手を抜く人間はフットボールも極められない」と中村主将がおっしゃる通り、文武両道を貫く石川選手。早慶戦では、フィールド上での活躍から目が離せません