3年生に主力が多い今季のBIGBEARS。特にディフェンスに多く、第3回に登場するのはそんなディフェンスを支える2人、DL庭田和幸(創理3=東京・早大学院)とDB藤原健太郎(政経3=東京・早大学院)。さらにオフェンスからはけがからの復活を果たしたOL上石一輝(創理3=東京・早大学院)に登場してもらい、今季の振り返り、葛藤などを語って頂いた。
※この取材は11月12日に行われたものです。
「強いチームは勝つべくして勝つ」
――今シーズンを振り返っていかがでしょうか
庭田 じゃあ左からどうぞ。
藤原 もちろん僕らが目指していたのは日本一で、でもいま2敗して納得がいっていない、悔しいのはもちろんですが、振り返ると取り組みが甘かったとは思っています。特に日大、法大戦は結局自分たちの個人、チーム双方としての課題をつぶしきれていなかったのがそのまま出てしまったかたちだったので、いまとなっては僕らがまだ日本一になれるような取り組みをしてなかったということだと思います。
庭田 ことしでリーグ編成が変わって強豪校と試合をするうえで重要なのが、細かいミスを減らすことでした。実力は正直拮抗していると思うのですが、強いチームはミスが少なくて、自分たちは日大、法大に対して地に足がついていなかったり、自分も含めて強いチームとやる上での覚悟がまだできていなかったです。どうしても普段やらないようなミスや練習中に出たミスを修正し切れずに試合でそのミスが出てしまいました。それがちょっとの差となって日大には7点差、法大には4点差となって表れたと思います。強いチームは勝つべくして勝つなと。勝ち方を知っているなと今シーズンを通して感じました。気付けなかったそのことに気付けたのは良かったですが、シーズン前に気付ければ良かったと思います。
上石 庭田も言ったのですが、日大や法大は細かいミスへのこだわりも強かったですが、やはり結果へのこだわりが非常に強くて、その部分で負けてしまったのかなと思います。自分自身、春けがして、きょねんの間隔はまだ取り戻せていなかった部分というのは正直あります。そのせいで自分がミスしてしまったこともあったので、特に日大には負けてしまったというのはあります。
――それはまた緊張とは異なるものですか
庭田 緊張というか、相手が強い分楽しいのですが、どうしてもプレー前に強い相手でも同じことを考えながら、同じルーティーンでできていなくて、どうしても身構えてしまっていて、自分では気付かないうちに自滅してしまっていたりしました。勝ちきれなかったのがことしなので、来年はそれを生かしていければと思います。
今季、出場機会を増やしている藤原
――ことしからリーグ編成が変わりましたが1年間戦ってみていかがでしたか
庭田 右から順番かな。
上石 順番いる?(笑)まあ辛かったですね。日大、法大戦が3、4戦目にきて、そこにピークを持っていかなければならないというのが。最終戦だったらもっと成長して臨めたかなとも思います。
庭田 僕は自分のパフォーマンスがどんどん落ちていっている気がしました。けがもあったのですが、どうしても日大、法大戦に焦点を合わせていって、それが終わったあとの試合がどうしても。明大、立大戦では苦戦して、けがも増えていって、日大、法大に対してベストコンディションで臨めたかというとそうではありませんでした。このシーズンはBIGBEARSの選手層が薄いということが明確に分かりました。OLは下が育っていますが、ディフェンス、特にDLはあまり下が育っていないということもあり、1枚目が出場しなくていい場面でもうちは出すしかないという状況で、肉体的にも、精神的にも結構きていました。そこら辺がトップチームとの差ですね。どんな選手でも良いプレーをしますので。もっともっとチームのスタンダードを上げるべきだと思いました。
藤原 きょねんと異なるのは、7試合に全てに気が抜けないことです。それは試合だけでなく、面子も練習も本気でやらなければならない中で、間の2週間で次の相手に切り替えていくのが難しかったですね。特に立大戦から日大戦へは1週間しかなくて、時間がない中でどれだけ相手をスカウティングできるか、相手のオフェンスのプレーに合わせて練習ができるかが難しく、時間がないことはシーズン前から分かっていたことなのですが、やはり常に時間に追われていました。きょねんは夏合宿から最後の強豪校との試合をイメージして、そのチームのプレーを相手に練習していたりもしたのですが、ことしは2週間ごとに各校にフォーカスを変えながらやってきたので、それを試合までにかたちにするということが難しかったです。いまも慶大に向けて、危機感を感じながらやっていかなければいけないなと思います。
――明大戦は接戦の試合になりましたが、いま振り返ると緊張などもあったのでしょうか
庭田 緊張などはなかったですね。とりあえず初戦で、めちゃくちゃ楽しみでした。自分がフィジカル的にも伸びてきていて、どこまで通用するかというのが非常に楽しみでした。明大戦に関しては濱部先生(濱部昇監督、昭62教卒=東京・早大学院)も「開幕戦は絶対に厳しい試合になる」ということをおっしゃられていて、それは覚悟して臨んだ試合でした。その通りで、まだまだ試合勘も取り戻すことができない初戦で強豪校と戦うのは本当に難しかったです。明大のほうが気持ちの良いヒットやタックルをしていて、足を掻いたり、ボールを1ヤードでも前に出すといった泥臭さが自分達にはないなと気づかされて、自分達には気持ちが足りませんでした。1点差でも勝ててよかったと思いますが、明大は本当に良いフットボールをしていて、原点というか一番大事なものに気づかされた試合でした。
上石 明大戦ではオフェンスが全然ランも出せなくて、パスも落球したりする場面が多くて、庭田が言ったように明大には気持ちの部分で負けていました。そういう意味では本当にあの試合に勝てて良かったです。気持ちがフットボールにおいて大切だということを改めて痛感させられた試合でした。
――その泥臭さが出てきたと感じることはありましたか
庭田 明大の次の練習から足を掻くということをひたすら意識していました。足を止めないことが一番重要だと思うので、立大戦では気持ちを出したフットボールをすることでああいった試合になったと思います。
藤原 明大戦が終った辺りから「自分たちがやろうと思ったことは最後まで絶対やり切れ」ということを監督に言われました。明大や立大は自分たちのフットボールのかたちを持っていて、明大は激しいプレーを試合を通じてやり切っていて、そういったところにフットボールの強さは絶対出ると思います。僕はオフェンスのことをよく分かりませんが、プレー前に守備体型を見て柔軟に変更するのも大切ですが、絶対に1対1で圧倒するということもフットボールにおいては非常に大切で、自分たちの決めたことをどれだけやり切れるかということ試合においては大事だということを明大戦で気づいて、それを特に意識して練習していました。
――逆に日大、法大と戦ってみて収穫となった点はありましたか
上石 きょねんよりも確実にオフェンスはランを出すことができました。きょねんの法大戦での一番の課題は接点で負けていること、そして、相手を押し込めずに、RBも走れなくてそれで負けたという反省がありました。今回特に法大戦では、ランをガンガン出せて、確実に成長してきてはいるなということは感じました。
庭田 良かった点はヒットで相手に当たるなど接点では通用した点ですね。でもその後、DLだったら相手のOLを処理してボールに向かう意識がまだ全然足りていなかったです。
藤原 日大、法大戦に関しては、一人一人のスキルで負けていたと思っています。もちろんディフェンス11人で止めるという意識が一番良いのですが、まだ1対1でタックルして止めるのが全然なくて、日大戦ではマンツーマンでWRに付いていけなくてパスを通されるということが何回もありました。試合をする前からスキル陣のレベルが高いというのは分かっていたのですが、DBは日大戦に対して新しいパスカバーを準備していたりなど、全体のプレーに対してアジャストすることなどに気を取られ過ぎていて、結局大事な一人一人の能力で相手にどれだけ立ち向かえるかということで、そういった部分がまだまだだなと感じました。自分たちがそのレベルに追い付いて追い越せるかということはこれから大事だと思います。
意識の違い
――上石選手は春はけがで戦線を離脱されていましたが、その間チームをどのようにご覧になっていましたか
上石 まず一番にかんがえたのは、下級生を育てることです。来年勝つためにも、OLは5人全員強くないと勝つことができないと思うので、力を入れました。2年生も試合に出場していて、OL松原寛志(法2=東京・早大学院)やOL樋口央次朗(創理2=東京・早大学院)は頼りになります。
庭田 OL島崎貴弘(スポ2=神奈川・横浜立野)とかも強くなったよね。ウェイトトレーニングの取り組みとかも変わったし。洸介さん(OL中村洸介主将、スポ4=東京・日大三)がすごいんですよ。そのスタンダードがOLは上がったと思います。きょねんよりも練習で当たって違いますし、楽しいです。
上石 本当に洸介さんに引っ張られている部分は大きいですね。
対談の様子
――春季オープン戦では立命大に初勝利を挙げたりしましたが、春から夏、秋にかけての流れはいかがでしたか
庭田 春の早慶アメリカンフットボール対校戦(春の早慶戦)で負けたのが本当に悔しかったです。自分のレベルがまだまだ低いということが春の早慶戦で分かって、立命大戦までの2週間でいかに変われるかということを自分の課題にしました。春の早慶戦では接点、ヒットの強さや球際といったホントにちょっとの差で負けたので、慶大に負けた接点をいかに改善して立命大に臨むかということをテーマにしていました。結果、立命大には勝利できましたが、点差も付けられず、自分たちのレベルはまだまだ低いなということを感じました。自分の中では2週間の取り組みでの改善の手応えはあったのですが、やはりチームとして、フィジカル的な課題は残り、夏合宿まではいかにファンダメンタル、接点をいかに見直すかということを意識してやっていました。
――夏合宿で変わった点などはあったのでしょうか
庭田 まず日数が変わりました。
藤原 3日練習して1日休みだったのが、4日やって1日休みになりました。
庭田 まあ楽しかったです(笑)。
一同 (笑)
庭田 ことしは自分たちの課題にフォーカスしてできたかなと思います。でもまだまだレベルが低くて、結局日大、法大には勝てなくて、まだまだやれることはありました。
藤原 自分が感じたのは、関大戦で向こう(大阪)に遠征に行ったときに、監督から「遠征して向こうで試合をしてというのは、言ってみれば甲子園ボウルで近い状況だ。甲子園ボウルだと思ってやれ」と言われていました。関大遠征のときは試合に勝ちはしましたが、内容はそんなに良くはなくて、チームの雰囲気的にもきょうが甲子園ボウルだったらという気持ちで来たかというとそんなことはなくて。それから夏を終えて秋に入って、この前の日体大戦で本当に似たようなことを言われまして。もし日大にも法大にも勝利して全勝できていたら、この試合が優勝を懸けた一戦だった、ということを言われていて、もしそんな本当に気持ちでプレーしていたら、あんな内容の試合にはなっていなかったです。そういった意味では、僕らはまだ精神的に弱いのかな、春から成長できていないということを日体大戦後に思いました。それは一人一人の気の緩みというのも、そういう空気を感じていても変えようとしていなかった人が大半で、弱さというものがまだまだあるのかなと思います。
――上石選手はいつ頃練習には復帰されたのでしょうか
上石 夏合宿に入るぐらいですね。そのときはやるしかないという感じでした。
――焦りなどはありませんでしたか
上石 下級生が自分の代わりに島﨑が自分の代わりにスターターで出場して活躍していて、秋はこいつに抜かれるんじゃないかと思って。
上石 そんなことはない(笑)。やるしかないかなと思いまして。3年という立場もあって、チーム全体のことも考えなければならないかなと思って、信頼されるようなプレーをしていこうということは思っていました。
相手OLをかいくぐる庭田
――藤原選手は以前はKをやられていましたが
藤原 (たまたま部屋にいたK/P佐藤敏基(社3=東京・早大学院)の方を見て)いまもやっているのですが、偉大な1枚目がいまして。
庭田 すごいキッカーがいてね。「俺はもう天下一品だ」って言ってるんですけど(笑)。
佐藤敏 言ったことねえよ!(笑)
一同 (笑)
――春季オープン戦では蹴られていましたよね
藤原 春はA、B、Cと3チームに分かれていて、点差がついたときに回すというスタイルでやっていたので、そういったときに2枚目の僕が蹴ったりすることはありました。正直、Kでは僕は大学では通用する選手とは思っていないので、彼(佐藤敏選手)に任せています。
――上石選手はOL以外の経験はありますか
上石
上石 高校からずっとOL一本ですね。入ったときからでかくて、もうおまえはOLだと言われて、OLしかやらせてもらえなかったです(笑)。
――ボールを持ちたいと思うことはありますか
上石 持ちたいですね。結構ボール持って走るのは全然できるので、インターセプトされた後は常にボールを掻き出してやろうと狙っています。
――庭田選手はいかがでしょうか
庭田 これって一番下に書くやつですよね?僕は時計をつけてて、時間の管理ができている。部屋の整理整頓をマメにしている…
藤原 それ全部俺がやってることだろ!
一同 (笑)
庭田 寮が藤原と同部屋なんですよ。
藤原 全く掃除しないです。1ミリも掃除しないので。
庭田 (笑)
藤原 時計も今日付け始めただけですよ(笑)。
「フットボーラーとしてのプライドを懸けて」
上石の完全復活がOL陣には不可欠だ
――春敗れた早慶戦ですが、これまでの慶大の戦いぶりを見ていていかがですか
庭田 最後にふさわしい相手ですね。どちらも日本一を目指しながらも日大、法大に負けてとチーム状況も同じですし。言ってしまえば勝ったから何かがあるわけではないですが、自分たちは春の早慶戦で負けていて、絶対に負けられないですし、春負けて本当に悔しかったので、早慶のプライドに懸けて、春の借りを返します。
藤原 早慶戦というのはワセダにいる人間としては、特別なことをやるつもりはありませんが、気持ちの上では特別な一戦です。よく言われるのは、「ワセダにいる以上は絶対に慶大には負けてはならない」ということで、前にコーチから教わった話なのですが、4年生のときに戦った早慶戦の結果は一生付きまとうということを言われるらしくて、会社入っても言われるらしいんですよ。僕らはいまの4年生の一つ下の代で高校時からお世話になっている人も多く、「早慶戦に負けた代だ」と言われて欲しくはないので、そういう意味でも勝たなければいけないなと思います。4年生の最後の試合として相応しい結果を僕らの力で持って来れたらいいなと思います。
上石 慶大のディフェンスには3年の金子(陽亮、3年)とか主将の三津谷さん(郁磨、4年)とか上手い選手が多いのですが、うちのオフェンスなら勝てると思います。いま監督から「50点以上取れ」と言われていまして、OLで勝ったと言われるような試合にしたいです。春の早慶戦は出場できなかったので、その分頑張りたいです。
――やはり4年生には特別な思いもありますか
藤原 そうですね。早大学院高時代から数えて6年目になる方もいますし、もちろん大学からお世話になっている方もいるので、何より一番近くでチームに貢献してきている方々なので、そういう人たちを絶対に勝たせなきゃなと思います。
――慶大のディフェンスと言いますと、高木翼選手(3年)が中心でしょうか
藤原 パスユニットに関してはこのリーグの中でも一番と言っていいほどレベルが高いですね。僕はDBなので、そこでは絶対に負けたくないですね。
――最後に慶大戦への意気込みをお願いします
庭田 ちょっと10秒ください。うーん。
藤原 もう10秒たったよ(笑)。
庭田 そうですね。難しいので、絶対勝ちます。それだけでお願いします。
藤原 今度のゲームスローガンが『プライド』なので、ワセダとしてのプライドもそうですし、フットボーラーとしてのプライドを懸けて頑張りたいと思います。
上石 最後に洸介さんや大町さん(OL大町慎太郎、社4=東京・西)、廣瀬さん(OL廣瀬隆太郎、スポ4=奈良・智弁学園)と三浦さん(OL三浦康宏、教4=東京・早大学院)を勝たせて終わらせられるように全力で戦って勝ちたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 井上義之)
★BIG BEARSを応援しよう!
早大生は早稲田側の窓口で学生証を提示すると先着50人は入場無料!
みんなで横浜スタジアムに駆けつけてBIG BEARSに声援を送ろう!
日時:11月23日(日) 10:45キックオフ
会場:横浜スタジアム(JR根岸線関内駅より徒歩1分)
料金:大人¥1,200 高校生¥500 中学生以下は無料
◆上石一輝(かみいし・かずき)(※写真左)
1993(平5)年4月11日生まれ。185センチ。118キロ。東京・早大学院高出身。創造理工学部3年。対談中「ボールを持ちたい」と語っていた上石選手ですが、実は一度高校時代に味方がファンブルしたボールを拾って走ったことがあるそうです。「でも3ヤードしか走れなかったんですよね…。次は絶対にTD獲ります!」ファンブル時にも注目です!
◆庭田和幸(にわた・かずゆき)(※写真中央)
1993年(平5)7月10日生まれ。189センチ。103センチ。東京・早大学院高出身。創造理工学部3年。庭田選手は早大学院高時代から合わせて東伏見は6年目。おすすめの食べ物に東伏見駅南口駅徒歩2分にあるSOUTHCAFEのえびとトマトのクリームパスタを挙げて頂きました。東伏見に立ち寄る際には、是非立ち寄ってみてはいかがでしょうか!
◆藤原健太郎(ふじわら・けんたろう)(※写真右)
1993年(平5)4月11日生まれ。177センチ。81キロ。東京・早大学院高出身。政治経済学部1年。高校時代は早大学院高のキャプテンを務めていた藤原選手。この対談でも時には暴走(?)しがちな庭田選手を止める良いツッコミを、時には的確なコメントを頂き、対談をコントロールして頂きました!