【連載】『PRIDE』第2回 LB加藤樹×WR鈴木隆貴×RB須貝和弘

米式蹴球

 第2回にお届けするのは成長著しい2年生トリオ。ことしから出場機会をまた一段と増やし、チームの柱へとなりつつあるLB加藤樹(商2=東京・早大学院)、RB須貝和弘(創理2=東京・早大学院)、WR鈴木隆貴(法2=東京・早大学院)に今季成長した部分、そして世界大会に出場した加藤樹、鈴木両選手には世界での戦いについても伺った。

※この取材は11月13日に行われたものです。

「決めきれなかった部分の差が出た」

――まずは今シーズン振り返っていかがでしたか

加藤樹 立大戦ぐらいまでは調子が良かったのですが、特に前節とその前の試合では調子が悪いというよりは実力が不足していて、つたないプレーをしてしまったので、最後ぐらいはチームに貢献できるように頑張りたいです。

――それは疲れとかも関係あるのでしょうか

加藤樹 いや疲れというよりは、こっちの準備不足でしたね。特に法大などはかなり研究していて、ポジション柄かなり狙われることが多いのですが、封じ込められてしまったところはあったので、慶大に対してはしっかりと準備しています。

序盤戦はまさに獅子奮迅の活躍を見せた加藤樹

――他のお二人はいかがでしょうか

須貝 僕はありがたいことに全試合スターターで出場させて頂いたのですが、全体的に納得いくプレーができていないのが実情です。特に敗れた日大、法大戦では、全国を代表する選手に対して、自分のプレーが全く歯が立たなかったので、まだまだ成長しなくてはいけないと感じさせられました。

鈴木隆 シーズン序盤から日大、法大戦にかけて調子は上がっていっていたと思いますが、日大、法大の相手のDB陣や身体能力の高い選手に対して、勝負どころでボールをはたかれてしまったりするシーンもありました。もっともっと勝負どころでの集中力を研ぎ澄ませることができれば、結果も変わってきていたのかなと思っているので、それ以降は集中に取り組んで、最終戦に向けて準備しているところです。

――3選手ともに昨年よりも出場機会を大きく伸ばしましたが、昨年より成長した点を教えてください

加藤樹 僕はきょねんの段階では当時の4年生が二人いて、なかなか出場機会を勝ち取ることができなくて、試合にはキッキングなどで出場していました。それがことしになって僕が必然的に出場することになりました。きょねんに比べて、試合に出場することによって、経験や試合勘の部分では成長することができましたが、まだまだ自分の目指すポジション像には全く近づいていません。フィジカルやスピードがアップしたわけではないので、そういった部分も伸ばしていく必要があります。

須貝 スクリメージライン上での縦への意識は大切にしています。まあまだまだですけど、一応体現できる走りもあったので良かったです。北條(RB北條淳士、社2=東京・佼成学園)みたいに流れを変える走りもできませんし、光さん(RB藤井光成、政経3=東京・早大学院)みたいに一気に持っていくスピードもないので、とりあえずあまり格好つけずに縦へ縦へということを意識しています。そこは春より大分よくなったと思います。

――須貝選手は毎試合コンスタントにヤードを稼いでいる印象があります

須貝 そうですね。もうちょっとロングゲインも出したいのですが(笑)。ある意味それが自分の持ち味でもあると思うので、縦を意識している結果、ミドルゲインが出せるようになってきているかなと思います。まだオープンフィールドでのコース取りやDBとの1対1の部分では他の4人のRBの方が遥かに上なので、そこをもっと詰めていければなと思います。

鈴木隆 きょねんも一応回しで法大戦前までは出場していましたが、大学のスピードに付いていけなかった部分もありました。ことしになって出場機会が増えていき、様々な相手と戦う中で、スピードやフィジカルがある相手とどうやって戦うのかということを模索してやってきて、今シーズンはブロックに関しては臆することなく当たれていますし、パスルートも少し自信を持って走れるようになってきたと思います。でもやはりまだ上には上がいるので、上手い選手に対して勝負を仕掛けにいったり、マンツーマンにおいてテクニックで相手を振り切ったりする部分ではまだまだ足りていないです。僕は足が速くないので、勝負どころでの競り合いで勝てることを目指しているのですが、そこも諸口さん(WR諸口貴則、政経3=東京・早大学院)や拓馬さん(WR鈴木拓馬、社3=大阪・豊中)の方がまだまだ上なので、そこは誰にも負けないように頑張っていきたいです。

――そういった意味では明大戦でのキャッチなどは勝負強さが発揮されたプレーだったのではないでしょうか

鈴木隆 そう言ってもらえるとありがたいのですが、あれも足をしっかり動かしていればそのままTDまで持っていけたのではないかというのが、ビデオを見て思った感想でした。そこに満足することなく、上を目指していきたいと思います。

――勝負強さは大切にしていきたい部分なのでしょうか

鈴木隆 そうですね。日大戦ではロングパスが決まらず、苦しくなって負けてしまった部分がありました。逆に法大戦では、後半最初のシリーズでロングパスが決まって、最後はランでTDまで持っていくことができました。ロングパスが決まるかどうかで試合のモメンタムも変わってくると思うので、これからもやっていきたいと思います。

――ではリーグ戦に話を移らせて頂きます。明大戦と立大戦についてはいかがでしたか

加藤樹 自分の個人的な感想としては、自分がマッチアップする相手に1対1であったら負けないという自信があったのですが、中大や日大に関しては強いWRやTEがいて、やられるシーンがあって、1対1で勝たなければ良いプレーはできないと感じました。本当にタックルミスや反則など自分たちで自滅してしまうことが多くて、そこを試合中にアジャストできなかったり、準備してきたこと以外を相手がしてきたときに対応できなかったのが不調の原因かなと思います。

――日大戦についてはいかがでしたか。あの強力オフェンスを14点に抑えたのは自信につながったりしましたか

加藤樹 勝てる試合だったと思います。自分も捕れるボールを落としたり、流れを持っていける場面で持って来れ切れなかったという大きいところです。

――一方のオフェンスは日大戦では7点に抑えられ、逆に法大戦では24点を奪う対称的な結果となりました

鈴木隆 あの2試合は全体的に気持ちも入っていて、集中していたとは思います。日大戦は特に相手のフィジカルやスピードに最初やられてしまった部分がありました。僕はパスユニットとして、要所でのパスが決まらなかったり、捕ってもすぐにタックルされてしまったり、1対1の勝負で負けてしまったことでオフェンスの流れがつかめず、7点に抑えられてしまいました。逆に法大戦はその反省を生かして、パスを中心に組み立てていきました。しっかり要所の場面では集中していました。でも、最後のシリーズで落球やインターセプトで試合が決まってしまったという部分で法大、日大戦では決めきれなかった部分の差が出てしまいました。

須貝 もう完全にそれですね(笑)。あとは法大戦で点を取ることができたのは、本当に陽木(QB坂梨陽木、政経1=東京・早大学院)が1試合ごとに成長してくれたことですね。プレーもそうですが、ハドル内でチームをまとめる能力が本当に長けている選手で、年下なのにすごいと思います。日大戦を終えてからの陽木の落ち着き具合は本当に素晴らしかったと思いますし、法大戦でリーダーシップが発揮されて、コンスタントにパスも決めていましたし、本当に彼の成長がことしのオフェンスの成長につながっていると感じます。

鈴木隆 練習中なども自分が何をしたいのかということをはっきり伝えてくれて、WRがどう動きたいのかというのも密にコミュニケーションが取れるように彼自身もすごく気を使ってくれていて、非常にやりやすい環境でプレーできています。その中で陽木だけでなくて、内村さん(QB内村竜也、法4=東京・早実)や政本さん(QB政本悠紀、創理3=東京都市大付)、QB笹木(雄太、法2=東京・早大学院)、誰が出てもパフォーマンスが変わらないように意識していやっていたので、そういった日々のコミュニケーションが試合でも生きてきたのかなと思います。

苦しめられた異文化での戦い

鈴木隆は春の早慶戦でもTDレシーブを決めている

――加藤樹選手と鈴木隆選手のお二人は日本代表に選出されましたが、そこで持ち帰った経験で一番大きかったものを教えてください

加藤樹 新鮮で衝撃的でレベルの違いを痛感させられました。同じ日本の大学に所属している代表レベルの選手をどうすれば倒すことができるのか、通用するのかということを日々考えました。そういった意味では、シーズンに役立ったと言えば役立ちました。そういった選手たちと一緒に練習して、テクニックなどは上昇したかもしれませんが、結構実力差を見せつけられた感じで、ここぞという場面での集中力は本当に素晴らしかったので、真似できるところは真似していきたいです。

鈴木隆 全国から集められた同年代もしくは1個下の選手が多かったのですが、有名な関学大や立命大のスキルの高い選手たちはやはり自分にはないものを持っていました。他の国の様々な相手と戦えたということは非常に新鮮だったというのは率直な感想です。あとやはりそれが刺激になって帰国してからどうすればそういった選手たちに勝利することができるのかという部分でこれからも頑張って行く原動力になりました。

――それぞれスウェーデンとクウェートでしたが困ったことはありましたか

加藤樹 僕は外国行くのがほぼ初めてだったのですが、スウェーデンは飯が不味くて(笑)。主食がじゃがいもなのですが、それ以外だとタイ米なんですよ。タイ米はあんまり合わなくて、滞在した3週間の間に体重が減ってしまって、帰国後体重を戻すのが大変でした。

鈴木隆 クウェートは暑くて、しかもラマダーンの関係で日中は外にも出られませんでした。夕方に練習するのですが、それでも40℃近くあって、動くとすぐ汗出ますし、湿気でジメジメしていて大変でした。それで、ご飯は基本的にタイ米で(笑)。

――ことしからリーグ戦の方式が変わったわけですが、強豪校と戦ってみて、気になった他校の選手はいらっしゃいましたか

須貝 僕は日大の岩本さん(卓也、3年)と下水流さん(裕太、3年)は飛び抜けてすごいなと感じました。抜けたと思っても手が伸びてきて、逃げ場のないタックリングコースで何もできませんでした。今まで5年間アメフトやってきて感じたことのないもので、本当にすごいなと思いました。

加藤樹 日大の岩松選手(慶将、3年)とかは大学日本代表でもマンツーマンなどでボコボコにされて、どうやって勝とうかとずっと考えていたのですが、それが今回の試合では、目立ってやられていた部分はなく、そこは太刀打ちできたのは良かったです。ライバルは慶大の李卓(2年)です。あと高木選手(翼、4年)はトップレベルの選手てすし、ディフェンスとしてもこの2人を止めないと勝てないので、敵対心を剥き出しにして頑張ろうと思います。

鈴木隆 やっぱり日大のDB陣は全員上手かったですね。一個上の大阪産大付高の選手が多く、4年生の森さん(亮輔、4年)、柳さん(龍之介、4年)は嫌なところで守っていて、やりにくかったですね。ライバルというわけではないですが、法大の石上(宇貴、2年)は意識しています。きょねんから法大のスターターで出場していているDBで、刺激になります。

――1年間強豪校が集まるリーグで戦ってみていかがでしたか

加藤樹 きょねんはある程度試合結果が予想できて、対策もできたのですが、ことしは全く予想できなかったです。戦う相手が毎回強いというのは僕的には楽しかったです。

須貝 楽しかったです。毎試合が楽しみでした。ありがたいことに2年生のうちにTOP8のほぼ全ての大学の力を体で知れたのは大きいですね。

鈴木隆 日大、法大と戦って、勝つ気で臨んで結果がどうなるか分からない試合を戦うのは楽しかったですし、他の大学の上手い選手とも戦うのは楽しかったです。

「リベンジしたい」

――早慶戦のイメージは

加藤樹 たまたま春の早慶アメリカンフットボール対校戦に出場することができなくて、大学入ってすぐの新人早慶戦以来ですね、慶大と戦うのは。なので結構久しぶりで、春負けているので、ワセダとしては勝ちたいですね。

鈴木隆 高校時代は慶應義塾高に負けなしだったのですが、僕らが出た新人早慶戦から負けているので、リベンジしたいですね。

――皆さんが出場された新人早慶戦は僅差だった思い出があります

加藤樹 めちゃめちゃインターセプトされて、前半で大分大差がついて、後半盛り返した記憶がありますね。

鈴木隆 僕は新人担当だったのですが、ことしの新人早慶戦でも負けてしまって。今回の早慶戦は負けられないですね。

須貝 僕はあんまり早慶戦だからこうだという気持ちはないのですが、先ほどの李卓などオフェンスも強力ですし、運営などチームとしても高いレベルにある大学と対戦できるのは本当に楽しみです。

ラッシングヤード獲得数ではチームトップを誇る須貝

――先ほど加藤樹選手から慶大のオフェンスのお話が出ましたが、慶大のディフェンスでマークすべき選手はどなたでしょうか

鈴木隆 DBだと主将の三津谷選手(郁磨、4年)は絶対に出てくる選手だと思います。慶大は結構思い切りの良いディフェンスをしてくるので、受けに回らないように、相手に左右されることなく自分たちのプレーができればいいと思います。

須貝 DLもすごく良い印象があります。金子さん(陽亮、3年)などですね。あと三津谷さんなどベテランから、1年生で出場している工藤くん(勇輝、1年)といった形で幅広く活躍している印象があります。

――最後に最終戦への意気込みをお願いします

加藤樹 4年生にとっては最後の試合で、今までDB石川瑛二郎さん(人4=東京・早大学院)や峯さん(LB峯佑輔、教4=東京・早大学院)などコミュニケーションとか取ってもらって助けてもらったので、最後の試合で自分も活躍して試合に勝利して、良いかたちで終れればと思います。

須貝 4年生と同じフィールドに立てるのも最後なので、まず何として4年生のために勝つのは絶対条件です。あとは本当に良いチームと戦うことができるので、それに感謝して、1プレー1プレー楽しめればと思います。

鈴木隆 僕はことし1年オフェンスを引っ張って頂いた北村さん(TE北村卓也、先理4=東京・早大学院)や吉原さん(RB吉原猛、社4=東京・日大三)や洸介さん(OL中村洸介主将、スポ4=東京・日大三)を良いかたちで送り出して、自分が成長したということをしっかりと証明したいです。あとはポジション柄、金澤さん(WR金澤秀明、教4=東京・早大学院)にもお世話になっていて、感謝の気持ちをプレーの中で表現できるようにして、最後は勝って一年を締めくくりたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 井上義之)

★BIG BEARSを応援しよう!

早大生は早稲田側の窓口で学生証を提示すると先着50人は入場無料!

みんなで横浜スタジアムに駆けつけてBIG BEARSに声援を送ろう!

日時:11月23日(日) 10:45キックオフ

会場:横浜スタジアム(JR根岸線関内駅より徒歩1分)

料金:大人¥1,200 高校生¥500 中学生以下は無料

◆加藤樹(かとう・いつき)(※写真左)

1994(平6)年5月1日生まれ。177センチ。84キロ。東京・早大学院高出身。商学部2年。夏の対談では掃除が苦手ということをコグランケビン選手(商3=東京・早大学院)に指摘されてしまった加藤樹選手。それから一念発起し、いまでは掃除を毎日しているとのこと。寮長さんからもらったカーペットを敷き詰めているそうです。掃除が良い気分転換になり、良いプレーに繋がっているかもしれませんね!

◆須貝和弘(すがい・かずひろ)(※写真中央)

1994年(平6)5月10日生まれ。172センチ。82キロ。東京・早大学院高出身。創造理工学部2年。昼食はRB北條淳士選手(社2=東京・佼成学園)と食べることが多いと語った須貝選手。中でも東伏見にあるそば屋さんの鴨汁せいろが絶品だとか。そのエピソードを聞いて周りの二人からは「RB陣は金持ち」との声が。RB陣の以外な一面を知ることができました。

◆鈴木隆貴(すずき・りゅうき)(※写真右)

1995年(平7)2月11日生まれ。178センチ。81キロ。東京・早大学院高出身。法学部2年。U-18日本代表として、クウェートでの世界大会に参加した鈴木隆選手。試合時間が真夜中0時から始まる試合もあり、生活リズムが完全に夜型となってしまい、日本に帰ってから戻すのが大変だったそうです。