3年ぶりの開催も悔しい結果に 次世代に託された優勝への思い

ヨット

 「過去最強クラス」と称される台風14号が接近する中、3年ぶりに全日本学生女子選手権(全女)が開催された。3日間の予定が2日に短縮され、初日は各クラス1レースのみでの終了。迎えた2日目も470級で2レース、スナイプ級で1レースと、悔しさの残る大会運びとなった。早大は目標としていた優勝には届かず、総合3位で幕を閉じた。

 先週の関東学生女子ヨット秋季選手権大会と同様に、470級には飯田澪(スポ2=山口・光)・高田澪(社2=エルジンパークセカンダリースクール・カナダ)組と青山知央(スポ1=神奈川・鎌倉)・吉野満衣(政経3=ユナイテッドワールドカレッジ・アメリカ)組の2組が出場。飯田は悪天候が予想されていたものの「やることは変わらないので落ち着いてレースに挑んだ」という。2艇ともに無風状態で行われた第1レースで初日を終えると、2日目には着実に好成績を残す。しかしDNF(※1)が響き、首位には届かず。飯田・高田組が4位、青山・吉野組が6位という結果で本大会を終えた。

海上での青山・吉野組

 対するスナイプ級に出場したのは松尾華(スポ4=広島修道大鈴峯女)・鶴岡由梨奈主将(社4=東京・立教女学院)組。1年時に同大会で松尾とペアを組んだのが初レースであった鶴岡にとって全女は「ヨット人生の原点となる大会」だ。インタビューでは両者ともにお互いのことが理解できると振り返り、鶴岡は「(松尾とは)どのスキッパーよりも質の高いコミュニケーションが取れているように感じる」そうで、「(松尾)華を日本一のスキッパーにする」とここまで練習を積んできた。そんな彼女らは本大会の第1レースを今まで経験したヨットレースの中でも印象に残るレースとする。1上(※2)後から驚異的な集中力を見せ、一気に1位に躍り出る。そのままトップでフィニッシュ。まさに2人の絆が垣間見えるレースとなった。しかし続く2レースではスタートの遅れを最後まで挽回することができず8位に。最終4位で「2人で乗れる最後」(松尾)のレースを終えた。

レース前後に笑顔を見せる松尾・鶴岡組

 今年度の早大ヨット部は「早稲田史上最多の女子部員」(鶴岡)を擁する。残念ながら全女での総合優勝という目標を達成することは叶わなかったが、目標を追い続けた松尾と鶴岡の姿は後輩の記憶にしっかりと刻み込まれたはずだ。この春入部した1年生の活躍が見られるなど、今後に期待できる収穫も残した。本大会のリベンジは来年度以降に引き継がれていく。鶴岡、松尾それぞれが後輩たちを信じ、その思いを言葉に残した。チームはこれから関東秋季学生選手権(秋インカレ)、全日本学生選手権(全日本インカレ)と、「負けられない戦い」(鶴岡)に挑んでいく。特に4年生らにとってこのチームで過ごすことのできる日々は残りわずかだ。残り2カ月を切る中で、さらなる成長が望まれる。今後もセーラーたちの躍進から目が離せない。

 

※掲載が遅くなり申し訳ございません。

女子部員での集合写真

 

※1 did not finishの略。フィニッシュしなかったことを意味する。
※2 スタート後に向かう1周目の風上マークのこと。

(記事 宮島真白、写真 部提供)

結果

▽470級
飯田・高田組 DNF-2-3 42pts 4位
青山・吉野組 DNF-6-5 48pts 6位
▽スナイプ級
松尾・鶴岡組 1-8 9pts 4位
▽総合
早大 3位

コメント

スナイプ級クルー 鶴岡由梨奈主将(社4=東京・立教女学院)

――大会全体を終えて今の気持ちは

複雑な感情が残る大会で、改めてヨットレースで勝ち切る難しさを実感しました。このメンバーで総合優勝を目指していたので、悔しさが未だ残ります。また、個人的に全女は人生初のヨットレースとして1年時に松尾(華、スポ4=広島修道大鈴峯女)と出場したことから、私のヨット人生の原点となる大会でして・・・。何にもできなかった自分の不甲斐なさを痛感し、昨年卒部された上園田さん(上園田明真海、令4スポ卒)に帰りの電車の中で「うまくなって全女で(松尾)華を日本一のスキッパーにする」と泣きながら決意したんですよね。あの大会が契機で、未経験かつ女子で部活がしんどいと感じる時も、ひたすら強く、うまくなりたいとの想いでここまでやってこれました。本当に、1年の全女がなかったら今の自分はないと思います。コロナ禍で2、3年時に全女は開催延期となったことから、今大会がラストチャンスだったのですが結果及ばずで。また、現チームは早稲田史上最多の女子部員で、選手だけでなく、サポートも含め頼もしい後輩たちばかりでした。この代で絶対総合優勝をつかみ取りたかったので悔しいですが、後輩たちの活躍も目立った大会だったので、来年以降、後輩たちが頂点を獲ってくれると信じています。

――関東と全国で違いはあったか

いつもの練習拠点での大会開催だったからか、あまり大きな違いは感じられなかったです。男女混合の全日本大会ですと、他水域の大学は関東圏とは違う雰囲気が感じられるのですが、女子だけということもあって、むしろ女子セーラーならではの話題で盛り上がり、不思議と一体感が生まれていました。

――2レースでの終了となりましたが、それぞれ振り返って

どちらもスタートで失敗し、追いかけるかたちでレースが始まりました。特に、1レース目は今までのヨット人生の中でも印象に残るレースになりました。1上(※2)14位で回航したものの、2人とも非常に落ち着いていました。艇内は「ここから抜かしていこう!」とポジティブな雰囲気でして、高い集中力を保つことができました。結果、1下(※3)では一気に1位になり、フィニッシュも1位を守り切ることができました。私は2年時に偉大な虎太郎さん(松尾虎太郎、令3スポ卒)(松尾華の兄にあたる)とペアを組ませていただいていたのですが、あの時の華の集中力は兄弟を感じさせるものがありました。2レース目は、スタートで大きく出遅れ、後手後手のレースになってしまいました。何とか順位を上げ続けたものの、スタートでのリカバリーが仕切れず、フィニッシュを迎えました。

――チーム、個人それぞれで良かった点と課題の部分は

チームとして良かった点は、陸海問わずまとまって良い連携が取れていた点だと思います。実際に、海上待機の間も3艇まとまって、それぞれの気づきを共有し合ったり、陸でもみんなで協力して効率的に動くことができました。サポートメンバーの動きも非常にありがたかったです。個人としては、クルーとして成長を実感できた点です。1レース目の1下は、高い集中力で次に想定される変化を予測し、広く海面を見て情報提供やコースの提案ができました。チームの課題としては、個人とも重複するのですがスタートです。両クラスともスタート失敗後、レグ(※4)ごとに順位を上げていく展開となりました。インカレに向け、良いスタートを決めて、1上からトップ集団に居続けることを重点課題として取り組んでいきます。

――松尾さんとのコミュニケーションについては

松尾とは1年の全女から乗っていたり、陸上でも過ごす時間が長いので、言わなくてもお互いのことが理解しあえるといいますか(笑)。本当にどのスキッパーよりも質の高いコミュニケーションが取れているように感じます。まさにヨットの醍醐味である2人で船を走らせる面白さを教えてくれたスキッパーですね。

――今後への意気込みをお願いします

今後は関東インカレ(秋インカレ)、全日本インカレと負けられない戦いが続きます。素晴らしい環境で最高の仲間とヨットに打ち込める日々も残り1ヵ月半となります。琵琶湖で総合優勝を果たして、エンジの部旗をマストに掲げ、全員で喜びを分かち合えるよう、1分1秒にこだわり、勝利につながる時間を仲間と積み重ねたいと思います。

 

※3 1周目の風下にあるマークのこと
※4 レースコースにおけるマークとマークの間のこと

スナイプ級スキッパー 松尾華(スポ4=広島修道大鈴峯女)

――大会全体を振り返って

とにかく悔しさが残るレースになりました。春からこのメンバーで総合優勝を目指していましたが、最後までそれが実現できなかったです。たくさんの方々に支えていただいていたので、なんとか結果を出して恩返しがしたかったです。来年以降のワセジョたちが必ず総合優勝という私たちの夢もかなえてくれると信じています。

――事前や悪天候が予想されていましたが、レース前のメンタルはどうでしたか

レース数が少ないレガッタ(※5)になる事が予想されたので、1レースを大事にしようと思っていました。レース前の準備などはいつもより入念に行いました。レース前緊張はしていましたがいい緊張感の中レースをすることができました。

――2レースのみでの終了となりましたが、それぞれ振り返っていかがでしたか

1レース目は私が今まで経験したヨットレースで1番心に残るヨットレースになりました。スタートで出遅れたものの、1上まではなんとか上位集団に着いていき、ランニング(※6)で13番から1番まであげることができました。あんなに集中したヨットレースは初めてでした。2レース目もプレッシャーのかかる中のスタートで失敗してしまいました。なんとか順位は上げましたが、上げ切ることはできませんでした。

――鶴岡さんとのコミュニケーションについては

1年生の頃から乗っているので、お互いが考えていることが理解できてきました。1年生から一緒に乗ってきたからこそ最後に結果として出したかったのでとても悔しいです。

――今後への意気込みをお願いします

全日本インカレ総合優勝に向けてあと1ヵ月半部員全員で高め合いながら頑張っていきます。部員として部活ができるのもあと少しなので悔いのないように1日1日を大切に過ごしていきます。

 

※5 大会のこと
※6 後ろから風を受けて走ること

470級スキッパー 飯田澪(スポ2=山口・光)

――大会を振り返って

とても悔しいのが素直な感想です。しかしながら今レガッタを通して自身の課題がより明確になりました。来月から始まる秋インカレ、そして全日本インカレにつなげていきます。

――海のコンディションは

悪天候が予想されていましたがやることは変わらないので落ち着いてレースに挑みました。

――第1レースを振り返って

ほぼ無風な状態でのレースで、1上の順位は良くありませんでしたが、そのあと確実に順位を大きくあげることができたことは良かったと考えています。

――1日目終了時点での心境は

特に成績は意識していませんでした。総合優勝に向けてやるべきことは決まっていたので、2日目の1レース目に向けて最善の準備をすることを心がけました。

――良かったところと課題の部分は

ペアが同期ということで言いたいことを言い合えることが良かったと思います。一方で、普段乗ってないペアなので動作面でのコンビネーションが課題です。女子レースは今シーズンはもうないですが、お互いにより成長していくことができればと思います。

――今後への意気込みをお願いします

今大会は目標に届かず、悔しい思いをしました。この思いを全日本インカレで晴らせるよう、残り少ない練習に真摯に取り組んでいきます。