愛知・蒲郡の海で、大学ナンバーワンセーラーを決める戦いの幕が上がった。3日間にわたる本大会は、初日に3レース、2日目には4レースが行われ、最終日には1レースのみを残すかたちとなった。「(全日本個人選では)絶対に優勝し、チームに勢いをつけたい」と語っていた服部陸太(スポ2=神奈川・鎌倉学園)がスナイプ級で優勝を果たすなど、早大勢の強さが見られた一方で、思うような結果が得られず悔しさを感じる選手もいたようだ。
470級では第1レースから石川和歩(スポ3=香川・高松商業)・田中丸武(商3=早稲田佐賀)組が首位を奪い、幸先のいいスタートを切る。第2レースからは470リーダーである倉橋直暉(スポ4=福岡・中村学園三陽)と松山大祐(創理1=神奈川・逗子開成)/高田澪(社2=カナダ・エルジンパークセカンダリースクール)のペアが好調を見せ、1位を連取。初日終了時点で倉橋・松山/高田組が1位、石川・田中丸組が2位と続いた。続く2日目、倉橋らは安定感のある走りで首位を継続。飯田澪(スポ2=山口・光)・金子俊輔(商4=埼玉・早大本庄)組もだんだん盛り返し、4位で最終日に臨んだ。迎えた最終レース、「自分の未熟さを痛感した」という倉橋はスタートこそトップ争いにいたものの、その後はコースから外れてしまう。3位に順位を落としての大会終了となった。結果だけを見ると優勝、準優勝をライバルである日大に譲る結果となった470級。しかし、おのおのが課題の克服や楽しんでレースをすることができ、11月に控える全日本学生選手権(全日本インカレ)につながったと言えるだろう。
青空の下、レースに臨む選手たち
対するスナイプ級は、昨年度にルーキーながら2位となった服部が宣言通り優勝を果たす。2日目初レースで大きく順位を落としたものの、直後の第5レースで監督からのフィードバックを「完璧に表現」。その後も地道に順位を上げ、最終1位を飾った。しかし、同じく優勝を目標としていたスナイプリーダー・大久保優輝(創理4=東京・早実)は本大会を「後悔の残る大会」と振り返る。1レース目からコンディションに合わせることができず実力不足そして「ヨットレースの難しさ」を痛感することとなった。服部・根本優樹(社4=東京・早大学院)組の1位の後には同大(同志社大学)が2位、3位と控えている。これまで関東での大会を重ねてきた選手たちにとって、全国規模の大会は同大と走ることのできる貴重な機会だ。この経験を糧に来たる全日本インカレに臨む。
トロフィーを手に笑顔を見せる服部・根本組
連覇を目指す全日本インカレは団体戦である一方で、今回、個人での戦いを終えた早大ヨットチーム。それでも本大会は「個人だけでなく、チームにとっても非常に学びの多いレース」(鶴岡由梨奈主将(社4=東京・立教女学院)であったという。『相互研鑽(けんさん)』の下に残り2カ月でチームの力をどこまで伸ばせるか。3年連続の頂の景色へー-。全日本インカレ、そしてまずは来月の関東秋季学生選手権(秋インカレ)での優勝を見据える。
集合写真
(記事 宮島真白、写真 早稲田大学ヨット部提供)
結果
▽470級
倉橋・松山/高田組 10-1-1-1-3-18-1-(26) 35pts 3位
飯田・金子組 9-(21)-12-4-1-2-2-9 39pt 4位
石川・田中丸組 1-2-9-(BFD)-6-26-21-17 82pts 7位
安永・藤倉/吉野組 7-12-24-(26)-17-8-18-30 86pts 15位
▽スナイプ級
服部・根本組 7-1-21-(35)-7-5-4-4 49pts 1位
白石・青柳組 4-21-8-12-(23)-7-1-2 55pts 4位
桔川・大野/鶴岡組 5-15-3-29-17-6-23-(BFD) 98pts 10位
大久保・河﨑組 (34)-29-22ー5-11-20-13-8 108pts 12位
コメント
スナイプ級スキッパー 大久保優輝(創理4=東京・早実)
――今大会を振り返って
完全に空回りしてしまいました。1レース目で大きく順位を叩いてしまい、その日のコンディションにうまく合わせることができませんでした。後悔の残る大会になりました。
――どのような意気込みで臨みましたか
優勝する意気込みで臨みました。優勝争いから大きく外れてしまい完全に実力不足です。
――個人、スナイプ級全体のそれぞれで事前に目標としていたことは
個人としては優勝を、チームとしては総合力で他大学に勝る成績を挙げることが目標でした。
――実際にはどうでしたか
個人としては大きく目標から逸れてしまい、改めてヨットレースの難しさを感じました。チームとしては同大の総合力に劣るかたちとなってしまいました。同大は普段風が不安定な琵琶湖で練習しており、トリッキーな海面のコース取りが優れています。各艇大負けしないコース選択をできるように意識的に練習し、2カ月後のインカレで勝ちきりたいと思います。
――1日目のコンディションについて
3レース叩いてしまい、難しいコンディションでした。もっとシンプルにレースをする必要がありました。
――印象に残っているレースはありますか
個人的に印象に残っているレースはありません(笑)。服部・根本ペアの最終レースは印象に残っています。着実に一つずつ順位を上げて優勝したのはさすがだなと思います。
――1年生たちの活躍については
1年生ながら活躍しているのはすごいなと思います。特に松山は建築学科という忙しい境遇の中、本当に頑張っているなと刺激をもらいます。お互いスポーツも学業も切磋琢磨していきたいです。
――今後への意気込みをお願いします
振り返ると今年は去年に比べてレーシングスピードに自信がなく、その影響でリスクの高いコース取り、集団と一緒に走らなければいけない場面で他のコースを選択してしまうことが多いです。まずは初心に戻り一つ一つ不安要素を潰し、改善していこうと思います。練習あるのみです。切り替えてインカレ総合優勝に向けて、気合いを入れてきます。
470級スキッパー 倉橋直暉(スポ4=福岡・中村学園三陽)
――今大会を振り返って
今大会は自分の未熟さに改めて気付かされました。最終日に一番痛感して、インカレまでに修正しなければならないと強く感じています。ただ、楽しくレースはできました。しっかりと振り返りをして全日本インカレに繋げたいと思います。
――事前に目標としていたことは
「優勝する」の一言です
――具体的には
自艇でいうと、優勝を目標にし、コミュニケーションを絶やさないことやスピードに集中することを念頭に置こうという話をしました。チーム的にいうと、インカレにつながる大会にすることです。ライバルの大学に対して勝っている点、劣っている点を明確にして今後の練習につなげることを考えていました。
――実際はいかがでしたか
優勝は達成できませんでしたが、今まで課題にしてきたボートスピードは改善できたと思います。(風が)吹いた中ではかなり手応えを感じることができました。
――印象に残っているレースは
印象に残っているのは最終レースです。スタートの時点でトップ争いをしていた艇から離れる必要もないのに離れ、レース中は位置すら把握できていなかったです。今振り返ると自分の未熟さを痛感しています。かなり空回りしていたと思います。
――2日目終了時点で1位でしたが、最終日をどのような気持ちで迎えましたか
最終日はとにかく楽しもうという気持ちで臨みました。前日の夜からその気持ちでしたが、あまり眠れず、寝ても最終レースの夢が出てきて、寝て起きて寝て起きてを5回ほど繰り返していました。全て同じような夢でしたが、今思うと相当緊張していたのかもしれません。ちなみに、夢の中では勝って喜んでました(笑)。
――1年生の活躍についてはいかがですか
今回1年生は2名でしたが、2名ともよく健闘してくれたと思います。一番私としてうれしかったのは、レースを楽しんでいたということです。2人とも暗くなる姿がなく、とにかく技術や考え方を吸収しようと必死に見えました。また、部員としてもよく動いてくれました。サポートがほぼいない中でも陰ながら動いてくれたため、選手全員落ち着いた状態でレースに臨むことができました。
――今後への意気込み
全日本インカレまであと2カ月という少ない期間です。この2カ月間は誰よりも練習する気持ちで過ごし、ベストな状態で11月3日を迎えたいと思います。
スナイプ級クルー 鶴岡由梨奈主将(社4=東京・立教女学院)
――今大会を振り返って
個人だけでなく、チームにとっても非常に学びの多いレースだったと思います。本大会は早稲田の全艇が大きく順位を崩したレースがありました。各自の課題が明確になる良い機会だったと思います。一方、結果としてはスナイプ級は早大6連覇を服部がつかみ取り、470も日大と遜色ない走りが見られたことから、チームとしては着実に力がついてきていると思います。また、下級生の活躍も目立ち、下級生の勢いが非常に頼もしく感じました。
――どのような意気込みで臨みましたか
主に2点を意識して大会に臨みました。1点目は、夏の練習の成果を評価すること。2点目は、全日本インカレにつながるレースをすることです。全日本個人選の次に、他水域(関東以外)と手合わせできるのは来たる決戦の全日本インカレになります。そのため、個人選ではあるものの団体戦を想定して戦い抜くことを意識していました。
――個人として、早大全体としてそれぞれ事前に目標としていたことは
個人としては優勝を目標に桔川(翔太朗、政経1=イギリス・ACSインターナショナルスクールヒリンドン)と練習をしてきました。早大全体としては、両クラス上位3艇の合計点で他大学に勝つことを目標にしていました。
――実際はどうでしたか
個人としては力不足でした。順位を大きく崩したり、英語(※1)をとってしまったりと課題が散見されるレースでした。まだまだ伸び代ばかりです。一方、桔川の良さが生きたレースもあったため、今後ペアとして精度を一層高めていきたいと思います。全体としては、両クラス3艇以上出場した学校が限られ、比較が難しい点があるのですが、470は日大、スナイプは同大がターゲットになると思います。総合としては、目標を達成できたものの、詰められる点はまだまだあるため、今後は一層クラス間の交流を盛んにし、仲間の経験から学ぶ機会を増やしたいと思います。
――レース前やレース後にチームではどのような話をしたか
意気込みの点とも重複してしまいますが、全日本個人選はあくまで通過点であり、全日本インカレにつながるレースをすることを発信していました。そのために、毎レース得た気づきを次のレースに生かし、レガッタを通して成長し続けることを意識的に伝えていました。
――普段レースをする葉山とは環境が違いましたたか
違った点とそうではなかった点があります。 まず、海面の特徴として葉山より波が立ちにくく、豊川の河口が近いことから潮が強くなる、風向によっては陸の影響を大きく受けるなどの特徴があります。また、今回は台風の影響で風も不安定で不確実性の高い環境でのレースとなりました。一方、葉山でも蒲郡でも不確実な海面での戦い方は大きく変わらないことから、今回の学びを琵琶湖のインカレに繋げていきたいと思います。
――チーム全体で良かった点と課題点は
良かった点としては、主に3点あります。1点目は、これまで470チームの課題としていたスピードが克服されてきていること。2点目は、崩したレースから学ぶ機会を得られたこと。3点目は、下級生の活躍が見られた点です。課題としては、コース選択の引き出しを増やすことが挙げられます。スピードが向上した分、次に勝負に不可欠な要素はいかに負けない選択をするかが重要になります。不確実なコンディションでの戦い方を習慣化することが今後の重点課題になります。
――今後への意気込みをお願いします
個人としては、インカレの最終レースまで貪欲に成長し続けたいと思います。早大全体としては、残りの2カ月、勝利につながる時間を積み重ね、このチームで全日本インカレ総合優勝をつかみ取りたいと思います。そのために、各自がそれぞれの持ち場でチームの為にベストを尽くし、総合力でどんな状況でも勝ち切るチームになりたいと思います。
※1 BFD(失格)など順位が下がる要因となること
スナイプ級スキッパー 服部陸太(スポ2=神奈川・鎌倉学園)
――今大会を振り返って
とても苦しい3日間でしたが、次につながる学びの多い大会となりました。大会を通して進化したと思えることは何よりもうれしく、結果がついてきてほっとしています。
――どのような意気込みで臨みましたか
自分の持っているポテンシャルを最大限発揮して、悔いのない大会にしたいという気持ちで臨みました。また、チームの希望となるためにやれることをしたいと思いました。
――事前に目標としていたことは
圧倒的勝利です。
――実際はどうでしたか
なかなか首位に立てず苦戦してしまいました。特に前半戦は調子が狂ってしまったかのように絶望的な順位を連続してとってしまいました。結果優勝はしたものの近年稀に見る接戦で、まだまだ未熟者だと思い知らされました。
――特に印象に残っているレースは
第5レースです。理由は、カットレース(※2)を作ってしまった状態で臨んだ第4レースで大きく順位を落とし、もう後がない状況に陥っていました。しかし、監督から何が悪かったのか的確なフィードバックをいただき、それを完璧に表現できたのが第5レースだったからです。
――ずばり勝因は
勝ちへの貪欲さだと思います。
――クルーである根本選手とのコミュニケーションについては
お互いに目指しているものは同じでとてもコミュニケーションが取りやすかったです。『相互研鑽』とはまさにこのことだと実感しました。
――今後への意気込みをお願いします
個人戦は連覇に挑戦します。今年よりももっと厳しい戦いになると思いますが、伝説になりたいです。団体戦では、チームメイトからたくさんのことを吸収し、僕が持っているものを全て還元して完全優勝を目指します。
※2 最も順位が悪かった1レース分を除外(カット)して、7レースの合計ポイントを対象にして順位を算出できるというシステム