今年で82回目となる早慶定期戦(早慶戦)。早大は5月の関東春季学生選手権(春インカレ)で宿敵・慶大に王座を明け渡しており、「今回は絶対に勝つ」(松尾華、スポ4=広島修道大鈴峯女)と臨んだ今大会。470級、スナイプ級それぞれ4艇ずつが出場し、両校で計8艇という、海を広々と使ったレースとなった。1レース目から両クラスで1、2、3位フィニッシュを飾ると、その後も圧倒的な強さを見せつけた。470級、スナイプ級どちらも優勝し、100ポイント以上の差をつけて総合優勝をつかんだ。
太陽が照りつける中、初日には4レースが行われた。1レース目から石川和歩(スポ3=香川・高松商業)・吉野満衣(政経3=アメリカ・ユナイテッドワールドカレッジ)組、倉橋直暉(スポ4=福岡・中村学園三陽)・高田澪(社2=カナダ・エルジンパークセカンダリースクール)組、飯田澪(スポ2=山口・光)・金子俊輔(商4=埼玉・早大本庄)組が順にゴールし、表彰台を独占。残る安永昂生(スポ1=上智福岡)・田中丸武(商3=早稲田佐賀)組も3レース目には2位につけ、それぞれが十二分に力を示した。迎えた2日目、飯田・金子組が他を寄せつけない強さを見せ、4レース中3レースで1位を奪う。470リーダー・倉橋と高田/松山大祐(創理1=神奈川・逗子開成)のペアも2日間の計8レース全てで3位以内に入るという抜群の安定感。117―171と、54ポイント差で大勝を収めた。
マークを見つめる安永・田中丸組
対するスナイプ級では、スナイプリーダーである大久保優輝(創理4=東京・早実)の「早稲田(内の)4艇とも同じような実力でレベルが上がってきている」という言葉通り、全艇がバランス良く好成績を残した。特にその実力が見事に発揮されたのが6レース目。レース前半は慶大に先行を許すも、コミュニケーションを取って逆転し、最終的には1位から4位をエンジで埋めた。鶴岡由梨奈主将(社4=東京・立教女学院)は本レースを印象に残っているレースとして挙げ、「まさにヨットレースの醍醐味」と振り返った。スナイプ級でも計8レースで118-170と、52ポイント差で優勝を果たした。
セールをセットする大久保・河﨑元紀(スポ3=神奈川・鎌倉学園)組
全日本学生選手権(全日本インカレ)連覇を目標として掲げる今年度の早大ヨット部。春インカレでは惜しくも慶大に敗れたが、この早慶戦優勝で、そのリベンジは成し遂げた。主将を務めている鶴岡が「多くの方のご協力のもとつかみ取れた優勝」と謝意を表したように、今大会では多くの関係者がチームのために動いている姿が目立った。今年で連覇数が5となった早慶戦は、来年度以降も後輩たちに引き継がれていくだろう。これからセーラーたちが見据えるのは関東学生秋季選手権(秋インカレ)、そして全日本インカレでの勝利だ。まもなく厳しい合宿が始まるが、チーム一丸となって乗り越える。夏めいてきた海とともに、その先の輝かしいゴールへ。
4年生男子4人の集合写真(インタビューを下に掲載)
(記事 宮島真白、写真 栗田優大、石崎太一、丸山勝央)
結果
▽470級
倉橋/高田・松山組 2-1-1-2-3-2-2-2 15pts 1位
石川/吉野・藤倉組 1-2-7-3-6-3-1-3 26pts 3位
飯田/金子組 3-3-4-4-1-1-7-1 24pts 2位
安永・青山・藤村/田中丸組 8-8-2-5-5-8-8-8 52pts 8位
早大 117pts 1位
▽スナイプ級
大久保/河﨑組 8-2-1-1-7-1-4-3 27pts 1位
服部/大野組 2-3-2-2-6-2-6-7 30pts 3位
白石/青柳・鶴岡組 3-4-8-5-2-3-5-2 32pts 4位
桔川/根本組 1-5-3-4-1-4-7-4 29pts 2位
早大 118pts 1位
▽総合
早大 235pts 1位
コメント
スナイプ級スキッパー 大久保優輝(創理4=東京・早実)、470級クルー 金子俊輔(商4=埼玉・早大本庄)、470級スキッパー 倉橋直暉(スポ4=福岡・中村学園三陽)、スナイプ級クルー 根本優樹(社4=東京・早大学院)
――最後の早慶戦ですが、1日目を終えての率直な感想は
倉橋比較的いい日だったと思います。結構余裕をもって、総合点でも早稲田が勝っているので春イン(カレ)のリベンジは今日でできました。ただまだ満足せずに明日も引き続き油断せずに勝とうかなと思います。
根本 両クラスともそこそこ良い結果が出ているのはポジティブに捉えて良いと思うのですが、両クラスともミスは結構出ているなと思います。明日はそのようなところを潰してもっと点差をつけて勝てるようにしていきたいなと思います。
大久保 早稲田(内の)4艇とも同じような実力でレベルが上がってきています。遜色(そんしょく)ない実力で、早稲田内でも争えるようになっているというのがすごく良いかなと思っています。早慶戦では勝ち越ししていますが、やはり春イン(カレ)で慶應に負けてしまったり、大型のフリートになってくると、結果も変わってきたりもするので、大きいフリート(※1)でも慶應に勝てるように秋にむけて頑張っていこうと思います。
金子 今日のコンディションは風が弱い時もあれば強い時もありました。体力的にも精神的にも辛い部分はあったのですが、チームとして1日目は良い成績を出せたのが良かったと思います。ただ自分の体力的な部分などで、最後まで安定したパフォーマンスを出せなかったというのが反省としてあるので、明日はしっかりリカバリーして自分の実力を出せるように頑張っていきたいと思います。
※1 船の艇数
――どのような意気込みで臨んだか
倉橋 人生最後の早慶戦だったので、悔いのないように頑張ろうと思いました。
根本 個人的にはレギュラーとして初めて出る早慶戦だったのでまず楽しもうということと、先程もあったように春インカレの悔しさを晴らそう、全員で総合優勝しようというふうに思っていました。
大久保 早慶戦は小学校の時からの憧れの大会で、やっと自分もこのような大会に出られるといううれしい気持ちがありました。最後の早慶戦なので勝って終わりたいなという意気込みで挑みました。
金子 早慶戦というと、最近だとラクロスだとか、世間のイメージだと野球などのイメージが強いと思います。まだまだマイナーなのですがヨットも注目してほしいなという気持ちもありました。
――1日目の海のコンディションは
金子 コンディションとしては、最初の1、2レースとかは風もあまりなく、波もそこまで高くなかったので走りやすいコンディションでした。しかし風とともに波も高くなってきて、クルーとしてバランスの取り方が難しかったなというのが感想としてあります。
大久保 1、2レース目は、風が弱くて波も少しだけある状況で自分は思うようにスピードが出せずに終わってしまって、難しいコンディションでした。3、4レース目はある程度安定した風が吹いて、いいスピードが出せました。このように1日の中でスピードが悪いときもあると思うのですが、すぐに改善できるように今後やっていきたいです。
倉橋 1レース目と2レース目は思ったよりも風がなくて、波も思ったよりなかったので、自分のイメージと少し違ったようなレースになりました。ただ微風でもセッティングを合わせて、スピードが出せたので良かったです。3レース目は昨日イメージしていたくらいに風が上がってきました。波は少しなかったのですが、風が強いときはスピードでがんがん前に行こうと昨日からずっと思っていたので、その考え通りにレースをしようと思っていました。スタートからフィニッシュまで、そこは思考を変えずにスピードに集中してフィニッシュまで到達できたなと思います。
根本 比較的安定していて、(レースが)4本できたので、僕としてもレースするにはいいコンディションだったなと思います。
――明日、早慶戦2日目への意気込みは
金子 みんなが言っているように、人生の中でも早慶戦に出場できるのは、明日が最後の1日だと思うので、慶應に勝つということはもちろんのことですが、ヨットをしっかり楽しみたいなと思います。
大久保 今日は慶應に勝ち越している状況なのですが、全艇たくさんミスもしているし課題もいっぱいあります。今日のミーティングで反省して明日の早慶戦最終日につなげられるように頑張ります。
根本 同じく、1日で改善できることをやって、明日は大差をつけて勝てるようにやっていきたいと思います。
倉橋 最後なので、明日楽しむために今日しっかり反省して、チーム全員でいいレースができたらなと思います。
――早慶戦が終わった後、夏の練習ではどのような意識をしていきますか
金子 先週とその前の週というのが、80艇くらい出るような(大規模な)レースをやってきたのですが、その中で早稲田として、特に470級はスタートが課題として挙がっています。スタートでいかに抜け出せるかというところで順位を安定させられると思うので、そこを重点的にやっていきたいです。
大久保 全日本インカレ(全日本学生選手権)優勝を目標に掲げているのですが、(今年は)琵琶湖という不安定な地で行われるので、圧倒的に実力のあるチームをつくらないといけないなと考えています。まだまだ学生レベルで争っているので、夏休みには社会人などと練習して、大学の中では全艇圧倒的なスピードをもつことです。あとは、大きいフリートになると自分の実力を発揮できない選手も出てくるので、なるべく多くの周りの大学を呼んで、夏合宿には合同練習を開催して、圧倒的に強いチームをつくるように頑張っていきたいと思います。
根本 夏休み中にすごくハードな日程の練習が予定されているので、熱中症やコロナなどの体調面を含めて、毎日練習できるように気をつけながら取り組んでいきたいと思います。
倉橋 今の早稲田は動作やセオリー通りのレースといった基本的なところが足りていません。そこを理解していない選手がいたり、動作の質も低かったりするので、今後そういった確実なところを練習していきます。(全日本)インカレまであと4ヶ月と、意外と練習日数が少ないので一日一日を大切にして質を高めていきたいなと思います。
スナイプ級スキッパー 大久保優輝(創理4=東京・早実)
――1日目は徐々に順位を上げていきましたが、要因は
1レース目が8位で終わってしまいました。その1番の大きな原因がスピードが悪かったという部分です。2レース目、3レース目、4レース目とスピードを改善できたので、3レース目、4レース目はスピードに優位性があって、どんどん前に出ていける展開でした。しかし、4レース目は1位でフィニッシュしたのですが、個人的に少しミスをしてしまいました。自分の中では早稲田が1、2、3位フィニッシュだと思っていたのですが、フィニッシュのラインが傾いていて、1、2、3位になれませんでした。自分が考慮できていればなれたので、(順位としては)1位だったのですが、個人的にはミスをしてしまいました。
――その点への今後の意識は
団体戦なので、早稲田で1、2、3位でフィニッシュする必要がありました。(自分が)慶應の艇をカバーすればできたのですが、そこをミスしてしまいました。明日は全艇で前でフィニッシュできるようにいろいろ考えていこうと思います。
スナイプ級クルー 鶴岡由梨奈主将(社4=東京・立教女学院)
――最後の早慶戦を終えての率直な気持ち
春の関東インカレで敗れた慶應に対し、完全優勝の形で終えられたことがうれしいです。また、今年のチームビジョンである『全員で喜びを分かち合うチーム』に1歩近づけたように感じました。選手だけでなく、サポートやOBOG、スタッフやご父兄も含め、多くの方の協力のもとつかみ取れた優勝だと思います。特に、下級生は炎天下の中でも部員としての自覚を持って大会運営やサポートをしてくれて感謝の気持ちでいっぱいです。
――どのような意気込みで臨んだか
完全優勝する意気込みで臨みました。また、全日本インカレまでの数少ない団体戦経験になるので、各部員が自分の置かれた場所で最善の準備を行い、ベストを尽くすことでインカレにつながるレガッタになるように意識しました。
――特に印象に残っているレースは
2日目のスナイプが1-2-3-4位をとった第6レースですね。1上まで(前半のレース展開)では後手に回り、慶應に先行されていた中で、早稲田内でコミュニケーションを取り合って全艇順位を上げて逆転したことです。まさに団体戦のヨットレースの醍醐味であるチームで知見を結集し、勝利につながる選択を積み重ねられたと思います。
――来年度以降の早慶戦で後輩たちに期待すること
後輩のみんなはポテンシャルの塊のような存在なので、来年の早慶戦が楽しみですね。今大会でも海上でのコミュニケーションはトップダウンではなく、学年を問わずみんなで戦略を話し合っていたので、今回の学びを生かし、後輩たちはもっと良いレースをしてくれると期待してます。また、今大会では1年生も積極的に起用したので、レース経験を積んだ選手が多く残るのも、来年以降のチームに残せた財産の一つだと思います。1年生は思うようなレース展開ができず、悔しい思いをした部員もいるので、この悔しさをバネにより強くなって来年戦ってほしいと思います。最後に、追われる身として現状に満足せずに一層強いチームをつくっていってほしいと思います。
――今後の意気込み
今大会は結果としては大きな点差をつけて勝ち切ることができましたが、内容としてはまだまだ課題の山積みでした。課題は伸びしろと捉えて、チーム一丸となって全日本インカレ優勝に向けて精進したいと思います。また、頼もしい1年生も入部してくれたので、新しい力も総動員して、夏の長期合宿でチームの総合力を高めていきたいと思います。
スナイプ級クルー 根本優樹(社4=東京・早大学院)
――1レース目で1位を取りましたが、振り返って
チームとして戦っているので、自分が1位を取れたことというよりチームとして勝ちレースができたことが一番よかったです。その中でも、レグごとに順位を上げていけたことが結果的にいい順位につながったのかなと思います。
――1年生の桔川翔太郎(政経1=イギリス・ACSインターナショナルスクールヒリンドン)と組んでいましたが、いかがですか
彼は1年生なのですが、1年生らしくなく堂々としていて頼りがいがあります。自分自身も楽しんで1日のレースができました。
松尾華(スポ4=広島修道大鈴峯女)
――最後の早慶戦を終えての率直な気持ちは
素直に勝ててうれしかったです。1つずつ最後のイベントが終わっていくので、寂しい気持ちもありました。
――どのような意気込みでチーム全体は臨んでいたのか
春インカレで慶應に負けてしまっていたので、今回は絶対に勝つぞという気持ちで臨みました。
――後輩たちのサポートはいかがでしたか
自分からできることを探して率先してやってくれていて、とても成長を感じました。団体戦を戦う上でサポートの力もとても大切になってくると思うので全日本インカレに向けて、さらにサポートも上を目指していきたいと思います。
――来年度以降の早慶戦で後輩たちに期待することは
来年以降も早慶戦連覇を継続してくれることを期待しています。来年はOGとして、ヨット部を応援します!
――今後の意気込み
11月の全日本インカレ総合優勝のために、残された期間を全力で部活に取り組んでいきたいです。最後まで後悔のないように自分がチームのためにできることをやっていきます。