春インカレ 慶大に敗れ、優勝を逃す 

ヨット

 先週に引き続き、関東学生ヨット春季選手権大会(春インカレ)が開催された。鶴岡由梨奈主将(社4=東京・立教女学院)が「本大会はチームにとっても非常に重要な大会」と語ったように、新体制となったばかりである春シーズンにおいて今大会の意義は大きい。ここで総合優勝をすることは、チーム全体にとっても一つの目標であった。しかし、470級、スナイプ級両クラスで慶大に首位を譲る結果となり、総合2位で今大会の幕を閉じた。

 470級では、第1レースから倉橋(直暉、スポ4=福岡・中村学園三陽)・藤倉(廉、法3=早稲田佐賀)組が「チームを勢いづけられた」(倉橋)という1位フィニッシュ。石川(和歩、スポ3=香川・高松商業)・田中丸(武、商3=早稲田佐賀)組も抜群の安定感を見せ、個人成績では首位を飾った。それでも石川は「全く満足していません」と、驕(おご)った様子はつゆほども見せない。今後は課題とするスタートでの成長を固く決意した。470級2位、そして総合2位という結果を受けて、今年度の470リーダーを務める倉橋は「今大会で精神的に大きくダメージを受けたが、めげても仕方ないのでチームのためにまた努力する」と再起を誓った。

慶大と競る倉橋・藤倉組(左)と石川・田中丸組(中央)

  対するスナイプ級でも第1レースは大久保(優輝、創理4=東京・早実)・河﨑(元紀、スポ3=神奈川・鎌倉学園)組がトップを奪う。「成績だけでなく、内容が良いレース」(大久保)で幸先のいい滑り出しとなった。しかし、最終レースでまさかのケース(※1)を引き起こす。25点を加算し、悔いの残る結果に。大久保は「基礎練習の詰めの甘さと日頃のケースに対するシビアさが足りていなかったことが原因」と現状を見つめなおした。しかし同時に、早大の走りは通用するという確かな自信もうかがわせた。

マークを目指す石川・田中丸組

 「ライバルとして意識していた」(鶴岡)慶大に不本意なかたちで敗戦を喫し、選手たちはこれ以上ない悔しさと今後への気概をあらわにした。慶大へのリベンジは7月に行われる早慶定期戦に託された。そして、今回の敗戦をばねに選手たちは再び強くなっていく。「残りの全ての大会で優勝します」と、スナイプリーダーである大久保は奮い立つ。チームが目標として掲げる『全日本インカレ総合優勝』。主将である鶴岡は、今回のレース後に「10回全日本インカレをやっても10回勝ち切れるチームを仲間とつくり上げていきます」と言葉を残した。勝利へ。早大の挑戦はここから続いていく。

ラバーボートからカメラに笑顔を向けるサポートメンバー

(記事 宮島真白、写真 澤崎円佳、水島梨花、宮島真白)

※1 レース中の事件、ルール違反などによって抗議の対象になる出来事

結果

▽470級
倉橋・藤倉組 70pts
石川・田中丸組 21pts
飯田・金子組 56pts
合計 147pts 2位
▽スナイプ級
大久保・川﨑組 58pts
服部・根本組 35pts
白石・鶴岡/青柳組 82pts
合計 175pts 2位

▽総合
早稲田大学 322pts 2位

コメント

鶴岡由梨奈主将(社4=東京・立教女学院)

――率直な感想は

悔しいのはもちろんですが、それ以上に自分たちでミスを連発して順位を大きく下げてしまったことから、不甲斐ないです。変化し続ける自然環境を相手に戦うヨットレースの難しさや面白さを痛感する大会となりました。結果を嘆いても変えられることはできないため、きちんと結果を受け止めていきたいと思います。その上で、課題は伸び代と捉え、チームで成長するチャンスとして次につなげていきます。

――先週に引き続き2週連続の大会となりましたが、今回の大会にはどのような意気込みで臨みましたか

仲間と総合優勝をつかみ取る意気込みで臨みました。本大会はチームにとっても非常に重要な大会であることから、主に2つのことを考えていました。1つ目は、代交代後、初の大きな団体戦(インカレ)であり、冬からの成果を測るターゲットとなる試合として、きちんと結果を残すこと。2つ目は、全日本インカレにつながるものにする点です。11月の全日本インカレまで団体戦は春・秋の関東インカレしか経験できず、数少ない団体戦の場であることから、選手だけでなくサポートも含め、それぞれの持ち場でベストを尽くし、全日本に向けて実りあるものにすることを意識して臨みました。

――日大が大会を欠場したことについては

先月の(春季)八大学戦で負けた身としては、雪辱を果たす絶好の機会としてチームの士気も高まっていたため、率直に残念な気持ちが大きかったです。次に手合わせさせていただけるのが、全日本インカレ直前の10月の関東インカレとなるので、それまでに競技面だけでなく、総合的なチーム力も強化し、万全の状態でインカレに臨みたいと思います。また、コロナに関しては対策をしていても不可抗力の面もあることから、明日は我が身であると危機感を持っています。今後も、部員一人一人が自覚を持って感染症対策を徹底し、常にチャンスの最前線にいれるようにしたいと思います。

――慶大に対しては事前にどのような意識をしていましたか

私たちが1年生(時)の西宮インカレで優勝された日本有数の強豪校であり、早慶戦では毎年熾烈(しれつ)な争いをしていることから、ライバルとして意識しておりました。7月の早慶戦では、しっかりと両クラス実力を発揮できるよう、練習量と質を見直し、部員一丸となって勝利をつかみ取りたいと思います。

――大会を終えてチームではどのような話がありましたか

日々の活動におけるシビアさが足りていなかったと思います。練習でできないことがレースでできないのは当然ですが、それ以上にレースは日々のチームの現状を示すものであると考えています。今回、早稲田が自ら不必要なミスをしてレースを崩してしまうことが散見したことから、チーム全体の経験知として仲間の自ら学び、同じミスを繰り返さないようにしていきます。また、結果を受け止め、これまでのプロセスを振り返り、原因を分析することで、負けから学んでいきたいと思います。

――今後への意気込み

10回全日本インカレをやっても10回勝ち切れるチームを仲間とつくり上げていきます。ヨットは変化し続ける自然環境を相手にプレッシャーの中でも冷静かつ柔軟に最適解を模索し続けるスポーツなので、いかに隙のないチームをつくり、どんな状況下でも勝利につながる選択をし続けられるチームこそが総合優勝に近づくと考えています。(今年の全日本インカレが行われる)琵琶湖は不確実性が高く、コンディションも非常に難しいと言われています。その上、早稲田大学として琵琶湖インカレでの優勝は未だ手にしたことがないため、挑戦者として琵琶湖での初優勝をチーム一丸となって取りに行く所存です。その為に、早稲田内で留まることなく、これまで以上に自ら外の基準を取り入れ、活動基準を高めることで、残りの6ヶ月間、勝てるチームを1からつくっていきます。

大久保優輝(創理4=東京・早実)

――率直な感想は

不甲斐ないです。この悔しさを忘れず、次は絶対に優勝します。

――今大会にはどのような意気込みで臨みましたか

日大がコロナウイルスの影響で欠場だったので、どちらのクラスも共に優勝し、総合優勝を目標に臨みました。

――1位となった第1レースを振り返って

出だしとしてはいい形になりました。1レース目に限っては成績だけでなく、内容が良いレースでした。上マーク(※2)までは艇団に対してリスクの低いコースを引き、5位で回航し、ダウンウインド(※3)のコース展開と2上(※4)でリフト(※5)をつなげたことで、確実に順位を上げることができました。レグ(※6)ごとにコース形状、雲、振れ幅、潮などの情報を基に、コースプランを判断する能力がレースを安定させる鍵になります。今後の練習で一つ一つの判断を丁寧に振り返り、さらに高めていこうと思います。

――最終レースを振り返って

2上(※4)でケース(※1)を2度起こしペナルティで4回転まわり、20艇弱に抜かれてしまいました。あり得ないケースを起こし最悪な状況を引き起こしました。ヨットレースの基本が抜けていたことでこのようなことになってしまったと深く反省しています。基礎練習の詰めの甘さと日頃のケースに対するシビアさが足りていなかったことが原因です。もう一度基礎から詰め直して誰にも負けない強い選手になります。ただ、普段通りの走りを出せれば、安定した風域では早稲田のスナイプチームには他大学よりスピード、コース展開については優位性があることがこのレースでわかりました。不安定な状況化で力を出し切れるように、今回の大会を重く受け止めて改善していきます。

――今年度スナイプリーダーを務めていますが、1年間の抱負は

レギュラーのみならず新入生までチーム全員が全力で取り組める環境をつくっていきたいです。その先に総合優勝3連覇に貢献できるスナイプチームがあると思います。今年のスナイプチームのスキッパーはほとんどがユース時代に江の島で共に練習していた付き合いがあります。下級生からの発言も多く、チーム内の雰囲気はとても良く仲が良いです。しかし、その分どれだけお互いのミスに指摘し、厳しく対応し合えるかが重要なポイントだと思います。実際、春イン(カレ)でスナイプチームはペナルティーターン合計10回転+リコールという実力以前のレースをしてしまいました。春インで上がったチーム運営の課題、練習方法を改善し、再び圧倒的に強いスナイプチームをつくれるように精進していきます。

――今後の目標は

引退までに主要大会は関東個人戦、全日本個人戦、関東秋インカレ団体戦、全日本インカレ団体戦の残り4大会です。残りの全ての大会で優勝します。

 
※2 レースにおける回航地点のうち、風上にある第1マーク
※3 風下に向かうこと
※4 レースにおける回航地点のうち、風上にある第2マーク
※5 風向きの変化で、針路が風上に向かうような振れのこと
※6 コースにおけるマークとマークの間

倉橋直暉(スポ4=福岡・中村学園三陽)

――率直な感想は

自分とチームの未熟さ、現状を痛感した大会でした。

――今大会への意気込みはどのようなものでしたか

昨年度から競技力が大きく低下した事実を覆し、総合優勝に導くこと。そして夏から秋の活動につなげることです。

――第1レースで1位をとった感想は

シンプルにうれしかったです。チームを勢いづけられました。

――2日目はノーレースが続くなど待つ時間も長かったですが、気持ちの面ではいかがでしたか

イレギュラーなレースだが、「やるべきことは変わらない」と気持ちがブレないようにしました。

――470リーダーとしての今年の抱負は

日本一のチームに導くこと。そのためにできる限りの時間と労力をチームのために捧げます。

――今後の目標

全日本インカレ総合優勝に向けて、まずは初心に帰り、1から自分とチームを見つめ直します。そしてそこから課題を明確にして活動します。今大会で精神的に大きくダメージを受けましたが、めげても仕方ないのでチームのためにまた努力します。

石川和歩(スポ3=香川・高松商業)

――率直な感想は

正直、チームとして総合優勝を逃したことは悔しいです。個人成績だけ見ても470の中ではトップですが、どのレースも詰めれるところはたくさんあったし全く満足していません。

――今回の大会にはどのような意気込みで臨みましたか

レースに出るメンバーとしてプレッシャーはありましたが、このレガッタを通して全く緊張はしませんでした。私たちのペアは他のペアと比べてもボートスピードは一番自信がありましたし、それを生かしたレース展開ができれば上位は確実に取れると思ってました。

――1レース目から安定して好成績を残していましたが、いかがですか

好成績といっても最初にも述べましたが、どのレースもあと2、3点あげるチャンスがありました。そういった点もペア間では今回の反省点です。

――クルーである田中丸選手とのコンビネーションは

今のペアともずっと乗っていたわけでは無いので、まだまだコンビネーションがうまくいかないことがあります。今回のレースの2日前にペアとしての役割分担を確立させたばかりで、レース中も役割を果たすことができなかったことがお互いあるのでこれから練習していきます。

――今後の目標

今後の課題としてはスタートから上マーク(※2)までの安定性です。私自身スタートが弱点でもあるので、まずはそれを克服し確率の高いスタートができるようにしたいです。