時折雨が降り、ぐずついた天気となった5月中旬。神奈川・葉山沖で関東個人選手権が開催された。全国への切符をかけた今大会。時にはAP旗(※1)が上がり、レースが中断する場面もあったものの、早大470チームは安定した走りを披露。出場した4艇全てが予選突破を果たし、9月に開催される全日本個人選手権(全日本個選)への出場権を手にした。
5月8、9日に開催予定であった関東学生春季選手権が中止となり、新体制となってからは初めて学連主催のレースに臨んだ早大。1日目はやや風が弱いコンディションの中でレースが行われた。この日は、今年度から新たにペアを組む石川和歩(スポ2=香川・高松商)・上園田明真海(スポ4=大分・別府翔青)/藤倉廉(法2=早稲田佐賀)組が3レースを終え、4位と快走を見せる。さらには西村宗至朗(社4=大阪・清風)・新井健伸主将(商4=東京・筑波大付)/吉野満衣(政経2=ユナイテッドワールドカレッジアメリカ)組が12位、小泉凱皇(スポ4=山口・光)・金子俊輔(商3=埼玉・早大本庄)/田中丸武(商2=早稲田佐賀)は13位に入り、石川・上園田/藤倉組の後に続くかたちとなった。一方、倉橋直暉(スポ3=福岡・中村学園三陽)・松本健汰(政経4=東京・早大学院)組は第2レースでUFD(※2)となり、出場権獲得圏外の24位で1日目を折り返した。
1日目、4位に入った石川・上園田/藤倉組
2日目は「今まで経験したことのない西の風が吹いた」(石川)と語るように、普段とは異なる状況でのレースを強いられた。だが、経験豊富な早大470チームは成績を大きく落とすことなく、安定した順位を維持。石川・上園田/藤倉組、小泉・金子/田中丸組、西村・新井/吉野組の3艇が10位以内に食い込んだ。また、24位でスタートした倉橋・松本組も追い上げを見せ、最終的には4位に浮上。この結果、全艇が18位以内に入り、全日本個選への出場を決めることとなった。
2日目に追い上げを見せた倉橋・松本組
早大470チームの今後を占う試金石となった今大会。2日間を通して難しいコンディションの中でのレースとなったが、全艇が関東を通過するなどチームは上々のスタートを切った。さらには、昨年の全日本学生選手権(全日本インカレ)に出場したクルーを擁する3艇に加え、この大会で活躍を見せた石川・上園田/藤倉組の存在は、チーム内での競争意識を高める起爆剤となるに違いない。関東を突破し、目指すは田中美紗樹(令3卒=大阪・関大第一)・新井組以来の全日本個選470級制覇。そして、2016年以来となる全日本インカレ連覇へ。早大ヨット部の視界は良好だ。
(記事、写真 足立優大)
※1 スタートが延期となる際に掲揚される旗
※2 規則30.4(Black Flag Rule)に対する違反のこと。黒色旗が掲揚されている場合、スタート直前の1分間にスタートラインよりも前に出てしまうと、そのレースは失格となる。
結果
▽470級
倉橋・松本組 17点 4位
石川・上園田/藤倉組 35点 8位
小泉・金子/田中丸組 37点 9位
西村・新井/吉野組 43点 10位
470級スキッパー石川和歩(スポ2=香川・高松商)
――レースを振り返っていかがですか
昨年はいろいろな大会に出させていただいたのですが、種目や練習環境が変わったことで、なかなか成績がついてこなかった部分がありました。ただ、その状況にも慣れた中で、この大会では上位に絡むレースができて、安定した順位でまとめられたことはよかったかなと思います。まだ結果に納得はしていないのですが、学べたことは多くあったので、いい収穫を得ることができた大会となりました。
――今大会では全体的に安定した順位を保っているという印象を受けたのですが、その要因はどこにあると感じていますか
今年に入ってから自分はスタートを課題としていて、今年中にはその成功率を100パーセントまで上げたいと考えています。その中で今大会はスタートの成功率を上げられたことが、いい成績につながったという感じです。
――2日間を通して、海面や風のコンディションといった面では普段の練習と比べていかがでしたか
冬の期間は八景島で練習をしていて、今年の3月の終わりから葉山に拠点を変えて練習を行っていたのですが、中風や強風でのレースが続いていたので、風のないレースというのは久しぶりでした。また、2日間とも予報と異なったコンディションとなり、波がなく風もアップダウンが激しい印象でした。特に2日目に関しては今まで経験したことのない西の風が吹いたので、これまで葉山で得た地形の特徴や情報が使えず、難しいレースとなりました。
――上園田選手とのペアでしたが、感触はいかがでしたか
この大会では上園田選手と全てのレースでペアを組んでいたのですが、(一緒に)乗り始めて2週間ほどしか経ってなかったので、コミュニケーションという面では上手くいかない部分もありました。しかし、互いに自分の役割ややるべきことは分かっていたので、まずはそれを果たすという面では大会を通して良くできていたと思います。
――この2日間の出来に点数を付けるなら何点くらいでしょうか
欲を言えば優勝というのが選手として一番うれしいことで、それができたら100点をあげてもいいと思うのですが、まずはそこに届かなかったというのは反省の1つとしてあります。ただ、先程も言ったように課題であったスタートが少しずつできあがってきているので、全体的に言うと40点くらいですかね。点数を付けるのは難しいのですが、そこまでいい点数を自分にはあげたくないなという気持ちがあります
――今後の意気込みをお願いします
チームとしてはやはり日本一というのを目標にしているので、まずはそれに貢献することです。加えて、入学した時から決めているのですが、自分の中で個人、団体で1番表彰台の高いところに登ることが目標としてあるので、そのためには焦らずに一つ一つ課題に取り組むことが大事だと考えています。また、その中でボートスピードや細かく風を読む力を養い、頭で考えながらどの大会でも意味のあるレースができるようにしていきたいです。