関東春季学生選手権に、総合3連覇を目指す早大からは470級、スナイプ級にそれぞれ3艇ずつが出場。スターティングメンバー12人のうち6人が2年生、1人が1年生というフレッシュな陣容で挑んだ。全6レース中5レース目が終了した時点で慶大と総合得点で並ぶという熱い戦いを繰り広げ、惜しくも総合優勝こそ逃したもののスナイプ級では6年ぶりのクラス優勝。470級でも2位に入り、層の厚さを見せつけた。
初日は風を待ち、12時前にようやくレースがスタートした。第1レース、470級の3艇はそろって一桁順位でゴールしたが、ライバルの慶大も好スタートを切る。2校が同点で首位に立ち、激戦の予感漂う滑り出しになった。一方スナイプ級は「スナイプ級のスキッパー全員がレギュラーとして出場するのが初めてだったので、緊張していた」(尾道佳諭・スポ2=山口・光)といい、スタートで大幅に出遅れてしまう。3艇とも後半追い上げを見せたが、63点でまさかの7位スタートに。しかし、続く第2レースではスナイプ級が挽回の走りを見せる。尾道・高橋康太(商4=埼玉・早大本庄)組が会心のレースを見せ1着でゴールすると、蜂須賀晋之介(スポ2=茨城・霞ヶ浦)・海老塚啓太(政経3=神奈川・鎌倉学園)組が2着、谷川隆治(商3=千葉・稲毛)・原潤太郎(商4=埼玉・早大本庄)組が5着に入り、失敗を引きずらない強さを見せつけた。470級の第2レースは倉橋直暉(スポ1=福岡・中村学園三陽)・吉村大(人4=埼玉・県浦和)組が2着に入る健闘を見せたが、3艇目が28位でのゴールに。第3レースでは田中美紗樹(スポ4=大阪・関大第一)・新井健伸(商2=東京・筑波大付)組が本領を発揮し1着でゴールするが、3艇とも安定して上位を取り続ける慶大にじわじわと水をあけられてしまう。スナイプ級は第4レースでワンツーフィニッシュを果たした日大に逆転されたものの、難しい微風のコンディションで崩れた慶大を逆転し、初日は470級、スナイプ級ともに2位。総合でも慶大と11点差の2位、さらに3位の日大ともわずか10点差という接戦で、勝負の行方は2日目に持ち越された。
470級をけん引した田中・新井組
2日目の朝は、熱戦を後押しするかのように良い風が吹いた。第5レースではスナイプ級の3艇が3、4、5着でフィニッシュしクラストップに立つ。470級では田中・新井組が後半で慶大を1艇かわす意地の走り。前日やや崩れる場面があった西村宗至朗(社2=大阪・清風)・松本健汰(政経2=東京・早大学院)組も10着でまとめ、わずかに慶大との点差を詰める。すると最終レースを残し、総合得点は慶大と同点に。選手たちはそのことを知らなかったそうだが、最後まで目の離せない展開になった。「最終レースだからといって気負わずに取り組むことができた」(田中)という第6レースだったが、田中・新井組は最終マークを回るところで動作ミスがあり、慶大の2艇にかわされてしまう。470級の3艇は3着、7着、14着でフィニッシュするまずまずの走りだったが、正念場でワンツーフィニッシュを見せた慶大に屈した。逆転優勝の望みは470級より遅れてスタートするスナイプ級に託され、やや遅れていた慶大の3艇目の出来が勝負を占う状況に。だがこれが大きく崩れることはなくフィニッシュし、熱戦の軍配はわずか8点差で慶大に上がった。
スナイプ級で個人成績トップだった尾道・高橋組
総合3連覇こそ逃したが、スナイプ級では久々の優勝を果たし、田中・新井組、尾道・高橋組は個人成績でそれぞれクラストップに立った。団体戦初出場の選手が多くいた中でのこの結果は、早大の層の厚さを示したものといえるだろう。また、実戦経験の浅かった下級生が大舞台で上々の走りを見せたうえ、おのおのが課題を洗い出せたことは順位以上の収穫だ。今大会出場機会の少なかった上級生の中にも有力選手が多くいる。目標とする秋の全日本学生選手権連覇に向け、チーム一丸となって進んでいきたいところだ。
(記事 町田華子、写真 町田華子、加藤千咲)
表彰式後の集合写真
結果
▽470級
田中・新井組 19点
西村/佐香将太(スポ3=岩手・宮古)・松本/上園田明真海(スポ2=大分・別府翔青)組 87点
倉橋・吉村組 47点
早大 153点(2位)
▽スナイプ級
谷川・川合大貴(商2=埼玉・早大本庄)/原組 74点
尾道・高橋組 38点
蜂須賀・海老塚組 68点
早大 180点(1位)
▽総合
333点(2位)
コメント
470級スキッパー田中美紗樹(スポ4=大阪・関大第一)
――今大会はどのような目標を設定されていましたか
目標は総合優勝で、470級もここ6大会くらいはずっとクラス優勝できていたので、それも目標にしていました。
――下級生が多く起用されていましたが、その意図は
3年生の人数が少なくて次につなげるという部分で2年生を育てなければいけないというのは代が変わってからひとつの大きな目標だったので、その中で経験が浅い分、470級でいうと6人中4人が初めての関東インカレになったんですけど、大きく崩してしまったレースも少しあったんですけど、平均的にはよく走ったんじゃないかなと思います。
――田中選手ご自身のペアはいかがでしたか
冬からいろいろなペアと乗ってきてやっと固定したペアになって1ヵ月くらいだったんですけど、冬の練習は動作練習が主なんですけどその中で乗れない期間もあって、最後のレースでも最終マークで動作ミスしてしまって慶応に2艇抜かれるミスもあったので、乗れない分を埋めるように動作練習も数多くやっていたつもりだったんですけど、とっさの場面で力を発揮できないということはまだ反復練習が足りないんだなと、新井(健伸、商2=東京・筑波大附)もそうですし、全体的に感じたところです。
――1日目を振り返っていかがですか
470級だけでいうと結構点差が開いていたので、海の上でなかなか総合の点数がわからない状態で陸に帰ってきてから、そのくらいなんだとスナイプが頑張ってくれていることがわかって少し安心した部分はありました。
――きょうは最終レースを終えて総合で慶大と同点でしたが、そこからはどのような心境でしたか
実を言うと同点を知らなくて、他のレースと変わらず最終レースだからといって最初から気負わずにリラックスした状態で取り組むことができました。
――470級の戦いぶりを振り返っていかがですか
いつも通りというか、実力が出せれば勝てたんじゃないかなと思うんですけど、どうしても大きくミスがあったときに2番艇3番艇の子たちがなかなかはい上がってこられなかったというのが大きいなと。今回その課題が見えたので、しっかりリカバリーの方法をもっと詰めていかないといけないなと思いました。
――田中選手ご自身はいかがでしたか
リカバリーの部分でいうと実力を発揮できたのかなと思うんですけど、動作のミスだったりで今回総合7点差で負けたんですけど、自分のミスだけで数えるとあと8点くらいは稼げたんじゃないかなと思ってるので、そういうところを詰めていかないと今後同じような展開で負けてしまうんじゃないかなと思います。
――470級2位、総合2位という結果はどのように受け止めていますか
総合はもうスナイプ級に助けてもらったというのもあったので、悔しいですけど、まずまずの結果だったと思います。470級でだいぶ点数が開いたということは自分の実力不足だなと感じたのと、私が入部してから最初の春季関東インカレ(関東学生春季選手権)は5位で大敗だったんですけど、そこから470級だけでいうと負けたことはなかったので、実際それを目の前にすると悔しかったです。
――今後はどこに向けてどのような練習をしていく予定ですか
とりあえずレースが続くんですが、来週は関東のちょっとした大会があって、その次の週は関東個人選手権(関東学生個人選手権)があってそれは全日本学生個人選手権の予選になるので、(470級に出場する)5艇全艇通過を目標にしようと思います。来週の試合と関東個人選手権の前2日間の練習でどれだけレベルを上げられるかというと難しいところもあると思うので、各艇、今回見えた明確な課題を潰していけるような具体的な練習ができたらいいなと思います。
スナイプ級スキッパー尾道佳諭(スポ2=山口・光)
――レギュラーとして出場する初めての団体戦でしたが、振り返っていかがですか
チーム戦がそもそも初めてで自分自身プレッシャーもあったし、自分たちの艇だけじゃなくて3艇の合計で競うので、初めはすごく緊張していた部分もあったんですけど、レースが始まるとそのプレッシャーもなくなり、自分のいいところを出していけたのかなというふうに思います。
――個人としてはどういう目標を掲げてこの試合に臨みましたか
僕自身が結構高い目標を持っちゃうところがあるので、個人成績優勝というつもりでいました。
――チームとしてはどういう目標を持って臨みましたか
チームとしてもスナイプチームで優勝、470チームも優勝してもらって春インカレ完全優勝したいという気持ちでした。
――総合では3連覇を逃す結果になりましたが、この結果についてどのようにとらえていますか
優勝を逃したのは悔しいんですけど、僕たちが最終目標にしているのは全日本インカレ(全日本学生選手権)で、それにつながるベースになればという思いでやってきた部分もあるので、この優勝を逃したからといって焦りはないです。もっとこういうところを改善しないといけないんだなという課題が見つかったというふうに前向きに考えて次の秋インカレ(関東学生選手権)もそうですし、全日本インカレで優勝できるようにこれからまた練習していきたいなと思います。
――スナイプ級では見事優勝を果たしましたが、それについては振り返っていかがですか
1レース目が14番でちょっと失敗してしまったので、結構レース中焦ったりしていました。高い目標を持っているからっていうのもあると思うんですけど、いい順位を取っていても結構僕レース中に焦り出したりするところがあるので…。それでも最後まで自分の走りができたということと、みんなが諦めていなかったので僕も諦めるわけにはいかないっていう気持ちでいたところが今回の優勝につながったんじゃないかなと思います。
――第5レース終了時点で慶大と同点で並んでいましたが、どういう思いで最終レースに臨みましたか
僕はあまり得点を気にしていなくて、大体の得点は見ていたんですけど同点というところまでは知らなかったので、470級は470チームに任せて信じて、僕らは僕らなりに3艇まとめてしっかり上位で、慶應、日大に負けないように安定した順位を取って帰ってきたいというふうに思ってレースをしました。
――個人では安定してほぼ一桁順位を取り続けましたが、狙い通りの結果でしたか
もうちょっと良い順位を取り続けたいなと思っていました。いい順位を取っているレースでもレース中に失敗したところはあるので、そこを改善すればもうワンランク上にはいけるかなというふうに思っています。
――2日間のレースを通して、特に自分の課題だなと感じた点はありますか
1上で15番前後にいることが多くて、2上で挽回して5番とかになるっていう展開が今回のレースでは多かったです。なので、このスタートしてから最初の上マークまでの一番初めのシフトを外さないようにすれば1上の順位も上がって、レース全体ももうちょっと安定してくるのかなというふうに思います。
――第1レースでスナイプ級全体が出遅れた印象でしたがその要因は
多分スナイプ級のスキッパー全員がレギュラーとして出場するのが初めてだったので、緊張していた部分もあるんじゃないかなと思うんですけど、スタートで3艇とも出遅れてしまっていい順位が取れなかったです。
――2レース目では見事1着で挽回しましたが振り返っていかがですか
2レース目以降の全レースでスタートが結構決まって、レース前にコース取りを決めてスタートしているんですけど、2レース目は自分が思った通りのコースを走り続けることができたので、上マークから1番が取れて、トップで帰ってくることができたという感じです。
――4年生の欠場が目立ちましたが、それを受けて影響したことや意識して臨んだことはありますか
僕はないですね。4年生がいなくても僕がやることは変わらないので、僕が出せる力をすべて出し切れるようにレースしたつもりです。
――同期の2年生の出場、活躍が目立ったことについてはどのようにとらえていますか
スナイプ級の同期は470級から転向してきて、練習日数も僕らに比べて少なかったんですけど、練習からすごく走っていて、頼もしい存在でした。
――風が弱いコンディションでしたが、そのことについてはどのように感じていましたか
僕自身風がないコンディションが得意なので、ラッキーだなと思っていました。風がないと順位を安定させるのが難しくて、ほかの大学も結構崩れていたと思うんですけど、僕は小学校から風のないところで育ってきたというのもあって風のないコンディションも得意なので。逆に風が吹いてもクルーも割と大きいし、そんなに変な走りをすることはないんですけど、なかったのは嬉しかったです。
――最後に今シーズンの意気込みをお願いします
チームとしての目標は全日本インカレで優勝すること、それと僕が思い描いているのはスナイプチームでのクラス優勝です。加えて全日本学生個人選手権と、社会人も出る全日本スナイプ(全日本スナイプ級選手権)で優勝したいなと思っています。あと、この前の同志社ウィークという大会でジュニアワールドの出場権が得られたので、高い目標になってしまうんですけどメダルを取って帰ってきたいと思います。