第5回には、深田龍介主務(政経4=東京・早大学院)、川上健太(創理4=東京・早大学院)、堀田芽ノ世(法4=東京・早大学院)の3人が登場。今季はそれぞれ主務、スナイプ級エースクルー、マネージャーリーダーとしてチームをけん引してきた。新チーム発足からここまでチームの中心であり続けた3人が、最後の全日本学生選手権(全日本インカレ)を直前に控えた今、思うこととは――。引退後の楽しみなど、砕けた話題でも盛り上がりを見せた。
※この取材は10月16日に行われたものです。
「優勝出来る予感はしている」(堀田)
堀田は、誰よりも部のことを一番に考えている
――まず、新チーム発足からここまでの戦いぶりを振り返っていただけますか
深田 僕らはこれまでの3年間競技面でも生活面でも、下級生にも上級生にも意見をはっきり言う代だったので、ある意味で自分たちが4年生になったときに下級生が自由に意見を言える環境かどうか、それが競技面に影響するかどうかが懸念されていて、それをどうフォローしていくかが課題でした。結果的にチーム全体としては競技面ではいい成績を収められて、春インカレでは3年ぶりに優勝できましたし、秋インカレは完全優勝できて、思っていたよりもうまくチームがまとまったんじゃないかと思っています。
川上 うちの代には岡田奎樹(スポ4=佐賀・唐津西)と永松礼(スポ4=大分・別府青山)という日本セーリング界を代表するモンスターが二人いて、かつ学院ヨット部からの経験者も入っていたので、新チームが始まった時から、セーリングの技術に関しては例年より高いと思っていました。技術面ではそんなに心配していなくて、実際成績面では春も秋も優勝できましたし、個人戦でもいい成績を残せたので、ヨットの技術面ではここまですごく順調に来ていると思います。その中で課題なのがチームをまとめて士気を高めるというか、下級生がついてきてもらうということだったのですが、自分たちなりにいろんなことをして、下級生についていきたいと思わせるようなチーム運営が今のところで来ていると思っています。この調子で全日本インカレでも勝てると思います!
堀田 今年の全日本インカレは、1位になれるという確信があるかは別として、少なくとも優勝争いができる位置にはいるということは新チームが始まった段階から分かっていました。そういった中で、選手以外の面でなにか問題が発生して優勝できなくなってしまうということが自分の中での懸念で、当たり前のことができず足元をすくわれるというのが怖くて、その対策をこれまでやってきて、結果としてこのあいだの秋インカレで小松さんにも「準備はとてもよかった」という評価を受けました。正直自分がやったことは、自分で動くというよりもこれができているかできていないかの穴埋めの作業、これまでのミスを全てリストアップして、それが繰り返されていないか、ミスをする可能性があったらそれを事前につぶしておくというサポートの仕事だったのですが、自分も含めて選手以外の人も全員が一生懸命動いてくれたからこそ関東では優勝して、先日の六大学でも優勝できたと思います。いい気持ちで全日本に臨むまでこれたので、このまま優勝出来る予感はしています。
――堀田さんは今年からマネージャーになりましたが、何か大変だったことはありますか
堀田 マネージャーがやることと1年生がワークとしてやることの区別が今まではなくて、どこまでがマネージャーの仕事でどこからが1年生の仕事なのかが分からなかったので、これまではマネージャーの子たちは自分たちの存在意義みたいなもので悩んでしまうことがあったんですけど、今年からはそういうのはなくして、マニュアルというか、区別を明確にしたのは大きな進歩だったかなと思います。せっかく4人いるのだからできることを増やそうということで、ご飯の質を上げてみたり、普段の練習レースから得点分析をマメにやるようにしたり、体重管理を徹底したり、非常に細かいことを積み重ねることができたのは今年大きく変わったところですね。
――川上選手は永松礼選手と組んで2年目ですが、成長は感じますか
川上 僕はきょねんの春から永松礼君と乗っているんですけど、2年目ということもあってコンビネーションも確立されていて、余計な会話をすることもなくほぼ完璧に動けるんですよ。
深田・堀田 おおー、さすが(笑)。
川上 お互いに乗りやすくて、単純に考えれば海の上では(自分たちが)一番走るはずのペアだと思うんですよ。今年は不調なときもあったんですけど、不調なときはどうすればいいのかをちゃんと考えて、やるべきことを明確にして課題を克服してこれたので、今のところいい成績を出せていて、全日本個選でも優勝できましたし、秋インカレでも個人成績1位を取ることができたので、個人としてはここまで順調にきていると思います。
深田 元津と乗り始めたのはごく最近で、それまでは基本的に1年生の佐香(将太、スポ1=岩手・宮古)と乗っていたんですが、ヨットという競技において今年はある意味で一番成長した1年だったと思っています。というのもやはり1年生と乗っている分、自分で考えてヨットをして、成績を出すためのトライをする上でやらなきゃいけない部分が大きかったので、それができた1年は自分のヨット競技にとって大きな成長のポイントになったと思います。全日本インカレではその経験がうまく生かせればいいなと思っています。
――深田選手は未経験者として入部して4年目になりますが、ヨット競技について何か分かってきたことなどはありますか
深田 未経験者ではあるんですけど、4年生までやればある意味ではもう経験者なので、4年生までに選手としてものになっていく、経験者に必要とされる選手になっていく必要があります。はじめはいわゆる動作という、陸上で言えばただ走るみたいなことから始めるので、船がどう動くか、なぜヨットのここに部品がついているのかというようなヨットの原理、原則みたいなものに立ち入らずにまずは形から入っていくので、やはり経験者との差は出てしまうところではあります。なのでヨットを走らせる、いい順位を取るっていう点では、3、4年生になってから一番成長したかなと思いますね。未経験者はそこが大変なので、今の1年生も早い段階からヨットについての知識の面を意識していくことをオススメします。
――早大は未経験者、経験者、スポーツ推薦入学者のバランスがいい印象ですが、いかがですか
川上 バランスはいいんじゃないですかね。毎年セレクションで何人か経験者が安定して入ってきて、ちょっと経験者がさらに1、2人入って、それでいて半分以上はこれまで全く違う競技をやってきた完全な初心者って感じで。セレクションの人とかはこれまでの経験から固定観念というか、自分の世界があってそこからのアプローチしかできないんですけど、いろんなバックグラウンドを持った人たちが集まってくることで、いろんな角度からヨットをうまくなるためのアプローチがいいバランスでできていて、それを小松さんがうまく引き出してくれるので、ワセダならではの上達法みたいなものは確立できていると思います
「引退しても僕に極楽浄土は訪れない」(川上)
引退後の『妄想』トークに花を咲かせる4年生たち
――4年生はあと少しで引退だと思いますが、引退してからの楽しみは何かありますか
堀田 川上なんかあるんじゃないの?(笑)
川上 いやー僕は引退してからも地獄なんですよ(笑)。というのも僕は理系でして、本来夏に卒業研究というのをやらないといけないのですが、まあヨット部ということは夏休みの98%くらいは部活なので、夏休みは研究なんかするわけもなく、ただでさえ研究室の中での立場が非常に危うい状況でして、そこがかなり懸念点であります。引退しても僕に極楽浄土は訪れないですね・・・悲しい。あ、でも僕は高校1年からヨット部で土日は基本海に出ていたので、土日丸々休みというのは経験したことがないんですが、引退すればついに土日休み人生が始まるので、それは唯一楽しみですね。
堀田 何するの?研究?
川上 土日は研究しない。絶対しない。
深田 デート?
川上 あーデートしたいな(笑)。でも急に土日休みってなってもなにすればいいか分からないんですよ(笑)。なので、今は摸索中なのですが、とりあえず自由な時間が少しでもあるというのが楽しみです。
――他のお二人はいかがですか
深田 僕はあとはゼミだけなんで、勉強面では心配はないんですけど、唯一気がかりなのが主務の引継ぎですね。まだ後任が決まってないので引き継げていなくて、それを除けば楽しい人生が待ってるんで(笑)。内定先の人と仲良くなったり、大学の友達とかと旅行したり、っていう妄想だけしてて、計画はしてないんですけど(笑)。まだ妄想の段階です(笑)。
堀田 僕はまだ学校の勉強とか内定先の課題もたくさんあるので・・・。あ、あと僕は読書が好きなのですが、この4年間で本を読む量がだいぶ減ってしまったので、たくさん本を読みたいと思います。
――今年の全日本インカレは福井での開催ですが、何か福井で楽しみにしていることはありますか
川上 ちょっとご飯がおいしいんじゃないかな、と勝手に思ってはいます。
深田 でも旅館の設定価格からめちゃめちゃ値引いてるんで、川上が想像してるようなすごくおいしい料理がでてくるかどうかは・・・
堀田 インカレ優勝が楽しみですね、それだけです。
深田 ほんとにそれくらいしかない(笑)。
川上 あ、でもインカレ期間中の練習ってさ、めっちゃ選手を労る練習じゃん?1日1、2時間くらいしかないし。これまでやってきたきつい練習がもうないと思うと幸せですね。
深田 確かに、ある意味幸せ(笑)。
堀田 いやー俺はめっちゃ忙しいんだよなあ(笑)。車運転したり、荷物点検したりしなきゃなんで。4年部屋は自分以外はゴロゴロしてるんじゃないかという嫌な予感がしてます(笑)。
深田 まあこれまで俺らはきついトレーニングやってきたからさ、インカレでは逆になるってことで。
堀田 まあそれでみんなが優勝してくれるなら・・・まあいいです(笑)。
――福井でセーリングをした経験はないと思いますが、怖さはありますか
川上 まあ海があって風があるだけなんで・・・
深田 うわー、カッコいい(笑)
堀田 やっぱ違うね、全日本チャンピオンは。
川上 いやいや、変わらないっしょ。一緒でしょ。
堀田 まあ、それはそうなんですけどね(笑)。当たり前のことなんですが、それを当たり前に言えるのがエースですね。
深田 不安はないですけど、まあ未知の世界なので、だからこそこれまで培ってきた実力っていうものが発揮される場なのかなと思いますね。
――どのようなコンディションが予想されるのでしょうか
堀田 まだ分からないよね。
深田 謎に包まれてます、福井は(笑)。
川上 なんか最近はそんなに強風じゃないらしくて、必ずしも日本海だからといって強風ってわけでもないんですかね。
――今はどのような練習をしているのですか
川上 ここ最近は、直前になって逆にベーシックな最後の動作をメインとした練習をしていて、福井に行ってからより実戦的な練習をしていきます。
深田 福井に行ったらできない練習をするって感じですね。
――現在の両チームの状態はいかがでしょうか
川上 スナイプチームは4艇の力が拮抗(きっこう)していて、最後の最後までレギュラーをどうするか悩むと思うんですけど、逆に言えばそれだけチームが非常に高いレベルにあるということだと思うので、状態としてはめちゃめちゃいいと思います。
深田 470級チームは1、2番艇と3番艇が結構大きく離れていて、1、2番艇は大学界トップクラスの2艇なのでそんなに心配してないです。その中で3番艇は、とにかく大きく崩さないのが大事だと思っていて、3番艇がいい順位ではなくとも悪くない順位で回ってこれれば優勝できると思っています。先日の練習とかでも大きく崩さないレース展開ができてきているので、チームとしてはいい状態だと思います。
――マネージャーである堀田さんから見ていかがですか
堀田 競技的な面では関東インカレ優勝して、六大学でも優勝して、チーム全体で非常に自信をつけていると思います。みんなが自分たちの実力を発揮できるコンディションなので、このままいってもらいたいです。
――深田選手は須賀偉大選手(教4=大阪・高槻)との併用になると思いますが、どのような準備をしていますか
深田 特別な準備はないんですけど、ヨットは風を読むとかよりもまずボートスピードが大事で、船が速く走るだけでめちゃめちゃ楽になるスポーツなので、そういう意味で(須賀選手と)どっちがが乗った方がベストなパフォーマンスができるかを1レースごとに考えて、うまく使い分けていければいいと思います。
――慶大、日大といったライバルとなってくる他大の印象はいかがですか
川上 全国の大学を見ている限り、やはり慶大、日大がライバルになってくるとは思います。慶大には秋インカレではだいぶ圧倒して勝てたのですが、だからこそ彼らがどんな手を使って追いついてくるか分からないので、そこは注意しないといけないと思っています。
堀田 近くで練習している慶大、日大の様子を見てると、余裕がないなと感じます。どの大学の4年生も3年連続でワセダに負けているわけで、今年こそはワセダに勝たなきゃっていう思いで少し余裕がなくなっているのかな、と。変な奇策で自滅してくれたりするので、こちらとしてはありがたいのですが、やはり実力ではそんなに離れていないので、自分たちの勢いが悪い方向に働いてしまって、慢心みたいなものになってしまったら危ないと思っています。自分たちがしょうもないミスをして他大が実力を出してきたら、負ける可能性も大いにあるので、そこは自分たちも締めるところは締めていかないといけないと思います。
深田 470級チームとしては全日本インカレでクラス優勝する実力をつけるというのを目標にこれまでやってきました。その上で日経大といった470級だけに特化したチームというのもあって、そういったチームに勝てれば総合優勝にも大きく近づくと思うので、そういった意味では他にもライバルとなるチームはいるかなと思います。日大は全日本インカレでは高山、木村っていう岡田レベルに走るやつが出てくるので、470級チームとしてはまだまだ浮かれられないというか、油断せずに実力を発揮したいと思います。
「最後に足元をすくわれてしまうことがないように」(深田)
冷静に全日本インカレを見据える深田
――今年は全日本インカレでの負けを知らない代となります。そこに対する不安はありますか
深田 負けを知らないということで考えられることは、油断ですよね。「今年強いし勝てるんじゃないか」、「ここまで圧勝だしどうせ勝てるだろう」みたいな油断をしていると、結果としていわゆる英語につながってしまうと思うので、そこは欠点だとは思います。とはいえここまで順調に勝ってきているのはさらなる4連覇への勢いにはつながっているので、そこはサポート含めチーム全員で注意していって、最後に足元をすくわれてしまうことがないように、そこはしっかりケアしています。
堀田 過去に一度3連覇したときは、実力的にはおそらく4連覇できるだろうと思われていたにもかかわらず、まさかのミスで負けたというのを聞きました。そういうケースを頭に入れた中で1年間やってきて、それを越えられるだけの準備、練習は1年間やってきたと思うので、大丈夫だと信じています。
――全日本インカレにおけるキーパーソンを一人挙げるとしたどなたでしょうか
堀田 僕は、入江だと思います。永松と松尾は全日本個選でもワンツーを取ったように、全国の舞台でも前を走る実力を持っています。その中で、3番艇がどれだけ安定した成績を残せるかが重要になってきて、3番艇が大きく崩すと1、2番艇も心配して普段しないことをしてしまう気もしますし、逆に3番艇がしっかり走れば永松と松尾も伸び伸びと前を走ってくれると思います。
深田 僕は美紗樹(スポ2=大阪・関大第一)かなと思います。奎樹、永松、松尾はこれまでのレースを見ている限り大きく崩すことはほぼないと思われるんですが、それに比べれば元津があまり走らない分、美紗樹は一番プレッシャーを感じているんじゃないかな、と。一番難しいポジションにいるのは美紗樹かなと思いますね。岡田奎は順位を上げるって言ったって2位が1位になるみたいな、数点勝負の世界なんですよ。だからこそ美紗樹がいかに岡田奎に近い順位で走れるかが重要になってきますし、そこに関しては彼女自身使命感を持っていると思うので、プレッシャーに押しつぶされずに、実力通りの力を発揮してほしいです。
川上 今みたいな回答ばかりになると面白くないので、僕はあえて言います。キーパーソンは僕自身です。
堀田 おおー!まじか(笑)。
深田 理由は?理由は?
川上 ヨットうまいからとかじゃなくて、いろんな理由があって。僕こないだ少し体調崩してしまって。
一同 (笑)
川上 まずはレースメンバーとしての体調管理はしっかりして、スナイプチームの雰囲気を僕から率先して明るくしていきたいと思っています。
――なぜ体調を崩したのでしょうか
深田 そうだよ。それ言わなかったらなんも面白くないよ、「僕自身です。」とか言っても(笑)。
堀田 そうだよ。なんで体調悪いの?(笑)
川上 えーとですね・・・僕は・・・人間関係に不安を抱えると・・・体調が悪くなって・・・
一同 (爆笑)
川上 体調と人間関係がリンクしていまして・・・
――では人間関係に不安を抱えていた時期があった、と
川上 若干ですね、不安を抱えているのですが、全日本インカレまでに僕のプライベートになんの問題がなければ、僕は最高のパフォーマンスを出せるので、優勝に大きく近づけるでしょう!(笑)
――最後に、全日本インカレに向けた意気込みをお願いします
川上 僕らの代が始まるときに部訓として『挑戦』という言葉を掲げて、4連覇に向けて大きな挑戦をしてきて、きょうまで確実に進歩してきたと思っています。部訓に掲げた通り最後まで挑戦して、いい結果を残したいと思います。
深田 残るは全日本インカレ優勝しかないので、早く海で奎樹の船に部旗を掲げて、みんなで喜べるように、それを達成すべく頑張ります。
堀田 7年間の集大成として、インカレでみんなで海の上で『紺碧の空』を歌って喜べるように。僕は直接レースに出てチームに貢献することはできないですけど、サポート全員で選手を全力で支えて、自分の7年間をかたちにできるように頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 松澤勇人)
終始落ち着いた(?)4年生対談でした!
◆深田龍介(ふかだ・りゅうすけ)(※写真中央)
1996(平8)年3月30日生まれ。身長181センチ、体重76キロ。東京・早大学院高出身。政治経済学部4年。470級クルー。これまで何度も早スポ部員が船に乗るための手続きをしてくださった深田選手。今回の特集でも各組の対談をセッティングしていただきました。福井でも船に同乗させていただけたら、歴史的な4連覇の瞬間をこの目で見届けますね!
◆川上健太(かわかみ・けんた)(※写真右)
1995(平7)年6月12日生まれ。身長166センチ、体重65キロ。東京・早大学院高出身。創造理工学部4年。スナイプ級クルー。独自の世界観から放たれるカッコいい言葉で対談を盛り上げてくださった川上選手。ぜひとも全日本インカレまでに体調を万全にして、福井の地で躍動する姿を見せてほしいです!
◆堀田芽ノ世(ほった・めのあ)(※写真左)
1995(平7)年8月7日生まれのO型。身長177センチ、体重68キロ。東京・早大学院高出身。法学部4年。マネージャー。何よりも部のことを一番に考えている堀田さん。最後の全日本インカレではマネージャーとして、4年連続日本一へ完ぺきなサポートをしてくれるでしょう!