エンジのセーラーたちが世界の舞台へ!

ヨット

 いつもは『W』の文字が描かれているセールに、日の丸が描かれる。早大ヨット部の選手たちが、世界の舞台へ挑戦した。田中美紗樹(スポ2=大阪・関大第一)はギリシャ・テッサロニキで行われた470級世界選手権に出場。また、岩月大空(スポ3=愛知・碧南工)・三宅功輔(商3=東京・早大学院)組はスペイン・ラ・コルーニャで行われたスナイプ級ジュニア世界選手権(スナイプ級ジュニアワールド)に出場した。日本を飛び出し、世界の海へ渡ったエンジのセーラーたち。果たして、どんな活躍を見せたのか。

★目標のメダルレースには届かず・・・470級世界選手権 7月12~14日 ギリシャ・テッサロニキ

 昨年の全日本470級選手権で女子ペア1位となり、470級女子の世界選手権代表に選出された田中。セーリング日本代表『日の丸セーラーズ』の一員として、日大の工藤彩乃をクルーに据え、ギリシャ・テッサロニキへ乗り込んだ。「自分がどこまでできるか試したい」という気持ちで臨んだ今大会。初日は「逃げ気味のレースをしていた」と振り返るように、思ったような走りができない。それでも2日目には「チャレンジをしていこう」と切り替え、積極的なレース展開を進めていく。2位、4位を取るなど順位を大きく上げ、ゴールドフリートに残った。まさに世界最高峰の争いであるゴールドフリートでは、世界トップクラスのセーラーたちとの実力差を痛感。目標であるメダルレースに進むことはできなかったが、「日本のレースではできないような経験ができた」と収穫はあったようだ。今後も世界での活躍が期待される田中。若干20歳にして世界の舞台での経験を積んでいるこの女子セーラーが、日本ヨット界を引っ張る存在になる日も、そう遠くないかもしれない。

470級世界選手権に挑んだ田中(右)・工藤組

(記事 松澤勇人、写真 早大ヨット部提供)

結果

▽女子

田中美紗樹(スポ2=大阪・関大第一)・工藤彩乃(日大)組 25位

★岩月・三宅組が初めての海外レースで9位・・・スナイプ級ジュニア世界選手権 8月3~6日 スペイン・ラ・コルーニャ

 3月の全日本スナイプ級ジュニア選手権で優勝し、スナイプ級ジュニアワールドへの切符を手にした岩月・三宅組。初めての海外レースに、「5位以内での入賞を目標」(三宅)と意気込み、スペインへ渡った。早大ペアは初日から外洋に位置するラ・コルーニャ特有のうねりの激しい海面に翻弄(ほんろう)されるが、徐々に高波を攻略。2日目の第3レースではトップフィニッシュを決め、総合6位につける。その後も10位以内の順位を取るなど上位に食らいついたが、最終的には総合9位で大会を終えた。目標としていた入賞にはあと一歩届かなかったが、「船のスピードに関しては自分たちの技術が世界に通用すると実感できた」(三宅)と世界と比べても劣らない武器を確認できたことは、大きな自信につながるだろう。大舞台を経験した岩月だが、現在早大ヨット部ではレギュラーの座を奪われている状況だ。先日の全日本学生個人選手権で他大を圧倒する力を見せつけたスナイプチーム。全日本学生選手権へ向けたレギュラー争いの活性化のためにも、世界トップクラスの選手たちとのレースで得た経験を生かし、これからのシーズンでの巻き返しに期待したい。

第3レースのトップ賞を受賞する岩月(左)・三宅組

(記事 松澤勇人、写真 早大ヨット部提供)

結果

▽男子

岩月大空(スポ3=愛知・碧南工)・三宅功輔(商3=東京・早大学院)組 9位

 世界トップレベルの戦いにもまれ、それぞれが経験値を高めたに違いない。今後は、世界の舞台での経験を周りの部員に伝えていき、早大ヨット部全体に還元していくことが求められる。そのことが、チーム全体のレベルアップにつながるだろう。8月26日からは470級ジュニアワールドが、2020年東京五輪セーリング競技の開催地・江ノ島沖で行われる。昨年度日本人初の金メダルを獲得した岡田奎樹主将(スポ4=佐賀・唐津西)は、早大が誇るスーパールーキー松尾虎太郎(スポ1=山口・光)をクルーに据えて2連覇を狙う。田中も世界選手権と同じく工藤とのペアで出場予定だ。東京五輪ではレースの中心となってくるジュニア世代の世界トップクラスが、江ノ島に集結する。その中で、早大勢は頂点に立つことはできるのか。エンジのセーラーたちの世界への挑戦は、まだまだ続く。


※掲載が遅くなり、申し訳ありません

コメント

スナイプ級クルー三宅功輔(商3=東京・早大学院)

――初めての海外レースでしたが、日本のレースとの違いを感じたことは

相手をお互いに褒め称え合うということですかね。自分たちがトップフィニッシュしたレースがあったのですが、そこで初対面の海外の選手たちがみんな「ヘイ!コースケ、コングラッチュレーション!」って言ってくれて。お互いを褒め称えるっていうのは日本ではあまり見ないなと感じました。

――スペインの海はいかがでしたか

(開催地の)コルーニャは外洋に位置してまして、波が高かったです。自分たちのペアはこの特徴に苦しめられましたね。

――どういった目標で臨みましたか

5位以内での入賞を目標としていました。

――全体的にレースを振り返って

自分たちは風の読みを当てたり外したりどちらもあったんですが、自分たちが目標としていた5位以内の選手たちはみな必ず風を当ててくる、絶対に外さないなと感じました。そこはレベルの差を痛感したところです。

――2日目の第3レースではトップフィニッシュを決めました。世界でも通用すると感じた点はありましたか

ボートスピードは世界に対しても通用すると思いました。船のスピードに関しては自分たちの技術が世界に通用すると実感できてよかったです。

――今大会での経験を今後どのように生かしていきたいですか

世界で上位の選手たちがやっていることは、スタートのポジションを間違えない、レースの合間にも風の変化を感じ取る、といった、自分たちが日本で言われていることと全く同じでした。そこを確実にこなしていたのが世界トップクラスの選手で、自分たちはできたときもできなかったときもあったと思います。大事なのは普段言われていることを確実に忠実にやることなんだと実感したので、そこを意識して夏の練習、大会に臨んでいきたいです。

470級スキッパー田中美紗樹(スポ2=大阪・関大第一)

――海外でのレースは何度か出場されたことがあると思いますが、ギリシャでのレースはいかがでしたか

何度か世界選手権に出た中でシニアの470に出るのは初めてだったので力試しみたいな、自分がどこまでできるか試したいという気持ちで臨みました。安定して前を走るとかはオリンピック選手とかもいるので全然できなかったんですけど、チャンスをできるだけ成績につなげられるように試行錯誤して、日本のレースではできないような経験をできたのですごい良かったです。

――予選レースを軽く振り返ってください

初日はなかなかうまく走れなくてスタートの段階からビビってしまって、逃げ気味でレースをしていたんですけど。2日目に「それじゃいけない」ってなって、メダルを取ろうとかは無理だとわかっていたので、次のレースにつなげるためにチャレンジをしていこうという意味で結構攻めてスタートしたりレース展開をして、2番と4番を取れたのですごいいい経験になりました。

――今回の世界選手権の目標はどのあたりでしたか

目標はメダルレースに出ることで、初日の段階でそれが結構遠いということに気づいて、ゴールドフリートに残って少しでも世界のトップレベルの選手と走って、違いとかを見つけていこうという目標に変わりました。

――ゴールドフリートを振り返っていかがでしたか

優勝したポーランドのチームとかもレースの序盤では結構近いところを走っていて、そこから私たちはコースの戦術があまり上手くいかなくてどんどん落ちていくレースが多かったんですけど、優勝したチームとかはそこからどんどん前にはい上がっていたので、その違いは何だろうというのをすごく知りたかったんですけど、自分にも精いっぱいで上手くいかなかったです。一回4番取ることができて、前を走る選手はこういう見え方で走るんだというのが見えたのでいい経験になりました。

――世界選手権での経験を早大ヨット部にどう還元していきますか

コーチにギリシャ人の方がついてくださって、そのコーチは結構有名な選手とかのベーシックなことを教えているコーチで、結構新しい知識を吸収することができたので、そういう基本のところをもっと突きつめていけるように知識をできるだけほかの部員に伝えていけたらなと思います。

――ギリシャの海はいかがでしたか

日本と違って天気があまり変わらないので、10日間晴れて1日雨みたいな。そんな感じの気候で結構毎日同じ風が吹いたりして、課題克服の意味ではきのうできなかったことをきょう練習できるというのはすごく良い環境だったんでした。でもどことなく江の島の北風にも似ていたので、最初の方は走りやすいなという印象でした。

――ジュニアワールドへの目標や意気込みをお願いします

いつも練習している地元で開催されるということで、メダルレースに出ることはもちろんなんですけど、メダルを狙っていけたらなと思いました。